ソードアート・オンライン 覇王と絶剣   作:高島 秋

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思ったより早めに出せてうぃんうぃんやー!
両局面で活躍するかな?

では!どうぞ!


第58話 決断

今この現状は想定しうる限り最悪の状態だろう。複数のボスが現れ、今まさにHPを0にしようと攻撃してくる。更に状況を困惑させているのは全ての扉にロックがかかっている事だ。俺ら3人が入って数秒後には閉められた。恐らく倒しきらない限り出られないだろう。かと言って戦える人数もそう多くはない。時間が経つにつれ、被害者が増えていくのは必然だ。そしてこれを止める手立てはひたすら倒し続けるしかないという事だ。とても時間が足りない。などと考えながら、1体目、因縁のグリーム・アイズを倒した時だった。そこに現れたのは、後に継裕から聞いた話だが、アインクラッドにある始まりの街の地下迷宮に存在したボスモンスター。発見当時の継裕のLvは101。それで見えた数値は、70層までのボスモンスターとは比較にならないとの事。Lvは95。あの継裕が唯一倒しきれなかった奴らしい。そんな化け物が今、目の前にいる。木綿季は完全に怯え、リズ、シリカ、シノンも戦意喪失している。何とか戦える意思を保てているのは俺、藍子、明日奈、エギルだ。死神と呼ぶにふさわしい格好をしたモンスターが、斬りかかって来たがそれが当たることは無かった。俺らの前にユナによく似た少女が現れ、シールドでカバーしてくれたのだ。

 

「キリト、よく聞いて!今オーグマーのフルダイブ機能をアンロックするから!」

 

突然、突拍子もない事を言われた。まさか、オーグマーにフルダイブ機能がついているとは予想すらしていなかった。話によると、オーグマーはアミュスフィアの機能限定版でしか無いから可能だという。更に、この前俺と会った紅玉宮でボスモンスターを倒してと言われた。藍子筆頭に皆協力してくれることになった。木綿季にはユイがしっかり見ておくとのことでその場を収めた。ユナが機能をアンロックし、みんなで一斉に言った。

 

「リンク・スタート!!」

 

 

 

 

「やりやがったなあのおっさん…」

 

目の前にはロックの文字が点滅している。ぶん殴って開けようとも思ったが扉の向こうに人がいたら怪我をする恐れがあるので何も出来ない。何か別のルートを探す羽目になり、たどり着いたのが天井の開閉式の屋根だ。ここからなら恐らく人1人くらい入る隙間がある。そう結論づけた俺は自分の感覚だけを頼りに骨組みの上を走り、なるべく1番高低差が無いところを選び、何箇所か経由しながら、観客席に降り立った。電光掲示板に示された数値の通りだとするとあと3000ちょいしか無い。あれが1万になったら、この会場でオーグマーを付けている人に高出力の電磁波が放たれる。こんな大勢いるところでそんな事をされたら共鳴効果で全員死ぬ羽目になる。今の段階で削れる限り削らないと。俺も未知の領域だが、やれる限りやってみるしかない。それが、NO.持ちとしての使命だ。これにより、身体がどのくらいダメになるかは想定できない。だが、俺はこれをやらないと恐らく一生後悔するだろう。

 

 

 

 

 

 

リミッター解除 …

 

 

 

 

 

 

100%

 

 

 

 

 

 

ボスを倒しながら進んでいくと木綿季の姿が目に入った。その隣には和人達が…ユナのあの状況を見る限り、フルダイブをしていると結論づける。なら、中はあいつらに任せるとしよう。俺はここにいる人達を救う為に動くしかない。

 

 

 

 

目の前に出てきたのはどうやらどこかの天辺みたいだ。ポッカリと穴が空いたが、俺たち全員が入るとすぐさま閉じてしまった。目の前に現れた、いや、居たのは何処から見てもボスなのだが、その大きさは今までとは比にならない。兎に角でかい。これが本来のSAOでのラスボスなのだとしたら勝てる要素が見つからない。あの茅場でさへ…

そんな事を考えている余裕は一瞬にして無くなった。起動したと思ったらいきなり攻撃をしてきた。標的となったのはエギルだが、間一髪斧で受け切っている。だが、それで終わるはずなく、もう一対の剣で斬り裂く。シノンを除いた俺達は一斉に斬りかかった。近づいていくと何色にもなる波状攻撃が飛んでき、それを避けきれたのは俺と藍子だけで、漸くたどり着いたと思ったら防壁が張ってあり、まず、それを壊すことから始まった。防壁自体は意外とすぐ壊れたのだが、その後のモーションは流石に予想外だった。なんと、HP全回復に加え、上限突破してきたのだ。只でさえHPバーが10本もあったのに、それらが全て増えたのだ。最早勝てる見込みがない。そんな絶望的な状況にさらなる追い打ちの攻撃が加えられた。

 

 

 

 

「木綿季!!大丈夫か!?」

 

聴こえてきたのはここ数日、1番聞きたかった声だ。何度も何度も何度も思い出しては寂しさを紛らわせ、布団にも潜って温かさを感じ、それでも完全には寂しさを忘れることは出来ず、更にはSAOでの大切な思い出も消えてしまったボクはあの日、明日奈の胸で小さい子供みたいに泣いた。それほどまでに寂しさを初めて感じたが、今、それは全て解決した。

 

「継裕〜!!!」

 

飛び込むようにして継裕の胸に顔を埋める。時折、少しばかりの文句を言いながらポカポカ叩いて、…ボクは会えた喜びを十分に伝えた。

 

「パパ、和人さん達がアインクラッド100層ボスに苦戦しています!」

 

「ユイ、恐らくだが、旧SAOのデータはまだ生きている。それを和人達に与えてくれ。あと、俺も後で行く。アレを頼むぞ。」

 

「了解です!パパ!」

 

そう言って、俺達の最愛の娘は任務を果たしに行った。さて、俺はまだここにいる雑魚を狩らなきゃいけない。あと4分の1ぐらいまでに減らすことにしよう。

 

「あ、待って!!」

 

継裕は行ってしまった。きっと、また自分の身を削って人を助けるんだろうな…継裕はそういう人だから…

 

その時、いつかは分からないけど、ある後ろ姿がフラッシュバックした。なんでかはまだ分からないけど、その姿は確かに、ボクに戦う力を与えてくれた。

 

「ユナちゃん!ボクもキリト達と同じところに連れてって!」

 

私は一瞬躊躇ったが、彼女の目を見て、止めることはできなかった。方法は分からないけど、少しだが、確かに取り戻したのだ。なら、私にできることは…彼女の望みを叶えること!

 

 

 

 

俺達はかなりの大苦戦を強いられた。下から生えてきた木によって俺以外の剣士組は固定され、シノンはビームを放たれ、俺は斬りかかった所を脅威の反射能力で鷲掴みにされた。まさに絶体絶命とはこのことを言うのだろう。VR内ではそこそこ強いという自負はあったが、それが一瞬にして崩された。トドメを刺されようと言う時に、上から物凄いスピードで人が落ちてきた。かなりの爆音を立てながらボスの目に剣を突き刺したのは、ユウキだった。

 

「ユウキ!!!」

 

アスナがそう呼びかける。お互いアイコンタクトを取り、希望の光が見えかけたその時、怒り狂ったボスが俺達に斬りかかって来たが、風属性の魔法がボスの周りを取り囲む。それを放ったのは、

 

「お待たせー!お兄ちゃーーん!!」

 

妹の直葉であった。その直葉のとんでもないところからユイが飛び出してきたと思ったら、クライン筆頭に、ALO組の領主及び、スリーピングナイツの皆、更にはGGO組の奴らまで参戦してきた。最後にユイが俺達をSAOアバターに変えた。戦いはいよいよ最終局面を迎えた。シノンの正確無比な射撃及びGGO組の援護射撃に加え、サクヤ、アリシャ、シウネーらの防壁援護、ユージーン先頭に斬り裂くALO組。残るSAO組はキリト筆頭に数々の華麗なるソードスキルを的確にヒットさせていく。リズ、シリカの連携の後、エギルが叩きつけるような攻撃を加えたあと、またしてもHPフル回復のモードに入った。これには元副団長のアスナが遠距離組に的確な指示を飛ばし妨害に成功。ボスモンスターはアスナ達に目がけ攻撃をしてきたがそれをリーファ及びシノンが3つの内2つの妨害に成功。残った1つはアスナとランが斬り裂く。その後繰り出された槍の突き出しはキリトが上手く起動をずらしながら後方に移ってたアスナとランが入れ替わるようにして前に出る。二人同時に神速のスタースプラッシュを叩き込み、入れ替わりで入ってきたユウキがまさに剣技と呼ぶにふさわしい11連撃、マザーズ・ロザリオを入れ、最後にキリトの代名詞ともなっている16連撃、スターバーストストリームを決めた。最後の一撃がヒットした直後、ボスモンスターは爆散した。

 

皆が歓喜に浸る中、ある男の声がした。

 

「これで完全クリアだな、キリト君。」

 

茅場だった。と言っても彼は本物ではない。彼自身が脳を焼き尽くしたことにより生まれたデジタルゴーストだ。クリア報酬なのか空から巨大な片手直剣が降ってきた。茅場曰くまだやることがあるだろという事らしい。俺はその光り輝く剣を手にした。

 

 

 

「クソ…いくら斬っても減りやしねぇ…」

 

かれこれ半分以上は倒したような気もしたのだが一向に減る気がしない。それもそのはず、倒すのと同時に新たなボスモンスターが湧いてきていたのだから。はんば諦めかけていた時だった。突然交戦していたはずのボスモンスターが爆散したのだ。周囲を見渡すと懐かしの彼が長大な剣を振るっていた。一撃でモンスターを倒していく様は、まさに英雄と呼ぶにふさわしいだろう。

 

「遅せぇよ…馬鹿野郎が…」

 

駄目だ。これ以上は意識を、保てそうに、ねぇ、や。

 

すまない…木綿季…

 

ドサッ

 

 

 

全てのボスモンスターを倒し切った俺達は現実世界に帰ってきた。ユナの最後の単独ライブも終わったと同時に、悪夢も消え去った。たった一つの犠牲を残して…

 

 

「継裕、継裕!継裕!!」

 

木綿季がそう何度も呼びかける。ユナに指摘され、見つけた時には酷い状態だった。腕や足という至る所から血が滲み出ており、出血の量が異常なことはすぐ分かった。何度も呼びかけるが反応はなく、呼吸も出来ているか怪しいところだった。その時だった。これは後ほど知ったのだが、継裕の父親が来たのだ。後ろにいた救急救命の人を引き連れ、継裕を運んで行った。継裕の父親と入れ違いである女の人が来た。

 

「おっす、久しぶりだな、キリ坊〜。」

 

この聞き覚えのある呼び方は…あのSAOで大変世話になった情報屋のアルゴだ。まさか、継裕の姉だとは思わなかったが…兎に角、継裕の姉、葵さんが継裕のいる病院に連れていってくれることになった。そこそこでかい車に、一番後ろに右からエギル、俺、藍子。その前にはリズ、シリカ、シノン、明日奈という具合。(本来は3人分しかないのだが、みんな細いので全然余裕だった。)助手席には木綿季が座った。ただ、俺達は車に乗ったことを後悔した。やはり血は争えないのか、継裕と似たような、いやそれでもかなりマシな方なのだが、そこそこのスピードで爆走して行った。本来なら20分弱かかる所を5、6分で着いてしまったのだから…まだGGOで継裕の運転を知っている俺とシノンからしたらジェットコースターぐらいの面白みだったのだが、シリカ筆頭に(木綿季は除く)物凄い剣幕で迫られていたのは必然であった。

 

 

暫く復帰には時間がかかるという話を俺らは聞き、木綿季以外のメンバーはそれぞれ帰ることになった。

 

「継裕は、大丈夫なのですか…」

 

「お父さんが対処してるから最悪の事態にはならないわ。」

 

と言っても、あの状態になったのを見たのは私を含めお父さんも初めてだから断言は出来ないけどね…

 

 

継裕の命運は如何に…!?

 

 




久しぶりに長くなりました。
継裕はどうなってしまうのか…

(*´∇`)ノ ではでは~

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