ドラクエVIIIよ、永遠なれ   作:ふーてんもどき

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ミス・コンテスト~私が一番美しい!~前編

~リーザス村、アルバート邸~

 

ゼシカ「はあ?世界一の美女決定戦?」

 

アローザ「ええ。サザンビークのチャゴス王子から直々の招待よ。貴女に是非ともエントリーして欲しいんですって」

 

ゼシカ「げえっ、あいつかあ」

 

アローザ「ゼシカ。王族の方をあいつ呼ばわりなどと」

 

ゼシカ「だってさ、あのチャゴスよ。お母さんも噂話はよく耳にしてるんじゃないの。その大会、絶対にスケベな目的よ」

 

アローザ「そ、それはそうかもしれないけれど。でも、出場しなさいな」

 

ゼシカ「え~、なんで?」

 

アローザ「内容はともかく、世界各国の要人が集まることは確かだわ。これは政治的にとても重要な祭典になる」

 

ゼシカ「大げさねぇ。誰が来るっていうのよ」

 

アローザ「そうね、例えば、ザウェッラからはニノ法皇様がお見えになるそうよ。スポンサーとして莫大な資金を投じているらしいわ」

 

ゼシカ「うわあ。もうやだ、あのデブ共」

 

アローザ「もちろん私も来賓として参加します。ねえゼシカ、これもアルバート家のため。出てくれないかしら」

 

ゼシカ「そうは言っても、嫌なものは嫌よ」

 

アローザ「貴女の旅のお仲間も来るはずよ。ほら、ククールさんは元々好きそうでしょ、そういうの。エイト王は親交国の主として必ず来られるでしょうし、そうするとヤンガスさんも来るに決まっているわ。貴女、全員で集まりたいって、ずっと言っていたでしょ」

 

ゼシカ「うーん。そりゃそうだけど、でもなあ」

 

アローザ「エイト王とミーティア王妃のご子息を抱っこできる好機よ」

 

ゼシカ「あぐぐ、でも、でも」

 

アローザ「……はあ、仕方ないわね」

 

ゼシカ「うん。ごめんね。悪いけど断っておいて」

 

アローザ「ええ。『ゼシカは優勝する自信が欠片も無いので辞退します』とお伝えするわ」

 

ゼシカ「……あん?」

 

アローザ「だから『世界の並みいる美女には勝てる気がしません。負ける戦いには出られません』と手紙に書くわね」

 

ゼシカ「ちょっと、どういうことよ」

 

アローザ「嫌だから参加しない、などと失礼なことは言えないでしょう?相手は王族。お断りするなら、揉めないようにある程度下手に出るものだわ」

 

アローザ「それとも、まさか本当に優勝できると思っているの?」

 

ゼシカ「……っざけんじゃないわよ」

 

ゼシカ「このグラマラスボディーを捕まえて、自信がないですって?戦う前から負けるですって?ああん!?」

 

ゼシカ「冗談じゃないわよ!やってやろうじゃない!」

 

アローザ「と、いうことは」

 

ゼシカ「参加、もちろん参加よ!世界中に、このゼシカのおっぱいこそが、最も価値があるということを証明してみせる!」

 

アローザ「そうそう、その意気よ」

 

アローザ(我が子ながら、はしたないわね)

 

ゼシカ「待ってろ世界ぃ!」

 

 

時は遡り、数ヶ月ほど前。

 

~サザンビーク城~

 

クラビウス「大臣よ、今日貴様と二人きりになったのは他でもない。チャゴスについてのことだ」

 

大臣「はい」

 

クラビウス「率直に聞く。チャゴスにあのままで王位を継がせられると、お前は思うか」

 

大臣「……恐れながら、難しいかと」

 

クラビウス「だよなあ」

 

気まずい沈黙が流れる。

 

大臣「して、王はどのようにお考えでしょうか」

 

クラビウス「うむ。古今東西、足りない能力があるならば、修行することが鉄則である。チャゴスにも治世の修行をさせねばならん」

 

大臣「ごもっともです。」

 

クラビウス「そこでだ。チャゴスに一つ、国を興すための政策を考えさせ、実行させたい。その一連の流れを体験すれば、奴にも統治のなんたるかが、少しは分かるだろう。どうだ、大臣」

 

大臣「ふむ……素晴らしい案だと思います」

 

大臣「ミーティア様を巡る結婚式の件により、国民および諸外国からのサザンビークへの心証はよろしくありません」

 

大臣「しかし、その当事者であるチャゴス王子が善き政策を成し得たならば、各国へ権威を示すと同時に、国民からの信頼回復も見込めます。もちろん王子の成長も促せる」

 

大臣「一石三鳥。やらぬ手はありません。問題は、王子がちゃんとしてくれるかどうか、ですが」

 

クラビウス「何でもいい。褒美にカジノへの出入り自由や、コインを付けてもいい。部屋に閉じ籠るようなら即刻、破綻槌で抉じ開け、引き摺り出してやれ」

 

大臣「おお、そこまで本気とは。分かりました。この大臣、力を尽くしましょう」

 

クラビウス「頼んだぞ」

 

 

~一週間後~

 

 

大臣「王様、その、チャゴス王子の政策が、あの、決定しました」

 

クラビウス「どうした。歯切れが悪いな」

 

大臣「ええ、はい。そのですね。王子は意外にも積極的に取り組んで下さいまして、今しがた草案が出来たのですが」

 

クラビウス「おおっ、さっそく見せてくれ」

 

大臣「は、はい。こちらにございます」

 

クラビウス「どれどれ……」

 

『ミス・コンテスト。世界一美女決定戦』

 

クラビウス「こ、これはっ」ワナワナ

 

大臣「ええ。そうですよね。我ら臣下一同も、どうかとは思っています。しかし、王子は「これでないと自殺する」とまでおっしゃっていまして」

 

クラビウス「素晴らしいっ!」

 

大臣「あそこまで頑なな王子は久しく……え?」

 

クラビウス「さすがは我が息子だ。やればできるではないか」

 

大臣「あの、王様。いいのですか?これで」

 

クラビウス「何か問題でもあるか」ギロッ

 

クラビウスは大臣をおどかした!

 

大臣「い、いいえ……」

 

大臣はすくみ上がっている!

 

クラビウス「なあ大臣よ、貴様も本当はこの大会を開きたいと思っているのだろう」

 

大臣「な、何をおっしゃいますか」

 

クラビウス「知っているのだぞ。貴様が妻に視察と偽って、滝の裏側にある、いかがわしい店に通っているということは」

 

大臣「ぎゃあああはあああっ」

 

クラビウス「お主もだいぶスケベよのう。さあ正直になるがよい。一人の男として、この夢を実現させたくはないか?」

 

大臣「ぬうう……」

 

クラビウス「是が非でも、チャゴスを主催として祭り上げ、この空前の大会を成功させるのだ!」

 

大臣「くうーっ、お、仰せのままに!」

 

 

 そして、世界中にミス・コンテストの告知がされた。

 落ち目のサザンビークが発したこの一大イベントに、東西南北全ての人間が食いついた。

 貴賤は問わない。我こそ世界一と思う女子は名乗りを挙げよ。

 その伝聞は矢のごとく広まっていった。

 

 

~トラペッタ~

 

ルイネロ「水晶に吉日の印が出ておる。ユリマ、参加しなさい」

 

ユリマ「自信はないけど、分かったわ。お父さんの占いは信じてるもの。やってみるね」

 

ルイネロ「うむ。お前は自慢の娘だ。大丈夫さ」

 

~アスカンタ~

 

おばあさん「キラ、お前行ってみるかい」

 

キラ「ええ!?でも、私そんなに綺麗じゃないよ」

 

おばあさん「お世話になったエイトさん達に、また会いたいと言っていたろう?そのついでに楽しんで来るといいよ」

 

 

~バトルロード格闘場~

 

モリー「乗るしかないな、このビッグウェーブに」

 

メリー「それで、誰が出場するの?」

 

ムリー「私はちょっと無理かなー」

 

ミリー「やっぱりこういう時はマリーさんじゃない?ねっ」

 

マリー「そ、そうかしら。どう思う?モリーちゃん」

 

モリーは穏やかに笑っている!

 

 

~パルミド~

 

ゲルダ「見なよヤンガス。優勝者には豪華な賞品が贈られるってさ。これはアタシもいっちょ、出る他ないねえ」

 

ヤンガス「えっ、ゲルダが?顔はともかく中身が……」

 

ゲルダ「あ?何か言ったかい」

 

ヤンガス「いやいやいや!応援するでがす!優勝間違いなしでがすよ、アハハハっ」

 

ゲルダ「そうだろう。ついでに国宝の一つくらい盗ってやるかね」

 

 

~メダル王の城~

 

メダル王女「絶好の機会ね。各国の運搬業務を一手に引き受けましょう。下々への知名度を上げるために出店もやりたいわ。リーザス地方とアスカンタ領から名産を取り寄せなさい。それから、支部への定期連絡の密度を上げること」

 

メイド「あわわわ、大忙しですぅ」

 

王様「なあ、メダルは……?」

 

メダル王女「見つけ次第、溶かして金に替えます」

 

 

~ベルガラック~

 

ユッケ「お兄ちゃん!あたしもコンテストにエントリーしたい!」

 

フォーグ「いや、しかしだな、妹よ。僕たちはベルガラックを取り仕切るオーナーとして、品よく立ち回らねばならなくて」クドクド

 

ユッケ「いいじゃない。平民から王族まで、誰でも参加できるんだよ。すっごく楽しそう!やらなきゃ損よ」

 

フォーグ「やれやれ、言い出したら聞かないんだからなあ」

 

 

~三角谷~

 

ラジュ「私も出ようと思うの。チェルスが旅した世界の人々を、私も見てみたいから」

 

ギガンテス「行ってくるといい。我々は魔物だから外の人間の前には出られないが、エルフの美しさならば、皆が認めるだろう」

 

ラジュ「まあギガンテスったら。口が上手なんだから」

 

 

 過去、誰も試みなかった、世界を巻き込んだ狂宴。それは老若男女を夢中にさせた。

 人は『一番』に惹かれる。憧れる。それが真理である。

 この世で最も美しい者。

 突如として出現した、未だ誰も手にしていない、つまり手垢の付いていないその称号は、平和に微睡んだ人々を熱狂させるには十分な力を持っていた。

 皆が退屈していたのだ。チャゴスの思い付きは、今や全世界を魅了していた。

 

 

~トロデーン城~

 

ミーティア「あら、エイト。夜遅くに何をしているのですか?」

 

エイト「ちょっと錬金の研究をね。赤ちゃんの夜泣きは大丈夫かい」

 

ミーティア「ええ。今は乳母さんが見ていてくれているし、ぐっすり寝ていますよ」

 

エイト「そっか、良かった」

 

ミーティア「……ねえ。エイトは、今度サザンビークで開催される大会、楽しみ?」

 

ミーティアは不安そうな仕草で、エイトに上目遣いをおくった。

 

エイト「うん。お祭りは楽しみだよ。また皆と会うのが待ち遠しいなあ」

 

ミーティア「あっ……うふふ。そうよね。それでこそ、私の旦那様だわ」

 

エイト「それにしても意外だよね。あのチャゴス王子が主催するなんてさ」

 

ミーティア「本当に。アルゴンハートを取りに行ったことが懐かしいですね」

 

エイト「せっかくだし、許しを頂いて、もう一つ取りに行こうか。僕には形見のアルゴンリングがあるけど、ミーティアのは無いもんね」

 

ミーティア「まあ。私はこの結婚指輪だけで十分よ。でも、気持ちはすごく嬉しい。ありがとう、エイト」

 

エイト「うん。それじゃあ、ミーティアももうお休み。僕はまだ少しだけやることがあるから」

 

ミーティア「ええ、お休みなさい。エイトもお体に気を付けて下さいね」

 

エイト(さて、早いところ仕上げなきゃな)

 

 

 それぞれの思惑を胸に、時は流れていく。

 そして今まさに、史上最大規模の祭りが、サザンビーク城にて開かれようとしていた。

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