ソードアート・オンライン 覇王と絶剣   作:高島 秋

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遅くなって申し訳ない!
あんまり前書きで書いちゃうのもアレなので…w

では!どうぞ!


復讐

 

ガタッと音が鳴った。そこそこ大きめな音が木綿季の居る部屋から聞こえてきた。時間は1時29分。真夜中だ。さすがに心配になった私は木綿季の居る部屋に向かった。ノックをし、開けるよと声をかけて入ると、布団にうずくまっている木綿季がいた。小刻みに体が震えており何かに怯えているようにも見えた。私は思わず声をかけた。

 

「大丈夫…?木綿季…。」

 

帰ってきた返事はいつもの木綿季からは全く想像ができない、弱々しい声だった。

 

「明日奈…どうしよう…」

 

その言葉の真意を理解するのには少し時間がかかった。どうやらいつもは鮮明に思い出せるはずのSAOでの記憶が不透明になってきてしまったらしい。それは継裕とのことも含めて、だ。SAO以外の事は鮮明に思い出せるとの事なので、私は木綿季がリハビリのときお世話になったという倉橋先生の所に診察に行くことになった。その事を藍子に連絡したら一緒に行くことになった。

 

診断結果は何らかの理由でSAOでの記憶が抜かれている、との事だ。ただ、その事について木綿季は大分ショックを受けていた。同じような症状を表している人はここ最近増えているらしい。和人君からの話によるとクラインさんも同じ症状らしい。そして同じ症状があらわれた人に共通しているのはオーディナル・スケールをしていた、ということ。これが分かっただけでも進歩したと言える。私は和人君と藍子の2人に協力をお願いした。

 

 

菊岡さんにオーグマーの中止をお願いしたがすぐには難しいと言う返事が帰ってきた。理由としては経済省も絡んでいる巨大プロジェクトだからとの事。明日奈からの連絡により、俺と藍子はまずランキングを上げることにした。理由としてはNO.2の男、エイジと言う奴が木綿季の記憶を返してあげると言ったからだ。確証はないがその望みにかけるしかないと思ったのと同時に、只で返してくれるとは限らないという考えにたどり着いたために、ランキングを上げることにした。最終的に俺は9位、藍子は12位、明日奈は7位と2位を相手するには十分と思われるランキングを手にすることが出来た。

そして、約束の場所。新国立競技場の地下3階の駐車場に揃った。

 

「揃いましたね役者が。でも1人足りないようにも思えますがね。」

 

「返してもらうわよ!木綿季の記憶!」

 

「許しません…」

 

明日奈と藍子は怒りを隠しきれていない。かく言う俺も今回に限ってはかなり頭にきている。この場に来れてはいないが恐らく継裕の奴は怒りでキレるに違いない。

 

「言いましたよね、貴方達では僕を倒せないと。」

 

「やってみなきゃわからないだろ。」

 

「そうですか…なら試してみますか…?」

 

一気に緊迫の空気が漂う。そしてほぼ同時に唱えた。

 

「「「「オーディナル・スケール、起動!」」」」

 

まず和人が斬り掛かる。さらに入れ違う形で女剣士2人が突きを入れようとしてくる。だが、それを読んでいたのか綺麗に避けられてしまう。明日奈達はそこからも間髪入れずに完璧な連携を取りながらエイジに攻撃をしていく。だが、どうやっても攻撃が入らない。一旦和人達は距離をとる。

 

「中々やりますねぇ。ですが、やはり僕には敵わない。」

 

可笑しい。明らかにランキングだけでの差では無い。と言うより、"継裕と同じ感じがする"!?

 

 

「リミッター解除、30%…」

 

どこかで聞き覚えのある言葉が和人達の耳に届いた。そう、これは"継裕が言っていた"言葉だ。という事は…

 

先程よりも断然早い攻撃が和人達を襲う。必死に防戦するが、時間とともにじわり、じわりと負けに近づいていった。その時爆音が鳴った。何かが和人達のいる方向に迫っていっている。それは1台の車だ。それは和人達の方に迫って行った。和人達とエイジを分断する様に車が通り過ぎ、停止した。そこから降りてきたのは、誰も見た事のない、鬼の形相をした、

 

継裕だった。

 

「鋭二、貴様、オーグマーに何をしくんでいるんだ…!?」

 

この発言により、和人達は木綿季の記憶障害の原因がオーグマーであることがハッキリした。ただ、それと同時にある事を悟った。"もし、今会場にいる奴らのところにボスモンスターが現れるとしたら"と。大惨事になるのは間違いない。

 

「和人、ここは俺が引き受ける。先に会場に行け!」

 

継裕がそう言うと、和人達は会場に向かって行った。3人が行ったのを見届けてから継裕は鋭二に話を振った。

 

「何故、オーグマーに"記憶スキャニング"できる機能を埋め込んだんだ!?」

 

「分かりませんか?"回収するため"ですよ。ユナ、悠那の記憶を!」

 

そう言いきった鋭二は継裕に猛烈な勢いで斬り掛かっていった。継裕はギリギリのところでそれを躱した。そこから数回ほど同じようなやり取りをし続けた。

 

「流石公安に居るだけのことはある。ですが、NO.4の僕に適うと思っているのですか?」

 

そう言われた継裕は末恐ろしい笑みを浮かべた。思わず、鋭二は1歩後ずさりしたが、その状態を払うかのように斬り掛かった。だが、斬り掛かった先に継裕は居なかった。

 

「どこに目をつけてるんだ?NO.4。いや、コードネーム、ヘラクレス!」

 

明らかに鋭二は動揺した。それを知っているのは管理官のみのはず。若しくは"同じNo持ち"と言われている。つまり、この男、継裕も持っているという事だ。

 

「驚いた顔してんな。それもそうか。お前が他のNO.持ちと会うのは初めてだからなぁ。」

 

「な、なぜ、だ。貴様は、何番だ!」

 

「悪いがそれには答えられない。守秘義務なんでな。」

 

そこからは継裕の攻撃が続いた。継裕はまんまと動揺している隙をついたという訳だ。だが、徐々に落ち着きを取り戻してきた鋭二は反撃を開始する。そして、継裕に問われる。

 

「何故あんなことをした!」

 

この質問に鋭二は呆れも感じたが、怒りが勝った。鋭二は一時も忘れたことがなかった、あの日を。

 

まず、ユナが死んだ日。そして、

 

自慢の兄が自殺した日。

 

兄が自殺したのはユナが死んだからだ。その原因となったのはキヒロって男が最後となったボス戦にユナを巻き込んだからだ。俺は兄が死んだ日からキヒロっていう男を探し続けた。そんな時だった。家に公安と名乗る者が来たのは。その中の1人に居たのだ。キヒロと同じ顔の男だ。ボス戦の前に1度顔を見ただけだが、忘れることは無かった。公安に保護されてからは今まで受けたことの無い訓練や勉強を受けた。かなりきつかったし、何度か脱走しようとも思った。だけど、あいつに、キヒロに復讐する為に俺は地獄の訓練を耐え続けた。漸く、人員の一人として認められ、重村教授の所でお世話になるようになると、ユナ復活の計画を聞いた。俺は迷わずその計画に協力することを誓った。そしてその過程で、ユナと関わりを持った人間の記憶が必要なことがわかった。これを利用し、俺は復讐することに決めた。

 

「あんたに、ユナを殺されたからに決まっているだろ!!」

 

鋭二はさらにリミッター解除を続け、遂に80%まできた。これを超えると、人体に甚大な損傷が出る。それに加え、今の状態は長くは保てない。ただ、それには抜け道がある。それは感情の状態によって、持続時間が変わることだ。今の鋭二なら最低でも10分は保てる。

 

「ユナが死んだのは確かに俺のせいかもしれない…だが、あの状況下においてでは最大限の結果を残した。ボス部屋が結晶無効空間だと言うことぐらい知っていた筈だろお前は!」

 

人は例え自分の言っていることがただの逆恨みだとしても、それを分かっていてもぶつけてしまう時がある。それが今の鋭二だ。彼は勿論知っていた。兄から聞かされていた通り、あの状況下ではああするしかなかったと。ただ、どんな状況にしろ自分にとって大切な2人が奪われた事実は変わらない。そこでこう考えるようになった。

 

"奪われたなら、奪い返せばいい"と。

 

「奪われる苦しみを味わえぇ!!」

 

再び鍔迫り合いになる。

 

「お前がそうなるのも分かる。だけど、それが本当にお前のしたかった事なのか!」

 

鋭二は理解出来なかった。復讐の為に今まで生きてきたからだ。

 

なに、を、いって、いる。

 

「そうして自分を殺し、未来も殺すのかお前は!」

 

「構わない!こんな体なんていくらでもやる!!俺はただ!あの二人を取り返したいだけだ!」

 

「そんな事を、あの二人が望むと思うかぁ!!!」

 

望むか望まないかなんて言ったら、あの二人が望むわけない。だけど、それじゃぁ僕が納得出来ないんだ。何故あの二人が死ななければならなかったのか。寄りにもよってなんで、と。僕はただ、一緒にあの頃に戻りたかっただけなのだ。それを消した奴はたとえどんな奴でも…

 

「貴方の言いたいことは分かりました。ただ、納得は出来ません。」

 

これ以上何を言っても無駄、か…

 

「そうか。では本気でいくぞ…」

 

リミッター解除、50%。

 

目があった瞬間。地を蹴り目の前の相手に斬り掛かる。継裕は抜刀しながら、鋭二は上段の構えから。

 

 

 

 

 

 

 

「過去に囚われたまま戦うのはやめるんだ…そんな事をしても、何も戻りはしない…」

 

 

 

 

 

 

 

勝者 継裕

 

 

次回 決断




終わりませんでしたぁ〜!?
次早めに出しますね!(構想だけはいつも早く終わっている…)

(*´∇`)ノ ではでは~

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