ソードアート・オンライン 覇王と絶剣   作:高島 秋

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今回は早いでしょ!w
ここからドンドン行くよー!

では!どうぞ!


疾風

83層に着いてから生き残った人員を確認したところ、今回の死者数は過去最大の28人だった。全体の4割ほどだ…生き残ったもの達も重傷者が多かった。片腕無かったり腹からの血が止まらなかったり。まだ死者数は増えるだろう…

 

 

いつまで、この闘いを。いや、

 

"殺戮に抗っていけば…"

 

 

「いいのかアルバ。あんな温くて。俺らが直々に出れば奴らなんて」

 

「まぁそう仰らずに。これを楽しみましょうよ。絶望に晒されながら、どう立ち向かって来るのかを、ね?イスナーン。」

 

「いい性格してるよなアルバは。で、"いつ本物を出すんだ?"」

 

「そうねぇ。"誰か一人でも気づいたらにしましょ"。」

 

 

 

1週間は治療などに務めた。死者はあれから3人増えた。実に半分近いにんげんが今回の攻略で死んだことになった。幸い俺の仲間は誰一人として欠けてはいないが、それも時間の問題かもしれない…

 

2週間たった頃には多くの攻略組が体を動かし始めていた。次はどんなのだろうかと思案している者もいる。俺もそのひとりだ。まぁ予想できることなんて殆ど無いんだけどな…

 

「あら、いつになったら来るのかしらと思ったら。

 

どうしましたの?攻略諦めましたの?」

 

突如アルバが現れた。いやそもそも80層より上は敵の支配下にあるからどこから現れても不思議ではないが。そんな時、1人の剣士がアルバに斬り掛かった。

だがそれが届くことは無かった。確かあの魔法は

 

「ボルグ。貴方みたいな弱い人が傷つけられるとでも思って?」

 

そうだ。あれはユウキも使っていた防御魔法だ。だが、その強度は遥か上に違いない。杖を軽く一振しただけで斬り掛かった剣士は吹き飛ばされた。このアルバという女がキヒロを倒したらしいが。その実力は計り知れないな…

どこから現れたのか、ユウキがアルバが展開している防御魔法に剣を突き立てた。

 

「かえしてぇ!ボクのキヒロをぉぉおお!!」

 

かなり剣を振っていたが一向に破れる気配がない。寧ろ弾き返され始めている。

 

「あら?誰かと思えば貴方ねぇ。返して欲しければボス部屋に来る事ね。ゲートは開いてあげるから。それに、」

 

「"キヒロが出来たものを貴方が出来るまで私に勝てると思わない事ね"。まぁそれが出来たとしても、あなたに勝ち目はないけれど。」

 

そう言い残し消えていった。いったいあの言葉の意味は…あとに残されたのは、ボス部屋へ繋がる回廊結晶だった。

作戦をたてようにもたてようがないので、ほかの最低限のことをやる。装備を整えたり、回復アイテムの補充だったりだ。人数派この前より少なめの50人ほどだが、魔道士は以前の倍の30人。スリーピングナイツの皆は怪我が酷かったので今回は休みだ。

相変わらず1人の敵がポツンと立っていた。そしていつもの様に次の階層に続く階段にはアルバがいた。

 

「あら?人減っちゃったわね?大丈夫かしら?」

 

などと言っていたのが頭に来たやつが何人かいた。全く、沸点が低すぎるなぁ。分からなくはないが…しかもよりによって俺のよく知っている奴と来た。リズとクライン、それにユージーンとサクヤら元領主組だ。あっという間に突撃してしまった。いや作戦なんてものは無いから自由にとは言ったが自由過ぎないか?

 

「くたばれぇぇえええ!!!」

 

恐らく人形と推察される敵は抜剣などせず、空中に細剣を創り出した。そして軽く受け止める。その隙に周りを取り囲んでいた者が一斉に斬り掛かる。それが上手くいくはずはなかった。

今回は今までと違った。最初から2本同時に手に持っていた。つまり細剣の二刀流と言ったところだ。聞いたことはもちろんないが要領はきっと俺の二刀流と大差ない。重さより速さ重視に変わるぐらいだろう。そう考えたか飛び出して行った者ら全員が同時にソードスキルを発動させた。しかしそれは無慈悲にも打ち砕かれた。7人ほどの同時撃ちを全て弾き返したのだ。普通ではないが今までもかなりひねくれた攻撃を多くしてくれてたおかげで我を失う者はおらず、次への攻撃へシフトしていた。俺ら前衛も加わることにした。そしてその中でも最速の2人がソードスキルを同時発動させた。ランとアスナだ。光速と閃光。その2人のスタースプラッシュは俺もユウキも防ぎきれたことは無い。必ず攻撃は当たると信じていた。

だが、それすらも敵は凌駕してしまった。2人の同時撃ちを全て正確に当てたのだ。しかもシステムアシスト無しでだ。いくら人形とは言え、その速さで返していたら持つはずない。そう高を括っていたのだが、考えを改めなければいけない。

結局、全てを翻されたランとアスナはその後強烈な一突きを浴び後方へ飛ばされた。

当然、あの二人が敵うはずのないスピードを対処出来るものなんて俺とユウキしかおらず状況は明らか不利にへと追い込まれて行った。

魔道士部隊の攻撃、防御支援魔法や回復魔法もあってか死人こそ出なかったが魔力が無くなれば話は別だ。それこそ、一気に叩き潰される程にだ。それを見据えてなのか敵が新たな攻撃を始めた。

 

「エンハンス・アーマメント。」

 

今回の武装完全支配術も持続系みたいだが、全く掴めない。何しろ攻撃方法自体は何も変わっていないからだ。変わってるところを探している時、俺の所へきた。

 

「くっ、………!?」

 

異変を察知し咄嗟に武器を薙ぎ払い距離を取った。今の感じは、

 

「キリトぉお!あの剣に触れると魔力吸われるよ!」

 

そう言ったのはユウキだ。やっぱり、あの妙な違和感は魔力が吸われていたことなのか。だとしたらかなり不味い。ただでさえ敵はアルバから魔力を貰っているのだろうが、こっちはあれクラスの魔道士なんて居ないので魔力が切れたら木偶人形と何ら変わりはない。ん、?木偶人形?

 

「キリト!!」

 

どうやら物思いにふけている時間は貰えそうに無い。今はどうやってこいつを倒すかだけ考えないと!俺に近づいた敵は新たに術式を唱えた。これは、記憶解放術式。

 

「リリース・リコレクション。」

 

いったい何、が!?

思考が一瞬停止した。いや我ながらよく意識を戻せたと思う。敵の剣は首に迫っていたが辛うじて避けきれた。今のは一体…

2本あった細剣が1本になっている。正確に言うと、2本の細剣は融合したらしい。それで1本の細剣になったんだが、まるで避雷針だ。

そうか。周囲の魔力を集め、それを電撃に変えて解き放つ。敵は自らの魔力を一切使わず、俺らだけの魔力を利用しているんだ。めちゃくちゃ効率的だな…奴の剣に触れたら魔力が吸われるから迂闊に斬りこめないし、単純に雷撃も厄介だ。ただ、単調攻撃であることに変わりはない。もっと言えば、今までの中では一番ダメージは受けない。あの武器を破壊しなければならないというのを除いたらの話だが。

そう考えている間にも敵は迫ってくるし斬り殺しにくる。迂闊に受け止められない今避けるべきなんだろうが全部を避けるなんて不可能だ。かといってアリスの援護は望めない。あれはかなり魔力を消費するらしいからここぞという時に残しておきたいと言っていた。

 

だから俺は、やつの剣に魔力を与え続ける。無限では無いはずだ。いつか許容範囲を超え、壊れるはずっ!

 

「うぉぉぉおおお!!!」

 

空間リソースから集めた魔力を刀身に宿し、ヴォーパル・ストライクを放つ。当然敵は受け止めた。きっと全て吸い込めると思ったんだろう。だが、俺だってここに来るまで、血反吐を吐く思いで努力し、生き残ってきた。これまでの戦いで無念に散っていった奴らの思いを、想いを!背負っているんだ!負ける訳には、いかない…!

 

ユウキ、アスナ、それにランまでもどうやら習得していたようで、俺の攻撃に重ねてくれた。おかげで敵の細剣の耐久の限界を突破したようで粉々に粉砕できた。その時魔力も戻ってきた。なんかワ○ピ○スのやつであったような気がする、そんな話し。

 

 

最早当たり前のように次の武器が錬成されるのだが、よくよく考えたらおかしいと思う。ただでさえ普通のボス並の強さなのにまた新たに出すとかボス何体分だよって感じだ。いい加減武器種はひとつにして欲しいものだ…今回も3つなのか…?

 

次に現れた武器は片手剣だった。そしていきなり、

 

「エンハンス・アーマメント。」

 

奴が剣を地面に突き刺し武装完全支配術を展開したら氷が出現した。この技は元は亡きユージオの技だ。何故それをあいつが使える。剣は決して青薔薇の剣とは言えない。寧ろそこには、存在してるのかも怪しいほど薄く透き通った剣しかない。

案の定前衛の俺らは足を氷漬けにされた。そして敵は更に連続で放つつもりのようだ。どうやら次使うものによって色が変わるようだ。あれは金色だから…まさか…

 

「リリース・リコレクション。」

 

金木犀の剣になっていた。まさかアリスのも再現するとは思わなかった。ここまで来ると、全ての技を再現できるのではと思う…当然足を氷漬けされている俺らに逃げるなどという選択肢などなく、このまま攻撃を受けるかという所で防御結界が張られた。張ってくれたのは今回、後衛で参加しているリーファだ。今までも中衛よりの後衛という感じだったが、魔法力の高さによって後衛部隊に配属された。

攻撃を受け止めている間に氷を溶かしてもらい、戦闘態勢に戻る。敵の攻撃も止み、次は何かを考えていた時、それは放たれる状態に持ち込まれていた。

副騎士長ファナティオの技だったはずだ。だがあれはアリスには止められなかったはず。それにあの時俺が使ったやつは未だ使える気配がしない。後衛部隊が結界を張るが恐らく突破されるだろう。そんな時、俺が左手に持つダークリパルサーが青白く光り輝いた。そして俺の手を離れ俺らの前に出る。そして地面に突き刺さり術式を展開した。氷が敵に迫り捕縛した。青薔薇が咲き魔力を吸っているようだ。いやそんな事はどうでもいい。一体どうやって…

程なくして、捕縛は解かれたがそれは想定済みらしく、敵に向かって剣は勝手に斬り合いを始めた。まるであの頃を見ているかのようだ。ただ、違う点が一つ。勝てなかった。綺麗に縦に半分に斬られた。そして横たわったダークリパルサーを敵は踏み潰し折った所で爆散した。

俺はこの時激しい怒りを覚えた。ダークリパルサーはエリシュデータと並んで俺の相棒だ。二刀流使う際に自ら素材を取ってきた思い出深いものだ。それを全て踏みにじられたような気がした。いや言葉通り踏み躙ったのだが。だからこそ許せないと言う思いが強かった。剣に愛着を持つのは最初は馬鹿馬鹿しいと思っていた。でも、違う。人が剣を選ぶように、剣も人を選ぶ。人のように同じ剣なんて1つも有りはしないっ…!

 

「このやろぉぉおおお!!!」

 

左手に新たに添えたのはエクスキャリバー。あいつが自らの犠牲をささげ、俺らを守ってくれた。なら俺は、それに応えるだけっ!

 

敵の剣は次の技を放つ時、それが放てる固有の武器に姿が変わる。俺が何度、あの世界で見てきたと思うんだ。姿だけでも分かれば、対処可能だ!

 

時折、片手剣のくせにエルドリエとかの他の武器種の攻撃を放ってきたが関係ない。2度同じ技は食らわない。

その後何度も神聖術を使われたが全て避けるか、発動を阻害したりした。それによってこれでは勝てないと悟ったのだろう。敵は距離を取った。次の武器種が分からない以上闇雲に突っ込むのは危険すぎる。俺も様子見することにした。だが、一向に武器を出す気配がしない。ただ突っ立ってるだけだ。こっちから仕掛けようかと思った時、奴が手を俺らの方へ向けた。正確には指先をだ。そして指先で術式を展開し放ってきた。こいつ、あのダルマと同じことできるのか!?

 

簡単に言えば投擲武器だ。投げ方はだいぶ王道からそれてはいるが武器が武器だけにそう言わざるを得ない。威力は今までの中ではかなり低い。だが、毒だったり麻痺だったりの補助的なものがかなり強めだ。俺の中で知ってる限りで言うと全てLv5かそれ以上だ。麻痺をもし食らってしまい集中攻撃されたら、いくら攻撃力が低かろうが数食らえば話は別だ。

敵は更に手を加え、同時撃ちが10発になった。本当に元老長みたいだな。だが、あれより強いしなんと言っても速い。多少なりのダメージを想定して突っ込む手段を取ることは勿論不可能。まさか投擲武器にこうも攻めあぐねる時が来るとは。結界もいつまで持つかは分からないからそろそろ攻撃を仕掛けないといけないのだが…

こちらも遠距離型支援魔法を放つが避けられるか投擲武器を当てられ相殺させられるかだ。そうか。

 

「後衛部隊は引き続き遠距離型支援魔法を!前衛部隊も可能な限り妨害系魔法を!」

 

俺がそう指示を出すと全員頷いてくれた。

俺の合図で結界を解き、全員一斉に魔法を唱え始めた。そして放つ。妨害系魔法により、敵は術式を展開するのが遅れたり解除されたりした。まともに撃てたのは全て後衛部隊による魔法で撃ち落とされた。そして数で優ったこちらの攻撃が敵に届くかという所で、それすらも撃ち落とされた。

 

「なっ!?」

 

この場にいた全員そう思ったに違いない。今のは間違いなく当たる攻撃だと。だが俺らは忘れていた。もう既に奴らの体は"化け物になってしまっていたことを"。

 

背中から触手が生えており、そこから術式を展開した模様だ。となるともうチュデルキンより多い。更に術式が完成されるのがさっきまでより格段に早くなっていた。魔法陣が見えたらと思ったらもう武器は飛んでくる。こっちは詠唱している余裕なんてない。まさに絶体絶命。仕方なく防御結界を張るがそれも10秒持たない。もう突っ込むしかない。

 

「アリス!頼む!」

 

「…はっ!わかりました!」

 

アリスの武装完全支配術で少しでも弾ければっ…

 

「舞え!花たち!」

 

アリスの詠唱によって金木犀の花による盾が創られた。これの後ろに前衛部隊が並び、一気に近づいた。そして残り2メートルのところで四散した。後方のリーファとシノンの同時攻撃を敵が捌いている間に距離を詰め、それぞれソードスキルを発動させる。連撃数が多いやつだ。俺も二刀流ソードスキル、イ・ジクリプスを発動させた。

俺が左腕を、ランが右腕を斬り飛ばした。だがそれだけしか出来なかった。敵は触手を俺に伸ばし、捕え、少しずつ、俺の肩の付け根に投擲武器を刺し始めた。痛みが顔が歪む。徐々に切り離されていっているのがわかる。周りもそれを止めようとするが敵は更に増やした触手によって、俺の仲間達に攻撃する。

もう左腕の感覚が無くなってきた。それと同時に硬直も解けた。このゼロ距離のチャンスはもう巡ってこないだろう。左腕はくれてやる。俺はお前を倒す!

 

「うぅぅあぁぁあああ!!!!」

 

俺がエリシュデータを振ると同時に左腕は斬り落とされた。敵は自身の前に硬質化した触手を翳し、俺の攻撃を遮った!なんでもありだなこの触手。そんな危機的状況なのに、妙に頭は冴えていた。ふと、茅場の言葉を思い出す。

 

 

(エリシュデータ。解明者か、いい剣だな。)

 

 

なんで出てくるんだよ…でもおかげでこいつの本質がわかった気がする。

俺はエリシュデータを握る右手に過去最大の力を込めこう言った。

 

「エリシ…データ…!!」

 

翳された触手の中で最も脆い部分を見つけ、そこだけを斬りつける。すると今まで全く歯が立たなかったのがスルスルと入り込む。

 

「終わりだぁぁああ!!」

 

勢いよく触手を斬り裂き、敵のお面に向かって剣を伸ばす。真っ二つに頭を切り裂き、敵は崩れ、土へと還った。

 

「へぇ。ここまで突破しちゃうなんて、面白いわねぇ。じゃあまた後でね坊や。」

 

いつも通りのウザったらしい台詞を吐きながらアルバは消え去った。本当にいつもどこから見ているのだろうか。

 

 

 

 

次回

 

【正体】




これ主人公キヒロなのに出ない…
もうキリト主人公でいい?w

いつ出るかな?次の次くらいかな?
待ってる方少々お待ちくださいませ…!

(*´∇`)ノシ ではでは~

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