「───全力無双激烈拳!!」
「───マーネネッ!!」
連続で拳が放たれる。
拳から放たれる無数の衝撃波がハリテヤマを襲った。
「なんと……っ。ハリテヤマ、堪えますぞ!」
ハリテヤマはその巨大な平手で衝撃波を受け止めようとするが、Z技の威力は知っての通り強大である。
ハリテヤマの巨体が押され、足が滑って土を捲った。
そうしてハリテヤマが一瞬バランスを崩し、マネネはその隙に全体重を乗せてタックルを繰り出す。
渾身の一撃。
衝撃で砂埃が舞って、会場はどよめいた。
「……やった?」
マッシブーンが現れた時にハラが見せてくれたかくとうタイプのZ技。
それをZものまねで放ったが、威力は絶大である。
この攻撃なら。
「中々やりますな」
砂埃の中からそんな声が聞こえた。
「───ならば、こちらもそれ相応に応えるべきだと判断しましたぞ……っ!」
そして、砂埃の中で何かが光る。
同時に突風が起きて、周りの砂埃が吹き飛んだ。
「マネネ?!」
「マ、マネ……?」
その突風でマネネが転がってくる。
「ハリーテ……ッ」
そして砂埃の晴れたバトルフィールドの上には、全身に傷を負いながらも山の如く立つハリテヤマの姿があった。
「嘘?!」
「マネ?!」
今の攻撃を耐えきって、尚も攻撃の姿勢に移るハリテヤマにシルヴィ達は青ざめる。
勝てなかった───いや、違う。
「こちらも限界ですが、君達のゼンリョクにはこちらもゼンリョクで……っ!!」
目を見開くハラ。
同時に彼はクロスした両腕を広げ、拳を左右交互に突き出した。
最後に突き出した右手は、勢い良く空気を殴って砂を舞い上げる。
そして同じポーズを取ったハリテヤマとハラを光が包み込んだ。
「Z技?!」
それこそが、本当の格闘Zのポーズ。
「さぁ、ゼンリョクでお相手してもらいましょうぞ。───ハリテヤマ、
「ハーリーテェェ!!」
連続で拳が放たれる。
マネネの放った衝撃波とは比べ物にならない力がフィールドを吹き飛ばした。
このままでは直撃する。
「マネネ! リフレクター!!」
「マネー!!」
対してマネネは自分の正面に空気の壁を作りあげた。
リフレクター。
念力で固められた空気の壁に、ハリテヤマが放った衝撃波が直撃する。
爆音。
一撃で砂埃を上げるような衝撃波が、何度も空気の壁を叩いた。
今にも割れてしまいそうなリフレクターを、マネネはなんとか集中して念力で持ち堪える。
「マネネ……頑張って!!」
「さぁ、耐えてみなさい。これがワシのゼンリョク。受け取ってもらいましょうか! ハーッ!!」
空気が割れた。
「マネネ……ッ!!」
「ハリテヤマ……ッ!!」
リフレクターを突破され、衝撃波に吹き飛ばされたマネネに向けてハリテヤマが走る。
その衝撃は村の端まで届いて、バトルフィールドから離れていたリアの髪も大きく揺らした。
「……っ、どうなった?」
あまりの衝撃に目を逸らしていたリアはゆっくりとバトルフィールドに視線を移す。
一瞬舞い上がった砂埃が晴れて、立っているハリテヤマの姿が視界に映った。
「負けか……?」
そして、マネネはフィールドの中で倒れている。観客達は息を呑んだ。
「ハリ……テ……ハリ……」
ハリテヤマも殆どギリギリの状態だが、しっかりと立っている。
「勝負ありましたかな……」
しかし───
「このこ、街の悪戯っ子だったって聞きました……」
俯いたまま、シルヴィはそんな事を言った。
「……むむ?」
「確かに沢山の人を困らせてたかもしれない。でも、マネネはただ……遊びたかっただけなんだと思います。だって……こんなに凄い痛そうなのに───笑ってるから!」
前を見て、シルヴィも笑う。
マネネは倒れながらも笑っていた。
「まだまだ───遊び足りないよね!! マネネ!!」
「マネ、マネネ……ッ!」
立ち上がるマネネ。観客達の歓声が湧く。
「なんと、今の攻撃を耐えた。ほほう……っ!!」
「いっけぇぇ、マネネ! 突っ込んで!!」
シルヴィの指示で体格差のあるハリテヤマに果敢にも突進するマネネ。そんな光景に会場はどよめいた。
「ここで接近戦か……?」
クリスが驚くのも無理はない。マネネの技の構成上、近付いたって特に有利になるわけではないのだから。
「いや、違うぞアレ」
「マネネ、サイケこうせん───」
近付いてから、シルヴィはマネネにサイケこうせんを指示する。手を正面に向けるマネネ。
「無駄ですぞ! ハリテヤマ、はたきおと───」
だが近付こうがその技に対するハリテヤマの解答は変わらない。
───だからこそ。
「───と、思わせてリフレクター!!」
「───マネ……ッ!!」
「なんと?!」
しかし、マネネが使った技はサイケこうせんではなくリフレクターだった。
念力で空気が固められ、壁が出来上がっていく。
はたきおとすを繰り出したハリテヤマは空気の壁を叩いて、その攻撃は弾かれた。
かわらわりでなければ、リフレクターを破る事は出来ない。
そして攻撃を弾かれたハリテヤマには確実な隙が出来る。
「いまだ……っ!! マネネ、サイケこうせん!!」
「マ……ネネェエエ!!」
懐に潜り込んだマネネの掌から粘力が放たれた。
攻撃は直撃して、ハリテヤマを吹き飛ばす。
こうかはばつぐんだ。
「……ハ……リ、テ」
巨体が倒れ、地鳴りが響く。
勝敗は決した。
「ハリテヤマ戦闘不能ロト!」
「凄いなシルヴィ……」
歓声が上がる。
「ふふ、ふっはっはっは。完敗ですぞ!」
ハラはハリテヤマをモンスターボールに戻し「ご苦労でしたぞ」と労ってから大声で笑った。
放心状態だったシルヴィも、その声を聞いてやっと我に戻る。
マネネと目を合わせてお互いに目一杯笑い、抱き合ってその場でクルクルと回った。
「良き勝負でした。これならカプ・コケコも───」
「カプゥーコッコ!!」
ハラが言いかけた途端、何処からか何かの鳴き声が聞こえてくる。
「おお! カプ・コケコのさえずり……っ!」
それは、島の守り神。カプ・コケコのさえずりだった。
「島の守り神がシルヴィを認めたって事かな……。最後までマネネとバトルを楽しんだ彼女の勝利だねって……何処に行くんだい? 祝ってあげないのかい?」
バトルの感想を漏らすクリスの横で、リアは踵を返して村を去ろうとする。
クリスの言葉で一度立ち止まるが、彼女は振り向かずにこう言葉を落とした。
「次の島で待ってる。……その時はどっちが強いのか勝負だって伝えといて」
短くそう言って、リアは村を出て行く。
「Z技なんかに負けてられない……。私は、島巡りを破壊するんだ……」
その拳は強く握られていた。
「ライバルが良いバトルを見せてくれて焦ってるのか……それとも───」
そんな後ろ姿を見ながら、クリスは数日前にイリマから聞いた言葉を思い出す。
──R団の団員らしき人物の一人。ドーブルを使う男の正体をボクは知っています。彼はボクの幼馴染で、名前をライルと言います──
──ニャビーの今の持ち主。……リアの兄こそが、ライルです───
「……君は、何の為に戦っている」
自分と微かに似たものを感じて、クリスの視線は少しだけ強くなった。
「……む、そうであった! シルヴィ、これを」
そう言って、ハラはオレンジ色のクリスタルをシルヴィに手渡す。
「これは……」
「かくとうZのクリスタルですぞ。君のポケモンでかくとうタイプの技を覚えているポケモンは今は居ないかもしれないが、これは試練突破の証。受けってもらえますかな?」
ハラのそんな言葉を聞いて、シルヴィは笑顔でかくとうZのクリスタルを手にした。
「かくとうZ……ゲットだよ!」
「マーネネッ!」
シルヴィはかくとうZのクリスタルを天に掲げて、ハラはその手を持ち上げ讃える。
観客達から喝采が湧いて、シルヴィはそれに答えるように手を振った。
祭りは続く。
大試練が終わっても、村の盛り上がりは消えずに至る所で屋台が並んで大盛り上がりだ。
「Zリングはポケモンの秘めた力……Zパワーを引き出す不思議な腕輪。我々島キングはカプ・コケコにいただいた輝く石を加工してZリングにするのですな」
そんなお祭り騒ぎの村の中で、シルヴィとクリスはハラの話を聞きながら過ごす。
それはアローラの伝統、島巡りの話だった。
「もっとも、島巡りをしてZクリスタルを集めねばZパワーは発揮できませぬがな。Zクリスタルは試練や大試練をクリアすれば貰えたりしますぞ。今シルヴィ君は何個Zクリスタルをお持ちですかな?」
「えーと、ノーマルZとエスパーZ。それからかくとうZで……三つです!」
指で数えながらそう言うシルヴィを見て、ハラは満足そうに笑う。
「ほほう、それはそれは順調でなによりですぞ。タイプ別のクリスタルに加えて、あるポケモンのとある技にのみ反応する特別なクリスタルも存在しますからな。シルヴィ君の成長には期待が出来る」
我が子のように彼女の成長を喜んで、島キングハラは海の向こうに視線を向けた。
「それにしても、直にZパワーリングをカプに頂いた子供か……。今回はカプ・ブルル。……うーむ、少し懐かしいものを感じますぞ」
「懐かしい……ものですか?」
首を横に傾けるシルヴィに、ハラは懐かしむように視線を持ち上げてこう続ける。
「このアローラの初代チャンピオンも……いや、これはまた別の機会に話しましょうかな。……しかし、本当にカプから何かを授かる事は貴重な事ですからな。……何か、君にも使命があるのかもしれませんな」
「使命……」
そう言われて、シルヴィはこの島に来る前の事とこの島での出来事を順番に思い出した。
自らの父が首領を務める犯罪組織───R団。
そのR団がアローラで何かをしようとしている。
自分がここに来た事は何かの運命なのかもしれない。そんな事を考えながら、シルヴィはふとアローラに来た理由を思い出した。
──お前も旅をしてみろ。旅は良いぞ──
「……お兄ちゃん」
彼から手渡されたアローラ行きの飛行機のチケット。何かの運命というよりは、何者かに導かれてここにいるのか。
小さく呟いたシルヴィの声を聞いて、クリスは少し考えてから彼女の肩を叩く。
「シルヴィ、明日の夜の便でアーカラ島に行こう。運命とか神様とかは信じられないけど。……僕も、君がアローラに来たのは何か理由があるんだと思うよ」
「……うん。行こう、アーカラ島に!」
そんな二人を見て、ハラは満足気に頷いた。
月の光が二人の旅立ちを祝うように島を照らす。
メレメレ島での旅が終わろうとした。
剣盾楽しい(挨拶)
今年最後の更新でキリのいい所まで行けて良かったです。
一章はまだ終わらない()