ソードアート・オンライン 覇王と絶剣   作:高島 秋

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年度替わり初投稿だぁ!

次の元号は令和になりましたね!
さて、気持ちを新たにいざっ!

では!どうぞ!


剣の王

 

 

 

キヒロが攫われ、攻略組の士気は間違いなく落ちたと言ってもいいだろう。なぜなら魔法系統に関して群を抜いていたからだ。キヒロほどの威力、射程、持続を持つ魔法を放てるやつはいない。そこで今話し合われているのは、今後の進行だ。

 

「一刻も早くキヒロを取り戻すべきだ!」

 

「いやその前にある程度の魔道士を育てるべきだ!」

 

などと言うように意見が割れている。そんな時、一人の少女がふらっと立ち上がり、ドアの方へ向かっていった。そして当然、それは呼び止められた。

 

「どこ行くんや自分。」

 

「第81層ボス部屋。」

 

キバオウが呼び止め、ユウキに尋ねる。ユウキはさも当然のようにスラリと答え、また歩み始めようとしていた。だがそれはまたしても止められた。特徴的なスキンヘッドに、岩のようなゴツゴツした体躯を持つエギルにだ。

 

「わりぃが、1人では行かせられない。」

 

「どいて。」

 

「無理だ。」

 

「そ、ならそれ相応の覚悟を持ってね。手段は選ばないつもりだから。」

 

そう言いながらユウキは抜剣した。当然、周囲は驚きに充ち、そして少しづつユウキから遠ざかっていった。流石のエギルも驚いており、1歩引いてしまった。その隙が見逃されるはずはなく、ユウキはエギルを小突いて隙間を作り会議場から抜け出してしまった。

 

「無理もない、わね。あれから2時間留まったんだから。十分我慢したと思うわ。」

 

そういうのはラン。そしてすぐ、ユウキのあとを追いかけて行った。流れるようにアスナ、リズ、シリカ、リーファ、シノンにアリスとスリーピングナイツの皆が出て行った。この状況を渋い表情で見ていたキバオウとノーチラスはお互いの顔を見て、そして頷いた。

 

「自分らもあいつらの後を追いかけろぉ!」

 

 

 

ユウキら全員が揃い、いざボス部屋と思っていた矢先だった。既にボス部屋の扉は開閉されていた。新たな仕様なのかと勘繰った者もいたが、いつも通りだった。ボスは既に倒されていたから解放されていたのだ。その証拠に、次の層への扉の前に2人の人間が陣取っていた。1人はアルバだと確定したがもう1人がわからない。目の部分に仮面をしているためである。更にフードも被っているため、性別も不明だ。身長はそんなに高くないように見える。アスナぐらいか?

 

「やっと来たのね。待ちくたびれたわぁ。」

 

アルバはそう言いながら欠伸をかいた。その態度にイラついたのかキバオウ率いるアインクラッド解放隊及びノーチラス率いる血盟騎士団は一様に抜剣した。先に飛び出していった奴らは既にしていたが。

 

「あらまぁ血気盛んなこと。いいわねぇ。そそるわ。でもごめんなさいねぇ。あなた達の相手は私じゃないわ。」

 

そう言った直後だった。アルバのそばにいた奴がこちらに近づいてきた。そして、聞き取れはしなかったが何か言葉を口にしたように思えた。口の動きが止まった瞬間、敵の取り巻く空間から剣などが出現した。何も無かったところから生まれたから錬金の類か等と、こんな時なのにゲーム脳が発揮されてしまうのが少しばかり恨めしく思った。

 

「さぁ、敵を蹂躙しなさいっ!」

 

アルバがそう言ったらまた何か魔法を唱え始めた。その術は剣たちを重ね合わせていったり結合させていったりして、そうして、出来上がったのは…

 

 

「またこいつですか。ソードゴーレム…」

 

アリスがそう呟く。またしてもという感じだがなにか考えがあるのだろう。まぁ前回と同じだったら一撃で倒せる自信がある。

 

「そうよぉソードゴーレムよ。ただ、前回出たあれとは訳が違うわ。」

 

前回はただの物体としていたソードゴーレムだった。だから粉々にすれば再生するなんてことがなかったから一撃で倒れたが。おそらく今回はかのUWのように、核を用意するつもりなのだろう。まさか…

 

俺はその嫌な予感が何となく当たるような気がした。俺の初めての親友ユージオと、カーディナルによって完成したあの剣は、ユージオの体を依代としたからだ。そう思いながら、これから起こることに目を背けるなんてことは出来なかった。

 

あの世界で核となっていた部分に一人の人間が収まったのだ。それと同時に、後ろの扉は閉められた。あのアルバという女は俺達に選択肢を与えないつもりらしい。そして更に驚愕することをサラリと言った。

 

「あぁ、言い忘れていたけど、それ、あなた達の仲間かもね?」

 

そう言いながら俺たちの方を見た。声は悲しそうだったが顔は笑っていた。歪んでいた。俺達の表情をみて、それまた嬉しそうにはしゃぎ、声高く嗤った。

 

「あははははっ!あなた達はそれを知っても尚!これを斬れるかしら!?」

 

勿論攻略組は知っていた。中層プレイヤーに加え、攻略組も消えてしまった事件だ。結果的にアルバ率いるアル・サーメンが強奪している事は判明していた。当然、足は動かない。それか後ずさりするか、この状況に耐えきれず座り込むか、悲しみが限界を超えるか…家族や恋人がいるやつは耐えられない状況だろう。だが、ここで一人の男が動いた。

 

「おい自分。連れ去った人んらはどうした。」

 

「私達の可愛い子供にしてあげたわ。」

 

「それは治るんかいな。」

 

「無理よ。」

 

その答えを聞いたキバオウは何かを決心したのか、俺らの方へ向き直ってこう言った。

 

「わいはあいつを倒す。誰か手伝ってくれへんか。」

 

倒すと、言った。つまり、俺達の仲間だったり家族だったり恋人かもしれないやつを、殺すと言ったのだ。

案の定反対意見もでた。それでキバオウが言ったのは、

 

1人の命より、1000、2000の命や。ここで倒さなければ、はるか多くの人間が死ぬ…わいらは、最小限の犠牲に収めなあかん。

 

理屈は通っているし実際そうすべきだ。あのキバオウがっていう感じだが…この言葉で腹を括ったのか、皆前を向いた。

 

「なんだぁ、気持ち決まっちゃったの?まぁいいわ。存分に楽しんでね。」

 

それを皮切りに人が乗ったソードゴーレムが突進してきた。そのスピードはあの時よりも確実に早く適切な距離まで詰めてこられた。刃は高スピードで飛んでき、受け止めるだけで精一杯の重さを併せ持つ。物理攻撃は全くと言っていいほど効かず、魔法攻撃も当たらない。あの巨躯で異常な程の敏捷度も持っていたら当たるわけない。そもそも詠唱の速さ順に襲っていくためなかなか放つまで持ち込めない。元ALO組は特に苦戦している感じだ。古参になればなるほどきつい闘いとはなんとも巫山戯てる展開だ。さらに核となっている人間は攻略組で間違い無いだろう。動きが的確すぎる。それともアルバが指示出しているのか…いや考えても無駄だ。今は目の前のこいつをなんとかしないと。

 

 

 

どのくらいたっただろうか。一向に倒せる気配がしない。こちらは視認だけでも3人は死んだ。このままでは、全滅だ。エギルやテッチらタンクが頑張ってくれているのに…俺は何も出来ないまま、なのか…

 

ソードゴーレムは一瞬の思考すら許してくれなかった。物思いに更けていた俺にその鋭く尖った刃を伸ばしてきた。これが走馬灯と言うやつかな。とてもスローに見えた。ごめんな、ラン…

 

 

 

だが、実際に起きたのは俺の人生史上最悪のものだった。

 

 

 

「がふっ。」

 

思考が止まる。今の声は俺じゃない。というか俺にあの刃は届いていない。俺の前に黒髪ロングの子がいる。恐る恐る顔を上げるとそこに居たのは…

 

「ラ、ン…」

 

ランだった。

ソードゴーレムはただ貫くだけでは飽き足らず、ランを壁際まで吹き飛ばした。遠くからアスナやシウネーの叫び声が聞こえる。他の攻略組の驚愕と怒号の混じった叫び声もあたりに響き渡る。そして攻撃していく。それなのになんで、

 

 

"俺の足は、動かないのだろう"

 

 

その時、どこからかふと、声が聞こえた。

 

 

 

大丈夫だ。ランは助かる。お前がいなければ、奴は倒せない。お前が、やるんだ。

 

 

立って、キリト。そして、お前の手で、

 

 

この世界を、救ってくれ…

 

 

誰かに背中を押された気がした。多分俺の脳が勝手に作りだした妄想に過ぎないのだろう。そう昔の俺なら言っただろう。でも今は、親友が俺の心で生きている。だから、さっきのもきっと、幻じゃない。

 

 

「っ!うぉぉぉおおお!!!」

 

俺の雄叫びを聞いた攻略組が一斉に振り返る。そしてそれと同時に叫ぶ。

 

「スイッチ!!」

 

攻略組一丸となって作りだした隙。恐らくこれが最初で最後だ。ありったっけの力を込めて、想いをのせて…俺の全てを、ぶつける!

 

 

 

「スターバースト・ストリームっ!!!」

 

 

 

左から右へ、右から左へ、上から下へ、突いて、薙ぎ払ってを繰り返した。だが欠ける気配すら見えない。ただ、1点のみを重点的に繰り返し攻撃を当てた。16連撃目。呆気なく終わった。結局剥がせなかった。そしてソードゴーレムから一撃が迫ってきていた。ただ、この時俺はまだ動ける、そんな気がした。

 

 

「まだだぁああああ!!!」

 

至近距離からヴォーパルストライクを放つ。感覚的には17連撃目になるのだろうか。俺は兎に角無我夢中に突き刺し続けた。すると、僅かではあるが、ヒビが入った。ただ、それ以上俺も押し続けることは出来そうになかった。

 

「スイッチ!!」

 

突然聞こえた声に慌てながらスイッチする。相手はユウキだった。今まで見たことも無い鬼の形相をしていたが無理もないだろう。実の姉が腹を貫かれたのだから。俺はここでようやくさっきのソードスキルの硬直がきた。あとは頼んだぞ、ユウキ。

 

 

姉ちゃん、みてて!ボクが敵を打つ!

 

 

「やぁぁぁあああ!!!」

 

マザーズ・ロザリオ。ユウキのオリジナル片手直剣ソードスキル。OSSと呼ばれるそれは現仮想世界では最大連撃数とも呼ばれている。その11連撃に俺らは幾度となく助けられた。キヒロ無き今、間違いなく最強に違いない。そのユウキが心意の力も使いこなせたら、キヒロを取り返すのも楽になるだろう。

 

右斜め上から左斜め下へ、左斜め上から右斜め下へ放った後、クロスした中心部へ渾身の一撃を放つ。間違いなくこの戦いの中では最大の威力のはずだ。

 

「いけぇ!ユウキぃぃいい!!!」

 

俺の掛け声に他の攻略組も続く。皆がユウキに思いを乗せている。みんなのこの思いは、どんな装甲にも負けないはずだ。それは心意となってユウキに届くはずだから。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇええ!!!!」

 

ユウキの怒号とともに、ソードゴーレムの中心部が弾け飛んだ。中身となった人間が弾き出され、横たえた。

 

「あら、やるじゃない。でも、"まだ終わってないわ"。」

 

何言ってる。核となっている人間は心臓付近を中心にほぼ無くなっているだろう。両サイドが皮でなんとか繋がっているようなイメージだ。腕や足はソードゴーレムの中に置いてきたのか不細工に引きちぎれている。だが、それでも、奴は立った。いや正確には浮いていると言った方が正しい。今の状態はとても生きているとは呼べない体だ。だが、あの状況を見る限り、本体は頭にあると考えた方が良さそうだ。そしてそれは直ぐに証明された。残された頭から触手が伸び、ソードゴーレムへと連結されたからだ。それを視認して確信したのかアスナ、ユウキ、そしてアリスが真っ先に飛び出し3方向から突き刺しに行った。流石に防ぎきれないだろうと思った。が、それはあるものに遮られた。ソードゴーレムだ。核無き今動かせるはずがないと思っていた。アスナらがその後吹き飛ばされ見せられたのは、ソードゴーレムを触手で操っている敵の姿だった。

 

「おい自分っ!他の奴らもこないなっちゅるがな!?」

 

キバオウがそう尋ねる。恐らく、キバオウ自身もここまでのものだとは思っていなかったのだろう。俺も精神が支配されているに過ぎないと、そう思っていた。だがあれはどう見ても、体まで別物へと変化してしまっている。

 

「そうだけどなにか?」

 

彼女はサラリとそう言った。そしてこう続けた。

 

「さぁ、第2R始めましょ?」

 

その言葉と同時に先ほどよりも幾らばかりか動きの早いソードゴーレムがきた。このスピードアップした状態ではとてもソードスキルでは対抗できない。まるで、あいつを見ているかのよう。恐らくは脳から直接伝達しているからだろうが。

 

兎に角予想外の攻撃が多かった。1度上の飛び、全ての剣を展開したあと落ちてくる。しかも中々のスピードでそれを繰り返すため逃げている暇などほとんどない。この攻撃で5人程死んだ。あとは今までは目の前の敵を蹂躙しにいっていたのに対し、今度は回転斬りなどを加え全方位への対処をこなしていた。

 

だが、以外にも呆気なく終わった。ユウキがヴォーパルストライクを放ったからだ。あの状況下でよく正確に放てたものだ。前回俺がソードゴーレムを倒す時に使った伸びるソードスキルだ。1回しか見せていないのにあんなにも早く使えるとは、さすがと言わざるを得ない。

 

ユウキのソードスキルが命中し、頭が弾け飛んだ。

 

「ふーん、まっ、面白いものを沢山見せてもらったし今回はこれで引いてあげるわ。82層へのアクティベートはしておいてあげるわね。」

 

そう言い残したあと、アルバは消え去った。それと同時にソードゴーレムも大爆発を起こしながら消え去った。こうして81層攻略は完了した。

 

 

「姉ちゃんっ!!」

 

あの後俺らはすぐランの元へ向かったがその状況までもがUWにとても似ていた。血が出ていたのだ。その場はなんとかアリスが覚えていた神聖術で凌ぎ切った。あの天命を移す術式だ。俺はすっかり忘れていたので後で怒られたのは言うまでもない。まぁ怒られるのは当然だ。今まで心意で色々出来てしまっていたがこの世界で心意が影響を及ぼすのは攻撃や防御といった類のみらしいからだ。

 

攻略から帰宅し、生存者の確認等をした。合計12人亡くなっており、半数がタンクを務めたものだった。しかも最悪なのが今回は正当なボスじゃなかったことだ。次回も恐らくアルバが用意したボスとなると、俺達の状況をどこかで観察し、それに合った敵を用意してくるはずだ。その意見を全員で共有した後、解散となった。思わぬ攻略を強いられることとなったが、愛する者のために、どこかで剣を振るう。

 

 

次回

 

【重き鉄槌】

 




遅くなってしまい申し訳ありませんっ!
次回予告し始めました。その通りになれたかな?

えぇと新生活を送る方々楽しんでください!(何目線…)

(*´∇`)ノシ ではでは~
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