ミュージック   作:かなりかならま

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「……片思いです」

私、涼風青葉はいつも通りに家を出て、出社してキャラ班ブースの自分のデスクに腰を下ろします。ですが、なにやらキャラ班の人達の雰囲気がいつもと違うのです。しかもなにかこう、皆さんが私を一点に見つめてくるではありませんか。

 

「なななんですか!?」

 

私は驚いてしまい、ついそう叫んでしまいました。

 

「青葉ってさ、歓迎会の時彼氏いないって言ってたよな?」

 

いきなりそう私に疑問を投げかけたのは、八神さんでした。

 

「は、はい…確かに言いましたけど。なんですかいきなり!?い、今もいませんよ!?」

 

私がそう答えると途端に八神さんははじめさんと顔を合わせてなにやらニヤニヤとしています。

 

「まぁまぁ、恥ずかしがるなって青葉!もうネタはあがってるんだよ!」

 

「ね、ネタですか…?」

 

「はじめ!」

 

「はい!私、篠田はじめ。先月の夕方某イタリアンレストラン近くのおもちゃ屋さんへと足を運んだ際、男を連れた青葉ちゃんを目撃してしまいました!」

 

「おおっと…?これは?どうなんだ青葉!」

 

なぜか1ヶ月前の出来事を掘り返してきたはじめ先輩。おそらく音村君と食事に行った時を目撃されたに違いありません。なんか私、ピンチです。もはやこれは新人いじめの域……こう言う時はなんて言えばいいのでしょうか。なにか良い言い訳はないだろうかと私は考えました。

 

(い、いやまてよ私。別に正直に言えばいいのではないでしょうか?別に、別に音村君とは今ただの同期生。そう!ただの同期生!)「あはは、みられちゃっていましたか!実はこの前同期の音村君と食事に!べ、別に音村君とは皆さんが期待しているような関係ではないですよ?」

 

笑顔で私はそう言いきりました。しかし

 

「え!?やっぱりあの時青葉ちゃんと一緒にいたのって音村君だったの!?」

 

(ん?あれ?)

 

「音村君ってこの前の東京ゲーム展で一緒にいた同期の子やんな?」

 

もしかすると、いや、もしかしなくても私は自爆をしてしまったみたいです。先ほどまであまり食いついてこなかったゆんさんまで口を開いてしまいました。しかし、私は諦めません。

 

「そ、そうですよ!ゆんさんのいうとおり彼とはただの同期で!」

 

「青葉ちゃん的にはどうなんや?青葉ちゃんにとって彼は本当にただの同期なんか〜?」

 

「そ、それはもちろん!」

 

「ふーん?ひふみ先輩はどう思います?」

 

ゆんさんは私の目を数秒間見つめ、話をひふみ先輩へと振る。そしてひふみ先輩はくるりとこちらを振り向きました。先ほどまではパソコンと向き合っていたひふみ先輩でしたが、話はしっかり聞いていたようです。

 

「……ダウト」

 

(ひふみ先輩!?)

 

ひふみ先輩は若干私から視線をそらしそう言い放ちました。そして私は心の中でそう叫び同時に悟ったのです。もう、私は詰んでいると。

 

「……片想いです」

 

私は軽く俯き、小さい声で呟くように言った。

 

「ん?青葉、なんだって?」

 

八神さんは私の発言がおそらく聞こえているにも関わらず聞こえないふりをしながら耳を傾けています。

 

「かか彼が……好きです」

 

いざ言葉にするとすごく耳が熱いです。なんだかんだでこの気持ちを言葉に出したのは私にとって初めてでした。

 

音村君とは会社で初めて出会い、出会い方も特別ではなく彼と話すようになったのは少しばかりゲームの話で盛り上がってからというもので、キッカケも普通でした。でも話していく中で彼の優しく相手を気遣う一面が見られたりして、何よりうまく言葉に言い表せないのですが彼といるのが心地よく感じられました。もともと恋愛経験は少ない私ですが、私もバカではありません。この気持ちの名前はすぐにわかりました。

 

ーー恋です。

 

「おぉ…‼︎」

 

「認めよったな。」

 

「あ、青葉ちゃんに好きな人……‼︎」

 

はじめさん、ゆんさん、ひふみ先輩の3人はついにカミングアウトした私に謎の拍手を送っています。

 

「へぇ。ちなみに〜なんで好きになったの?」

 

段々と調子に乗ってきた八神さんは、私にさらに質問を畳み掛けてきます。

 

「……よくわからないんです。」

 

しかし、私はこの質問に対して困ってしまいます。本当に気付いたら好きになっていた。という表現があっていると思う。段々と彼のことを知りたくなっていって頭から離れなくなっていった。

 

しかし、私の気持ちは理由を聞かれて答えられない程度なのでしょうか。少しばかりこの好きが本物なのかが不安になってしまいます。そもそも、まず”好き”ってなんでしょうか。

 

「あ。そ、そうなの?」

 

「すいません。」

 

 

 

 

出来事は突然、給湯室にて起こりました。私が少し休憩しようとコーヒーを淹れに来た時のことでした。偶然にも音村君と出会ってしまったのです。

 

「あっ。涼風も休憩?」

 

「うん。音村君も?」

 

「おう。一応午前中やることひと段落ついてな。そうだ。よかったら、食堂で少しばかりゆっくりしてかないか?」

 

グラフィックは他の仕事よりも少し早めに終わることもあり午前のノルマは私も達成していたので私はその誘いに乗ることにしました。

 

「ふぅ……」

 

「……」

 

食堂へと辿り着き少しばかり沈黙が続きます。しかし、あまり気まずくはありませんでした。やはり、彼の横は居心地がいい。だって沈黙が続くにも関わらず一緒にいて心が安らぐ人間ってあまり居ないと思うのです。その時間は色でいうなら黄色やオレンジで暖かい色。しかし、その沈黙を破ったのは私でした。

 

「音村君!」

 

「ん?どした?」

 

「ちょっと、今から少し変なこと聞いていい?」

 

「お、おう。なんだよ?」

 

「”好き”ってなんだと思う?」

 

「ブホッ。ゲホッ!ゲホ!」

 

音村君はどういうわけかいきなりコーヒーで少しむせてしまいます。

 

「だ、大丈夫!?」

 

「ゲホッ……悪りぃちょっとむせちゃって。大丈夫。」

 

「よかった。」

 

「難しいよな。”好き”って。なんだよ涼風、そういう人が今いるのか?」

 

「え!?い、いや……うん。」

 

「……そうだったのか。」

 

なにやら彼は眉をしかめて手を顎に当てながらトントンと指でリズムを取っている。

 

「でも、好きになった特別な理由とかなくってさ、何故好きなのって聞かれたらしっかりと答えられないと言いますか……果たしてこれは本当に”好き”にはいるのかなって。」

 

すると音村君は深呼吸して私の目を見る。

 

「涼風ってさ、何で絵が好きか他の”面白い”や”楽しい”とかの感情論を使わずに説明できるか?」

 

「え…」

(何で絵が好きかと言われれば、絵を描くのは”楽しい”し絵はひと”感動”を与えられるし上手く描ければ”気持ちいい”からであるからで。あ、あれ?)

 

私は急には思いつかずにだんまりとしてしまい、音村君の方を見つめる。

 

「急には難しいだろ。俺の持論だけど感情を感情で説明することがナンセンスなんじゃないかなって。もちろんしっかり理由を述べられる人は居るけど、感じることなんて人それぞれじゃん?その人が感じた感情はその人だけのものなんだから説明しても完璧な理解をされることなんてのはないんだと思う。」

 

私はしっかりと理解しているかはわからないが結構し作りくる彼の話に釘付けになってしまいます。

 

「つまり、俺が言いたいのは理由がないからって涼風の気持ちが嘘みたいに自分でいうのは違うと思うってこと。」

 

「……」

 

「感情に理由なんて要らないだろ。」

 

感情に理由なんて要らない。あえて理由をつけるとしら私が”好き”だと感じたから好き。彼が言ったのはそういうことだと思います。私はコーヒーを静かにすする。

 

「ありがと。なんか自信持てたかも。」

 

「……おう。」

 

私にあと少し勇気があれば彼に私の気持ちが伝わるのでしょうか。幸いなのか、この気持ちを伝えるのは”好き”のたった二文字でたりてしまう。

 

なんだろう。今、いけるだろうか?

 

「音村君。」

 

「え…」

 

辺りの黄色い色が突如赤色へと変わる。暖かくは無くて熱い色です。心臓の音が相手に聞こえているのでは無いかと錯覚を起こすほど大きい音を立てているように身体中に響き渡る。まるで間近で太鼓を聞いているようにも感じられました。

 

「あおっちー。」

 

彼は何かを察したのか、私の下の名前を呼び……では無い。聞き慣れたかん高い声に反応して私はさきほどまで緊張のあまり自分の膝に向けていた視線を正面に移する。案の定その声の主は幼馴染である桜ねねことねねっちでした。

 

「ね…ねねっち!?どうしたの?」

 

「いや〜。うみこさんにちょっとしかられちゃってさ……少し頭を冷やしに。それよりあおっち!さっきはじめさんがあおっちのこと探してたよ?」

 

「え、本当?なんだろう……休憩するっていってあるのに。でもありがとうねねっち。今戻るよ。」

 

「それはそうとあおっちこの人は?」

 

「あっ。紹介するね。彼は私と同期で音響班の音村楽くん。」

 

「あっ。この人が……どうもです。桜ねねです。あおっちの友達で今はデバックのアルバイトに来てます。」

 

「ど、どうも。」

 

「ん?この人が?」

 

私はねねっちをジッと見つめながら、どういうことだとめでうったえかけました。

 

「げげっ。なんでもありません。」

 

「……まぁいいや。じゃあ私はそろそろ戻るね。音村君バイバイ。」

 

「おう。じゃあな。」

 

その日の夜私がベットの中でなんでいきなり食堂で告ろうと思ってしまったのかと、恥ずかしくて悶えていたのはまた別の話です。ねねっちにはある意味感謝しています。

 

 

 

*おまけ

 

 

 

「はじめさん!はじめさん!」

 

「あ、ねねちゃん!今日もお疲れ!アルバイトもあともう直ぐで終わりだね。」

 

「そうなんですよー。少し寂しいですけど最後まで頑張ります。あれ?あおっちは?一緒に帰ろうと思ったんですけど……」

 

「あぁ、多分お手洗いじゃないかな。」

 

「そう言えばはじめさん今日休憩時間あおっちったら音村さんと食堂で一緒にいましたよ!」

 

「え!ほんと!?いやー、青葉ちゃん結構やるねぇ!」

 

「はじめさーん?」

 

「うわっ!?あ、青葉ちゃん。」

 

「やっぱり、ねねっちに音村君のこといいふらしてたんですね?」

 

「い、いや。これはゆんとそのこと喋っていたらたまたま聞かれちゃって。」

 

「ハァ…」

 

「プププ。まぁまぁいいじゃんあおっち!私は応援してるよ!」

 

「……ねねっちだけには知られたくなかった。」

 

「ちょっ!あおっちひどくない!?」

 

「これからねねっちにまで弄られるとか私もういきていけないよ……」

 

「……あおっち、私も怒る時は怒るんだよ?」

 

 

 

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