ドラクエVIIIよ、永遠なれ   作:ふーてんもどき

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キャラ崩壊きつめです。


錬金バカ一代

 ある日、錬金釜の軽快な音が鳴ったすぐあとに、大気を震わす雄叫びがトロデーン城に響き渡った。

 

~トロデーン城、エイトの自室~

 

エイト「ぎゃああああああああああ!」

 

たまたま遊びに来ていたヤンガス「な、なにごとでがす、兄貴!」

 

エイト「や、ヤンガスぅ……もう駄目だあ。おしまいだあ」

 

ヤンガス「お、落ち着いてくだせえ」

 

エイト「これが落ち着いていられるかっ!」

 

ヤンガス「一体なにがあったんでがす。さっきまでノリノリで錬金してたじゃないでがすか」

 

エイト「錬金……」

 

エイト「錬金っ! 錬金れんきん! ああー、あああー、レンキン!」

 

ヤンガス「ひでえ壊れっぷりでがすなあ」

 

ヤンガス(こりゃ錬金で何かしら失敗したに違いねえや)

 

ヤンガス「話してくださいよ兄貴。このヤンガスにどーんと任せるでがす」

 

エイト「ううう、ヤンガスじゃ無理だよお」

 

ヤンガス「ひどい」

 

エイト「実はさあ……」

 

ヤンガス(結局話すのか)

 

エイト「メタルウィング作ったんだよ」

 

ヤンガス「ウィングって、ああ、ブーメランでがすね。作ったってことは成功したんでしょ。良かったじゃないでがすか」

 

エイト「何も良くない!」

 

エイト「ヤンガス、僕のブーメランスキルは幾つだ。言ってみろ」

 

ヤンガス「ええー、そんなホクロの数みたいな質問はちょっと生々しくて嫌でがすねぇ」

 

エイト「いいから」

 

ヤンガス「うーん。確か、あっしは一度も兄貴がブーメランスキルを育ててる所は見たこと無いでがす」

 

エイト「そう、その通り、全くのゼロさ。さらにブーメランを使ったこともほとんど無い」

 

 

 

 

 

エイト「……ブーメランてさ、戻ってこないでしょ、普通。敵に当てるんだからさ」

 

 

 

 

 

ヤンガス「ええ……今さら……」

 

エイト「今だからこそだよ。完全にブーメランの役立たずっぷりを忘れてた。もはや武器じゃないよね、あれ」

 

ヤンガス「それを言っちゃおしまいでがす。そういや旅の最初のころにトラペッタで買ってやしたね。すぐに使わなくなったけど」

 

エイト「買った最初はそりゃ嬉しかったよ。攻撃力高かったし、ドラキーを粉砕したときはすごい気持ちよかった」

 

ヤンガス「それで調子に乗ってザバンに投げたら、当たったあと滝壺に落ちていったんだったでげすな」

 

エイト「あれはトラウマだよ。ザバンさん何故か気に入ったみたいで返してくれなかったし」

 

ヤンガス「水晶玉のより大きな傷付けられたのに不思議でがすな」

 

エイト「不思議だねえ」

 

ヤンガス「まあ、ブーメランなんかで魔王だの暗黒神だの倒しに行くなんて変な話でがすし、早いとこブーメランスキルに見切りがつけられて良かったでげすよ」

 

エイト「そう、そうだね。でもさあ……こいつがさあ!」

 

 エイトは メタルウィングを そうびした!

 

 エイトの こうげき!

 

 部屋の壁がくだけ散った!

 

ヤンガス「な、何やってるんでがす、兄貴!」

 

エイト「ああもう、使えない! 戻ってこない! こんなもののために僕はメタルキングの槍を失ってしまったんだ!」

 

ヤンガス「竜神族の里に行く道すがらに拾った槍でしたっけ」

 

エイト「僕の唯一無二の相()だった……槍だけに」

 

ヤンガス「つまんないでがす」

 

エイト「それがどうだよ。こんな姿になり果てて、錬金して戻すことは出来ないっていうんだよ。こんな残酷なことがあっていいのか!」

 

ヤンガス「あちゃー。()()そのパターンでげすか。懲りないでがすねえ」

 

ヤンガス「あっしの覇王のオノもメガトンハンマーにしちゃったし」

 

エイト「ぐっ」

 

ヤンガス「ゼシカが持ってた皮のムチを売っちまったせいで蛇皮のムチを作れなかったし」

 

エイト「うぐぅ」

 

ヤンガス「二つしかなかった金塊を金のオノに変えて落ち込んで」

 

エイト「ぎぎぎ」

 

ヤンガス「そのあと「大活用☆」とか言ってキングアックスを作ってスライムの冠まで無駄にした挙げ句、後になってキングアックスは普通に買えることが判明したんでがした」

 

エイト「ぬわーーーーー!!」

 

 ヤンガスの無自覚な痛恨の一撃!

 

 エイトは しんでしまった!

 

ヤンガス「ほんと普段はカッチョいいのに、錬金のこととなると見境がねえと言うか、かしこさが下がると言うか」

 

エイト「」

 

ヤンガス「あれ、兄貴?」

 

ヤンガス「兄貴がいた場所に棺桶が置いてあるでがす」

 

 

~ドニの町、宿屋~

 

 エイトにザオリクをかけてもらうため、ヤンガスはククールの居場所を訪ねていた。

 

ククール「よく俺がここにいるって分かったな、ヤンガス」

 

ヤンガス「なあに、あっしの盗賊の鼻にかかればチョロいもんでがす」

 

ククール「利きすぎだろ」

 

エイト「……ううっ、ここは?」

 

ククール「おう。起きたか」

 

ヤンガス「おはようごぜえやす兄貴。気分はどうでがすか」

 

エイト「気分……うぷっ、おええ」

 

ククール「おい、俺の下宿部屋なんだから汚すなよ。女将さんに叱られるのは俺なんだぜ」

 

ヤンガス「兄貴がここまで弱るなんて滅多にないことでげす」

 

ククール「いやいや、お前が追い込んだんだろうが」

 

エイト「僕はたしか錬金のショックで死んで……ああ、そうか。ククールが生き返らせてくれたんだね」

 

ククール「ああ。安酒と引き換えにな」

 

ヤンガス「なにぶん、あっしは手持ちがないもんで、教会には行けなかったんでがすよ」

 

ククール「今の俺たちじゃけっこうな値段ふんだくられるからな。しかしエイトは出会ったときから相当だったが、いよいよ錬金狂いが極まってきたな」

 

エイト「今回は物が物だけにね」

 

ククール「ふうん。しかしなんでまた、使いもしないブーメランなんて作ったんだ」

 

エイト「仕方なかったんだよ……まだ試してないレシピがあったら、とりあえず作りたくなるものなんだ。探求者の性ってやつさ」

 

ククール「お前ほど向こう見ずなやつは求道者にもいねえだろうよ」

 

ヤンガス「というか、さりげなく王様から転職しちゃいけませんぜ」

 

エイト「ああ、もう何もかも嫌だ。しばらく一人にしてもらえるかな。今は何もしたくない」

 

ヤンガス「そんなこと言わず元気になってくだせえ」

 

ククール「おいやめとけよ。一人が良いって言うんだから、そうさせときゃいいだろ。面倒くさい」

 

ヤンガス「だからってこんな、パルミドで姫様が誘拐された時と同じかそれ以上に落ち込んでる兄貴は見たくねえでがす」

 

ククール「今のエイト何気に最低だな」

 

ククール「うーん……なあエイトさんよ。本当にメタルキングの槍はもう手に入らないのかい」

 

エイト「うん。メタルウィングに対して錬金釜が全く反応しないんだ。レシピだって世界のどこにも無いし。あれはもう無理だよ」

 

ククール「へえ。でもよ、レシピが無いなら新しく開発すりゃ良くないか。メタルキングの槍だって存在してたってことは誰かが昔に作ったってことだろ」

 

エイト「誰かが、作った……?」

 

ククール「そりゃそうだろ」

 

ヤンガス「んななっ、ク、ククール!」

 

ククール「どうしたヤンガス」

 

エイト「あれをああして……こうして……そのために必要なのは……」ブツブツ

 

 エイトは夢中でなにかを呟いている。

 

ヤンガス「まずいでがすよ! 余計なことしやがって、兄貴の錬金魂に火がついちまったでがす! このまま錬金から離れさせたかったのに、どうしてくれんだ!」

 

ククール「良いじゃねえかよ。元気になってほしかったんだろ」

 

ヤンガス「他人事だと思って……巻き込まれるのはあっしでが──」

 

エイト「閃いた」

 

ヤンガス「」

 

ククール「へえ。そんなに早く新レシピが思い浮かぶもんなのか」

 

エイト「きてるよ。これはキテる。さっそく素材から集めなきゃいけない。スライムの冠、さびた剣、オリハルコン。どれも一個じゃ足りないや。忙しくなるぞお」

 

ヤンガス「あ、兄貴。一つお聞きしやすが」

 

エイト「なんだい」

 

ヤンガス「そんな超希少品を、どうやって手に入れるつもりでがすか」

 

エイト「決まっているじゃないか。ヤンガスの大どろぼうのかま、頼りにしているよ。さあ、ドクロのかぶとを被って攻撃力を減らすんだ」

 

ヤンガス「い、いやだ……もう地獄のアイテム集めは嫌でがす……!」

 

 エイトは ヤンガスに ドクロのかぶとを装備させた!

 

 ヤンガスは のろわれてしまった!

 

エイト「よし、行こうか」

 

ヤンガス「何も良くないでがす! ククール、ぼさっと見てないで助けてくれよ!」

 

ククール「お疲れさん。せいぜい頑張れよ。それじゃあ俺はイカサマで荒稼ぎしてくるから、このへんで」

 

エイト「何言ってるんだいククール。君も来るんだよ。補助が必要だろう」

 

ククール「え、いや、勘弁してくれよ」

 

エイト「来てくれるなら、うちのメイドさん自由に口説く権利あげちゃうよ」

 

ククール「仕方ねえなあ」

 

ヤンガス「くそ、この色欲魔! そして錬金バカ! あああっ、錬金なんて大嫌いでがす!」

 

 

 それから暫くの時が流れた。

 

~トロデーン城、エイトの自室~

 

エイト「で、出来た……」

 

ククール「さすがに、きつかったなあ」

 

ヤンガス「メタルキング何匹狩ったか分かんねえでげす」

 

ククール「なあエイト、装備してみろよ」

 

エイト「うん」ゴクリ

 

 エイトはメタルキングの槍改をそうびした!

 

エイト「す、凄いよこれ。攻撃力は前の比じゃないし、はやぶさの剣改を組み込んだから二回攻撃できる。ついでに体力回復の効果まで付けられた!」

 

ククール「もはや超兵器だな。この平和なご時世になんてもん作っちまったんだ」

 

エイト「錬金釜をさらに改造する必要さえあったんだから、苦労が報われた気分だよ」

 

ヤンガス「スライムの冠が三つも必要とか正気の沙汰じゃなかったでがすな。それで兄貴、作った槍は国宝にでもするんでがすか」

 

エイト「そうだねえ。そもそも武器がいらないわけだし。でも折角だから竜の試練で試し切りさせてもらおうかな」

 

ヤンガス「試練だけに、でがすか」

 

エイト「そうそう」

 

ククール「竜神王も災難だな」

 

エイト「よーし。思い立ったが吉日だ。具合を確かめてから、もっと改良していくことにするよ!」

 

 エイトが喜色満面、握りこぶしを突き上げたその瞬間、扉の前に立っていたトロデと目があった。

 トロデは憤怒の形相をしながら穏やかにエイトを睨んでいた。

 

エイト「ひいっ」

 

ヤンガス「おっさんいつの間に!」

 

トロデ「なあエイトよ。何日も公務をほったらかしてどうしたというのだ。ん?」

 

エイト「えっと、これはですね、その」

 

 エイトが口ごもっている内に、扉を開けてミーティアも部屋に入ってきた。

 普段から穏和なミーティアさえも明らかな怒気を滲ませている。

 

ミーティア「エイト……いったい何ですか。その槍は」ゴゴゴ

 

エイト「げっ、み、ミーティア」

 

ミーティア「まさか錬金にかまけて城を留守にしていたなんてこと、ないですよねぇ?」

 

エイト「あの、話せば長くなるんですが……」

 

トロデ「たわけがっ!!」クワッ

 

 トロデは 身も凍るおぞましいおたけびをあげた!

 

 エイトは ショックを受けた!

 

エイト「ひいぃ!」

 

トロデ「お前にはまだ王としての自覚が無いようじゃな。連日連夜、公務尽くしの刑に処してくれるわ。覚悟せい!」

 

ミーティア「それと錬金釜は没収いたしますわね。神鳥の杖があった部屋に、エイトが入れないよう術式を書き換えて封印します」

 

エイト「や、やめて下さい! それだけは、それだけは」

 

トロデ「ええい、往生際が悪い! さっさと来んかい!」

 

 エイトはトロデと近衛兵たちに引きずられて行った。

 ククールとヤンガスに謝罪し、他の兵士に錬金釜を運び出すよう指示をしてから、ミーティアも部屋をあとにした。

 そして張り裂けんばかりの慟哭と、それを叩きのめす一喝がトロデーン城に響き渡った。

 

「嫌だあ! 錬金釜は僕のパートナーなんだあああ!」

 

「貴方のパートナーは私ですっ!!」

 

 

ククール「……いやあ、怖かったな、ミーティア王妃」

 

ヤンガス「怒髪天を突いてたでがすね。あんなのはゲルダでも見たことねえや」

 

ククール「しかし良かったな。俺たちはお咎め無しでよ」

 

ヤンガス「巻き込まれた上に叱られたら堪ったもんじゃないでがす」

 

ククール「ま、俺は麗しいメイドさん達を口説けるからいいがね。エイトの奴もこってり絞られるようだし、結果オーライさ」

 

ヤンガス「まったくでげす…………」

 

ヤンガス「このまま末代まで、錬金釜は封印して欲しいでがすな」

 

 

おしまい




前回のミスコンの話でもそうでしたが、ドラクエ8の主人公が錬金狂いになっています。
原作では仲間からも寄り道大好き人間として知られているようですので、それなら探求心から錬金にもハマってるだろうなと勝手に思って書いた次第です。

しかし錬金釜って一種の詐欺ですよね。
プレイした当時、子供だった私はまんまと引っかかりキングアックスを作るという暴挙を行いました。もちろんメタルウィングもちゃんと作り、新品のまま道具ぶくろの中で埃を被っております。
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