合州国の怪物達   作:あかしあ

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誤字修正すげえ。なんだあの機能。素晴らしすぎる。

実は目標にしていた203ptを皆様のおかげで達成することができました。
ありがとうございます
そして、自分へのご褒美にプロット上省かなきゃいけない予定だったお話を番外編で書きます。


004 悪巧み4/4

 ”セカンドライフ”の活動は多岐に渡る。

 基本的には政治結社だと考えて問題はない。しかし、それは存在を知られた場合のカモフラージュという側面が強い。”セカンドライフ”の最大の目的は『転生者の保護』と『転生者の生み出す利益の共有』である。”セカンドライフ”結成を主導したフラウホーンが前者を規定し、後者を提案したのはジョージだった。後者を行う過程で、政治結社として活動することが多いため、政治結社と言っても間違いではない。

 

 転生者の保護。これは言ってしまえば、前世という巨大なアドバンテージを持つ者を自分達の側に囲い込むということだ。

 転生者の生み出す利益と共有。これは妥協案である。”セカンドライフ”は最初にフラウホーンとジョージとデイヴィッドの三人で結成されたのだが、当初から色々と揉めた。お互いの目標も違えば、手段の選択も違う。何でもマンパワーと工業製品で解決しようとするフラウホーン、世の中所詮金だとまず考えるジョージ、武器を売ることしか興味のないデイヴィッド。そんなの揉めて当然である。

 「人の生活を支える」という意志の強いフラウホーンと、「人の死に便乗して儲ける」デイヴィッドは、お互いが転生者と認識する前から人間性的に犬猿の仲であったし、「人間より札束の方が暖かい」という思想のジョージのドラスティックさは、時折二人をして犬猿の仲だった事を忘れさせるレベルだ。

 

 そんな彼らにも、一つだけ共通点があった。

 『利益』が大好きなことである。その出世欲を満たすために、自己保身の可能な範囲において、彼らは常に利益を追い続ける存在である。

 だからこそ、そこに”セカンドライフ”という組織を成立させる妥協点が見出された。

 そして、彼らは話し合いを進める中で、お互いのアイディアを”セカンドライフ”を通して接続することによって、想定していた以上の利益を生み出せることを理解した。

 

 何が言いたいのかというと、彼らの語るビジネスとは歴史を俯瞰的に学んだエリート達によって行われるブレインストーミングである。

 さらに、この世界では”魔術”という神秘が、科学の一部と認識されている。

 その化学反応は恐ろしい代物だった。

 

 「そういえば、去年融資した魔術動力のフォークリフト。開発に成功したんだってね」

 

 ワインの香りを楽しみながら、フラウホーンに問いかけたのはジョージだった。

 フラウホーンは、整えられた髭を撫でながら得意気な顔でそれに答える。

 

 「ああ。どうやら、ウチの現場からそちらにも情報が伝わっているようだな。我がGEの開発チームによって作られた新型エンジンには魔力を動力として運用することが可能だ。しかし……量産コストがなぁ……。その辺りはウチの自動車バカに相談しようと思っている。アレは車やバイクだけなら天才と遜色ない判断やアイディアが期待できるからな」

 「フォークリフトって車扱いなのか?」

 「お前、武器以外は本当に興味がないな。ト○タが民間の自動車販売で儲けていると思ったら大間違いだぞ?最大の売り上げを上げていたのは産業車両の販売だ。その中にフォークリフトも入っている。この話をすればあいつなら車判定するだろう。まあ、偶数個のタイヤがついていて、何かしらの動力で動いていればアイツにとっては車判定になるんだろうがな」

 「あぁ……。一輪車はアウトだけど、自転車は『動力が人間って考えたら実質バイクじゃね?』とか言い出して色々作り始めてたもんな。あいつの思考回路どうなってんのか興味あるわ」

 

 話に途中から入ったデイヴィッドは、呆れたような仕草をしながらそう言った。

 そして、思い出したように言葉を続けながら、酒の棚を適当に物色し始める。

 

 「そういや、フォークリフトで思い出したんだが、以前から話し合っていたスーパーマーケットを通して小売・流通に食い込もうって話はどうしたんだ?おお!オールド・タブあるじゃねーか!ジョージもバーボン飲むんだな」

 「僕じゃなくて、店主の趣味でね。僕はもっぱらワインだね。ただ秋津島皇国には、上等な日本酒の大量生産に期待したい。スーパーマーケットについては人材に心当たりが一つあるよ。何故すぐに思い至らなかったのか、自分の脳みその劣化を疑うレベルの人材さ」

 「ジョージがそこまで言うのは珍しいな。だが、それなら俺達が知っていてもおかしくない人間なのだろうから、我々の落ち度でもあるな」

 

 フラウホーンはそう言った後に、人材の心当たりを考え始めた。顎鬚をさすりながら考える彼の姿にはどこか愛嬌がある。

 ジョージは、少しフラウホーンの答えを待ってからヒントを出す。

 

 「僕たちはよく知っているはずで、しかも転生者だ」

 「転生者だと!?新しく見つかったのか?しかし、それならその話を冒頭の議題にすべきだろう。それがここのルールだ」

 「いや。報告はしていたよ。彼女のことはね。いいや、彼と言った方が彼女は喜ぶかな?」

 「お前!まさか!」

 「そう。帝国に居る、我々の天使様のことだよ」

 「ぶっ」

 

 デイヴィッドは口をつけたバーボンを噴出した。すまないと謝りながら、すぐにハンカチを取り出して机を拭く。ジョージは少し不満そうな顔をしながらデイヴィッドに文句を言う。

 

 「デイヴ。何もそこまで驚かなくてもいいじゃないか。彼女は、大分卑屈になっているが企業人としては相当優秀だし、戦争が終わる頃には戦闘団クラスの部下を率いた経験がある。経営者としての才能は分からないが、そこはこちらでフォローする人材を見繕えば解決可能だ。それに、軍事を専門に学んだ人間は我々の中には居ない。新しい視点をもたらす可能性も高い。招き入れても問題ないと思うが」

 「いや。噴きだしたのは、お前が天使”様”とかいう単語を使ったことにだ。神様と1万ドルの束を心の天秤に乗せたら、神様が外宇宙にまで吹っ飛んでいくような人間の口から出る単語じゃねーし。お前からそういう宗教を敬うような単語を始めて聞いたもんでな」

 「そういうことね。ひとつ言っておくと、一応神様の存在は信じてるよ。僕たち転生者がいる訳だからね。ただ、敬っていないだけの話だ。転生させてもらった感謝と訳の分からない存在を尊敬することは別の話だ。それに、僕たちを転生させたのは神様ではない。日本人的にはアレも神様扱いだけどね」

 「宗教問答は、また後にするとして、どうやって帝国から引き抜くんだ?我々の前世の歴史を参考にするなら、帝国の軍備をメチャクチャにするとなれば、優秀な人材ほど手元に残すために帝国は躍起になるだろう」

 

 フラウホーンは、そう疑問を投げかけた。

 ジョージは、チッチッチと舌を弾きながら、フラウホーンに答える。

 

 「ミスター・センターフィールド。それは実はとても簡単なことなのだよ」

 「イライラするから、シャーロック・ホームズを気取るのは辞めろ」

 「悪かったからそう怒らないでくれ。実はね。合州国に亡命してくるんだよ。ターニャ・デグレチャフ殿はね」

 

 肩透かしを食らったのはフウホーンとデイヴィッドだった。

 聞いていないぞと、気を取り直したフラウホーンがジョージをジト目で睨む。

 

 「正直に白状するとね、彼女を僕たちのような転生者として括っていなくて、原作登場人物としてどこか遠い存在として考えていたんだ。でも、冷静に考えてみると、彼女だって”セカンドライフ”の目的で言うなら”保護対象”だ。メンバーになるのに問題ないと思ってね。ただ問題点もある」

 

 ジョージはそこから、覚えている範囲内でのターニャ・デグレチャフという人間を語る。

 自己保身の塊であるとか、出世欲がえらい強いとか、前線向きの能力をしているだとか、そういった彼女の内面から能力の印象などを二人に伝えた。

 デイヴィッドは、それを聞いて何か一つ思いついた様子で感想を言う。

 

 「なんというか日本人って感じじゃねーよな?行動力がありすぎんだろ。まあそこはどうでもいいか。それよりも、流通系の準備が整うまでウチの試作品のテストとかやってもらいたいぐらいだな。話を聞く限り、あの軍事大国で有数のエースの腕前から見た兵器や武器の感想は間違いなく利益になる」

 「そうだろうな。戦略レベルでの思考が可能なら、物流含めて俯瞰的に考えられるだろう。それにな、チャイナ周辺の海は治安が悪くてな……。彼女の部下数人をベースに、質のいい護衛組織を作りたい」

 「どちらも良いアイディアだと思う。しかし、最後の最後の問題だ。彼女の亡命は、十中八九連合王国の紐付きになる。しばらくで途切れるが、僕たちの接触で”セカンドライフ”の存在に一気に詰め寄られるかもしれない」

 「それについては、問題ないだろう。合州国の政府内で、我々の存在は既に極小規模ではあるが露見している。ただの政治結社だと思われているがな。情報機関の未熟な合州国では、既に連合王国は我々について調べ始めていると考えるべきだ。つまり、いずれはバレるということだ。出来る限り遅いほうが都合はいいかもしれんが、戦後であればどうとでもなるだろう」

 「戦後なら、連合王国の力は間違いなく削れているからね……。そうだね。それなら、戦後に僕たちのリソースが大きく取れるようになったら、スーパーマーケット関連準備から任せてその後で彼女にプレゼントすることにしよう。さて、もうそろそろいい時間だ」

 

 ジョージはそう言って時計に目をやる。つられてデイヴィッドとフラウホーンも時計を見ると、そこには午前2時を指している時計があった。

 

 「それなら、俺から出るぞ。出口は3番を使う」

 「了解。じゃあこっちは2番から帰る。オールド・タブ貰っていっても?」

 「好きにしてくれ。ワインじゃなければ勝手に持っていってくれて構わないよ。それじゃあ僕は5番にしよう。それでは、また二週間後に会おう」

 

 この秘密の個室は地下に作られており、複数の出口がある。出口は、それぞれまた別の酒場と繋がっており、彼らはそれを番号で管理している。このような場所が、20州に5箇所ずつある。設計はデイヴィッド、資材はフラウホーン、金はジョージ、施工は何も知らないし横の繋がりも存在しない建築業者達だ。

 元々マフィアを率いていた男は、隠家を作る知識は大変豊富である。

 

 彼らは、酒の匂いを漂わせながらそれぞれのねぐらへ帰っていく。

 この時の彼らは、自分達が足を踏み入れる”大戦”の恐ろしさをまだ理解していなかった。

 だから足取りも軽やかで何の憂いも持っていなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は来週中に。

あと、何か土曜日に入ってからのPVが凄いのですが何があったんでしょうか?
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