魔法科高校の変人(仮)   作:クロイナニカ

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「……理由を、お聞かせ願えるかしら」

 

 一切考える時間もなく断ったことに対してか、戸惑うように司波兄妹の母親は、俺に理由を問いかけてくる。

 

 何となく、というのが実のところ本音だった。

 彼女の提案を安請け合いしてもいいとも思っていた。

 それは自分ならば、彼女が裏切るなどの不都合が起きても、どうにでもなるという自信があったのかもしれない。

 

 面倒だ、とも思っている。

 社会に出れば、そういった人付き合いが必要になるかもしれない。

 だけど俺は将来の就くことになる仕事で、肉体労働だけは絶対選ばないようにしようと思っている。

 話を聞く限り、彼女のいう『力を貸す』というのは、どう考えても肉体労働だ。

 交渉次第では受けてもいい、肉体労働は断固拒否。

 

 そんなことを正直に言えば、様々な条件を付けたし、俺の融通を聞かせ、最終的には引き込まれてしまうだろう。

 その結果で出来た契約は、きっと俺の今後の生活をよくわからないモノで雁字搦めにしてしまう。

 

 それは肉体労働よりも面倒くさい。

 

 断ると決めたのだ。

 司波兄妹の母親が、今後このような交渉を言い出せないような理由を語ろう。

 

「俺はこれでも、自分のことは比較的常識人だと思っています」

「え?」

「自分で産んだ息子を魔改造して、その上で不良品扱いするような方と。

 後押ししたのか黙認したのかは知りませんが、そういった行為を許している現当主とやらがいるようなところに、俺は関わりたくありませんよ」

 

 司波兄妹の母親と司波妹は、俺の答えに驚いたのか目を大きく開いた。

 司波妹の驚くタイミングが微妙にずれていた気がするが、そんなことは些細な事柄だ。

 司波兄妹の母親は俺に問いかける。

 

「何故、貴方がそのことを……!」

「見れば分かります」

 

 どうせ意味が解らないだろうが、詳しく教えるつもりはない。

 

「お母様、お兄様を改造したとはどういうことですか?」

 

 俺が知らないうちに終わっていると思っていた話し合いは、まだ終わっていなかったらしい。

 どう考えても、司波兄妹の母親の会話の優先順位がおかしいと思う。

 頭が悪いのだろうか。

 

 

***

 

 

 それから司波親子は、司波兄についての会話を始めた。

 

 司波兄について興味が無い俺は、いつの間にか前面のモニターに表示された現在行われている戦闘を眺める。

 コンソールの操作方法、見逃しちゃったな。

 

 戦闘が繰り広げられている中、一人だけ目立つ奴がいた。

 服装は統一されているが、そいつの体格は他の兵士に比べて妙に小さく感じた。

 

 たぶん司波兄だ。

 

 右手に持つ拳銃を敵に向ける。

 拳銃からは弾が出ず、代わりに銃を向けられた敵に魔法が発動する。

 その魔法によって敵は姿を消した。

 シェルターの壁を消したのは司波兄だ。

 彼はたぶん、対象を消失させる、もしくは分解させることができるのだろう。

 

 左手の拳銃を味方であるはずの倒れた兵士に向ける。

 倒れた兵士は、消滅することはなく再び起き上がる。

 俺と司波妹を治した魔法だ。

 過去を改変するか、起きた出来事をなかったことにする魔法だと思う。

 

 血は流れるが無かったことになり、ポンポン消えていく敵兵を見ると、モニター越しという事もあってかゲーム画面の様だった。

 まぁ、俺はあまりゲームをやらないが。

 

「月山さんは……」

 

 いつの間にか親子の会話を終えていた司波妹は、俺の隣に立ち話しかけてくる。

 その声は、何かに怯えてるように聞こえたが、何故そうなっているのかは、俺には理解できなかった。

 

 視線だけを司波妹に向けると、彼女は、モニターではなく床を見ていた。

 

「月山さんは、その、私の……。

 いえ、私達の事を、その……嫌悪しましたか」

「いや、別に」

 

 俯いていた司波妹は顔を上げて、俺の顔を見つめる。

 

「他人の家の事情なんて、知ったことじゃないよ。

 どうでもいい」

 

 例え司波妹の実家が人体実験と称して人を弄ぶマッドサイエンティストだとしても。

 自分の子供を使って人と獣のキメラを作っていたとしても。

 国家転覆を狙っていたとしても。

 俺の命を狙う暗殺者だとしても。

  

 きっと俺は、些細なことだと気にしないだろう。

 司波妹は、隣の席に座るクラスメイト。

 それ以上の認識を、俺が今後することはないだろう。

 

 何かに納得した司波妹は、モニターを見つめながら何かを確認するように、色々と問いかけてくる。

 俺は何も考えず、特に理由もなく、特に意味もなく。

 ただ律儀に答えを返した。

 

「月山さんは、どうして私たちの事を助けてくれたのですか?」

「特に意味はないよ」

「私達の家の事を知った後でも、助けてくれましたか?」

「さぁ、助けようとはするんじゃないか?

 物事は、なるようにしかならない。

 意味もなく助けようとしたんだ、お前らが蛇でも助けただろ」

「蛇ですか?」

「知らないのか、手足のない紐みたいな生き物で、干支の()(たつ)()の辰の事だ」

「それは竜ですね、蛇は巳です」

「知ってて聞いたのか? 相も変わらず無意味なことをする」

「あなたに言われたくありません。それに、別に蛇が何なのか聞きたかったわけではありません」

 

 その答えを最後に、安心したかのようなため息を吐いて、司波妹は目先の心配をし始める。

 自分の兄が、自分の為に命がけで戦場を駆けているのだ。

 心配し罪悪感を抱くのが普通だ。

 

 きっと彼女は異常な家で生まれた普通の人間なのだろう。

 




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