魔法科高校の変人(仮)   作:クロイナニカ

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みじかめです。
おりきゃらついかです。


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 さて、日付は変わらず、時刻は昼。

 

「目を離すといつの間にかいなくなるのは今に始まったことではありませんが。

 会話中にいなくなるのはやめてくださいと以前も言ったじゃありませんか!」

 

 と、司波深雪に半年ほど前と同じことで叱られた後に見学した午前の授業は特に面白みもなく。

 見学を終えて、昼食の為にたどり着いた食堂は酷く混雑していた。

 

 人混みがあまり好きではない俺は、深雪と別れて購買に向かった。

 

 購買でメロンパンを買い、食事できそうな場所を探していると、俺は廊下の角で一人の少女と出会った。

 

 学園物の恋愛物語の如くぶつかってはいない。

 

 ただ、最終的な状況はそれに近いものになった。

 というのも、ぶつかりかけた少女は俺を見ると、腰を抜かして座り込んでしまったからだった。

 

 泣きそうな顔の少女は、恐怖で言葉が出ないのか、「あ……、き……」とだけ鳴き、今にも気絶しそうだった。

 関わりたくないが、声をかけるべきだろうか。

 

「……大丈夫か?」

「!」

 

 声をかけられた少女は、座った状態から向きを変えて。

 クラウチングスタートで脱兎のごとく逃げ出していった。

 

 ……俺が悪いのか?

 

 

***

 

 

 午後の専門課程見学は、俺は深雪とは別の授業の見学に行った。

 

 同じ授業を見に行かないかと俺は深雪に誘われた。

 しかし、深雪と会話をしたいクラスメイトによって、俺は教室の隅に追われるという未来が見えたので。

 そんな状況じゃ見学もできないだろうと想像し、俺は別の授業を見学することにした。

 

 俺が向かった場所は遠隔魔法用実習室だった。

 別にここで行われる授業に興味があった訳ではない。

 登校前、自宅の廊下に何故か落ちていた十一面ダイスを転がしてここに決めたのだ。

 

 早めに来たおかげで最前列にいたのだが、そこには見知った顔があった。

 司波兄妹の兄、司波達也だった。

 達也は、眼鏡の少女と赤髪の女子生徒、それから見覚えのない男子生徒の四人で来ていた。

 少女達の名前は思い出せない。

 ただ、司波兄妹の苗字の音が似ているということだけは覚えていた。

 

「やっほー、こんにちは、月山君」

 

 最初に話しかけてきたのは、赤髪の少女だった。

 それに続き眼鏡の少女も俺に挨拶をして。

 達也は声には出さなかったが、右手を上げて挨拶をした。

 

 まぁ、普通こんなもんでもいいよな。

 達也の挨拶に倣って、俺は手を振って挨拶を返した。

 

「達也、こいつは?」

 

 見慣れぬ男子生徒は、達也に俺が何者かと問いかける。

 

「あぁ、あいつは月山 読也。

 見ての通り一科生だが、()みたいな奴らのように差別するような奴じゃないよ」

 

『先』というのは、どうやら昼食の時に食堂で達也達と一科生の間で色々あったらしい。

 行かなくてよかった。

 

「ふーん、おっと。

 はじめまして、俺は西城 レオンハルトだ。

 レオって呼んでくれ、よろしくな」

 

 アパートみたいな名前だな。

 

「月山 読也だ、よろしく」

 

 自己紹介が終わると、ちょうど授業が始まった。

 

 実習室というだけあって、授業内容は実技だ。

 その授業で最も注目されたのはこの学校の生徒会長だった。

 魔法についてはまだ未熟な俺でも生徒会長の無駄のない魔法は他の生徒に比べて一つ頭が抜けているように見える。

 周りでは、小さな呟くように生徒会長の褒め称える声が聞こえた。

 

「流石に十師族、七草の人間は違うな」

「……十師族?」

「知らないのか?」

 

 偶々聞こえた言葉を復唱すると、達也が俺に問いかける。

 あまり知っているわけではないが、無知だと馬鹿にされるのも何なので、俺は自分のわかる範囲を答えた。

 

「いや、名前に三が入ってるから二十八家の人かとは思っていたぞ」

「三……? お前、七草会長の苗字を漢数字の三に枝で三枝だと思ってないか?」

 

 墓穴を掘ったらしい。

 

七草(さえぐさ)生徒会長の『さえぐさ』は漢数字の七に草花の草で『さえぐさ』と読むんだ」

 

 へぇー、しらなかった。

 というかそれで『さえぐさ』と読めるのだろうか?

 

「ひょっとして、あの『さえぐさ』から来てるのか?」

「あの『さえぐさ』ですか?」

 

 聞き耳を立てていたらしい眼鏡の少女が俺に問いかけた。

 俺は先の間違いを隠すように答える。

 

「春の七草ってわかるか? 七草粥にいれる植物なんだが。

 御形、繁縷、仏の座、芹、薺、菘、蘿蔔の事だ。

 七つあるから七草なんだが、七種類あるから春の七種って言い方もするらしい。

 で、この七種、漢数字の七に種類の種で七種を別の読み方で『さえぐさ』と読むそうだ。

 だから、七草(ななくさ)で『さえぐさ』と読むのはそこから来たのかと思ってな」

 

 問いかけていた少女と、同じく聞き耳を立てていた達也を除いた二人の男女も何か納得したような表情をした。

 では、達也はどんな顔をしていたかというと、それは疑問を持つ顔だった。

 

 達也は俺に問いかける。

 

「ツクヨミ、ちょっと今の十師族の家名を全部言ってみろ」

 

 俺はその謎の問いに、うろ覚えながらも答えた。

 

「えーっと、一条、ふたつぎ、三矢、四谷……、さえぐさ、つくも、じゅうもじ?」

「お前の記憶力はすごいな……」

 

 足りない気がするが合っていたようだ。

 




今更ながら、前書きが全部平仮名なのは気分です。
特に意味はありません。

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