魔法科高校の変人(仮)   作:クロイナニカ

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おはようございます。
おやすみなさい。


27 歪んだ記憶

 それは、僕が小学校二年生の頃の話だ。

 

 母親とショッピングモールを歩いているとき、とある大道芸を見た。

 

 人形劇である。

 

 あまり大々的なものではなく。

 大学生が、サークルでやっていたものらしい。

 演目は『白雪姫』。

 大学生の四人はそれぞれマリオネットを操り、多いときは八体の人形を操っていた。

 

 四人で八体、つまり片手で一つずつ。

 その場面の人形は、向きを調整する以上の操作が必要ではなかったらしく、殆ど吊るされているだけだった。

 糸で繋がれた人形を見て、僕は少し気持ち悪いと思った。

 

 僕が人形に興味を持ったのは、多分それが最初だ。

 

 

***

 

 

 それは、僕が小学校四年生の頃の話だ。

 

 月の綺麗な夜だった。

 

 運命を感じたのか、僕の魔法を扱える故の感覚がそれを捉えたのかは分からない。

 その日、僕は一人、星を見に公園へと出かけた。

 

 公園までの道を通るのは、初めてではない。

 そのはずなのにその道中、僕は奇妙な家を見つけた。

 と言っても、扉が開いていただけなのだが。

 

 しかしその扉は、まるで僕を迎え入れているかのように開いていたので。

 好奇心に駆られた僕は、思わずその扉を潜ってしまった。

 

 

 おかしな……いや、在ってはならないのかもしれない話なのだが。

 

 僕はその光景を見惚れてしまった。

 

 

 扉を潜り抜けたその先の部屋の中には。

 

 幾つかの死体があった。

 

 鳥ではなく、猫ではなく、人間の死体だ。

 

 昔、何故か見てしまったスプラッター映画の死体は、見ていて気分が悪くなった。

 

 でも……。

 その死体は美しかった。

 

 人の形を大きく崩さず、一閃にて斬られ、断たれた死体。

 赤いはずの血液と、生気を失った青白い肌が、月明かりに照らされて輝いて見えた。

 

 幻想的だった。

 

 だから、僕はただ。

 

 唯々、美しいと感じていた。

 

 

***

 

 

 ある日、僕は父親に連れていかれ、とあるアンティークショップに来ていた。

 父は、自分のコレクションを飾る棚を探しに来たらしい。

 

 過去話でおかしな表現だが今の時代、ほしいサイズや大体のデザインを要望すれば、ネットで簡単に発注できる。

 しかし、僕の父は職人が既に作ったものを、自分の目で直接見て、これだと思うものを選んで決めたかったらしい。

 僕が一緒に行ったのは、まぁちょっとした社会勉強みたいなものだった。

 父は自分の目的の棚を探していたが、僕はそれを含めて、様々な家具を見ることにした。

 

 椅子を、机を、時計を。

 

 もし自分の部屋に置くとしたら、どれがいいかと想像しながら、実のところ本心としては何となく眺めていた。

 

 そして店の奥へと歩いていくと、僕はガラスケースの中に居る一人の少女を見つけた。

 

 その少女は、細かな装飾をされた見事なドレスを纏い、椅子に座って静かに眠っていた。

 もちろんガラスケースの中に、人間が入っているわけがない。

 少女の正体は、ビスク・ドールだった。

 

 その少女を見たとき、不思議な感覚に囚われた。

 パズルのピースが嵌ったような。

 ガラス玉の濁りが取れて、透き通るような。

 何十キロも走った後に飲む水のような。

 どうとでも言い表せて、でも一つの事を指しているその感覚は、今となっても上手くは言えない。

 

 とにかく僕は、その人形を傍に置きたいと思った。

 ずっと、ずっと、見ていたいと思った。

 

 でも、それは出来なかった。

 その人形のお値段、なんと二四〇万円。

 親におねだりして買ってもらえるような代物ではなかった。

 

 それでも代わりの人形ではダメな気がした。

 ぬいぐるみでは、小さなフィギュアではダメな気がした。

 この人形でないと、ダメな気がした。

 

 僕はどうしようもない気持ちでいると、その姿を見た父親にこう言われた。

 

 自分で作って見たらどうか、と。 

 

 父が何故そう言ったのかは分からない。

 でも、その言葉は僕にとっては天啓だった。

 

 

***

 

 

 小学校六年の頃だった。

 

 その感情は、多分不思議な事ではないのだ。

 だって、そうあってほしいと思って作ったのだから。

 

 でも、その感情は、人として、きっとおかしな事なのだ。

 

 ある日、僕こと時村(ときむら) 一重(ひとえ)は、自分の作った人形に恋をした。

 

 

 

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