「ご飯できたよー!」
曜はキッチンから声をかけてきた。その姿はまさに幼な妻。なんて考えている場合じゃないな。曜がよそった朝食をテーブルに運ぼう。キッチンの前の棚に置いてあった料理を運ぶためにお皿を持った。キッチンの前の棚には二人前の朝食が置いてあった。ん? 二人前?
「曜、もしかして朝食食べなかったのか?」
「うん、綾斗君の起こしに行くのが楽しみで朝ご飯を食べるのを忘れてて・・、えへへ。」
「曜らしいな。昔から結構単純というかなんというか・・・。」
曜は昔からそうと決めたら一直線で、よく言えば行動力がある、悪く言えば単純。そんな彼女と感情と思い付きで突っ走るタイプの千歌が加わるともう誰にも止められない。そしてそんな二人に小さいころから振り回されてきた僕。小学校の頃は本当に大変だったよ。彼女たちに振り回されて色々なことをしたな。遠くまで歩いて行って帰れなくなったり、高飛び込みして怪我したり、大変だったな。でも彼女たちといたら毎日に退屈はしないんだよな。そして小さいころはちんちくりんだった二人も今はこんなに成長して、成長して・・・・。ふと朝見た夢のことを思い出した。あの夢は何だったのだろう。というか内容もすごかったな。なぜ曜があんなに、何というか、積極的だったのだろう。ただあの夢のせいで曜のことを妙に見てしまう。特に唇と胸を。小さいころから見てきたが、確かに成長している。それは隣にいた僕が一番わかっている。今改めて見ると昔のあの小さい面影はなくなっている。なぜこんな美少女は僕なんかといまだに一緒にいるのだろうか疑問に思うほどだ。僕の視線に気が付いたのか曜がいつものように笑った。
「どうしたの?私の顔に何かついてる?」
「・・・いや、なんでもないよ。」
「ほんとに?」
「ああ。」
あいまいな答えに曜はまだ何か言いたげだったが、これ以上は問い詰めてはこなかった。あきらめた様子の曜はテーブルに置かれた朝食の前の椅子に座った。
「さあ、早く食べよう。学校に遅れるよ。」
「そうだね。」
そういえば今日は学校がある日だった。学校がなければあの夢の続きを見ようと思ったのに。いや、興奮して眠れなかったかな。今は幼馴染が作ってくれた朝食をいただこう。曜と同じように椅子に座った。それを見計らって曜は手を合わせたので僕もその行動に合わせるようにして手を合わせた。
「「いただきます。」」
曜が作ってくれた朝食は、トーストに目玉焼き、ベーコン、サラダと洋風なメニューだった。短時間にここまでの料理をできたなんてよっぽど手際がいいのだろう。最初にベーコンを口に運んだ。
「おいしい。」
思わず感想がこぼれてしまった。このベーコン、焼き具合がちょうどよく、生焼けでも焼きすぎでもなくいちばんいい焼き加減だった。僕には真似できないことだな。僕のこぼれてしまった感想を曜は聞き逃すことなくしっかりと聞いていたようで、目を輝かせてこちらを見ていた。
「ホント?!」
「・・・うん。」
「ホントに美味しかった?!」
「うん。」
「ホントにホントに美味しかった?!後で焦げてたとか言わない?!」
「ああ。」
「ホントに?絶対に?ホントに後でまずいとか言わない?」
「・・ああ。」
「ホントにホントに・・・」
曜がこれ以上に何か聞いてきそうになったので、止めにかかろうと思って、テーブルに両手をつけて前に乗り出して曜の顔の前で心にしまっておこうと思っていた感情をあらわにした。
「ああ、もう!美味しかったよ!ものすごく!毎日でも食べたいくらいだよ!こんな恥ずかしいこと言わせるな!」
勢いで凄いことを言ったような気がするな。自分でも何を言ったかよくわからないが、座っていた椅子から勢いのまま立ってしまった。恥ずかしい。勢いで立ったのはいいが曜の顔がすぐそばのところまで来てしまった。ああ、唇に目が行ってしまう。少し離れて曜の顔を見ると目の前で僕が叫んだ時から表情を変えず、驚きと喜びの間のような表情をしていた。やがて曜の表情が崩れると、彼女に徐々に笑みが浮かんできた。
「えへへ・・・そっか・・・そうなんだ・・・えへへ。」
曜は自分の料理が褒められたことににやけが止まらないでいた。こんな彼女今まで見たことなかったな。
「・・・そんなに嬉しい?」
「うん。綾斗君ってさ、小さいころから自分の感想とか感情とかあんまり言わないで黙ってること多かったでしょ。」
「・・・そうかな?」
「そうだよ。隣で見てきた私だからよく知ってるよ。だからさっきみたいに綾斗君自身の感想が聞けたってことと、その感想で私の料理の感想で褒めてくれたことが嬉しくて・・えへへ。」
どうして曜はここまで嬉しくなっているのだろう。ただの幼馴染に自分の料理を褒められただけなのに。そんな疑問を心にしまって朝食の続きを口にした。この後も二人で雑談をしながら食べた。
「そういえば2人で一緒に朝ご飯を食べるのって久々な気がするね。」
曜がふとそんなことを言った。
「そういえばそうだな。最近は千歌も一緒に食べてるから3人で食べることが多かったな。まあ、あれはあれで楽しいけど。」
「そうだね。でもたまにはこうして2人で食べたいな・・・なんて。」
「いいんじゃないか、たまには。」
「ホント?」
「ああ。」
「やった、約束だよ。」
「ああ、その時はまた作ってくれよ。」
「うん、綾斗君料理できないしね。」
「最後のは余計だ。さあ、そろそろ学校にいこう。これ以上は遅刻だ。」
「そうだね。」
僕たちは朝食をよそっていたお皿を片付けると家を出た。僕の家から学校までは徒歩15分ほどかかる。その間はいつも曜と一緒に登校している。そして途中から千歌が合流するというのがいつもの流れになっている。まあ、だいたい千歌は寝坊で遅れるから僕たち二人は先に行くことが多い。今日もそのパターンのようだ。集合場所に千歌の姿はなかった。いつものように先に二人で学校に向かうことになった。千歌との集合場所からしばらく歩くと曜が口を開いた。
「ねーねー綾斗君。」
「何だ?」
「朝、綾斗君の寝顔が凄く気持ちよさそうだったから、どんな夢を見てたのかなって気になって、教えてほしいなー。」
「ええっ?!夢?!」
夢か、何といえばいいだろう。正直に話すべきだろうか。話すならば何といえばいいだろうか。夢に君が出てきて半ば強制的に僕とキスしようとした、というのか。いやいやいや、無理だろ。そんな度胸僕にはない。そもそもそんな度胸が僕にあったらとっくの昔に告白を・・・いやこの話はよそう。それよりも今はあの夢のことを曜に話すかだ。今も曜は僕にしつこく聞いてきている。
「ねーねー綾斗君、どんな夢か聞かせてよ。」
あーこうなった曜は誰にも止められないぞ。しかたないな、話してみるか。
「聞いたことを後で後悔しない?」
「えっ、どうして?ただの夢でしょ。」
「そうか、知らないぞ・・・」
曜に朝見た夢を話をすると、段々曜の顔が赤くなっていった。まさに曜7変化だな。曜の反応が面白いので少し話を盛ってみると、どんどん曜の顔が赤くなり最後には目も合わせてくれなくなった。
「最後には、綾斗君と曜ちゃんは結ばれていつまでも幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。」
「・・・・」
ずっと下を向いたまま学校に向かって歩き続ける曜の姿はまるでゾンビのようだ。前は見えているのだろうか。交通事故に巻き込まれないか心配した方がいいだろうか。
「で、ご感想は?」
「・・・・・」
無言。ノーコメントということだろうか。曜は耳まで真っ赤になっている。まるで寒い日の耳のようだ。このまま無言を保たれると僕もつらいのだが。数分の間、無言を保っていた曜がぼそぼそと言葉を口に出した。
「・・・・の?」
「えっ?」
「あ、綾斗君は・・・・してほしいの?」
「はい?」
「あ、綾斗君は、そういうことを私にしてほしいの?」
どうしてそういう解釈になるんだ。まあ、確かにしてほしくないと言えばウソになるが、さすがにそんなこと頼めない。動揺している間に隣を歩いていた曜が急に歩くのをやめて体をこちらに向けた。少し迷ったようなそぶりを見せた曜が何かを振り切るかのようにいつになく真剣で真っ赤な顔をしていた。
「あ、綾斗君のためなら、私何でもするよ?」
ずっと隣を歩いていた曜は顔を赤らめながらもどこか真剣なまなざしでこちらを見つめてきたことがわかった。その表情にはためらいのようなものも見えた。そんな曜の表情に見とれてしまいそうになる自分を隠すために何か話題をそらそうとしたが、頭の中で考えたことが全て目の前の幼馴染によってかき消されている。今の彼女はそれほどまでに魅力的なのだ。そんな彼女に引き寄せられるかのように二人の間は徐々に狭まっていった。もう少しでキスだって出来るのではないかというほどの距離まで近づいたとき二人の顔は初めて完全に向き合った。そこで一度動きは止まったが、お互いが相手と同じことを考えているかのように二人は同時に動き始めた。今以上に顔を近づけるべく、二人は動き始めたのだ。ゆっくりとだが確実に二人の距離は狭まっていく。あとほんの少し近づけば曜の唇を奪えるというところまで来た時、曜は瞼を閉じた。曜が瞼を閉じると同時に僕は曜の体に腕を回そうとした。あとほんの少し、ほんの少しで彼女とファーストキスをする。胸の鼓動が尋常ではない。こんなに接近しているのだ相手に自分の鼓動が聞こえていないか心配だった。あと5ミリも間隔はないというところまで来た時に僕も目を閉じた。そしてついにその時が・・・・・・・・来ようとした瞬間後ろから全速力で走りながらゼイゼイと荒い息をかいたもう一人の幼馴染がやってきたことに気が付いた。無意識のうちに僕たちは再び距離を取った。僕たちのもとにやってくると千歌は膝に手を当てながら必死に息を整えようとした。
「お、おは・・・よう・・」
まだ息も整っていないのに朝の挨拶はしっかりするのか。変なところでまじめだな。
「おはよう、千歌。」
「おはよう、千歌ちゃん。」
僕たちはさっきのことを千歌に見られたか心配だったか気になるが、今はばれないように平然と装った。すると千歌はいつもの太陽のような笑顔で僕たちを見上げた。
「えへへ、間に合った。」
「千歌・・・その発言はしっかりと約束した時間に着いていた時に言うべき言葉だと思うぞ。」
「えー、そんなぁ。」
「千歌ちゃん、また寝坊?」
「またとか言わないでよ。まただけど。」
千歌とはいつもの会話が進んだ。この後もさっきのことを問い詰められるようなことはなかった。どうやら見ていなかったようだ。そのことには曜も気づいたらしく、いつもの自分を装っていた。千歌にとってはいつもと何も変わらない朝なのかもしれないが、僕と曜にとってはなんとも惜しい経験をした朝になった。今思い返すと道でなんてことをしようとしていたんだ。運よく他の生徒が近くにいなくてよかった。もし見られていたら今頃大変な目にあっていただろう。何しろ曜は先輩後輩問わず人気がある。そんな学園のアイドル的存在のゴシップなんて一般市民の僕には身が重すぎるからね。というか見ていなくても後々思い返すと自分が恥ずかしくなってきてしまった。なんてことをしようとしたんだ僕は。
朝起きたらシリーズ2
今回は朝起きて鏡を見たら寝癖が全然立っていなかったが逆に立たなさ過ぎて片方に寄ってしまい東〇喰種のトーカちゃんみたいになってた。自分でも驚きました。こんなに前髪が伸びていたのか、と
読んでいただいた皆様に神々の祝福があらんことを