ソードアート・オンライン 覇王と絶剣   作:高島 秋

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題名からしてSAO知ってる人ならわかるのではないでしょうか!そうです!あれですあれ!ででででは!どうぞ!


新たなる剣

第48層 リンダース

 

プレイヤーホームに設置された巨大な水車が緩やかに回る。なんとも趣のある家だ。その中からは、カンカンと金属を叩く音が心地よく聞こえてきていた。中では少女が一人、工房で忙しく武器作成を行っていた。いくらか叩かれた金属が剣の形に変わっていく。ほほぅ…あんな感じに出来るのか…そして、出来あがった剣を手に取り品質を真剣に確認する。

 

?「……まぁまぁ……ね」

 

なるほど。とりあえず入るっか。

 

カランカラン

 

?「接客も仕事のうち!っと」

 

笑顔を作り、店の売り場に続く扉を開く。

 

?「リズベット武具店へようこそ!」

 

今入ってきたのは2人のプレイヤー。黒尽くめの少年と灰色装備の青年だ。

 

キリト「ここか?」

 

キヒロ「そっ、ここだよ。よっリズ、久しぶり。」

 

リズ「なんだぁ〜キヒロか、で、今日はどうしたの?」

 

キヒロ「その前に自己紹介するぞ。こいつが前に言った鍛冶師のリズベットだよ。リズ、この黒い人はキリトって名前なんだ。」

 

キリト「えーっと……リズベットさん?」

 

紹介された黒の少年、キリトは少し遠慮気味に尋ねた。年は私より少ししたかな?

 

リズベット「リズでいいわよ。そっか、コレがキヒロの相棒の『黒の剣士』かぁ……あんまり強そうに見えないわね。」

 

キリトに向かい合い鍛冶師の少女、リズベットは言う。まぁ確かにな見た目だけわな…どうしようもない。当のキリトは苦笑いだが。

 

キリト「よく言われるよ。」

 

リズベット「で、どうしたのよ? 装備のメンテでもしに来たの?」

 

気を取り直してリズベットは二人が訪ねてきた理由を問う。その問いにキヒロは首を振る。

 

キヒロ「違うよ、キリトが剣を造ってほしいんだと。」

 

キリト「あぁ、オーダーメイドを頼みたいんだ。予算は気にしなくていいから、今造れる最高の剣を造ってほしいんだ。」

 

そう言ってキリトは前に出る。リズベットは少し難しい顔をする。だろうな。もう少し具体的にしてあげないと…

 

リズベット「そうは言っても、具体的な目標数値を出してもらわないと解んないわよ。」

 

キリト「それもそうか……じゃぁ、この剣と同等かそれ以上のを頼む。」

 

言いながらキリトは背の剣を鞘ごと取り外してリズベットに渡す。エリュシデータと同じ以上って早々作れるものじゃないが…大丈夫かな。受けとったリズベットは思わず剣を落としそうになってた。

 

(おっも! ものすごい要求筋力値ね)

 

思考を巡らせて剣の鑑定を始めるリズベット。剣をタップすると鑑定結果が表示される。固有名は『エリュシデータ』、作成者銘なし。

 

リズベット「銘なしって事はモンスタードロップ……しかも魔剣クラスじゃない!」

 

現在のアインクラッドでの武器のカテゴリーは二種類ある。一つは鍛冶師が鉱石を使って造りだした『プレイヤーメイド』と呼ばれるもの。もう一つはモンスターやボスなどがドロップする『モンスタードロップ』と呼ばれる物がある。キリトの愛剣であるエリュシデータは50層のフロアボスでドロップしたもの。そうそう同等以上のものが見つかるわけないのだ。リズベットは少し思案し、やがて一角に置かれた剣を手に取る。

 

リズベット「これならどう? 私が打った最高傑作よ!」

 

言いながらリズベットはそれをキリトに渡した。受け取ったキリトはその剣を2、3度程素振りする。音からして軽そうだな…

 

キリト「……少し軽いな。」

 

あっやっぱり?

 

リズベット「使った金属がスピード系だったからね。」

 

キリト「……ちょっと試していいか?」

 

やめとけよ…

 

そう言ってキリトは左手でエリュシデータを握り、右手でリズベットの最高傑作を構える。マジでやるんだ。

 

リズベット「ちょ!試すって、耐久値のこと!?やめなさいよ、あんたの剣が折れるわよ!!」

 

残念ながら逆だ。リズ。

 

キリト「その時はその時……さ!」

 

リズベットの制止も虚しく、キリトはソードスキル『バーチカル』を発動させる。

 

やっちまったな…

 

勢いよく刃が振り下ろされ……バギンという音が店内に響き渡った。これは剣が折れた音。折れたのはリズベットの最高傑作。半分に折れた刀身は宙を舞う。それをリズベットは呆気にとられながら見ていた。折れた刀身はカランと音を立てて床に落ち、ポリゴン片となり砕け散った。その様子にキリトはヤバいといった感じの表情になっていた。これは止めるべきだったか?

 

リズベット「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 

ようやく正気に戻ったリズベットは勢いよくキリトから剣を奪い取る。状態を確認するが、

 

リズベット「修復……不可能……」

 

駄目だったようだ。まぁ仕方ない。そもそも魔剣クラスの剣に打ち込むキリトが悪い。そして残りもポリゴン片となり砕け散る。リズベットはわなわなと肩を震わせていた。

 

リズベット「な……なぁんて事すんのよぉ!!!!」

 

ほんとだよ。何してくれてんだ。始めてきて初っ端からこんなことするとは…恐れ入ったぞ…

 

キリト「い、いや!まさか当てた方が折れるなんて思わなくて!」

 

それは言ってはいけないぞ?キリト。

 

リズベット「それはアタシの剣が思ったよりやわっちかったって意味ぃ!?」

 

キリト「あぁー……まぁ……そうだ。」

 

何開き直ってんだ。こいつ。取り敢えず謝っとくか。

 

キヒロ「済まないな、リズ?」

 

こりゃ、おさまんなそうだわ。

 

リズベット「キヒロが謝る必要ないわ!言っときますけどね!金属さえあれば、あんたの剣なんかポッキポキ折れちゃうのが造れるんだから!!!」

 

いや流石にポッキポキは無理だろ。やめろキリトニヤけるな気持ち悪い。

 

キリト「ほほぅ?じゃぁ、作ってもらおうかな? これがポキポキ折れるヤツをさ。」

 

そう言った。馬鹿だこいつ。その言葉にリズベットはさらに頭に血を上らせる。そりゃ上るよ…

 

リズベット「むっきー!そこまで言ったからには最初から付き合ってもらうわよ!! 金属採りに行くとこからね!!」

 

キリト「金属のあてはあるのか?」

 

リズベット「55層の氷雪地帯の西の山に、水晶を餌にするドラゴンがいるらしいの。そいつが体内に金属を溜めこんでるって話よ。」

 

おい、それって。排泄物だろ…絶対。

 

キリト「あ、それ聞いたことあるな。55層か……俺一人で行ってくるよ。二人はここで待っててくれ。」

 

そう言ってキリトはエリュシデータを鞘に戻し、背に背負う。えっ、俺も?

 

リズベット「残念だけど、金属を手に入れるには『マスタースミス』がいないとだめらしいわよ?」

 

キリト「しょうがないな……」

 

そう言って頭を掻いた。なにがしょうがないんだ…

 

 

第55層 西の山

 

辺り一面白一色。銀世界とはこのことを言うのだろう。雪が降り積もった山道を、俺達は歩いている。いや〜いい景色だなぁ〜!

 

リズベット「うぅ……さっむぅ~……」

 

キリト「氷雪地帯なのは知ってたけど……ここまで寒いなんてな………」

 

俺は振り返り、メインメニューを開く。アイテムストレージからコートを二着取り出してこいつらに渡す。

 

キヒロ「ほら、これ着てろ。」

 

リズベット「キヒロは?大丈夫なの?」

 

キヒロ「安心しろ。もう1個ある。」

 

この俺が準備を怠るわけないだろ。

 

(……キヒロには、きっとあるんだろうな……本物と思える大切な『何か』が……それに比べて、アタシは……)

 

思考を巡らせて二人の後をついていった。やがて3人は頂上に着く。辺りは水晶で囲まれていた。うん。とても綺麗。ユウキと来た時の方が綺麗に見えたのは気のせいだろうか?白い雪と透き通る水晶が別世界を創り出しているように見える。

 

キリト「さて、ドラゴンとは俺とキヒロが戦う。リズは水晶の陰で大人しくしてろよ。」

 

リズベット「なによ!アタシだってマスターメイサーなんだから戦えるわよ!」

 

キリト「駄目だ!」

 

そんなに強く言わなくてもなぁ?まぁ、あんなことあったし、仕方ないな。

 

キリトが真剣な表情で強く言う。その姿にリズベットはたじろいだ。映る瞳はどこまでも真剣だ。

 

キヒロ「リズ、俺達なら大丈夫だからね?」

 

リズベットは静かに頷いた。

 

キリト「んじゃ、いくかな。」

 

そう言ってリズベットの頭に軽く手で触れた。その後を追う。リズベットは彼が手を置いた頭に自身の手を添えた。

 

リズベット「…温かい……」

 

そう呟いた。その時、

 

ギュオオオオォォォォォォォォ!!!!

 

猛々しい雄叫びが響いてきた。

 

キヒロ「リズ!水晶の陰へ!」

 

キヒロに促されてリズベットは大きめな水晶の陰へと退避する。現れたのは白銀の竜。巨大な翼をはばたかせ、宙へと舞い上がる。なんだこのデカさ…そして、繰り出されたのは氷のブレス。さぁってと!

 

リズベット「ブレスよ!避けて!!」

 

避ける必要ないんですよリズ。こいつにはな。キリトのエリュシデータが青く光る。ブレスが直撃する一歩前に剣を回転させてブレスをかき消した。そして気合いをこめ、剣を握りなおす。

 

キリト「いくぞ、キヒロ!」

 

キヒロ「了解だ。」

 

直後に二人はドラゴンに向かい駆け出す。

 

ギュァァ!!

 

大きく鳴きドラゴンは二人を迎え撃つ。鉤爪による攻撃がキヒロに向かって放たれた。それを華麗に躱しすれ違いざまに一撃を入れる。背後に回り込み、そこからソードスキル『ホリゾンタル・スクエア』が放たれた。水平に正方形を描くような4連斬撃がドラゴンの背中に直撃する。それにより体勢が揺らいぐ。

 

キヒロ「キリト!」

 

キリト「おぉぉ!!」

 

キリトは『ヴォーパルストライク』を繰り出す。鋭く重い突撃刺突攻撃がドラゴンを貫くように直撃する。HPは確実に削られていた。その光景を水晶の陰からリズベットは息をのんで見ていた。

 

(キヒロが凄いのは知ってたけど、キリトも凄い!あれが『黒の剣士』の実力なね……)

 

思考を巡らせながらドラゴンとの戦闘を見守るリズベット。HPバーを見るとそれは既にレッドゾーンに突入してた。早すぎない?

 

それを見てリズベットは油断してしまった。

 

リズベット「ほら、はやくカタをつけちゃいなさいよ!」

 

水晶の陰から出てきてそう叫ぶ。それがあれを引き起こすとは。

 

キリト「なっ!馬鹿!まだ出てくるな!!」

 

それに気付いたキリトは慌てて叫ぶ。しかし、遅かった。ドラゴンは高く舞い上がる。巨大な翼を羽ばたかせた。竜種特有の突風攻撃である。強大な風が雪を舞い上がらせながらリズベットを襲う。あっ、これやばい。直撃し彼女は投げ出された。その真下には巨大な縦穴。えっ?本格的にヤバくない?これ。

 

リズベット「うそ!うそぉぉぉ!!!」

 

こっちのセリフだわ。

 

リズベットは成す術なく縦穴に落ちていく。そんな彼女の腕を何かが掴む。キリトだった。あいつカッコよすぎな。彼女が突風を受けた瞬間に全速で駆けだしたのだろう。命知らずとはこういうやつのことを言うのだろう。

 

キリト「摑まれ!」

 

いいながらキリトはリズベットを守るように抱きかかえる。二人はそのまま穴の底まで落ちていった。その様子を見ていた俺は縦穴のすぐ近くまで駆け寄る。はて、どうするべきか。誰か呼ぶか?ロープどのくらいあれば足りるだろうか?まぁあとはキリトに任せよう。ん?この穴もしかして…ドラゴンの巣じゃないのか?だとしたらあるな。ここに。

 

 

リズベット「ぅ……」

 

眼を開けると黒い何かがリズベットの目に映る。キリトだった。

 

キリト「助かったな……」

 

そう言いながらキリトは起き上がる。続いてリズベットも起き上がる。

 

リズベット「生きてた……わね……」

 

そう呟いた。そんな彼女にキリトはハイポーションを差し出す。

 

キリト「飲んどけよ、一応な。」

 

リズベット「…うん。」

 

受け取ったハイポーションをリズベットは口に含んだ。キリトも同じようにハイポーションを飲み始める。お互いにイエローまで落ちたHPが緩やかに回復していった。

 

リズベット「あの……ありがと、助けてくれて…」

 

キリト「礼を言うのはまだ早い……どうやって登ったもんか……」

 

言いながらキリトは上を見る。そんな彼にリズベットは当然の如くこんなこと言う。

 

リズベット「テレポートすればいいじゃない。」

 

言いながら転移結晶を取り出し叫ぶ。

 

リズベット「転移!リンダース!」

 

しかし結晶は反応を示さなかった。

 

リズベット「そんな……」

 

キリト「結晶が使えないなら、他の手段がある筈だ。」

 

リズベット「そんなの解んないじゃない!落ちた人が100%死ぬって想定した罠かもしれないでしょ!」

 

キリト「なるほど……そうかもな。」

 

リズベット「ちょっと!少しは元気付けなさいよ!!」

 

落ち着いた様子のキリトに苛立ったように食ってかかるリズベット。やがて思案し終わったらしい。何を話すのか。

 

キリト「一つ提案がある。」

 

リズベット「ホント?」

 

キリト「あぁ、壁を走って登る。」

 

真顔で言うキリト。その言葉にリズベットは呆れた表情になる。うん、俺もこれ聞いたときは流石に絶句したわ。

 

リズベット「…バカ?」

 

キリト「バカかどうか、試してみるか?」

 

言われたキリトは立ち上がり数歩下がる。そして勢いよく蹴りだした。跳躍し壁を勢いよく駆けあがる。意外と登れると思ったらしい。

 

リズベット「うそーん……」

 

呆気に取られながらリズベットは呟く。ちょっと見てみたかったなそれ。

 

直後、キリトは足を滑らせる。どうやら凍っていた部分を踏んでしまったみたいだ。

 

キリト「ぉわぁぁぁぁぁあぁああああぁぁぁあぁ!!!!」

 

悲鳴と共にキリトは落下し地面に叩きつけられた。

 

キリト「も……もう少し助走があればいけたんだよ。」

 

リズベット「んなわけないでしょ!」

 

いじけたように言い訳するキリトにリズベットはしゃがみ込んでそう言った。やがて日が落ち夜が来る。2人は互いに寝袋に入って寝ころんでいた。沈黙が続いていたがここで破れる。

 

リズベット「ねぇ、キヒロはどうしたかな?」

 

不意にリズベットが尋ねてくる。まぁそう思うのは自然だよな。

 

キリト「あぁ、キヒロなら、ここに来る前に互いに何かあったら無理せずに街にいったん戻るように打ち合わせてたんだ。明日の昼になっても戻らなかったらフレンドに協力依頼出すようにもな。」

 

問いにキリトは答えた。信頼してるみたいだ。正直羨ましいと私は思ってた。そんな相手がいて…

 

リズベット「……信頼してんのね、キヒロの事…」

 

キリト「まぁな……第一層のころからの付き合いだし、俺の師匠だしな!」

 

師匠?

 

リズベット「なんの師匠よ。」

 

キリト「剣のだよ。凄いよ。あいつは。」

 

やっぱ凄いんだ、あいつ。

 

リズベット「ねぇ、も一つ聞いていい?」

 

キリト「なんだ?」

 

リズベット「どうして、アタシを助けたの?死ぬかもしれなかったのに。」

 

実際問題、死ぬ可能性の方が高かったのだ。その問いにキリトは少し沈黙する。

 

キリト「誰かを見殺しにはしたくはない。そんなのは二度とごめんだ。それに死ぬ気はないよ。俺を待っていてくれる人がいるからな。」

 

リズベット「変な奴……でも、そっか……そうなんだね。」

 

答えを聞きリズベットは納得したように頷く。再び沈黙が訪れる。そして唐突に…

 

リズベット「ね……手、握って…」

 

言いながらリズベットは手を伸ばす。キリトは不思議そうな顔をしてリズベットを見た。

 

キリト「うん。」

 

頷いてキリトは手を差し出す。手が重なるとリズベットが軽く握ってきた。

 

リズベット「……温かい。」

 

キリト「え?」

 

呟きにキリトは疑問符を浮かべた。俺も聞いたとき疑問だった。

 

リズベット「アタシもあんたも……仮想世界のデータなのに……」

 

キリト「リズ……」

 

互いに目が合う。するとリズベットは軽く微笑んで眼を閉じた。キリトも眼を閉じる。互いの手を重ねたまま、2人は眠りについた。

 

翌日。

 

リズベット「んぅ~~~~~っ」

 

目覚めたリズベットは寝袋から出て背伸びをする。ふと隣を見るともうひとつの寝袋は蛻の殻だった。耳を澄ますと後ろの方から、ザクザクと雪を掻きわける音が聞こえてくる。振り向くとキリトはそこに居た。雪を掻きわけて何かをそこから取り出した。そこで私が目にしたのは…

 

リズベット「そ、それって!」

 

手に握られていたのは水晶のように透き通った鉱石だ。それを受け取ったリズベットはタップしアイテム名を確認する。

 

『クリスタライトインゴット』

 

キリト「俺達が探しに来た鉱石だろうな……ドラゴンは水晶をかじり、腹の中で精製する……見つからないわけだ。」

 

リズベット「でも、なんでこんな所に?」

 

キリトの説明に疑問符を浮かべるリズベット。どうやって説明したんだろ。キリト。

 

キリト「この縦穴は罠じゃなく、ドラゴンの巣だったんだ。つまり、その鉱石はドラゴンの排泄物、ンコだ。」

 

さらに淡々と説明するキリト。なんと彼は仮にも女子に対し、普通に説明したらしい。もう少し遠回しで言ってあげるべきだ。あと渡す前に言ってあげろ…

 

リズベットは手に持っている鉱石とキリトを交互に見る。そりゃみるよな。やがて、意味に気付いたリズベットは何とも言えない表情でそれをキリトに投げ渡した。俺も投げ飛ばすかも。それをキリトは掴み取り、ストレージに収納する。

 

キリト「さて、これで目的は達成だな。後は……」

 

そこまで言った時、リズベットが何かに気付く。気づいてしまったのか。まぁこれで帰れるんだしな。

 

リズベット「ねぇ?ここってドラゴンの巣でしょ?でもってドラゴンは夜行性だから、つまり……」

 

恐る恐る言うリズベット。その意図をキリトも察したみたいだ。

 

その直後、

 

ギュォォォォォ!!!!

 

咆哮と共にドラゴンが降下してきちゃったらしい。

 

リズベット「きたーーーーーーー!!」

 

予感が的中してリズベットは顔面蒼白で叫ぶ。そこでキリト、よく分かってらっしゃる。

 

キリト「ちょいと失礼!」

 

言いながらキリトはリズベットを担ぎあげた。担ぎ上げたの!?

 

リズベット「は?んあ!?」

 

キリト「しっかり摑まってろよ!」

 

そう叫んで跳躍する。直後にドラゴンは穴底で急停止する。その後ろをキリトはリズベットを担いだまま走り抜け、壁を蹴り剣を抜いた。落下速度を利用しながらドラゴンの背に刃を突きたてる。うん、予想通り。

 

それに驚いたドラゴンは

 

ギュアァァ!!

 

と咆哮と共に今度は急上昇する。一気に縦穴を登りぬけて、上空で急停止した。反動で剣が抜けて2人は投げ出される。リズベットを抱えたままキリトは地面に着地した。

 

キリト「よし、脱出成功!」

 

ドヤ顔でそう言った。対するリズベットは、

 

リズベット「寿命が縮むかと思ったわよ!」

 

キリトに向かい講義する。まぁだよね。

 

キリト「まぁまぁ、目的は果たしたからいいだろ?」

 

言いながらキリトは巣に戻っていくドラゴンを見た。キリトって見た目の割に意外と行動が大胆だよな。

 

キリト「鉱石の取り方が解れば、もう無闇に狩られる事はないだろ。達者で暮らせよな。」

 

リズベット「はぁ……もういいわ…」

 

呑気なキリトに対しリズベットは諦めたように溜息を吐いた。うん、諦めも肝心。

 

キリト「さて、街に戻るか。キヒロが心配してるからな。」

 

そこまで心配してませんでした。

 

そう言って転移結晶を取り出す。それを使い街に戻ろうとした、その時、

 

リズベット「まって!」

 

リズベットがそれを制した。キリトは疑問符を浮かべて彼女を見る。

 

リズベット「帰る前に、キリトにお礼が言いたいの!」

 

キリト「助けた礼はもう言ってくれたろ?」

 

その言葉にリズベットは首を振る。

 

リズベット「違うの。アタシね……アタシ、ずっとこの世界でのホントの『何か』を探してたんだ。この虚ろな世界で、何もかも偽物の世界で……」

 

キリト「リズ……」

 

一度リズベットは俯く。が、すぐに顔を上げる。

 

リズベット「でもね、キリトが手を握ってくれた時、温かかった! この温かさは本物だって思えたの!だから、だからね! ありがとう! キリトのおかげで、アタシもまだこの世界で頑張れる! この『熱』がある限り、前を向いていける気がするの!」

 

真直ぐにキリトの眼を見ながらリズベットは言う。それを聞き終えてキリトは、

 

キリト「俺も、リズにお礼が言いたいんだ」

 

キリトも真直ぐに彼女を眼を見て口を開いた。

 

キリト「俺は以前……助けられなかった人たちがいるんだ。その事がどうしても悲しくて悔しくて、認めたくなくて、自暴自棄になってた時がある。」

 

キリト「色々あって、それは何とか心の整理がついたんだけど……それからは一人で生き残るくらいなら死んだ方がマシだって思ってたんだ。でも、穴に落ちた時、リズが生きてて嬉しかった。誰だって生きるために生きてるんだって思えたから……だから、ありがとう。」

 

言いながらキリトは微笑む。それを聞いてリズベットはこう返したらしい。

 

リズベット「そっか……その言葉、みんなにも聞かせてあげなさいよ。それから、周りをこれ以上悲しませない事! わかった?」

 

キリト「そうだな……」

 

リズベット「それじゃ、街に帰りましょ!」

 

そう言って転移結晶を取り出す。互いにそれを掲げて叫ぶ。

 

「「転移!リンダース!」」

 

 

第48層 リンダース

 

街に戻った2人は真直ぐにリズベット武具店に足を運ぶ。扉を開けると奥にはキヒロがいた。2人に気付いて駆け寄ってくる。

 

キヒロ「お疲れ様。なんとかget出来たみたいだな。」

 

キリト「あまり心配はして無いんだな?てかよくgetできたの分かったな。」

 

キヒロ「あれで死んだら拍子抜けだよ。あれ巣だったんだろ?」

 

リズベット「それよりもほら!剣作るんでしょ? 片手用直剣でいいのよね?」

 

キリト「あ、あぁ。」

 

ストレージから鉱石をオブジェクト化する。それを受け取ってリズベットは奥の作業場へと歩き出す。2人も作業場へと向かった。俺達は椅子に座ってリズベットの作業を見守った。カン、カンと金属が叩かれる音がリズムよく作業場に響いている。それが十数分過ぎた時、叩かれていた鉱石は光り輝き、一振りの剣へと姿を変えた。翡翠色に輝く刀身が一目で業物だという事を示していた。その剣をリズベットは手に取りタップする。

 

リズベット「名前は『ダークリパルサー』アタシが初耳って事は情報屋のリストにまだ載ってない筈よ。試してみて。」

 

闇を払う者、か。いい名前だ。キリトはそれを受けとってそれを2、3度素振りする。重そうな音。

 

リズベット「ど、どう?」

 

少し不安そうな声で尋ねるリズベット。ドキドキするよぁ。こういうの。

 

キリト「…重いな。いい剣だ。魂が籠ってる気がするよ。」

 

キリトにしては珍しくちゃんと言えたな。振り向いてキリトは満足そうに答えた。それを聞いてリズベットはガッツポーズをとる。

 

リズベット「やった!」

 

キリト「ありがとうリズ、剣の代金払うよ。いくらだ?」

 

そう問いかけた。対してリズベットは首を振って、

 

リズベット「代金はいいわ。その代わり二つ条件があるの。」

 

キリト「条件?」

 

疑問符を浮かべながら問うキリト。リズベットは一呼吸置いて、

 

リズベット「件の一つは、アタシをあんた達の専属スミスにする事!冒険が終わったらここにメンテに来なさい!」

 

そう言って2人を指差す。俺も?てか既に来てますよ?

 

キリト「それはいいけど……もう一つは?」

 

リズベット「もう一つは、あんた達が終わらせて、この世界を。」

 

問いかけにリズベットは真剣な表情でそう言った。

 

リズベット「アタシも頑張る。この『熱』がある限り頑張るから!」

 

そう言って自分の胸に手を当てた。それを聞いた俺たちは、

 

キリト「あぁ、約束するよ。」

 

キヒロ「終わらせてみせる。もちろん生きてこの世界をな。」

 

決意を込めて頷いた。2人の答えを聞いたリズベットは満足そうに、

 

リズベット「うん……これからも、リズベット武具店をよろしく!!」

 

とびっきりの笑顔でそう言った。

 

 




意外と長くなったな〜って感じています。リズベット推しの方からしたら物足りないと感じるかもしれませんね。やっとここまで来ましたー!次回も頑張ります!(*´∇`)ノ ではでは~

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