瀬をはやみ   作:EIMZ

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いつの間にかUAが2000越えしていました。皆さんありがとうございます!


修学旅行 0

「はあ、メンドクサイ。・・・えーと来週から修学旅行で京都に向かいます。2日以内に班員を決めるように。なんやかんや君たちで適当に決めたら、僕たち二人に報告してください。バスの席は班ごとに決まるから反論は許さない。質問は? ないな、HL終了。」

 

綾斗がメンドクサイをさっさと終わらせたい様子がみんなに伝わったのかそれとも今質問したら本気で睨まれて身の危険を感じたのか、誰も質問はしてこなかった。隣では曜が和やかな目でいつものことでも言いたげにしていたが、こういうイベントには非参加的な綾斗は速く終わってほしいとしか考えていなかった。しばらくすると6時間目のLHLは、終了のチャイムとともに終わりを告げた。帰る前に先生からの連絡がいくつかあったが、その連絡も終わるとクラスメイトの面々はそれぞれ教室を出ていった。そのまま部活に行くもの、委員会に行くもの、図書室で自習するもの、そのまま下校するため校門に向かうもの、友達と変えるべく他の教室に向かうもの、さまざまだが、その中で僕は委員会の仕事があるので会議室へと足を運んだ。しかも今日は運悪く曜は部活の練習で仕事に来れないらしい。代わりに誰かに頼むということもできたが、いちから仕事を説明するとなるとそれはそれでメンドクサイ。ならばいっそのこと自分一人でやったほうが早いだろうと判断し、一人で会議室へと足を運ぶ綾斗であった。その足取りは決して明るいものとはなく、心の底から嫌だという気持ちが表れていた。階段を下りきったころ、綾斗は自分のカバンの中にしまってある委員長の腕章と取り出した。この腕章は普段からつけていなくてはならないのだが、これをつけている時は必然的に気を張らなくてはならないので正直あまりつけていたくはないものだ。曜はこの腕章は何ら嫌悪感は抱いていない様で、普段からつけている。たまにだが、曜が口うるさい女子じゃなくてよかったと感じる時がある。まあ、それはそれで面白いかもしれないが、僕は今の曜が好きだな。などと考えながら会議室に向かっている途中で他クラスの委員長にあった。

 

「こんにちは、水崎会長。」

 

いたずらそうに声をかけてきたのは隣の3組の委員長で庶務に所属している男子生徒が声をかけてきた。

 

「・・・僕はまだ生徒会長になった覚えも、生徒会に入った覚えもないぞ。」

「冗談が通じない人ですね。生徒会長は基本その年の正副委員長がなってるじゃないですか。もう水崎君が生徒会長に決まったようなものですよ。」

「勝手に妙な法則を作るな。」

「すいませーん。反省しまーす。」

「はあ、まったく・・」

 

彼に背を向けて再び会議室に向かって歩き出した。綾斗の後ろでキョロキョロと辺りを見渡していた庶務は自分の前を歩いている綾斗に問いかけた。

 

「今日は渡辺さんいないんですね。」

「今日は部活の練習優先の日だそうだ。」

「へー。そういや渡辺さんここいらでは有名ななんかの選手だったな。」

「高飛び込みだ。」

「そうそう、それです。すごいですよね、渡辺さん。」

「・・・そうだな。」

 

昔はただの幼馴染だった曜のことが今では少し遠くの存在に思えた瞬間だった。それはまるで世界からいつもあるものが消えたかのような感覚だった。その気持ちは心の中から姿を消すことはなく会議室に向かっている間にも綾斗の心の中にとどまり続けていた。

 

~*~

 

今回の会議の内容は、来週に控えられた二年生の修学旅行のことだった。最初は先生のありがたくもなんともない長い話を聞き、長ったらしい先生の話が終わると、しおりを作る作業に取り掛かった。今回の修学旅行は2泊3日ということもあって、一人分のしまりの分量は中々なものになっていた。しおりになるページを全てホッチキスで止めいくという流れ作業をしていた。最初はまだやる気が合ったが、その気持ちも段々と薄れていき、クラスの半数を過ぎた頃には、何もかもを放り出してなって逃げだしたくなって。クラスの半数が終わったということはもしもこの場に曜がいたらここで終わっていた可能性があったということだ。さっきまでは練習を頑張っている曜を応援しているような気持だったが、今はここにいない彼女を少し恨んでいる気持ちがあった。しかし曜が練習を抜け出してこの仕事を手伝ってくれるわけはない。それは当然のことだ。当然のことがだどうしても納得がいかない。人を推薦しておいて、こういうことは僕にやらせるのか。あのちゃっかりめ。いつまでも続くように思えるどこまでも同じ作業。一枚目から最後のページまでホッチキスで止める。挟んで止めて、挟んで止めて、挟んで止めて、また挟んで止めて、さらにまた挟んで止めて、またまた・・・・。

 この迷宮が終わりを迎えたのは作業開始から1時間後のことだった。そのころには他の委員たちは既に帰ってしまっていた。窓から外を見るとすっかり日は暮れてしまっていて、部活をしていた生徒も帰宅している。どうやらもうすぐ完全下校時間ようだ。このしおりたちを職員室にもっていったら僕も帰らなきゃな。窓側に置いていたカバンを持ち、プールの方に目を向けてから完成したしおりを先生に届けるべく職員室に向かった。

 

~*~

 

 放課後に居残り作業をしていた日から3日後、2組では続々を修学旅行の班が決まっていった。班が決まることに問題はないがどこのクラスにも班決めの渦からはみ出された生徒は多々存在する。その例が今回の綾斗だったわけだ。学校の都合上、委員会の中から一人自由行動中に本部で仕事をしないといけない人が出てしまった。そしてその役人に抜擢されたのが綾斗だったのだ。理由としては、正委員長だからということと、仕事の正確さということだったが、どうせ決めるのが面倒だからリーダーに任せたのだろう。和気あいあいと京都でどこを回ろうか、何を食べようかと話し合っているクラスメイトの姿を見て、恨めしく思う綾斗であった。教卓に肘をつき、大きなあくびをしながらHLが終わる鐘の音を今か今かと待ち続けている委員長の姿はほとんどの生徒の目には入らなかった。ほとんどの生徒には。曜と千歌だけは申し訳なさそうにこちらを見ていた。しかしそれもつかの間、他の班員が盛り上がるとそちらに顔を向け他の生徒と同じように楽しそうに笑っている。それはこのクラス中に満ちている明るい空気が及ぼした影響なのか、心の底から一人退屈そうにする正面のことを忘れてしまったのか、あまり知りたくはない謎だった。輝いて見えるクラスメイト達を見ていると、本気で呪ってやろうかと思い始めた綾斗は自分の症状が末期になりかけてるのではないかと思い、光を放つ空間から目をそらすように手元にあるしおりに手を伸ばした。このしおりも自分一人で作ったというのに、感謝もしないと薄情な奴らだ。

 3日前に作ったしおりの1ページ目には美術部が書いた表紙絵が乗っていた。どの絵も修学旅行が楽しみだという気持ちがこもっているように見えた。思わず絵に穴をあけてしまいそうになるも次のページに目を移した。2ページ目、表紙の裏には3日間と通しての主な予定が記されていた。1日目にバスに乗り奈良経由で京都に向かい、2日目に京都で班別自由行動、3日目は沼津に帰るという流れになっている。つまり、水崎綾斗の修学旅行の2日目は本部が置かれてる旅館で一日を過ごすことになる。つまらない一日になりそうだ、台風でも直撃したらいいのに。




 修学旅行、皆さんはどこに行ったでしょうか。学生時代にみんなと過ごす時間って過ぎていくと本当につかの間に感じてしまいますね。みんなでバスに乗って、新幹線に乗って、怖い話をして、夜更かしして先生に怒られて、一緒にお風呂に入って、一緒にご飯を食べて、中学校生活も終わりを迎えようとしています。楽しい時間は本当にあっという間なんですね。でも、受験前だけはもう少しゆっくり時間が流れてほしいな。

読んでいただいた皆様に神々の祝福があらんことを
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