魔法科高校の変人(仮)   作:クロイナニカ

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 とある日の下校時。

 その日は部活が無く、最近よく飲んでいる飲料を購買で買った帰りの事だ。

 

 文芸部の活動は毎日行う訳ではない。

 

 週に三日ぐらいで、それ以外の日と用事などで参加できない部員が過半数を超える場合は休みという事になっている。

 部室を使用するための解除キーは部員全員が所持しており、休日でも使いたければ使っていいという事になった。

 それを聞いた時村がとても喜んでいたので、もしかしたら次に部室に入ったときにはよく解らない機械や人形の部品が転がっているかもしれない。 

 

 さて、特に決まったという訳ではないが、俺は部活がある日は出来るだけ一緒に帰れないかと司波兄妹に誘われていた。

 

 しかし、俺はあまり人と歩幅を合わせるのが得意ではなく。

 何時だったかの下校時も、帰りに偶々通りがかったケーキ屋に立ち寄っていたら両隣りにいた二人がいなくなっていたことがあり。

 その時は、「まぁ後であいつらの家に行くから問題ないな」なんてことを考えて放置をしたら、司波兄妹の自宅で説教されることになった。

 

 そんな訳で、俺は「一緒に帰れないか?」というその誘いを「気が向いたらな」と、遠回しに断った訳なのだが……。

 

「あら、ツクヨミさんは今お帰りですか?」

 

 俺はそう話しかけてくる深雪に、昇降口にて遭遇してしまったのである。

 

 はて、今日は生徒会で仕事があると何処かで聞いた記憶があるのだが、何故彼女はここにいるのだろうか?

 そのことをそのまま聞こうとしたが、少し考えれば分かる事だったので、俺は一瞬躊躇してしまう。

 

 聞く必要が無い事を聞くなんて、するだけ無駄な行為だ。

 昔はそう思っていた。

 

 しかし、今は違う。

 

 たとえわかりきったことでも、それを聞くことによって会話が円滑に進むのだと俺は知っている。

 知識をただ蓄えるだけのことを成長というのかは知らないが、これはきっといい機会なのだ。

 

 見せてやる、俺の成長を。

 

「お前はサボりか?」

「違います」

 

 違った。

 

 

***

 

 

 深雪の説明は要約すると、生徒会の中条先輩という人物が何らかの発注ミスをしてしまい、その穴埋めの為に買い出しに行く途中なのだそうだ。

 生徒会の活動が具体的にどういったものなのかは知らないが、発注作業がある事には何となく疑問に思ってしまう。

 まぁ、魔法科高校の生徒会は普通の学校よりも仕事が多そうなので、普通とは違う業務があるのかもしれない。

 きっと中には、それは生徒会の仕事ではないだろうと言えるような仕事もあるのだろう。

 

 そんな訳で、俺は何故か件の店に着くまで深雪と一緒に行動することになった。

 隣に誰が居ようと目の前を黒猫が横切ろうとどうでもいいのだが、それでも経緯に他人の思考や情が混ざると何故そうなってしまうのかと、俺はどうしても疑問に思ってしまう。

 

 まぁ、きっとこれは俺の性分なのだろう。

 

 ちなみに最寄りの駅とは完全に別方向だったので、深雪と別れた後、俺はおそらく空間置換を使って帰ると思われる。

 

 さて、話は変わるが、人通りの多い場所で目立つ人間とはどういう人物だろうか?

 

 例えば、服装や容姿が特異であれば目立つかもしれない。

 

 例えば、集団が似たような行動する中で奇行、もしくは変則的な行動をすれば目立つかもしれない。

 

 では、もしその二つの特徴を持つ人間が居れば、それはいったいどれほど目立つだろうか。

 

 そんな疑問を抱くにももちろん経緯があり、二つの例に該当する人物達が、俺の目の届く範囲にいたからである。

 ちなみに補足するが目が届くというのは『千里眼』の話ではない。

 

 その人物達というのは三人いる。

 

 容姿の何が目立つか?

 その点については該当するのは一人だけで、他二人は実際そうでもないのだろう。

 

 しかし、価値観には人それぞれ差というのがあり、その二人に見覚えがあれば、俺にとってそれなりに目立つ容姿ということになる。

 容姿が目立つ残る一人は、髪の色がルビーのように真赤な髪色で、落ち着いた街並みの中ではかなり異色に見えた。

 

 目立つ行為というのは、その三人が見覚えのある顔つきをした生徒を尾行をしているという行為だ。

 

 尾行が目立ってはきっとダメなのだろう。

 きっと本人達にもそんなつもりはないはずだ。

 彼女達はからしてみれば、尾行は他人に目立たなければいい訳で、対象の視覚に入らなければ、きっと気づかれることはないと思っているのだろう。

 

 しかし、そんな彼女達の隠れながら尾行するという行為は傍から見ればかなり目立つのだ。

 

 今は下校時刻なので、せめて偶々同じ道を下校してると装っていればまだましだったのだと思う。

 しかも、その尾行は対象にバレているらしく、俺には彼女達がフルフェイスのヘルメットをかぶった人物達に取り押さえられる未来が見えていた。

 

 さて、この未来が見えたというのは『未来予測』の話ではなく『未来予知』だったわけで、俺がその現場に遭遇するのはほぼ決まっている。

 その経緯は今は不明だが、それでも想像することは何となく出来た。

 

 容姿が目立つという理由の中には二人が知人だったというものがあるので、これについては俺にしか該当しないように思えるが、その二人の知人であるという人物がもう一人、俺の隣にいる。

 

 いや、彼女からしてみれば知人ではなく友人なのだろう。

 であれば、きっと俺よりも『目立つ人達がいる』と認識するはずだ。

 

「ほのか達ですね? ……どうしたのかしら、こんなところで」

 

 深雪は独り言のようにそうつぶやくと何やら考え始める。

 その思考を邪魔したいわけでもなく、特別疑問に思ったわけではないが、それでも少しだけ気になることがあるので、俺はそれを聞くことにした。

 

「知り合いか?」

「ほのかと雫はクラスメイトじゃないですか……」

 

 俺は真赤な髪の少女について聞いたつもりだったのだが、主語を抜いたのは失敗だったらしい。

 冷やかな視線を送っていた深雪だったが、何かを閃いたのか、少し思案をしてから口を開く。

 

「ツクヨミさん、少々手を貸してはいただけませんか?」

「……『再成』は対象の苦痛も読み取るみたいな事を聞いたがいいのか?」

 

 貸すのは別に構わないが。

 

「いえ、物理的にではなく。

 少しの間でいいので、ほのか達を見守っていただけませんか」

 

 まぁ、何となく彼女の頼み事は判っていた。

 だからこそであり、その先も大体わかっているので、俺はそれを思わずにはいられず、その思いを口からこぼしてしまう。

 

「面倒だな……」

「ツクヨミさん、人という字は人と人が支えあって出来ているという話をご存知ですか?」

「人という字は一人の人間が立っている姿からできているそうだ。よって俺は人ではない」

「人でないことを否定してください。それに支えあう事も自立できない事も人でなしとは言いませんよ」

 

 何と言うかわかるでしょう?

 と、口には出さず微笑む深雪に、俺は答えた。

 

「ろくでなしか? ……否定はしない、地に足がついてないから」

「そういう意味ではありませんね。そもそも高校生であるという時点で地に足がついている方はそういないと思いますよ」

 

 つまり、ろくな高校生がいないと言いたいのだろうか?

 

「まぁ、なんでも構わないか」

「よくはないと思いますが?」

「だけど構わないよ。

 さて、俺は見ているだけでいいのか?」

 

 そう俺は最終確認をしただけなのだが、深雪は少し呆れたように、しかし何処か嬉しそうに答えた。

 

「見て、守っていただけませんか?」

 

 それは何処かで聞いた覚えのある言い回しだった。

 だからだろうか、彼女の頼みを理解することができた。

 

「委細承知」

 

 俺は軽く手を振って歩みを早める。

 そして一歩分先に進んだあたりで、深雪は俺に声をかけた。

 

「私も直ぐに合流しますね」

「はいはい」

「返事は一回でお願いします」

「あいよ」

 

「……真面目にお願いしますよ?」

 

「おーきーどーきー」

 




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