綾斗は曜に誘われて、夕食を共にするために自分の家の向かいにある幼馴染の家にお邪魔していた。子の幼馴染の家には今まで何度も来たことがあるが、中学生になってから彼女の家にお邪魔するのはこれが初めてだった。この2年間、何かと理由をつけて入ることを避けてきていた。しかし今回は親の急な出張によってやもなく入ることになった。綾斗は久々のことに心臓の鼓動が早くなり、体が震えてきてしまい、今までにないほど緊張していた。そんなガチガチになっている綾斗を見ながら曜は
「綾斗君、大丈夫?」
と言ったが、綾斗はろれつが回らないことを必死にこらえて返事をした。
「だ、大丈夫、だよ。」
「ホントに? 体震えてるよ?」
「大丈夫、久々でちょっと緊張してるだけ。」
「そうなの? 前に来た時みたいにもっとラフになればいいのに。」
曜の発した一言は綾斗の心に突き刺さった。それと同時に綾斗の脳内には一つの思い出が浮かんできた。その思い出とは、自分が最後に渡辺家を訪れたときの記憶だった。当時は、今とは違い何も考えずに入っていった。もっと小さいころも難なく入っていけていた。しかしあの時以来入ることを避けるようになった。今脳内に流れている記憶はその時の記憶だ。あれはたしか2年ほど前の小学生最後の夏休み、その時もまた当時ではいつものようにお邪魔していた。その時は確かお昼ご飯を一緒に食べる為だったか。その当時のお昼には何の問題もなかった。むしろ、っても楽しかった。しかし問題はこの後に起こった。お昼を食べた二人は曜の部屋で一緒に遊んでいた。そのうち二人は食後ということもあったのか、急な眠気に襲われた。そこで瞼が重くなり、意識が途切れ始めて、横にあったベッドに倒れてしまった。そして目が覚めたら、自分の目の前には曜の寝顔がすーすーと可愛い寝息と立てながら転がっていた。当時の曜は、そのまま綾斗を抱き枕であるかのように抱き着いてきて、綾斗は曜に包まれていた。あの時の間隔はよく覚えている。自分の顔が曜の胸に押し付けられていたのだ。窒息するのではないかと思うほど息苦しく、自分の周り全てから曜の香りがして、どうしたらいいのか全く分からず大人しく曜に抱かれていた。今まで曜と一緒にいると妙に心がざわついて、鼓動が早くなっていった。しかしその現象が何なのかはわからなかったが、この時確信した。自分は曜のことが好きだったのだと。しばらくして曜から解放されたが、曜はその後も眠り続けていた。そんな曜の姿を見ているだけでも自分の鼓動はどんどん早くなっていく。あれ以来いつかこの気持ちを曜に言おう言おうと考えていたが、まだまだ自分の心が弱いせいでまだ何の進展もなく現在を迎えている。だから決めたのだ。次に来る時までには告白していようと。しかしその強い意志も今日で終わりを迎えようとしていた。もう諦めるしかないのだろうか。
~*~
気持ちに区切りをつけた綾斗は曜の後に続いて家に入っていった。約2年ぶりとなる幼馴染の家の玄関はどこも変わっていなかった。ほとんどすべてがあの時のままだった。変化した点を挙げるとしたら、曜の靴のサイズが大きくなったことくらいだろう。しかしそれ以外は本当に何も変わっていない。そして変わりがないのは奥から歩いてく叔母の姿もった。
「綾斗君、久しぶりに家に来てくれたわね。」
そういった叔母は自分の娘同様の明るい笑顔を向けてきた。この人とは学校の行事や地域活動で顔を合わせることが多かったが、2年前からは顔を合わせる頻度は下がっていき、今では今年の正月の初もうでの時に出くわしたくらいだろう。
「最近来てくれないから、元気にしてたか心配だったわ。」
「はあ、すいません。」
「いいのよ。君くらいの年頃の子は色々難しい時期だし。さ、あがって。もうすぐ夕食ができるわ。」
「はい。」
叔母に案内され、リビングで待っているように言われた。もうすぐ曜が下りてくるそうだ。それまではテレビでも見させてもらおう。
30分ほどすると、扉の向こうから階段を誰かが下りてくる音が聞こえた。きっと曜のものだろう。リビングのドアが開かれると、制服から私服に着替えた曜が立っていた。
「お待たせ、綾斗君。どうこの服?」
「・・・どうって、休日によく着てるじゃないか、その服。」
「そうだけどさ・・・」
「・・・・まあ、似合ってるんじゃないのか。」
「ほんと? えへへ、ありがと。」
お互いに言ったはいいが照れてきてしまい、目が合わせれなくなっているとmキッチンから叔母の声が聞こえてきた。
「あらあら、仲がいいわね。夕食の準備ができたわよ。」
~*~
叔母が用意した夕食は3人分とは思えないほど量だった。大皿に盛った品が次々とキッチンから運ばれてきた。
「久々のお客さんで張り切りすぎちゃった。綾斗君これ全部食べられる?」
職辰の端から端まで見渡したが、全部で10品は軽く超えているだろうし、自分の胃袋が持つ自信もない。微笑しながら叔母に向かって首を横に振った。
「厳しいです。」
「そうよねえ。じゃあ、残ったらたっぱか何かに入れるから持って帰って食べて。」
「ありがとうございます。
あくまでも僕に食べさせたいのか。しかし持って帰って食べることに不満があるわけではない。それに叔母の料理はお世辞なしで美味しい。料理の腕はそこらの飲食店にも負けていないと思う。ただ、昔から量が多いのだ。過去にも食事をして持って帰ることが幾度となくあった。そしてそのたびに自分の家の冷蔵庫はいっぱいになってしまう。今もうちの冷蔵庫の中には叔母が趣味で作ったジャムやら肉じゃがやらが残っている。これ以上何かを貰うと、一日に今まで以上の食事をしなければならなくなってしまう。今のうちにできるだけ減らしておいた方がよさそうだなと考えた綾斗は、いつも以上に食べても胃に優しそうなサラダに手を伸ばした。しかしここでサラダばかり食べていると、叔母から強制的に魚やら肉やらが自分の皿の上に乗せられてしまう。ここはより戦略的に取っていかなければ。なんだろう、ゲームみたいになってきたな。
夕食は進み、やっと食卓の半分くらいが無くなったという頃、叔母がふと口を開いた。
「そういえば、綾斗君。ギターはまだ続けてるの?」
黙々と進んでいた綾斗の手がピクリと反応し、急に動きを止めた。そして今までは楽しそうな雰囲気を漂わせていた表情からは余裕が消え、暗く、闇の中をさまよっていると出言うような表情になった。しばらく、俯いたままだったが、一度持っていた箸をおくと、全力の作り笑顔で返答した。
「いやあ、最近はめっきりやめてしまって。多分これからもやらないと思います。」
「そうなの? それは残念ね。私結構好きだったわよ、あのギター。」
叔母は笑いながらも言うが、綾斗の目は笑っていなかった。それは絶望に落ちてしまった暗い目をしていた。彼がこうなってしまった原因は、不幸の連続にあった。最初に不幸が起こったのは1年前、ギターのオーディションの時だった。会場に行く前に交通事故に巻き込まれ、盛大は遅刻をし、引き始めたらギターの言が切れて、次の日は綾斗と同じくギターを弾いていた、父親が死んだ。ここまで不幸が続いた綾斗はこれは神様が僕にギターを弾くなと言いたいがための現象なんだと解釈をして、二度とギターに振れなくなってしまった。そのことを曜は知っているから、自分の親がこの質問をしたときには心配そうにこちらを見つめてきた。彼女も、叔母とは同じ意見を昔、綾斗に言った。私は君のギターの音色が好きだ、これからも続けてほしい、と。しかし綾斗がその意見に答えることはなかった。代わりに彼は自分のギターの家の倉庫のずっと奥にしまった。二度と、自分の目に入らないように、死んでしまった父とのつながりを一つ捨てたのだ。曜は自分の親の耳元で2年前のこと、今までのことを話した。それを聞いた叔母は今までの明るい表情がだんだんと曇り始めた。
「知らなかったわ。ごめんなさい。」
「いえ、いいんです。時間が過ぎればいつかは忘れることですから。」
しばし沈黙の空間が続いたが、ほどなくしてその空間が破られると、再び夕食が再開された。今度は先ほどまでとは違い、全体的に口数が少なかったが、それでも3割ほど残ってしまい、結局持って帰ることになった。
~*~
夕食を終え、しばらくリビングでぼっーとしていると、時刻は午後9時を回っていて、窓から外を見るとすでに太陽は沈んでいて、辺りは闇色に染まっていた。
「そろそろ、帰るよ。」
「えっ? もう?」
「もうって、9時過ぎてるけど・・。」
「ホントだ、楽しい時間が過ぎるのはあっという間だね。」
「・・・・そうだな。」
テレビの前に置いている、学校指定のカバンを手に持つと、玄関に向かって歩き出した。そして曜も玄関に向かて歩いていく綾斗の後ろについていった。リビングを出て靴を履いていると、もう一人の人物がやってきた。
「あら? かえるの?」
「はい、外も暗くなってきたので。」
「そう、気を付けて帰ってね。」
「大丈夫ですよ。向かいですので。」
靴を履き終わると、二人に向き直り、一礼してからドアノブに手をかけた。外の空気は冬の寒さほどではないが、涼しいとはいいがたく、部屋の中でぬくぬくを過ごしていた体には、突き刺さるような寒さだった。ポケットから家の鍵を探していると、後ろからドアが開く音がした。振り返ると、そこには曜が立っていた。
「曜、どうした?」
「お見送りだよ。」
「見送りって、向かいに住んでるんだから必要ないだろ。」
「いいのいいの。」
曜はにこにこと笑っているが、彼女の服はさっきまでの私服一枚だけなので、とても寒そうだ。そこまでして僕を見送ろうとしているのか。
「曜、寒いんだったら中に入りなよ。」
「じゃ、遠慮なく。」
そういった曜は綾斗の懐に飛び込んでくると、体を摺り寄せてきた。
「ひゃー、あったかい。」
「よ、曜何してるんだよ。」
「だって綾斗君が中に入れって言ったから、こうして綾斗君に包まれに来たんだよ。」
「そういう意味じゃない。寒いなら家に入れって意味だ。」
「なら、大丈夫だよ。私今すっごくあったかいから。」
そういうと曜はより体をくっつけてきた。綾斗の方も、寒さは感じていたため、曜とくっていているとまるでカイロのようなぬくもりを感じた。それに曜が密着してくるせいで彼女の胸が当たってしまう。なぜ今年はこんなことが多いのだろう。
「曜、家の前だから離れよう。それにもう回りも暗くなってる。」
「・・・・もう少しだけ。」
「ダメだ、君の少しはものすごく長いだろ。」
「うーわかった。」
そういった曜はゆっくりと離れた。しかしこういったはいいものも言った本人である綾斗自身も少し残念と思っていた。だけど、これ誰にも譲れない決心ができた。いつかしっかりとした形で曜には告白をする、しかし今の自分にそんな勇気は存在しない。だからその一歩が踏み出せるまで、それまで彼女には待っていてもほしい。それが綾斗に新しく生まれた思いだった。
最近ポケモンのウルトラムーンにのめりこんでいます。冬休みみたいな長い休みじゃないとなかなかできないですからね。取りためしていたアニメとドラマを消化しないと。
ポケモンのアニメも40話くらいから見れていなんですよね。今日中にレベル100は何体できるだろうか。現在95レべのルガルガンと97レべのネッコアラと99レべのジジーロンを育てています。忙しい忙しい。
読んでいただいた皆様に神々の祝福があらんことを