俺は生まれた時から1つの能力を持っていた。
『千里眼』
俺の目は世界中の色々な物を見通すことができる。
でも、全てを知ることができるわけではない。
過去と未来は、現在から予測することしかできない。
それでも平穏に生きる俺には予測できるだけで十分で。
俺はそんな見飽きた世界を今日も何となく生きていた。
***
それは俺が小学校六年生になった十一才の夏。
些細な一日の出来事である。
休み時間、俺はただ外を眺めていた。
その日は一年の中で一番の猛暑日だった。
過去に急激な寒冷化があったとは言っても暑い日は暑いわけで。
暑がりな俺はその時、学校に来なければよかったと思っていた。
「珍しいですね、月山さんが外を眺めているなんて」
そう話しかけてきたのは俺の隣の席に座っている司波妹だった。
彼女とは妙な縁があって、何故か小学校に入学した時から席がずっと隣だった。
そのことを過去にクラスメイトから茶化されたこともあったのだが。
からかわれた瞬間、教室の気温が急激に下がったことがあったのでこのことに関しては禁句になっている。
話を戻そう。
俺だって外を眺めることぐらいある。
むしろすでに知っている授業内容を聞き流すときはほとんど外を眺めている。
だというのに何故そんなことを珍しがられるのかと、俺は隣に座る司波妹に無言で問いた。
「月山さん、いつも休み時間は読書をしているじゃないですか。だから少し珍しいなと思って」
ああ、そういえばそうだ。
確かにいつもなら、この時間は暇つぶしに読み古した本を読んでいる。
しかし今日は読書をしたい気分にはなれなかった。
「たとえ空調の管理された教室の中でも、こう日差しが強いと色々と気が滅入る」
俺はそう答えて、また外を眺めた。
そして俺は、隣に座る司波妹が母親と姉と思われる人物達と共に銃で撃たれて倒れる風景を思い出す。
それは彼女と初めて会った時に見た未来予知だった。
俺は未来を予測することができる。
それは今から何かがあってだからどうなるというような順々に予測していく。
それが未来予測。
そして予測とは別に、偶に見える未来。
いつ起こるか分からない、それでもいつか必ず俺の目の前で起こる未来。
それが未来予知。
予知の前後を知ることはできない。
何故そんな未来が見えるのかは分からない
ただ、撃たれて倒れる、それしか見えない。
それでももう直ぐその光景を目にするのだろうという事だけは判る。
何故なら予知した未来と初めて出会った時より成長している今の彼女の姿はほとんど同じ姿なのだから。