ソードアート・オンライン 覇王と絶剣   作:高島 秋

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色々考え直しまして構想を練り直したっ!
その為という訳ではありませんが遅れてしまい申し訳ありません!

では!どうぞ!


覚悟

 

 

「継裕、お前の存在意義はなんだ?」

 

 

そう問われたのは約2時間前。今となっては木綿季の為にだと即答できる。だが、前の俺なら…?どう答えるのだろうか。現実世界に未練が無かった俺は死のうとしていたのだ。せめて、誰かの役に立ってからこの世界からさよならをしようとしていた。そんな時に木綿季と出会い、数多くの冒険をして、恋をして…初めて俺という存在が"道具"として以外で認められたと思った。そんな大切な友人らとあんな形で別れるのは少々心残りだが致し方ない。きっと彼女らなら理解してくれるはずだ。俺が守りたかったもの。俺のしたかった事。ただ、あの時と違うのは、今の俺は心残りがある事だ。置いていくことになるのは申し訳ないとは思うが、きっと木綿季なら理解し、俺の事を怒りながらも許してくれるだろう。済まない木綿季…

 

 

 

「自分の存在意義、か…」

 

 

父は、情が無い人間になるように俺の事を育ててきた。その情は、時に自分に対して脅威となり得るし、死へと直結する事もあるからだ。まぁ普通の人間ならそんなことを考える必要は全く無いのだが、俺の場合は色々事情が重なる上仕方ない気もする。

戦闘中の極限状態において、人としての情を残していては勝てるものも勝てない。それは決して殺し合いに関わらず、武道を心得ている者ならあながちなくはない話だ。

 

父はこうも言っていた。

 

 

同程度の敵と戦った時に勝つのは…人としての情を捨てた者だ。

人を斬ることに躊躇うような奴は、死ぬ他ない。

 

 

 

だから俺は、ある目的を完遂するまでは人の心を捨てることに決めた。例えそれで数多くの人に嫌われようとも、信念を貫き通す為になら、喜んで悪役に身を染めよう。それが、俺がこの世に生を受けた意味。"存在意義"なのだから。

 

 

 

 

 

ドゴォン!

 

突然の衝動がオーシャン・タートルを襲う。自室にいた俺はこの衝撃音により、危惧していた事が現実になってしまったと、最悪の事態を悟った。

 

「菊岡!侵入者だ!俺は迎撃に向かう!何人か借りるぞ!」

 

「えっ!?わ、わかった!継裕君頼んだよ!」

 

 

 

数時間前。

 

 

「なに!?和人のフラクトライトがダメージを負っただと!?」

 

どうやら内部において、和人自身に何かしらダメージを負ったことにより、精神的にも来てるとの事だ。元々ここ、オーシャン・タートルに運ばれた理由は、死銃事件のもう一人の協力者である金本淳による襲撃で負った脳へのダメージをSTLによって回復させる為だった。そのはずだったのに、また中でダメージを受けては意味が無い。そう思うのと同時に、またあいつは誰かの為に傷ついているのだろうなと思った。そんな彼だからあんなにも多くの人に愛されているのだと。そんな優しい、いや優しすぎる彼が辛い記憶に心が苛まれているのだと思うと心が酷く痛む。フラクトライトによるダメージは想像するよりも遥かに苦しい。死んでしまった方がましなレベルだ。だから、最後をそんな辛いものにさせる訳にはいかないんだ…

 

「何か解決策あるかね継裕君!?」

 

「ちっ!」

 

思い至ったのは、STLを使って回復させるぐらいしか無いという事。そしてその使用者は詩乃と直葉が1番の適任だと言うこと。恐らく2人が最も彼と近しく、愛していると思ったからだ。その為、六本木にあるラース支部へ連絡し、彼女らに協力を依頼することになるのだが、俺は別任務で忙しい。そこで、俺が作りあげた世界最高のトップダウン型AI、ユイに頼むことにした。

 

「ユイ、頼み事がある。」

 

立ち上げ当初は、申し訳ない気持ちと悲しい気持ち、怒ってる気持ちなどが混ざり合って今にも決壊して泣きだしそうな様子だったが、俺のかなり端折った説明でも理解したのだろう。すぐ行動に移してくれた。幾らなんでも都合良すぎるとは思ったが使えるものは使わないと救えない。これがせめてもの彼女らに対しての償いになるだろう。

 

「比嘉さん!和人のSTLに今から指示するのを繋げてくれ!」

 

「わ、わかった!」

 

 

そして今に至るのだが、侵入者は恐らく祖父らが調べていたNSAから依頼を受けている某民間軍事会社のどれかだ。なんせここは高適応性人工知能と人工フラクトライトを作っているからだ。軍事的に利用価値の高いものをみすみす見逃すわけがない。それを奪いに来たのだとされる。祖父からはその可能性が高く、遅いに来るかもしれない。場合によっては消されるかもしれないと忠告を受けていたが、まさか本当に来るとは。

第一関門は難なく突破された模様。数名の自衛隊員と共にアサルトライフルを携えながら、敵を迎撃しこのオーシャン・タートルを死守する。それが今俺の優先順位において最上位である、日本を守ることに繋がる。その為なら、人間性を捨てることを厭わない。

覚悟を決め、いざ、決戦の火蓋が落とされる。守りきるか、奪われるか。それはここを守りきるかどうかにかかっている。

 

「待て、俺が確認する。」

 

隊員の1人が先走りそうになったので止める。まずは敵の位置を正確に把握する事が大切だ。耳に全神経を注ぎ、どんなに小さい微かな音も逃さないよう耳を澄ませる。聞こえた音的に人数は8人。男は6人女は2人。ただ、その内の1人は後方にいる。体に触れる音からして武器は銃器の類がほとんど。近接用に短刀も所持しているが、メインはアサルトだろう。ここまで数秒ほど使ったが、ここまでは想定内。あとは俺の指示通りにいけば殲滅とはいかなくてもここを防衛しきることは可能だ。ただ、ここで一つ誤算が生じた。それは1人の隊員が出てしまったこと。待ちきれなかったのだろう。強い正義感からなのか正面で撃ち始めたが実戦経験的に圧倒的に向こうの方が上なのが分からなかったのだろう。あっという間に蜂の巣にされ好ましくない音を立てながら横に倒れた。こちらの居場所がバレてしまってはもう戦闘するしかない。それは事前の話し合いで決めていたのでなんとか混乱することは無かった。

誤算はもう一つあった。それは予想より敵の連携が取れており、こちらの動きも読まれていることだった。既に重傷者もで始めており、かなり不利な状況だが応援を呼んでいる時間はない。一瞬、木綿季が頭をよぎったが頭を横に振りながらすぐ消し去る。俺が彼女に会うことはもう二度と無いと覚悟を決め、残り1人となってしまった隊員に最後の命令を下した。

 

「殿は俺が引き受ける。お前は菊岡に報告しに行け。」

 

「えっ!?いやしかし」

 

やめろ。俺の判断を鈍らせるな。

 

「早く!!」

 

どうやら、俺の表情から理解したのかご武運をと言い残し菊岡の元へ走っていった。本来なら無線使いたいところだが盗聴されてる可能性が高いと判断した為この手段をとった。銃声音から相手は残り1人だと敵も判断したのだろう。じわじわ寄ってくるのがわかる。やはり、戦闘慣れをしている。若しくはリーダー役のやつが相当な手練なのか。万が一の時に具え短刀を持ってきて正解だった。あまり弾数が残ってないから既に戦死した仲間のを拾ったりして使ってもいるがそれも時間の問題だ。さぁどうする…

 

 

 

「There's only one person left to deal with, but be careful.(相手は残り1人だけど、油断のないようにね。)」

 

「OK, boss.(了解、ボス。)」

 

 

突っ込むしかない…か。

 

 

「ちっ…はぁぁぁぁぁあああ!!!」

 

雄叫びを上げながら俺は突進して行った。敵は思いがけない行動に面食らっていたが構うことは無い。驚いている間に距離を詰め、叩き斬るだけだ。

 

リミッター解除、60%…

 

 

 

 

「はぁ、はぁ。菊岡2等陸佐っ!報告があります!」

 

「ど、どうし」

 

菊岡は言葉を続けられなかった。よく見ると、彼はそこかしこに血がついており出血もしている模様。これで聞くのは正直身にこたえるが立場上聞かない訳にもいかない。

 

「どうした…?」

 

「はっ!ご報告致します!生き残りは私を含め2人、現在工藤隊長が殿を務めております!」

 

菊岡はこの言葉で状況を全て把握した。敵が予想以上だと言うこと。あの継裕が苦戦しているということ。そして、ここで命を散らすつもりだということ。

 

「君!今から僕が渡すものを彼に届けてくれっ!」

 

これは言わば賭けだ。彼が生きているということに対しての賭け。

 

「もし、渡せなかったら…無事に帰ってこい…」

 

こんな言葉しか絞り出せずにいた。

 

 

 

まず1人、良く考えればこいつらも手練なのだろうが、それはあくまで"普通であったら"の話。幾ら軍人といえどリミッター解除を使えない奴は俺からしたら虫けら同然だと言うことを忘れていた。そうだ、俺が最初からこれを使っていれば犠牲を出すことがなかったのでは…?そう思い至った時にはそこには4体の屍が転がっていた。どう考えても数が足りない。後ろで待機の女1人。ここには男4人。残りの奴らはどこへ…まさかの数え間違いか…?そう考えていたら後方に居たはずの女から"斬りかかってこられた。"ここで俺は3つ目の誤算に気づいた。何故、"こいつが居ないと"勘違いしていたのだろう。

 

 

 

 

「なるほど。お前がいたならこちらの損害も納得だ…

 

 

 

アルバっ!!」

 

 

「久しぶりねぇ、こちらでは継裕かしら?さっ!お互いいい試合をしましょ!」

 

そう言って彼女は斬りかかってきた。その笑顔は狂気に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

「なんで…どうしてなんだ!?和人君!?」

 

紺野藍子、朝田詩乃、桐々谷直葉が接続する3台のSTLからは、桐ヶ谷和人の傷ついたフラクトライトを補完するべく、膨大なニーモニック・データが流れ込んでくる。これまであまたの実験を繰り返してきた比嘉でさえ驚愕せずには居られない、奇跡とすら思えるデータ量を持ってしても、和人のフラクトライト活性を示す3Dグラフは、機能回復ラインの直前で止まっている。

 

「これでもまだ…足りないのか…」

 

せめてあと一人、和人君と深い繋がりを持ち、強いイメージを蓄積している人間がいれば…しかし、継裕隊長いわく、今接続している3人の少女達が、間違いなく全世界で最も桐々谷和人を知り、愛している人間らしい。それに、使用可能なSTLはもうどこにも存在しない。

 

「くそっ…畜生…」

 

「まだ諦めないでくださいっ!」

 

どこからか聞こえてきた声に比嘉は驚愕しながら周囲を見渡した。だが、誰もいない。それに今の声は確か1度聞いたことがあるような気もしていた。

 

「あなたの携帯端末です。パパからの伝言です。

 

もし足りないのならば、"中の住民で繋げられる奴は居ないのか?"

 

との事です。」

 

中、ということはUW内のことに違いない。普通に考えてそんな事は起こりえない。幾ら人口フラクトライトとはいえ所詮はデータと思っていた比嘉は継裕の言いたい意味がイマイチ理解できなかった。だが、彼は比嘉が尊敬もしている茅場先輩も認めた天才なのだ。それに、望みがあるとしたらもうそこにしかない。恐る恐る携帯端末に送られてくる情報通りに操作し、和人のSTLに繋いだ。

 

「それにしても、驚かされたよ。まさか、擬似フラクトライトの存在に目を向けるとは…」

 

 

 

 

「くっ!」

 

「あらあら、随分弱くなったわね継裕、それとも"遊んでいるのかしら?"」

 

 

 

負けられない闘いがここにある。




∩(´^ヮ^`)∩って感じ(どんな感じだよ。)

中途半端ですが次話は早めの予定です…!

〜(*´∇`)ノシ ではでは~

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