わざわざ早起きして電車に揺られているなんて、俺は一体何をしているのだろう。外は真っ暗、時刻は午前5時。そして今日の日付は1月1日だ。そう、俺は初日の出を見るために早起きしたのだ。近くにお寺もあるので初詣も済ませられる。一石二鳥だ。
正直に言うと俺はどちらかといえば寝ていたい。大晦日の歌合戦も見ていたことだし夜更かしで凄く眠いのだ。本当に今の俺の瞼2トンある。いつもだって初日の出なんて見たことがないし初詣だって昼に行く。だが今日はとんだ厄介者の所為でこんな早起きする羽目になっている。
妹の美久。そう、厄介者とは俺の妹である。てかお前妹なんていたの?という話になるだろう。妹がいるのに、あんなに女の子に耐性ないのとか言われそうだが。別に俺は異性と普通にだったら喋れるし、寧ろ他人に自分をさらけ出して友人のように接する人なんてなかなかいないだろう。それに俺は女の子に耐性がないわけじゃない、恋愛に耐性がないだけ。まあ今コツコツそっちの方は頑張ってます
まず、そもそもの話だが妹は女じゃないから。妹か姉がいるやつにはわかると思うけど、違うんだよ、一度たりともドキッとしたことなんてないから。
それはさておき俺の妹は今18歳の高校生。つまるところ受験生で一番初詣したい輩と言うわけだ。いつもは家族で近くの神社ですませてしまうのだが、せっかく行くんだから有名な神社で初日の出も御利益がありそうだから見たいと妹が騒ぐものだがら、母親からまだ未成年だから俺がついていってやってくれと頼まれてしまったのだ。実を言うと母親は腰が悪いためしょうがなく承諾したと言うわけだ。父は?という質問があるかも知れないが残念ながら父は単身赴任中で東京には居ない。今日の昼あたりこちらへ帰ってくるらしい。俺も初詣が終わり次第実家へと足を運ぶつもりである。
「と、言っても現地集合じゃ俺ついていっても意味ないだろ」
俺がそう呟きながら、頬杖をしているとなにか肩に柔らかい衝撃を感じた。俺はその方へと振り向くとそこには髪がクリーム色のショートヘアの女の子が眠り呆けていた。多分電車の揺れでこちらへ倒れてきてしまったのだろう
「……」
まあ、あたりを見渡せば神社に向かう人で席は埋まっているし仕方ない目的の駅まで我慢してやるか。
と起こさないでやっていたのだけど
「まさか、アレからずっと起きないとは……」
ついに俺が下車したい駅まであと一駅。ウトウトしているとかのレベルでは無いな。ガチ寝である。しかし、このまま流石に彼女を支えている俺が急に席から立てばお察しがつく。
「すいません。もうそろそろ降りますよ」
その気持ち良さそうにしている眠り姫の肩を揺らした。すると
「ん……あれ?私ったらいつの間に……」
ポカンとした表情をしながら目を擦る彼女
「あの、出来ればちょっと離れてくれると嬉しいなー。なんて」
俺は笑顔でそう言った。しかし絶対引きつっているだろう。
「ひゃっ!?す、すいません‼︎」
するとクリームショートの女の子はぺこぺこと俺の前で頭を下げてみせる……なんだ、いい人そうで助かった。
「いやいや、大丈夫っす」
「ほんとにゴメンなさい。今日は早起きでしたのでついうたた寝を……」
うたた寝どころか、ぐっすりだったけどな
「そうなんすか……もしかして初日の出が目当てだったり?」
「あ!そうなんです!実は今日高校時代のお友達と初日の出を一緒にみようと約束しているんです。もしかして貴方も?」
「はい。実はそうなんすよ」
電車は停車を終え扉が開く。改札を出ると何やら見覚えのあるシルエットが俺の目に映った細目で確認してみれば、妹の美久だ。手を振ってこちらへ近づいてくる
「じゃあ、俺はこれで」
「あ、はい!お互い良い一年になるといいですね!」
クリーム髪の少女は別れ際にそう言い残していった。なんかほんと聖人みたいな人だったな……
「あれ?お兄ちゃん今の人だれ?」
駆け足で俺の隣まで足を運んだ美久はキョトンと首を傾げた
「ん?あぁ、さっき偶々電車の中でな」
「ふーん。あっ!もしかして彼女?」
美久は横っ腹を突きながら悪戯な顔でこちらをみてくる
「……俺に彼女が居たらお前となんか初詣来ないから」
「なんか、悪いっすね兄者」
「気にするな妹よ」
*
眠い……眠いすぎる。今日は1月1日、元旦なのであります。ということであおっちとほたるんと一緒に初日の出を見に来た私、桜ねね。初日の出の前にちょっと時間があったからお団子を食べたんだけどそのせいで睡魔が襲ってきた……
私たちは3人でベンチに腰を下ろしていた。私は遂に眠づてしまいそうなのでベンチから立ち上がり背伸びをする
「うあああ‼︎くぅー‼︎」
「もー、ねねっちったらそんな眠いの?」
あおっちは呆れた顔でこちらを見つめる
「だってぇ……ふぁああ……」
大きなあくびをしながら、なんとなく前方を見つめているとなんか見覚えのある人影が見えた。あ!思い出した!あの人は確か……音村さん!んー?なになに?あおっちったら新年そうそうお正月イベントでポイントアップのチャンスじゃん!よし!さっそくあおっちに教えてあげ……
「ん……?えぇ!?」
「ん?ねねっちどうしたの?」
するとほたるんはそう言って振り返る
「な、なんでもない!」
私は首をブンブンとふった。そして私は音村さんーーあおっちの想い人の方へと視線を戻す。
「……」
間違いない。女の子と一緒にいるよねあれ。しかも結構可愛い。あっ、お団子一緒に食べてる……もしかして、か、彼女……?
ど、どうしよう!?こ、こんなところあおっちがみたらきっと……って!?こっち来たし!?なんとかやり過ごさないと……あおっちを傷つけたくないし
私がそんなことを考えているとほたるんが急に私の隣へと現れる。
「んー!私もまだ少し眠いや……」
手を頭の上で組み伸びをしながらそういうほたるん。私は横目であおっちをみるがスマホをいじっている。……なんとか大丈夫そうかな。よし、丁度音村さんも私たちに気づかず目の前を通り過ぎて無事にことは運びそ……
「ん?あっ!さっきの!」
え?は?
「え……あっ、電車の」
なになに、ほたるんなにしちゃってるわけ?私ちょっとこの状況に頭が追いついてないんだけど!?
「ほ、ほたるん知り合いなの……?」
私は耳打ちでほたるんに真実を問いただした。すると
「ん?まぁ、ついさっき偶々電車でね」
「ん?あれ?そっちの子は確かバイトの……」
「……は、はぃ」
「びっくりした。まさか知り合いの知り合いだったのか」
最悪だ。私は先ほどと同様にあおっちの様子を横目で確認する。案の定こちらの異変に気付き振り向いてしまった。
「てことは……あっ。居た。涼風」
「お、音村君!?」
ようやくここであおっちはベンチから立ち上がりこちらへと歩み寄ってきた。すると隣の女の子にあおっちは視線をやるとちょっと黙りこんでから
「びっくりした……音村君も来てたんだ。あけましておめでとう!」
「おめでとう」
「え?あおっちとねねっちの知り合いなんですか!?」
ほたるんは驚きの表情だ
「あおっ……?あぁ、そうですそうです。涼風とは会社の同僚で、俺は音村楽っていいます」
「あっ、はい!星川ほたるです!」
そしてもちろん自分の知り合いは一人もいない音村さんと一緒にいる女性は気まずい退屈そうにしている。そりゃそうだ。知らない人と一緒にいちゃあ。私だって逆の立場だったらそうだよ。私も実際イーグルジャンプに最初に来た時そうだったもん。てかそんなんで良いんですか音村さん。彼女をほったらかしにして私たちなんかと喋って。ほら、ケータイ弄りだしちゃったじゃん。そしてほたるんはその様子を見て
「そっちの女の子は、彼女さんですか?」
「ほたるーん!?」
と、遂に禁断の質問をしてしまう。私もつい声を出してしまった。いや、ほたるんは優しいもんね。そうだよね女の子気まずそうだもんね。うん、ほたるんは悪くない。というか、まだ彼女とは限らないし!
「ど、どうしたの?」
ほらほたるんもおどろいちゃってるし
「いや、ゴメンなんでもない」
「カノ……そうか紹介するよ」
音村さんはその女性の肩に手を回しはじめた。うわ、この人結構大胆に……コレはおそらく黒ですね。はい。
そして音村さんが口を開こうとしたその時、あおっちはその場から逃げるように私たちから背を向ける同時にその場いる全員がその声の主あおっちの方へと視線を向けた。
「……涼風?」
音村さんも異変に気付きすぐさま声をかけた
「あっ……」
あおっちもはっとした表情で我にかえった。
「い、いや……ごめん!言わなくていいよ私は分かってるし」
(分かってる?俺涼風に妹がいるなんて……)
「あれ?俺涼風に言ったっけ?」
「それよりごめんちょっと私今日お腹調子が悪くって、お手洗いいってくるね」
そのあおっちの声は今まで私が聞いたことないような声。低くて、震えていて、なにより悲しかった。
「お、おう」
あおっちはスタスタと人混みの中へ消えていく。するとその後音村さんは眉をしかめながら私を見つめている
「涼風と喧嘩でもしたの?」
「してないよっ‼︎」
音村さんの所為だよ!とは流石に言えない。
「そうか……?あ、後こいつは俺の妹の美久」
「どうもー、美久でーす……」
その音村さんの隣いる彼女は控えめにぺこりと頭を下げる
え?妹?
「あ、そうなんですか!可愛らしい妹さんですね!」
「そ、そんなこと!」
ほたるんは私の気も知らないでもう音村妹と会話をはずませている。もうほたるんはできれば黙ってて。
それよりなんだ、妹か……なんか私の早とちりでてっきり彼女かと。いや、ほたるんだって勘違いしてたし、そもそもあおっちだって勝手に勘違いして勝手に失恋した気になってるんだから私が変なわけじゃないよね。プププ……なんか、ア○ジャッシュのネタみたい
*
15分後あおっちは人ゴミの中から姿を現した。
「ゴメン!ちょっと時間かかっちゃった」
目尻が少し赤いことに私はすぐ気付いた。そっか、凄い好きなんだもんね。そうだよね。私はあおっちの元へ駆け寄ったあと
「あー……音村さん?そう言えば今日はなんで”妹”さんと?」
と私は敢えて妹と大きい声で問いかけてあおっちの背中をポンと叩いた。
「ん?あぁ……それがなーー」
再びあおっちを見るとそこにはもう目尻が赤いのがわからないほどに赤面したあおっちの姿が。ふー。これで一件落着かなー。親友が泣く姿なんで私にはとてもとても……はぁ、新年早々疲れたよぅ
結局、ほたるんと妹さんはもう仲良くなっちゃってるし。
*
そのまま流れで5人で初日の出を待つことになった私達はベンチに腰を下ろしていた。時間的にもそろそろだろう。すると音村君は私の隣へとやってきた。
「腹の調子は大丈夫か?」
「う、うん!大丈夫大丈夫」
私はさっきの今で彼を直視出来ない。
私は、さっき泣いた。気付かずうちに声も出さずに。社員旅行からうすうす思っていた。良くも悪くも彼とのこの関係はいつかは終わる。それがいつかは分からないけど本当に終わりが近いような気がしていた。社内でもたまに彼に関しての会話が聞こえることがある。
カッコいいよね
謙虚な所が素敵よね
そんな言葉に私は、すこし焦りも感じる。
鈍感。ちょっとくらい私も彼にそう思ったこともある。でも、もし私が逆の立場、つまり音村君が私の事が好きだとしたら、私自身多分彼の気持ちに気付くことができないだろう。
もしかしてーーと妄想で止まる。そんなわけ無いかーーで終わる。
私の場合なんか、私も音村君が好きなんだから余計にそのように思うだろう。だって普通は思わないし無駄な期待もしないだろう。自分の好きな人がまさか自分のことが好きだなんて。
言わなきゃ伝わらないなんて当たり前だ。
言葉にしなきゃ、彼に届けなきゃ、私の想いを直接伝えなきゃダメなんだ。
「……腹痛じゃないんだろ。悩み事か?」
でも、それは今日じゃ無い。今を終わらせる時はもう自分で決めている。
「え……なんで?」
「なんとなく?一応一年近く見てるからな涼風のこと」
「ふぇ!?」
「いやっ!変な意味じゃなくてさ……涼風言っただろ。覚えてるか?会社の屋上で飯食ったときのこと」
『じゃあ見ててよ!叶えてみせるから!』
「……」
「俺、結構尊敬してるんだよ涼風のこと。涼風のおかげで俺ちょっと変わってきてるって自分でも分かるんだ。人生なんて自分の気持ちで案外ガラって変わる」
「私は、叶えるよ。もうちょっとだけ待っててね」
「まあ、急かしたつもりは無いんだけどな。涼風みてると俺もやる気でてくるってそれだけだ。だから、なんか悩んでるんなら俺でよければ相談のるぞ?」
「いや、もうその悩みは解決しちゃったかな」
「なんだよそれ」
私達はクスリと笑って前をむくと初日の出が顔を出し私達を力強く照らした。まるで私を応援してくれてるみたい。ってそれは自意識過剰かな。
*おまけ
「え!?あの人があおっちの想い人…!?」
「そうだよ!ほたるんったら変な質問しちゃうからあおっち泣いちゃったじゃん」
「な、泣いてないし!?」
「え!?嘘、泣いてたの!?ご、ごめん!」
「だーかーらー!泣いてないもん!」
「でも、アレは見えるよねカップルに」
「「みえる」」
「それに、クールな感じの人だったよね!そっかあ……あおっちはああいう人が好きなんだ」
「もう、ほたるん茶化さないでよ」
「また来年もみんなで見れるかなぁ初日の出」
「あおっちと音村さんが結ばれちゃったらあいてしてもらえなくなっちゃうかも……」
「そ、そんなぁ!?」
「そんなことないよ!?」
終わり方ときの着地点をどこにしようかなやんでおります