真姫の謎の悩み事からはや2週間以上が経った。しかしどれだけ調べても何もわからない。ここまで悩んだのは兄妹で結婚してはいけないという法律の存在意義以来だ。しかしあれからというもの真姫の部屋からピアノの音が聞こえるようになった。もしかして、例のあの詩にピアノの音色で返事をしているのだろうか。・・・それはないか。あの音色、恋を表しているとは思えない。何かと言うと、まるで誰かを応援するような、背中を押して後押しするような音色だった。だとしたら誰を応援するのだろうか。もしかして僕か?ってどこに応援する要素がある。大抵のことはこなせる完璧な僕のどこに応援する要素があるのだ。完璧というものも退屈なものだな。
どんなに考えようとも時間だけは早々と進んでく。そして今は大学で講義を受けていた。やれやれ、どうしてわざわざ理解していることを学ばなくてはならないのだ。よし、寝るか。そう思ってアイマスクをしてしばらく夢に世界に入ろうとすると、隣りに座っている同じく医学部の親友、霧島智哉が僕の頭を叩いた。
「何をする智哉。これから僕は夢の王国に旅立って妹しか存在しないハーレムを楽しもうと・・・」
「今は講義中だろ!寝るなよ。主席だろ、お前。」
智哉は毎度毎度同じようなことを言わせるなとでも言いたげな顔でため息をついた。こいつは僕が小学校2年くらいからの親友で高校は離れてしまったが、大学で再び再開するという腐れ縁で繋がっている。そしてこいつの主な役目は講義中に夢の世界に入ろうとする僕の妨害行為。なんて奴だ!
「・・・今、僕のことを小ばかにしなかったか?」
「・・・・さあ?」
こいつは長い付き合いだからか、最近は僕の思考を呼んでくるようになった。プライベートの侵害だぞ。しかも人の健康を維持するために睡眠を取ろうとしているのに、それすらも邪魔するとは。人の健康を邪魔するとは医者志望の鏡にも置けないな。などと考えていたらまた思考を読まれるに違いない。
「・・・また僕のことをバカにしていないかい?」
「・・・やっぱりな。」
「何が?」
「別に・・・」
智哉のおかげで睡眠の邪魔をされた僕は少し不機嫌になりながらも、真面目に講義を受けた。感想はとてもつまらなかった。
講義が終わると、生徒たちは教室から次々に去っていった。そして教室に残された僕たちは、用意を片付けているところだった。僕はこんなことをしている場合ではないのだがな。などと考えながらけだるそうにノートを閉じると、再び智哉が話しかけてきた。
「雄真、次の講義まで時間あるけどどうする?」
「どうしようかね・・・。そろそろ昼だし食堂にでも行くか。」
教室を後にした僕たちは、校舎から出てしばらく歩いたところにあ事務棟にある食堂に向かった。いつものことだが、既に食堂にはたくさんの生徒が食事をしていた。彼らが食べているものを見ながら、今日は何を考えようかと考えてるといつの間にか僕たちは前にお盆が並べられている棚の前に着いた。この学校の食堂では注文をするのではなく、既に棚に並べられた食品を取って最後に会計を済ませる形式になっている。ようするに栄養バランスを自分たちで考えて選べ、それくらいできて当然、ということだろう。さっき他の生徒が食べているものと、入り口に貼っていったオススメメニューから今日は海鮮がメインのようだ。徐々に進んでいく列の中、智哉はカニクリームパスタとシーフードサラダを自分のお盆に乗せていた。一方で僕のお盆の上にはトマトとチキンを挟んだサンドイッチと、ツナとチーズの焼きサンド、トマトジュースと、いつもととくに変わらないメニューが乗っていた。それを見た智哉はまたか、というような目で見てきたが、気にせず会計に向かった。合計で500円に達するか達しないかのいつも通りの値段になった。僕よりも列の後ろに並んでいた智哉が会計を済ませると、今日は天気がいいのでテラス席に向かった。春のあたたかな風に吹かれながらの食事はいつもよりもおいしく感じるものがあるからね。
智哉を向かい合う形で座ると、カバンからノートパソコンを取り出した。
「また調べものか?」
「ああ。」
軽く答えると、右手でパソコンの電源を入れ、左手でサンドイッチを持った。その様子を見て智哉は、あきれたとでも言いたげにため息をついた。
「はあ・・・はたから見たら、イケメンで、主席で、医者の息子で、優しくて、完璧な人間。しかしその中身は重度のシスコンで、妹のこと以外、大抵のことには興味を持たず、変な方向にばかり頭を使う残念な天才か・・・・」
「あ?何か言いたい?」
「別に・・・羨ましいなと思ってね。」
「・・・・この顔も頭脳もやらんぞ。」
何が言いたかったのだろうか。彼から目を離すともう一度パソコンに目を落とした。すると前から智哉がプライバシーのかけらもない、ご自慢の推理を披露した。
「君がそこまで必死に何かを睨むってことは真姫ちゃんがらみのことかい?」
「・・・お前に真姫をちゃんと呼ばれると、少し腹立つが・・・そうだよ。それ以外何がある?」
「・・・色々あると思うけどな。真姫ちゃん、今年から高校生だっけ?」
「ああ、今年から高1だな。」
「音ノ木坂だっけ? 」
「ああ。・・・なぜおまえが知っている?」
「・・・数日前に君が話したろ。」
「そうだったか?」
智哉はまたもため息をつくと、今度は自分のスマホを開き始めた。
「そっか。真姫ちゃんも高校生か。・・・そういえば、雄真。最近はやっているスクールアイドルって知ってる?」
「スクールアイドル? なんだそれ。」
「最近のJKたちが学生だけで結成したアイドルで大きな大会に出るとかいう、いわゆる部活みたいなものだよ。僕の後輩もやってるんだけど、その後輩が全国でも結構強いらしくてさ・・・」
「ふーん・・・・そういやお前さ、どこ卒業だっけ?」
「UTX。」
「あー。あのチャラそうな私立・・・。」
「チャラそうとか言うなよ。結構最先端の技術揃ってたぜ。・・・あったこれ。」
そういうと智哉は自分のスマホの画面に映った女子高校生が歌って踊っている動画と突き出してきた。彼女たちがこいつの後輩ねえ。名前は・・・
「A-RISE?」
「そう。UTXのスクールアイドルで僕の後輩。どう?」
「どうって・・・普通。」
「なんだよそれ。もうちょっと感想ないのかよ。」
「ないな。全員真姫には及ばない。」
「本当に真姫ちゃん意外関心がないな・・・」
智哉は揺らぐことのない僕の意思に引き下がると、ポケットにスマホをしまい、再びサラダの食べ始めた。
「それで、そのスクールなんとかと真姫にどんな関係性があるというのだ?そもそもあいつは音楽には詳しいがそういうチャラそうなのはあまり聞いてないぞ?」
「そうじゃないけどさ・・・この前、僕の後輩の、さっき見せた彼女たちが話してたんだけど、最近近くにダークホースが生まれたって。UTXの周りでアイドルが生まれそうなの音ノ木坂しかないし。もしかしたら真姫ちゃんに何か関係してるかなと思ってさ。」
「・・・真姫がアイドルねえ。」
「真姫ちゃんがアイドルって、結構似合いそうじゃない?クールビューティーって感じで・・・」
「真姫は見世物じゃない!」
「・・・お、おう。ごめん。」
「わかればいいんだ。・・・しかし真姫の美貌ならアイドルに勧誘はされているかもな。」
「とりあえず、調べてみたら?」
「この前、音ノ木のサイトは見たがさっき見たいな動画はなかったぞ。」
パソコンに音ノ木坂女学院と検索ワードを打ち込むと、公式サイトが開かれた。その中からさらにスクールアイドルと検索をかけると、この前はなかった数本の動画が検索結果に出た。そのうち一つは女子生徒3人のライブ映像だった。まだまださっきの智哉も後輩に比べると、ダンスも歌も踊っているが、引き付けられる何かを感じた。そういえば、このたれ目の子どこかで見たような気がするな。どこだったか。いやそれよりも問題はもう一つの動画、というよりも音声だった。この音声の最初はピアノの音色だけが流れた。この曲は、さっきの曲の原曲だろうか。そこまでは何も問題はなかったが、ピアノの音色の直後、聞きなれた歌声が聞こた。それはさきほどの3人の度の声とも違っていた。その声はもっと昔から、もっと近くで聞いてきた声だった。そう、この声は我が妹、真姫の声だ。さっきの曲を真姫が歌っている。いや多分この言い方は不適切だ。予想だがこの曲、たぶん真姫が作ったものだ。何となくだが所々に真姫特融の癖が出ている。それに少し前まで真姫の部屋から似たような音色が聞こえたことが何度かあった。そしてこの前、真姫の机に置かれていた紙にもこの曲の歌詞に似ている。僕の頭が回転を続け、次々にピースが埋まっていき真実にたどり着いた。僕の推測の真実は、真姫が学校でピアノをよく引くことがあったが偶然その場にあの三人のうちの誰かが真姫を目撃し、ピアノのうまい真姫に作曲を頼み、あの紙、歌詞を真姫に渡したはいいが、真姫はあまり乗る気ではなく、どうしたものかと悩んでいたが最終的に引き受けこの曲ができたのではないだろうか。つまり悩みの元凶はあの3人の誰かか・・・。という結論に行きついた僕は無言のまま立ち上がった。そしてそのまま大学の校門に向かおうとするも、すぐさま智哉が僕の服をつかみ止めにかかった。
「どこに行く気だ!」
「放せ!僕は帰る!」
「何でだよ!午後の授業はどうするつもりだ!」
「知るか!どうでもいいわ、そんなもの!」
「それが主席の発言かよ!」
智哉の必死の引き留めに数分反逆したももの、最後には言いくるめられてしまい結局大人しく午後の授業を受けた。しかし授業中の記憶はほとんどなく真姫とあの3人のことで頭が混乱していた。まあ、元から授業は聞いていなかったかもしれないが。
講義も全て終わり、やっと帰れるという時になって、帰りのついでに音ノ木坂の近くを通ってみようと思い付き、帰り道少し遠回りになったが家には直接帰らなかった。そして本来の帰宅ルートから外れること約20分、大きな階段を上った先に真姫が通う、音ノ木坂学院が見えた。この学校は創立100年以上あるらしく、全体的に少し古いイメージがあった。お昼に見たサイトにはこの学校は廃校になるかもと書いてあったこともあってか、生徒の数はとても少なかった。校門から出てくる生徒の中に
あの3人のうち誰かがいないかと見ていたが、結局見当たらなかった。渋々家に帰る途中、頭の中を整理しようと思い、パソコンで表すと、記憶というフォルダの中から真姫、音楽と検索をかけた。結果としては、真姫が小さいころの音楽コンクール、小学校の音楽会、サンタにグランドピアノを頼んだクリスマスの記憶がよみがえった。ただその記憶のなかの真姫はどれも楽しそうに笑っている。そういえば昔、真姫が僕に話してくれたことがあった。『パパやママのことは誇りに思っている。だからこそ医者になりたい』と。真姫は本当は思う存分音楽がやりたいはずだ。それでも我慢して、両親に医者になると告げた。その現場には僕も居合わせたらかよく覚えている。真姫が医者になるといったときの両親の顔はとても誇らしげだった。それにくらべ、真姫は笑っていたが、どこか暗かった。思い返せばあの時から真姫はピアノの道を諦めていたんだな。
そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか家の近くまでついていた。すぐそばに家が見えていた。すると、僕の家、西木野家から西木野家の血族でもなければ、使用人でもない少女が出てきた。その少女は僕とすれ違う際に軽くお辞儀をすると、そそくさと僕が来た道を歩いて行った。そういえばあの制服、、真姫も着てたな。もしかして音ノ木坂の生徒だろうか。だったらなぜここにいるのだろう。まさか真姫の友達?・・・それはないか。家の前に着くと庭の手入れをしている使用人が目に入った。彼女も僕が帰ってきたことに気が付くと、その場に立ち深々とお辞儀をした。
「雄真様、お帰りなさいませ。」
「ああ、それよりさっきの眼鏡をかけた子は誰だ?」
「どうやら、真姫様のご遊学の方のようでして、生徒手帳を届けに来たと奥様はおっしゃっていましたよ。」
「ふーん・・・・」
少女が帰っていた道に目をやると、使用人に持っていたカバンを渡した。
「大学に忘れ物をした。荷物は僕の机に置いといてくれ。」
「あっ、雄真様!・・・・」
使用人の言葉を最後まで聞かずに、僕はもう一度さっきの道をたどると、さっきすれ違った少女の姿が見えた。とりあえずあの子が真姫と接点を持とうとしているのかはわからないが、考えるよりも先に体が動いてしまい。彼女を尾行する形になってしまった。今の僕はストーカーに見えているのではないだろうか、という考えが頭によぎったが無理やりにも消し去った。
しばらく歩くと少女は一つの建物に入っていった。もしかしてあそこが家なのだろうか。入っていった建物の前まで行くと、そこには『穂むら』と書かれた看板があった。どうやらここは饅頭屋のようだ。なら、なおさら好都合だ。ここに入って店員から情報が聞き出せるかもしれない。もしもあの子がここの子ならば当然家の手伝いをしているはずだ。相手が女性ならばより好都合だ。僕の顔はこういうときのためにあるのだから。だてに黙ってたら完璧と智哉に言われ続けた僕じゃないぞ。フフフ、見ていろよ。自分も気づかないうちに洗いざらいすべて吐かせてやる。よし、完璧な笑顔よし、声よし、財布よし。いざ!中に入るとそのにはさっきの子はいず、代わりに他の少女が立っていた。どんなイリュージョンだよ。と突っ込みそうにもなるも、そこに立っている少女の顔は見覚えがあった。確か、あの動画のセンターで歌っていたような、違ったような。彼女は自分の後ろに持っていた荷物を降ろすと、太陽のように明るい笑顔で接客をしてきた。
「いらっしゃいませー!」
なんだろう。彼女の曇り一つない笑顔を見ていると自分の心が薄汚れていたように思えてきた。しかしここで崩れてはだめだ。こういう顔をする奴ほど単純な人間だ。数分も話せば十分だろう。
「すいません、お饅頭をひと箱、いいですか?」
「はい!ありがとうございます!」
そういうと店員の女の子は棚の中から箱を一つ取り出した。な、なんだと!?動揺すらしない、だと?!鈍感なのか、百合か、二次元か、いやこうなったらさらに奥の手だ。直接聞いてみよう。
「ねえ、君。」
「? なんですか?」
「もしかして、スクールアイドルってやってる?」
「はい!もしかして私たちの動画見たんですか?」
食いついてきたな、よしこの方向で話を進めよう。このままいけば彼女たちのアジト的な場所がわかるかもしれない。その前に名前かな?
「音ノ木坂の子だよね?」
「はい!μ’sっていいます!」
「そっか、μ’sか。これからも頑張ってね。」
「はい!ありがとうございます!」
「ところで君の名前は?」
「高坂穂乃果です。」
「そっか穂乃果ちゃんか。」
フフフ見たか僕のコミュ力の高さ。いや今回は相手が単純だっただけか。まあいい、一人目とはこれで接点を持った。残りは3人か、この穂乃果ちゃん経由でもっと調べるか。人の妹を見世物にしようとした罪は重いぞ。
すると今度は後ろの階段からもう一人少女が下りてきた。その子も眼鏡の子ではなく、あの動画の3人のうちの一人だった。
「穂乃果!どうして小泉さんがここにいるのです!」
「あ、ゴメン海未ちゃん。私が上がってって言ったの。」
海未と呼ばれた少女は怒りながらも穂乃果ちゃんの前に立つとそこでやっと僕の存在に気づき、しずしずと後ろに下がり、ひそひそ声で穂乃果ちゃんに話しかけた。
「お客さんがいらしていたんですか?だったら先に言ってくださいよ。」
「ゴメンね、海未ちゃん。それよりもこの人私たちのこと知ってるんだって!」
穂乃果ちゃんの発言に少々びっくりしたご様子の海未さんは僕の方に目をやった。そこで僕はスマイルで返すと赤くなり、穂乃果ちゃんの後ろに下がると、今度は少し怖い顔でこちらを見てきた。
「あの、つかぬ事を伺いますが、どうして私たちのことをご存じなんですか?」
どうやらこの子は穂乃果ちゃんよりも頭が切れるようだ。僕のことを警戒しているのか。借りてきた猫みたいだな。それよりも彼女には妙な嘘をついてもすぐにばれるような気がしたので、素直に話すことを決めた。
「紹介が遅れました。僕は西木野雄真と言います。真姫の兄です。」
穂乃果ちゃんと海未さんは同時に驚きにまみれた表情になり、自分たちの目の前で笑っている青年をまじまじを見つめた
遂にほのうみ登場!花陽も少しだけ出て続々とそろうμ’sメンバー。さて、次は誰だろうな。女神たちとの出会いは神のみぞ知るってことで。
ホントに妹以外興味ないな、雄真さん。今回の回で軽く穂乃果ちゃんのディスってるかもしれませんが、ゲームで穂乃果ちゃんのURだけでなくて少々苛立ってますが穂乃果ちゃん好きですよ!ああ~、高校に上がったらマネージャーに穂乃果ちゃんいないかな。もし穂乃果ちゃんがマネージャーだったら、先輩後輩よりも同学年がいい派。何の話だったか・・・そうそう、URが全然でないんですよ!この前目の前で当てられるし・・・アイスフレーバー・・・。
なんだか愚痴になっちゃいました。すいません。
読んでいただいた皆様に神々の祝福があらんことを