ソードアート・オンライン 覇王と絶剣   作:高島 秋

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遅れてすみません!

ちょっと煮詰まってしまって…

では!どうぞ!


最後の戦い

《ボス攻略戦が終わって5分ほど経過したが未だ誰1人歓喜に満ちた者はいない。ある2人を除いては。そんな激戦を終え、彼らは驚愕の真実を知ることとなる…》

 

クライン「何人…やられた……?」

 

(クラインに聞かれたから数えてみたが…本当に…あってるのか…)

 

キリト「…15人…死んだ……」

 

(自分で数えておきながらとても信じることできないなこれは…皆トップレベルの、歴戦プレイヤーだったはずだ。生き残り優先で戦っていればこんなことにはならないはずなのに…)

 

ノーチラス「ユナ…ユナは!?」

 

キヒロ「残念ながら…ユナはもう…」

 

ノーチラス「!?嘘だろ…」

 

すまないな…ノーチラス。君の大切な人を…守りきることが出来なかった…

 

エギル「……うそだろ……」

 

《ようやく四分の三…まだこの上には25層もある。1層ごとにこれだけの犠牲者を出してしまえば、最後のラスボスに対面出来るのはたった一人になってしまう可能性がある。

 

おそらくその場合は、今立っていられているあの2人だろう。》

 

 

(視線を部屋の奥に向けると、そこには、ほとんどの者が床に座り込んでいる中、背筋を伸ばして立っている人物がいた。

 

ヒースクリフだ。

 

流石の彼でも無傷では無かったみたいだ。HPバーがかなり減少している。だが、気になることが一つある…

 

ヒースクリフのあの視線、

 

あの穏やかさ…

 

あれは傷ついた仲間を労わる表情では無いだろう。

 

あれは…

 

神の表情だ…

 

何故か俺は、ヒースクリフとのデュエルを思い出していた。

 

あれは、SAOシステムに許されたプレイヤーの限界速度を超えていたと思う。キヒロと同等だろう。

 

プレイヤーでは、出来ない事を可能にする存在。

 

デスゲームのルールに縛られない存在。

 

NPCでも無く、一般プレイヤーでも無い。

 

となれば、残された可能性はただ一つ、この世界の創造者だけだ。

 

だが、確認する方法が無い。

 

いや、ある。 今この瞬間一つだけある。

 

ヒースクリフのHPバーは、ギリギリの所でグリーン表示に留まっている。

 

未だかつて、ただ一度もHPバーをイエローゾーンに落としたことが無い男。

 

圧倒的な防御力。

 

この世界を創り上げた人間ならそういう設定にすることが可能だろう。

 

ここまで考察してはみたが間違ってたらほかのプレイヤーから制裁を受けるだろうな…

 

ごめんな。ラン…)

 

 

《彼はヒースクリフに向けて突進体制を取り、地面を蹴った。床ぎりぎりの高さを全速で駆け抜け、右手の剣を捻りながら突き上げた。

 

片手剣、基本突進技《レイジングスパイク》

 

威力が弱い技なので、たとえクリティカルヒットしてしまっても殺してしまうことは無い。

 

彼の剣は空中で軌道を変え、盾の縁を掠めてヒースクリフの胸に突き立つと思われたとき。

 

寸前で、目に見えぬ障壁に激突した。

 

同時にヒースクリフからシステムカラーのメッセージが表示された。

 

【Immortal Object】

 

即ち"不死存在"

 

通常プレイヤーにはありえない属性。

 

静寂の中、ゆっくりとシステムメッセージが音もなく消滅した…》

 

まさか、キリトも気づいていたとはな…

 

キリト「これが伝説の正体だ。この男のHPバーは、どうあろうとイエローまで落ちないようにシステムに保護されているのさ。 ……不死属性を持つ可能性があるのは……システム管理者以外有り得ない。だが、このゲームには管理者は居ないはずだ。ただ一人を除いて……この世界に来てからずっと疑問に思っていたことがあった……あいつは今、何処から俺たちを観察し、世界を調整しているんだろうってな。 でも俺は単純な真理を忘れていたよ。 どんな子供でも知っていることさ。」

 

お見事だ。キリト。

 

 

キリト「《他人のやっているRPGを傍から眺めるほど詰まらないことはない》……そうだろう、茅場明彦…」

 

 

ヒースクリフ「……なぜ気付いたか参考までに教えて貰えるかな。」

 

キリト「……最初におかしいと思ったのはデュエルの時だ。最後の一瞬だけ、あんた余りにも速過ぎたよ。」

 

やはり、俺がしなくてよかったな。

 

ヒースクリフ「やはりそうか。あれは私にとっても痛恨事だった。君の動きに圧倒されてついシステムのオーバーアシストを使ってしまった。」

 

ヒースクリフ「予定では攻略が95層に達するまで明かさないつもりだったのだがな。」

 

待て待て、本当にそのつもりだったんなら、もっと死んでたって事か…あの選択間違えなくてよかった…

 

 

ヒースクリフ「確かに私は茅場明彦だ。付け加えれば、最上階で君たちを待つはずだったこのゲームの最終ボスでもある。」

 

えぇぇぇえええ!!!

 

キリト「……趣味が良いとは言えないぜ。最強プレイヤーが一転最悪のラスボスか。」

 

ヒースクリフ「なかなか良いシナリオだろう? 盛り上がったと思うが、まさか四分の三地点で看破されてしまうとはな……君はこの世界で最大の不確定因子だと思ってはいたが、まさかここまでとは。」

 

確かにキリトに関しては茅場さんの意見に同意だな。

 

アスナ「まさか、本当にあなたの言ってた通りだなんて…」

 

キヒロ「俺的にはキリトも気づいたことに驚いたがな。」

 

ヒースクリフ「……最終的に私の前に立つのは君だと私は予想していた。全十種存在するユニークスキルの内、"二刀流"スキルは全てのプレイヤーの中で最大の反応速度を持つ者に与えられ、その者が魔王に対する勇者の役割を担う。それにこの想定外の展開もネットワークRPGの醍醐味と言うべきかな……」

 

《その時、凍りついたように動きを止めていたプレイヤーの一人がゆっくりと立ち上がった。血盟騎士団の幹部を務める男だ。》

 

 

モブ「貴様……貴様が……。俺たちの忠誠を……希望を……よくも……よくも……」

 

おいおいまじかよ…

 

モブ「よくも〜~〜~〜~〜~ッ!!」

 

《絶叫しながら地を蹴った。大きく振りかぶった両手剣が茅場へと刺さる寸前。

 

だが、茅場の動きの方が一瞬早かった。

 

素早くウインドウを開き操作し、男の体は空中で停止してから床に音を立て落下した。HPバーにグリーンの枠が点滅している。

 

麻痺状態だ。

 

茅場はそのまま手を止めずにウインドウを操り続けた。》

 

ラン「キリトさん……」

 

(予想してなかった訳じゃないがまさか、こうなるとは…)

 

キリト「……どうするつもりだ。この場で全員殺して隠蔽する気か……?」

 

ヒースクリフ「まさか。 そんな理不尽な真似はしないさ。」

 

ヒースクリフ「こうなってしまっては致し方ない。 予定を早めて、私は最上階の"紅玉宮"にて君たちの訪れを待つことにするよ。 90層以上の強力なモンスター群に対抗し得る力として育ててきた血盟騎士団。 そして攻略組プレイヤーの諸君を途中で放り出すのは不本意だが、何、君たちの力ならきっと辿り着けるさ。 だが……その前に……」

 

へぇ、"育ててきたね"か。キレそう…

 

ヒースクリフ「キリト君、君には私の正体を看破した報奨を与えなくてはな。チャンスをあげよう。今この場で私と一対一で戦うチャンスを。無論不死属性は解除する。私に勝てばゲームはクリアされ、全プレイヤーがこの世界からログアウト出来る ……どうかな?」

 

 

キリト「……受けてやるよ……。 此処で全て終わらせてやる……!」

 

《彼は、己の創造した世界に一万人の精神を閉じ込め、その内の四千人の意識を電磁波によって殺した。プレイヤーたちが絶望や恐怖する様子を、すぐ傍で眺めていたということになるのだろう。そのような男を優しい彼が許せるはずがなかった。》

 

エギル「キリト!やめろ……っ!」

 

クライン「キリトーーッ!」

 

(お礼言わなきゃな…)

 

キリト「エギル。今まで、剣士クラスのサポート、サンキューな。知ってたぜ、お前の儲けの殆んど全部、中層ゾーンのプレイヤー育成に注ぎ込んでいたこと。」

 

《目を見開くエギルに微笑み掛けてから、顔を動かしクラインに視線を向ける。》

 

キリト「クライン………あの時、お前を……一緒に連れて行けなくて、悪かった。 ずっと、後悔していた…」

 

キリト「て……てめぇ!キリト!謝ってんじゃねぇ!今謝るんじゃねぇよ!!許さねぇぞ!ちゃんと向こうで、メシの一つも奢ってからじゃねぇと、絶対に許さねぇからな!!」

 

(はは。相変わらずだな。クライン。)

 

キリト「解った。約束するよ。次は、向こう側でな。」

 

 

キリト「……悪いが、一つだけ頼みがある…」

 

ヒースクリフ「何かな?」

 

キリト「簡単に負けるつもりはないが、もし俺が死んだら……暫くでいい、ランが自殺出来ないように計らって欲しい…」

 

は?何言ってんだこいつ…

 

ヒースクリフ「良かろう。 彼女はアルゲードから出られないように設定する。」

 

ラン「キリトさん!!それはないですよ!!!」

 

キヒロ「おい!何戦う前から弱気なんだよ!勝つんだろうが!キリト!!」

 

キリト「…キヒロ…俺にもし何かあったら…あとは頼んだ…」

 

こいつのことは…絶対…死なせるものか!

 

《茅場がウインドウを操作すると不死属性が解除された。

彼の頭上に、

 

【changed into mortal object】

 

不死属性を解除したというシステムメッセージが表示される。》

 

(これはデュエルでは無い。単純な殺し合いだ。そうだ……俺は、あの男を……)

 

 

 

キリト「殺す……ッ!!」

 

 

《遠い間合いから右手の剣を横薙ぎに繰り出す。茅場が左手の盾でそれを難なく受け止める。一気に加速した二人の剣戟の応酬の衝撃音が周囲に響いた。》

 

(俺の"二刀流"スキルをデザインしたのは奴だ。

 

単純な連撃技は全て読まれる。

 

俺はシステム上で設定された連撃技を一切使わず、奴を倒さなければいけない。

だから、ソードスキルが使えない。

 

ふと目があった時、

 

茅場……ヒースクリフの瞳は冷ややかであった。 人間らしさは、今は欠片も無い。

 

俺が今相手にしているのは、四千人もの人間を殺した男なのだ。

 

その事を改めて感じてしまった…

 

それに耐えられず…

 

俺は恐怖してしまった…)

 

キリト「うぉぉぉぉぉ!!」

 

(俺は心の奥に生まれた恐怖を吹き飛ばすように絶叫した。だが、俺の攻撃は十字盾と長剣を操る茅場に全て弾き返されていた。)

 

まずいな…

 

キリト「くそぉっ……!!」

 

(ならば……これでどうだ……!)

 

《キリトは攻撃を切り替え、

二刀流最上位剣技"ジ・イクリプス"

を放った。いや、放ってしまったというのが正しいのだろう。

 

茅場は、システムに規定された攻撃を待ち構えていたのだ。

 

彼の顔には、勝利を確信した笑みがあった。

 

彼はキリトを焦らせソードスキルを放つように誘導したのだ。

 

ソードスキルは途中で止めることが出来ない。

 

二刀流の大技を放った後は、大きな硬直時間が課せられる。

 

キリトが放つ攻撃は、最後の一撃に至るまで茅場に把握されている。》

 

(……ごめん……ラン……せめて君だけは……最後まで生きてくれ……)

 

《27連撃…最後の左突き攻撃が、十字盾に中心に命中し、火花を散らした。

 

直後、彼の左手に握られてた"ダークリパルサー"が砕け散った。》

 

ヒースクリフ「さらばだ……キリト君。」

 

《彼が死を覚悟したその時、猛然と迫ってくる黒い影が物凄いスピードで迫ってきた。ヒースクリフの長剣がキリトに当たる寸前で…何者かがそれを妨害した。》

 

?「悪いが、こいつを死なせるわけにはいかなくてね。」

 

キリト「きっ、キヒロ!!!?」

 

キヒロ「悪いな。少し遅くなった。」

 

ヒースクリフ「なぜ君が、動ける…」

 

キヒロ「やだなぁ、忘れてしまいましたか?茅場さん。」

 

ヒースクリフ「!」

 

どうやら思い出してくれたみたいだな…

 

キヒロ「さぁて、第2Rといきましょうよ。」

 

ヒースクリフ「よかろう。きたまえ。」

 

キヒロ「悪いけど、本気でいくんで…なんなら、システムアシスト使ってくれてもいいですよ。」

 

キリト「ちょっ、キヒロ!?」

 

キヒロ「心配するな。少しは師匠をたててくれよ。」

 

さぁてと、いくら尊敬していても我慢ならないものもあるんでね…

 

本気で…

 

"殺す"

 

リミッター解除…

 

100%…

 

これが最初で最後だろうな…

 

キヒロ「行くぜ…」

 

ヒースクリフ「?!」

 

(なんだこの雰囲気…今までの"彼"ではない…)

 

ズバァァァァアアアアアン!!!

 

ヒースクリフ「???????!!!!!!!」

 

(なっ!ありえない!ナーヴギアでその速さなんて!彼は現実世界で一体何を!?研究者では無かったのか!?)

 

キヒロ「何驚いてるんだ?こんなのまだ序の口だぞ。」

 

(そんな馬鹿な…明らかに、私のシステムアシストより速い!)

 

キヒロ「ほらほら、ちゃんと避けないと死ぬぞ。」

 

ズバズバズバズバズバ!!

 

ヒースクリフ「くっ!」

 

(しかも二刀流でくるとは!キリト君で慣れていたつもりだったが…比にならないだと!?)

 

パリィん…

 

ヒースクリフ「なっ!?」

 

キヒロ「解除した時から思ってはいたが、"壊れてくれて"助かったぜ。」

 

キリト「盾が…」

 

アスナ「壊れた!?」

 

キヒロ「さぁ、これで本当に最後だ…」

 

《彼は現実世界で会得した構えをとる。対してヒースクリフはこの世界で培った構えをとる。果たして結果は…》

 

ヒースクリフ「(これで…どうだ!)」

 

《ヒースクリフが先制を仕掛けた。技は"ヴォーパル・ストライク"突進技としては申し分ない。それに今のヒースクリフはシステムアシストを限界まで使用している。普通のプレイヤーは反応どころか、何もさせてもらえないだろう。だが、"この男"は普通じゃない…彼には"見えていた"そして使う技は…》

 

飛天御剣流…

 

奥義…

 

天翔龍閃!!

 

ズバッ!

 

キヒロ「これで、終わりだ…」

 

ドサッ

 

ヒースクリフ「見事な剣だ…私の負けだ…」

 

パリィん…

 

どっくん…

 

キヒロ「くっ。」

 

ドサッ

 

ユウキ「キヒロ!!」

 

キヒロ「ゆ、ユウキ…すまない…」

 

パリィん…

 

ユウキ「そんな…そんなの…そんなのないよーー!!!!」

 

 

……ゲームはクリアされました……ゲームはクリアされました……ゲームは……

 

 

《こうして最後の戦いに終止符がうたれた。》




まさか、終わりきらなかった…次回で終わりです!

なるべく早めに更新します!

(*´∇`)ノ ではでは~

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