ソードアート・オンライン 覇王と絶剣   作:高島 秋

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年末年始少し忙しくて投稿できなかったことお詫びします。申し訳ない!そしてあけましておめでとうございます!今年もよろしくおねがいします!少し長めですが、では!どうぞ!


迷いの森

35層迷いの森

 

(きっかけは些細な事だった。街に戻った時のアイテム分配についてパーティーメンバーの一人がこう言ったのだ。

 

?「あんたはそのトカゲが回復してくれるんだから、回復結晶なんていらないでしょう?」

 

前髪をいじりながらそう言ったのは槍使いの女性プレイヤー。その言葉に子竜を頭に乗せたツインテールの少女がムッとした表情になり、

 

?「ロザリアさんこそ、ろくに前衛に出ないのに、回復結晶が必要なんですか!」

 

そう言って反論する。実際彼女はろくに前衛に出ず、後ろばかりにいた。ダメージを受けてるはずがない。ロザリアと呼ばれた女性プレイヤーは尚も髪いじりを続けながら

 

ロザリア「もちろんよ。お・子・様・アイドルのシリカちゃんみたいに、男たちが回復してくれるわけじゃないもの?」

 

そう言ってのけた。その言葉にシリカと呼ばれた少女は益々ムッとした表情になる。残りのパーティーメンバーは険悪な雰囲気にオロオロとするばかりだ。

 

シリカ「わかりました!」

 

シリカ「アイテムなんて要りません! もう貴女とは絶対に組まない! 私を欲しいっていうパーティーは山ほどあるんですからね!!!」

 

背を向ける。メンバー達が止めるのも聞かず私は森の奥へと進んでいった。)

 

 

 

(パーティーと別れ、私は森を一人迷い歩いていた。私は後悔した。いやあのことについての後悔ではない。地図を持ってくることを忘れたことに後悔した。この森は踏み入れた者を惑わせ道を迷わせる。地図がなければまず突破は不可能だろうと言われている。そんな中、私は森の中でも最強の部類に属するドランクエイプとエンカウントしてしまった。

 

その数は3体。

 

前にも私はこのモンスターと遭遇していたが、その時はパーティーメンバーがいたので難なく倒す事ができた。それに自分には相棒の子竜もいる。故に私は今回も大丈夫だろうとタカをくくっていた。

 

それが仇となった。

 

最初はソードスキルを駆使し、ドランクエイプのうち一体を一気の追い詰める。しかし、止めを刺そうとした瞬間、別のドランクエイプがスイッチして飛び込んできたのだ。それだけではなかった、奥に引っ込んだドランクエイプは持っていた壺の中の液体を飲み始める。

 

直後、HPが全快してしまったのだ。

 

その光景に私は驚きつつ焦った。

 

戦況は必然的に徐々に傾いていき、私は追い詰められていく。減っていくHPを子竜が回復させてくれるが、それはアイテムには遠く及ばない。連続してくる攻撃を躱し、HPを回復させようとポーチから回復アイテムを出そうとして…………そこで気付く…

 

(アイテムが……ない!?)

 

私はその時が来るまで全く気づかなかった。ポーチにある回復アイテムはすでに底を尽きていることを。

 

一瞬の動揺。

 

それが大きな隙となり、ドランクエイプの攻撃が私を襲った。

 

が、それは私に届く事はなかった。

 

相棒の子竜が私の前に飛び出し攻撃を受けたのだ。

そのまま子竜は地面に叩きつけられる。)

 

シリカ「ピ……ピナ!!」

 

私は子竜こと、ピナに駆け寄った。

表示されているHPは勢いよく減っていってしまう。そしてそれはあっという間に尽きてしまい、ピナの身体が光と共に四散した。眼の前で起きた事に私はただ頭が追いついていかなかった。ピナが…死んだ…そんな心ここに在らずの状態である私にドランクエイプは無慈悲に武器を振り上げた。あぁ。ここで私は誰に知られることもなく、ひっそりと死ぬのだと。そう思い覚悟を決め…攻撃をまった。いよいよだ。

 

武器は…

 

勢いよく……

 

振り下ろされなかった。刹那、三体のドランクエイプはポリゴン片になり爆散した。私は何が起きたのかまるで分からなかった。一気に3体もの数を消し去るなんて…神業にしか見えない。舞い散るポリゴン片の向こうには1人のプレイヤーが立っていた。

 

薄汚れた灰色っぽい道着と袴を着た少年。

 

漆黒の瞳をした人がそこに居た。

 

しばらくの沈黙。やがて私は眼の前に落ちていた羽を拾う。それを抱える様に握りしめる。

 

シリカ「ピナ……あたしを独りにしないでよ……ピナぁ……う、うぁぁぁぁ……」

 

ボロボロと涙を零し、相棒の名を呼んだ。そんな彼女を見て少年は刀を収めて、

 

?「君がビーストテイマーだったのか。すまない。……君の仲間を助けられなくて…」

 

(言いながら歩み寄ってくる。だが、私は仕方ないと思っていた。)

 

シリカ「いいんです……あたしが馬鹿だったんです、一人で森を抜けようとしたから……」

 

?「……その羽根、アイテム名設定されてる?」

 

(少年はしゃがみ込んでシリカに訪ねる。言われるがままに羽根をタップすると『ピナの心』と表示された。それを見て私はピナが死んだのだと改めて思い、眼に再び涙が溢れ始めた。)

 

?「お、落ち着いて。心アイテムがあれば使い魔を蘇生できると思う。」

 

(そう言った。それなら、ピナは…

 

その言葉に私は少年と言うよりよく見ると青年っぽい男の人を見る。)

 

?「最近わかった事なんだけど、47層のフィールドダンジョンの

『思い出の丘』に使い魔の主人が行けば、蘇生用のアイテムが入手できるらしいんだ。」

 

それを聞いて顔が一瞬明るくなるがすぐにの表情は曇ってしまう。恐らくレベルが足りないのだろう。基本この世界では階層数よりもレベルが+10されてないと安全とはいえないみたいだ。

 

シリカ「……今は無理でも頑張ってレベル上げすれば……」

 

?「蘇生できるのは死んでから3日以内なんだ…」

 

静かに告げる。

 

それを聞いて目の前の女の子は泣きそうな表情になった。まぁ仕方ない。レベルなんてそんなすぐ上がってくるものじゃない。しかもドランクエイプに3体に苦戦しているレベルなら尚更だ。まぁ噂のビーストテイマーはこの子で間違いない。おっキリトが来た!

 

キヒロ「おーい!こっちこっち!」

 

(青年がそう呼んで来たのは全身真っ黒の少年だった。しばらくして軽く状況を説明し、自己紹介をし終わった頃、眼の前にトレードメニューが表示された。記されているのは聞いた事もないような装備品ばかりだった。)

 

キヒロ「これなら5、6レベルは底上げできる。俺も一緒に行くし、コンビ組んでるこいつにも協力してもらうからなんとかなる筈だ。」

 

そう言ってシリカに向かい合った。

 

立ち上がったシリカは疑問符を浮かべて

 

シリカ「どうして……そこまでしてくれるんですか?」

 

と問いかける。まぁ当たり前のことだ。見知らぬ人にいきなり装備あげる人なんて普通いない。するとさっき来た少年はバツの悪そうな顔をして、

 

キリト「……笑わないって約束するなら……言うよ」

 

シリカ「笑いません」

 

真剣な表情でシリカは返した。少しどんな返事が返ってくるかワクワクしながら、

 

キリト「君が……妹に似てるから……」

 

少年は恥ずかしそうに、そう呟いた。それを聞いてシリカはキョトンと呆気にとられるも、

 

シリカ「ぷっ……あはははははは」

 

キヒロ「あはははははははははは!!!」

 

すぐに堪え切れず笑いだしてしまった。笑わないって言ったのに。キヒロさんは大爆笑してるけど…キリトさんは苦い表情になって顔を背けた。

 

キリト「笑わないって言ったのに…キヒロは笑いすぎ!」

 

キヒロ「だって、なぁ、ぷっ!あはははははははははは!!お腹痛い!あはははははははははは!!」

 

(少し笑いすぎな気がします…)

 

シリカ「あ、ごめんなさい。」

 

言いながら残っていた涙を拭き、

 

シリカ「これ、足りないかもしれませんが……」

 

自分の所持金からいくらか出そうとするが、それを止められる。

 

キリト「お金はいいよ。俺の目的と被らないでもないし……」

 

そう言ってシリカの方を向いた。当の彼女は一瞬キョトンとしたがすぐに笑って言った。

 

シリカ「助けてくれて、ありがとうございます。」

 

35層 ミーシェ

 

 

森を脱出した俺達は街に戻ってきた。今はシリカの泊っている宿屋に向けて歩き出したところだ。その途中、何人かの男性プレイヤーに声をかけられる。内容はシリカのパーティーへの勧誘だった。俺達とパーティーを組んでいる事を理由にそれを断ると、男たちは判り易い嫉妬の眼をキリトに向けた。キリト可哀想に…シリカに促されその場を後にする。男たちは未だにキリトに嫉妬の視線を送っていた。

 

キリト「君のファンか……」

 

キヒロ「シリカは人気者なんだな。」

 

その問いかけにシリカは苦笑いになる。

 

シリカ「違いますよ……マスコット代わりに誘われているだけです……」

 

可憐な容姿を持ち、なおかつアインクラッドでは珍しい子竜、フェザーリドラをテイムしたシリカを中層では知らないプレイヤーはいないらしい。メイン武装の短剣も攻略組には及ばないものの中々の腕を持っていると聞く。それゆえ彼女を勧誘するギルド、パーティーは後を絶たないみたいだ。

 

シリカ「なのに……『竜使いシリカ』なんて呼ばれて……いい気になって……」

 

呟き思い出すのは相棒の子竜であるピナ。

 

自身の頭にいつも感じる筈の相棒の重さと温もりは今はもう無い。自身の慢心が招いた結果にシリカは再び涙目になった。そんな彼女に、

 

キリト「心配ないよ、必ず間に合うから」

 

キヒロ「そうだよ。だから泣かないで? な?」

 

二人はそう言って微笑みかけてくれた。それを見てシリカは涙を拭いて頷いた。

 

シリカ「そういえばお二人のホームって……」

 

ふと疑問に思った事をシリカは尋ねた。

 

キヒロ「少し上の層にあるんだけど……面倒だし、今日はここに泊るか。構わないよな、キリト?」

 

キリト「あぁ、構わないよ。」

 

問いかけにキリトは答える。するとシリカは笑顔になり、

 

シリカ「そうですか!ここのチーズケーキ、結構いけるんですよ!」

 

キリト「へぇ~、楽しみだなぁ~」

 

そうやりとりしていると

 

?「あらぁ? シリカじゃない?」

 

シリカの耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。幻聴かと思ったが、振り向くとそこには一番会いたくない人物がいた。

 

シリカ「ロザリアさん……」

 

表情を曇らせて眼を逸らす。

 

ロザリア「無事に森を抜けられたのねぇ? よかったじゃない」

 

嫌味を含んだ声で言いながら歩み寄ってくる。

 

ロザリア「あら? あのトカゲどうしたのよ? ……もしかしてぇ……」

 

更にいやらしい笑みを浮かべてロザリアは問いかける。それに対しシリカは、

 

シリカ「ピナは死にました……でも、絶対に生き返らせます!」

 

ロザリアを睨むように向かい合いそう言い放った。ロザリアの表情が変わったのに気づいたのはキヒロのみだった。

 

ロザリア「へぇ……って事は『思い出の丘』にいくんだぁ? でも、あんたのレベルで突破できるのかしら?」

 

対してロザリアはそう返す。その言葉にシリカは悔しそうな表情で口ごもる。

 

すると

 

キヒロ「余計な御世話だよ。オバサン」

 

キヒロがシリカを庇うように前に出て言い放つ。突然の言葉にロザリアは唖然とした表情になった。

 

ロザリア「お、オバっ……」

 

キリト「突破なら出来るさ。そんなに難易度の高いダンジョンじゃないからな」

 

続いてキリトも言い放つ。そんな二人を見回して、

 

ロザリア「ふぅん? 見たとこそんな強そうじゃないけど……ま、がんばってね」

 

そう言った。キリトは背を向けて

 

キリト「行こう。」

 

とシリカ達を促した。そうして去っていく彼らの背中を、ロザリアは意味ありげにニヤリと笑いながら見送っていた。

 

 

3人はNPCレストランの一席に座り夕食を採っていた。食事を終えてデザートがくるのを待っている時、

 

シリカ「なんで……あんな意地悪言うのかな?」

 

シリカが俯いたまま呟く。それに答えるように

 

キリト「君は、MMOはSAOが初めてなのか?」

 

キリトが問いかける。シリカは頷いた。

 

キリト「そうか……どんなMMOでも人格の変わる奴はいる。進んで悪人を演じるプレイヤーもね」

 

キヒロ「俺達のカーソルは緑色だよな?でも、犯罪を起こしたプレイヤーは、カーソルがオレンジになってオレンジプレイヤーって呼ばれるようになるんだ」

 

キリトの言葉に俺が続けて口にした。

 

キヒロ「なかでも、それ以上に危険なのがレッド……進んで殺人を犯すプレイヤーがいるんだ。」

 

真剣な表情で言う。

 

シリカは息をのみ…

 

シリカ「そんな……人殺しなんて……」

 

そう返す。

 

キヒロ「従来なら悪を気取って楽しめた。でも、SAOは訳が違う……ここで死ねば現実でも死んでしまうんだ。」

 

そこまで言って俺はカップを持つ手に力を込める。

 

キヒロ「このゲームは遊びじゃないんだ……」

 

苦い表情でそう言った。

 

キリト(きっとまだ罪悪感を感じているんだろうな…)

 

シリカ「キヒロさんはいい人ですよ! あたしを助けてくれましたから!それに、キリトさんだって!!」

 

そう言ってシリカは身を乗り出した。

 

キヒロ「……ありがとう、シリカ。」

 

キリト「ありがとな。」

 

 

デザートを食べ終えて、俺達はそれぞれの部屋に戻った。節約の為と言う事で一緒の部屋に居る。ベッドに腰掛けてキヒロは背筋を伸ばしてキリトに言った。

 

キヒロ「ん~……キリト、さっきのオバサンだが」

 

キリト「ん?」

 

キヒロ「多分、依頼人が言っていた人だ。」

 

言いながらキヒロは椅子に座った。

 

キリト「なっ!」

 

キヒロ「おそらく明日仕掛けてくるかもしれない。万が一の事を考えて、キリトはシリカの護衛を頼む。」

 

キリト「了解した。」

 

話していたその時、ドアを叩く音が聞こえた。

 

キリト「だれ?」

 

シリカ「あの、シリカです。明日の事を聞きたくって……」

 

訪ねてきたのはシリカだった。彼女を招き入れ、テーブルを用意しそこにアイテムを設置する。見慣れないアイテムにシリカは首を傾げて

いる。

 

シリカ「これ、なんですか?」

 

尋ねてきた。まぁ知らないものがあれば普通聞くしな。

 

キリト「ミラージュ・スフィアっていうんだ」

 

問いかけにキリトが笑顔で答える。社交がうまくなったなと素直に関心。キリトがタップすると、それは大きく展開されて47層の全体図が映された。指をさしながら、

 

キリト「ここが主街区で、ここから南の道を下りていくんだ。その先に橋が……」

 

説明していたがそれを止めさせる。疑問符を浮かべたシリカは、

 

シリカ「キリトさん?」

 

と呼びかける。瞬間、俺は扉目掛けて駆け出した。キリトはシリカを庇うように前に出る。

 

キヒロ「誰だ!!」

 

タタタタッ

 

勢いよく扉を開けたが、そこには誰もいなかった。俺は息をついて扉を閉めた。

 

キヒロ「聞かれてたな」

 

呟く。

 

キリト「そうみたいだな。」

 

答えるようにキリトも言った。シリカは疑問符を浮かべたまま、

 

シリカ「ドア越しの声はノックしないと聞こえないんじゃ……?」

 

問いかけてきた。キリトは首を振って、

 

キリト「聞き耳スキルが高い場合は別だ。そんなの上げてる奴、滅多にいないけど……」

 

言いながら扉の方に視線を向けた。

 

シリカ「で、でも……どうして立ち聞きなんか……」

 

シリカは不安そうな表情で呟いた。

 

キヒロ「……今日はもう寝よう。説明は明日の朝、出発前に改めてするから。シリカ、なんかあったらすぐ呼ぶんだ。決して1人で行動するな。」

 

シリカ「はい。?」

 

パタン。

 

キリト「はぁ。」

 

キヒロ「明日は荒れそうだな。」

 

キリト「だな。俺達も寝るか。」

 

こうして眠りについた。夜は更けていき、朝が訪れる。3人は準備を整えて47層の思い出の丘を目指し宿を出た。

 




次回で解決の予定です!今はこれしか言えない!笑(*´∇`)ノ ではでは~

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