ドラクエVIIIよ、永遠なれ   作:ふーてんもどき

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もう一人の姫君

~メダル王の城~

 

 メダル王女は、代々小さなメダルを収集することを生業としてきた由緒ある王族の末裔である。

父である現メダル王が病に倒れてからしばらく、その可憐な容姿からは想像しがたい辣腕で家業を滞りなく推し進めていった。

 現メダル王が復帰してからも多方面から父親の仕事を後押ししている。

 もはや彼女こそが、この小さな城を支える主柱になっていると言っていいだろう。

 

メダル王女「......ちっ」

 

 書斎に、そんな王女の舌打ちが響いた。側仕えのメイドの肩がビクリと跳ねる。王室にあるまじき、張り詰めた空気。

 王女の細く綺麗な指が、ベルガラックの銀行員も顔負けの速度で算盤を弾く。もう片方の手では休みなく、計算結果からデータやグラフを書き出している。

 しばらくして手を止めたメダル王女は深いため息をついた。

 

メダル王女「ダメだわ......何度やってもダメ」

 

 項垂れる王女に、メイドは大変怯えながらも、どうにか声をかけた。

 

メイド「お、王女様。その、大丈夫ですか?」

 

 王女はのそりと、疲れ切った顔で振り向く。目の下の隈と猫背が元々の美貌を台無しにしている。

 

メダル王女「大丈夫?大丈夫かですって?」

 

メイド「え、あ、あ」

 

 あまりの威圧に、メイドは目尻に涙を浮かべた。脚が震え、まともな言葉も出ない。

 このメイド、小さい頃に島の海岸でギガンテスに出くわしたことがある。あれは人生最大のトラウマだったわけだが、その記録は今しがた塗り替えられてしまった。

 そんなメイドの心情は関係ないとばかりに、王女は突如目をギラつかせ、思い切り握り拳でテーブルを叩いた。

 

メイド「ひぃっ!」

 

メダル王女「経営カツカツなのよおおおおおおおお!!!」

 

 

 

 

~メダル城、王女自室~

 

メダル王女「あーもう限界だわ。やってられない」

 

メダル王女「あんなチンケなメダルで生計を立てるなんて無理に決まってるじゃない」

 

メダル王女「道具屋?銀行?こんな孤島、まともに客なんて来やしない」

 

メダル王女「そもそも小さなメダルってなによ!なんの価値があるっていうのよ」

 

メダル王女「実際のところ、ノーリターンで赤の他人に国宝をあげちゃってるようなものじゃない」

 

メダル王女「今までは父の看病と家業を守ることに必死になってきたけど、まるで地獄だわ」

 

メダル王女「金がない、文化がない、娯楽がない。何より食事が貧しい」

 

メダル王女「ずっとこの島で育ってきたから当たり前に思ってたけど、はっきり言って異常だもの」

 

メダル王女「もう海草と固いパンは嫌なのよ!」

 

メダル王女「こんなの王家の生活じゃないわ。むかつく、いらいらする、とてもとても腹立たしい」

 

メダル王女「私は懲りました。もうたくさんです」

 

メダル王女「というわけで、今日をもって小さなメダル業は廃止し……」

 

メダル王女「新事業を開拓します!」

 

王様「……えっ」

 

 

 

 

メダル王女「まずはお金が必要ね。何をやるにしても、資金がないことには始まらないわ」

 

メイド「お、王女様、本気なのですか?」

 

メダル王女「どうかしたの?」ニッコリ

 

メイド「だ、だってその……」

 

メイド「山のように積まれた小さなメダルを全て溶かして、金塊に変えるなんて……」

 

メダル王女「大真面目よ。試しに比重を図ったらびっくりよ。無用の長物だと思っていたけれど、純金だったなんてね。てっきりメッキを塗ってある鉄だと思っていたわ」

 

縛られた王様「んんー!んんんー!」ジタバタ

 

大臣「それはそうとしても、王様を拘束するのは不味いのではないですか?」

 

ホイミスライム「猿轡までするのはやりすぎじゃないかなぁ」

 

メイド「ああ……助けるべき?でも王女様怖いし……」オロオロ

 

メダル王女「だって抵抗するんだもの。この国を栄えさせるためには一刻の猶予もないのよ」

 

王様「ふごー!んふごぉー!」

 

メダル王女「はあ、お父様。わかってください。先祖がやってきた趣味など、何の意味もないのですよ?」

 

メダル王女「むしろこれからの私たちの繁栄に貢献できるのですから、喜ぶべきではありませんか」

 

大臣「笑顔でご自分の家の歴史を貶されましたな」

 

ホイミスライム「けど、どうやって金塊にするんですか?この島にはそんな設備ありませんよ」

 

メダル王女「わかっているわ。すでにポルトリンクと船着き場間の定期船に連絡をとっているの」

 

メダル王女「船着き場まで運んだら、そこからは行商隊に頼んで、鋳造技術を持つアスカンタまで届ける」

 

メイド「あ、アスカンタは引き受けてくれるのでしょうか?」

 

メダル王女「そこももう連絡済みよ。あとは実行するだけ」

 

大臣「なんともすさまじい行動力ですね」

 

メダル王女「当たり前よ。いつかこの国に世界で三つ目のカジノを建てて、毎日の食卓に柔らかいパンと肉を並べるの」

 

大臣「むむ、確かに、それは嬉しいかも」

 

ホイミスライム「そ、そうなったら僕、ビンゴゲームの司会になりたいです!」

 

メダル王女「そうでしょうそうでしょう。じゃ、早速取りかかるとしましょうか」

 

メダル王女「今回の資金遠征における選抜メンバーと各要項を書類にまとめたから、今日中に目を通し、ここにいない該当者にも回すように」

 

王様「んがぁぁぁ!」ジタバタ

 

大臣「王様はどうしますか」

 

メダル王女「ほとぼりが冷めるまで宝物庫にでも入れておきなさい」

 

メイド「宝物庫って、あの鉄格子の……?」

 

メダル王女「よし、行くわよ皆!我らが国に栄えあれ!ファイトオー!」

 

大臣「……おー」

 

ホイミスライム「おー!」

 

メイド「ふええ……お、おー」

 

 

 

 

~アスカンタ城、応接間~

 

パヴァン王「遠路はるばる、ようこそおいでくださいました」

 

メイド「すごい豪華なお城ですねえ」

 

メダル王女「歓迎いただき光栄ですわ」

 

パヴァン王「では約束通り、小さなメダルは一旦こちらで預り、加工したものをそちらに引き渡すということで」

 

メダル王女「ええ、報酬はそのなかから、規定の額をお渡し致します」

 

パヴァン王「スムーズに話が進んでなによりです。それでは使用人が、あなたがたが宿泊されるお部屋に案内しますので……」

 

メダル王女「お待ち下さい。もう少し時間を割いていただくことは可能ですか?」

 

パヴァン王「ええ、問題ありませんが」

 

メダル王女「実はこちらが本命なのですが……」

 

 

 

 

~メダル城~

 

メダル王女「ただいま」

 

大臣「おかえりなさいませ。予定よりも遅れましたので心配いたしました……おや?金塊はどうされたのですか」

 

メダル王女「もうほとんど使ったけど?」

 

大臣「え」

 

メダル王女「今回依頼した行商団体を買い上げたのと、アスカンタ国に余分に渡すことで行商のための道路設備工事を請け負ってもらうことにしたわ」

 

大臣「な、なんですとおぉ!?」

 

メイド「そのあの、ごめんなさい大臣様!私を含めて付き人は、あまりの展開にただ唖然とするばかりで......」

 

メダル王女「さらにパルミドの方にも声をかけて、建築家や大工衆をかき集めたわ。入ってきなさい」

 

屈強な大工屋集団「うぃーす」

 

大臣「!?」

 

メダル王女「これから貿易港と貿易船団を開発します。事業が軌道に乗れば、この島を観光地化させていく」

 

メイド「壮大ですぅ」

 

大臣「カジノを建てるって、本気だったのですね……」

 

ホイミスライム「ぼ、僕は嬉しいかも、へへ」

 

大臣「しかし、そう上手く行くんでしょうか」

 

ホイミスライム「そうですね。いきなり事業を初めても、つながりを持ったアスカンタ地方以外には受け入れられないかもです」

 

メダル王女「心配いらないわ。遠征に出発する前に、トロデーンおよび西の大陸各地から書簡あるいは呪文で、好意的なお返事をいただいているわ。ザウェッラのニノ法皇様にも通商許可証の申請を取り付けています」

 

大臣「この短期間でそこまで根回しが済んでいたのですか!」

 

メダル王女「世界中の道路開発や交易路整備に第一任者として金塊をばらまいたから、もう一割も残ってないけどね」

 

メイド「き、金塊だけでも十分に裕福な暮らしができたんじゃ?」

 

メダル王女「ダメよそんなの。ただの貯蓄は磨り減る一方じゃないの。活用して、未来への展望を広げなきゃ」

 

メイド「わあっ、そこまでお考えだったんですか」

 

ホイミスライム「僕、一生ついていきます!」

 

あらくれ大工「マジかよ……お前知ってた?」

 

青年大工「いや、正直こんなプロジェクトに加担することになるなんて、思ってなかったよ」

 

あらくれ大工「だよなぁ。荷が重い」

 

メダル王女「くくくっ……あははははは!近い将来、確実に現代の交易ラインでは物資供給が成り立たなくなる時代が来るわ。道を制する者こそが世界を制する。新地平の夜明けを私たちが創る!」

 

一同「お、おおっ」

 

メダル王女「陸路海路全ての物流を我らが手に!あまねく羨望を一身に受けようじゃない!」

 

一同「おおお......!」

 

メダル王女「これからメダル城は世界の交易中継都市並びに、一大観光地として名乗りをあげる!」

 

メダル王女「ついてきなさい!新しい時代の幕開けよ!」

 

一同「うおおおおおおお!!」

 

鉄格子の中の王様「んぐううううー!!」ガシャンガシャン

 

 

 

 

 その後、メダル城がある孤島は世界各国から人、物、情報など、あらゆるものが集まる大交易地となった。

 とんとん拍子に文明レベルは進歩していき、常に最先端の技術がここから生み出されていった。

時代が進み、いつしか空路も手に入れた元メダル城は、ただただ盛況の一途を辿った。

 その起点、始まりの御方として崇められるメダル王女は後に、こう呼ばれる。

 

 

 

『空と海と大地を金に変えた姫君』

 

 

 

 

 

おわり

 




小さなメダル集めが家業とか意味わかんないんですけど!でもご褒美の内容からしてすごくお金持ちっぽいんですけど!

世界のほぼ真ん中にあって立地は最高だと思うですよ、あの島。

メダル王女様って真面目そうだし、なんか苦労してそうだなって思いが発端になって書きました。実際はどうやって生計を立てているんでしょうね。
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