ソードアート・オンライン 覇王と絶剣   作:高島 秋

77 / 85
どうしよう…まだ終わる気配がしない()


では!どうぞ!


光明

残るソード・ゴーレムは7体。たとえそれを全て破壊しても次はあの巨大魔道兵器だ。だが、とりあえずゴーレムさない限り、こちらに勝機はない。あれに勝てる奴らなんてそういないからな。それにぱっと見だが、敵にも剣士部隊がひかえている。やはり出来るだけ早くこの結界を破壊するし、一気に叩くしか手はない。ならばそれを託せるとしたら…シバであるユウキしかいない…

 

「間に合わせるしかない、か。」

 

 

 

「よしっ!この調子でもう一体!」

 

俺達中央先頭部隊は突如現れた4体のソード・ゴーレムの相手をしていた。まぁその前の魔法攻撃を全員が避けきれたのは不幸中の幸いと言うべきか。だが、それと同時に何故か魔法を使えなくなった。正直魔法の援護無しであの化け物とやりあうのは不安でしかないが、やるしか無かった。逃げようにもあのスピードではすぐ追いつかれてしまうからだ。だから連携しダメージを与え倒していこうと思ったのだが、向こうも予想以上に連携が取れる。理由は分からないがとても面倒なことは確かだ。かれこれ数十分かけてやっと一体倒せたという程だ。心意が使えなかったら全滅していただろう。

 

魔法が使えないことがこんなに負担になるなんて…ボクはアルゴが言っていた内容が頭から離れなかった。この戦闘中でもだ。今もいつになったら来るんだろうって考えてる。皆に迷惑かけてるし、このままではいけないんだと分かってるのに、頭から片時も離れない。あぁ。ボクが思っていたよりも、キヒロの存在は大きかったんだなぁって実感する。いつも危ない時は助けてくれた。そのくせ、自分が危ない時は呼んでくれないのはちょっと悲しかったりした。ボクは頼ってばっかりで、頼られたことなんてあったのだろうか。ボクが守ったことなんてあっただろうか。SAOでもALOでもGGOでもOSでも、UWでも、キヒロは守ってばっかりで、誰かに守られてことなんてあったのだろうか。そんな事考えていたせいか、ボクは一気に窮地に追い込まれた。剣は吹き飛ばされ、眼前には今にも振り被ろうとしている敵がいた。多分避けきれない。皆がボクの名前を呼ぶ。姉ちゃんにリズがこっちに向かって走ってくる。多分、いや確実にも間に合わない。意外と呆気なかったなぁボクの人生。未練、あるなぁ。そりゃもうありまくり。ただ、1つだけ願いを叶えるなら。もう一度、一瞬でもいいから。キヒロの顔見たかったなぁ。

そしてボクは目をつぶった。

 

いつまでたっても何もこない。いや正確には豪風がきた。それと甲高い音が届いた。でも、それだけだ。お腹を貫かれたような感覚はない。と言うより痛みすらない。あの距離で避けきれたとも思わない。一体、何故。いや、誰が止めてくれたの…期待、していいのかな…?ボクは恐る恐る、目を開けた。

 

「遅くなって悪かった。」

 

そこに立っていたのは、多分キヒロだったと思う。なんで多分なのかって言うと、声と最初に見えた姿しか判断材料が無かったからだ。その姿を見た瞬間、ボクは膝から崩れ落ちてしまった。もう会えないと思っていた大切な人、愛する人に会えたという事実に、嬉しくて、嬉しくて…戦闘中だと言うのに、大声で泣き始めてしまった。

 

ユウキの泣き出した姿を見て俺は、申し訳ない事をしたなと思った。俺の記憶の中で多分1番泣いていた。俺はユウキを泣かせてばっかりだなぁ。兎も角、話をするためにはこれを倒さないと。

 

ユウキの前に現れ助けたのはキヒロ君で間違いないと思う。ただ、その強さには圧倒された。2本の長刀の内の1本を逆手に持ったと思ったら回転斬りで一気に破壊。いやその前のも有り得ないと言いたくなる。ユウキに向かっていた剣の切っ先に正確に切っ先をぶつけ相殺していた。あの状況下で考えるに人というものを超越しているようにしか思えない。更に驚いたのが回転斬りの速さ。私達が数十分かけてやっと一体だと言うのに僅か2分程で残りの3体を倒してしまった。

 

「話がある。全員集まってくれ。」

 

キヒロはユウキを肩に抱き抱えたまま話し始めた。内容は、左翼部隊の壊滅よう。そしてこの結界のこと。その破壊をここにいる人だけでしなくてはいけないこと。個人的にはユージーンとアリシャが死んだという報告が一番心にきた。サクヤが重症だと聞いたリーファは駆けつけようとしたが今は安全だと知らされるとその場に落ち着く。左翼部隊は今人数は当初の3分の1程までに減り、何か突出した力を持っている訳でもない。なので俺らの中で半分ほどは左翼部隊に回ることになるという。

 

「キヒロ君はどうするの?」

 

ランがそう問いかける。多分ランが聞かなくても他の誰か聞いていたに違いない。するとこう答えた。

 

「俺は中央先頭部隊に残り、敵部隊の相手をする。」

 

俺達半分が左翼部隊に回り、もう半分は絶縁結界の破壊に回るということはこの一帯をキヒロ1人で背負うことになる。いくらなんでも無茶だ。そしてキヒロはこう続けた。

 

「敵部隊に剣士部隊がいることを視認している。右翼部隊のソード・ゴーレムが全滅し次第突撃してくるだろう。」

 

だから、結界をどれだけ早く壊せるかが、この戦争の勝利へと直結するとのこと。わかったと言ったのはユウキだ。いつの間に泣き止んだのやら。キヒロはこうして帰ってきてくれた。だから次も必ず帰ってきてくれる、とユウキは言った。まぁそう言われたらキヒロを信じてやるしかないと思わざるを得ない。班は俺とランとユウキが結界破壊組。その他は左翼部隊への援護ということで固まった。

 

「さて、敵剣士部隊は約2000。それを1人で相手しなければいけないとは。中々骨が折れる仕事を考えたものだ。」

 

 

「これで最後か。」

 

右翼前方を陣取っていたソードゴーレムを倒し切ったとの報告が届いたのと同時に、中央前衛部隊が2手に別れ、この絶縁結界の破壊に向かったと聞いた。そして残った人物はただ1人でありそれが、キヒロだということ。

 

わいが率いる左翼部隊に中央前衛部隊から応援が半分ほど来た。状況を聞き、大体の内容を把握したが問題はそこじゃない。たった一人で、あの剣士部隊と交戦するつもりということに腹が立った。わいらは信用されてないんかいと。だが、要するにこういうことやろ。

 

「「1人で抑えているから、その間に敵陣へ突っ込めと…」」

 

 

その考えに至った時、ある宣言が聞こえた。

 

 

「アルバァァァァアアア!!俺はここにいる!!とっとと姿をだせぇ!相手してやる!!」

 

 

まさか自ら姿を現すとは。私達がどれほどの思いで貴方を探していたのか分かっているのでしょうか。いいでしょう。魔法の使えないこの空間で相手をするというのなら、死にたいというのなら手伝ってあげましょう。

 

「あははははは!!!いいわぁ!剣士部隊に告ぐ!ソロモンを殺せ!肉片を1つたりとも残すな!!」

 

 

 

なんの冗談かと思った。俺ら整合騎士達に下された命令は、できる限り最前線へと向かえとの事だった。敵剣士部隊は真っ直ぐにキヒロの所へ向かっている。こちらには見向きもしない。見殺しにするつもりは無いだろうが、まさか1人にあの数を押し付けるとは何を考えているのやら。武装完全支配術とやらが使えるのならまだしも、それが使えないこの空間であの人数相手にするのは自殺行為。それをほうっておけと言うのか上の奴らは。

 

「ちっ、上の奴らは何を考えていやがる。」

 

「確かに。ここでキヒロを見殺しにしては、勝てるものも勝てません。」

 

「……いや、問題なさそうだ。」

 

デュソルバートが文句を言い、嬢ちゃんがそれに同調した。そしてファナティオがそう言ったから視線を向けてみるが、確かに問題はなさそうだ。まぁあくまで今のところはだが。序盤は誰しも動ける。問題は終盤に向けてそれが持続されるかだ。まぁこちらが心配しても仕方がない。今は信じるしか、いやそれしか出来ない自分が不甲斐なく感じる。

 

 

「いやぁ、注目を浴びようとは思ったけど、まさかこれ程とは。武器足りるかこれ…?」

 

とりあえず俺は、短剣・両手剣・投擲武器をオブジェクト化した。これらを手にするとソードスキルは使えないが別にそれでいい。てか使ったりなんかしたら硬直時狙われるだけだ。敵剣士部隊はただの剣士は1人たりともいない。全員、狂戦士化したやつらだ。よって幾ら麻痺させようが回復し次第こちらに向かってくるだろう。殺すしかない…例えそれが、元仲間であってもだ…

 

「安心しろ。苦しまないようにしてやる…」

 

そう言って俺は1人目の首を飛ばした。

両手剣を遠心力を利用して振り回し5人の首を切り飛ばした。ただ、数が数なだけあり、武器の痛み具合も早い。あっという間に欠け始めた。ので、両手剣を投げ飛ばし1人を串刺しにする。短剣では首を切り落とすことは出来なかったので、投擲武器として使った。左手でアイテムウィンドウを開きながら敵を相手し、オブジェクト化した武器を使いながら敵を屠る。一体どれほどそれを繰り返しただろうか。30程あった武器のストックもそろそろ底をつきそうだ。どれも上級武器であるのにここまでの損傷をされるとは想像してなかった。しかもまだ足りない。予想外だったのは敵の強さもあるだろう。さすがに足りないから、敵から奪い取った槍で敵を薙ぎ倒しながら進み、斬れ味が落ちたら3人程腹を貫通させる。片手剣で兜割りをしたり、細剣で身体を穴だらけにしたりした。どれもこれも決して綺麗ではない。痛みを感じることなく殺せた人なんてほんの数人だろう。こいつらは確実に死ぬ方法じゃないといくらでも向かってくる。多分だが、そういう風に洗脳されているのだろう。腹が切り裂かれても地面に這いつくばりながら俺に向かってくる奴もいる。結果的に、この人数差で、痛みを伴わないように殺すのはかなり難易度が高い。いや、本来なら殺さない方がいいんだがそれは今のところは不可能だ。フェニックスの能力を使うにはこの絶縁結界が解けていなければならない。

 

「AHHHHHHHHHH!!!!」

 

「っ!」

 

油断した。いや、これは疲れか?敵の薙ぎ払いを避けきれなかった。お陰で片目が潰れた。かなり不味い状況だ。左側は全くと言っていいほど見えない。案の定、左側から回ってき始めた。こう明らかな弱点を付いてくるとは、さすがとしか言いようがない。残りの武器は今手に携えている刀二振り。とあるサーバーに残されていたデータから抜き出した物だがまた会えるとは思ってなかった武器だ。まぁ思い入れがあるから血なまこになって探したんだがな。しかも性能もあの頃のままというオマケ付き。全く、つくづく恵まれているとしか思えない。

そこから多分25人ほど殺した時、体に違和感が生じたのを感じた。この感覚は、ある作戦が成功したことを意味する。

 

「ふっ。やったな、シバっ!」

 

 

 

 

「どーすんだよアルバ。絶縁結界破壊されちまったぜ。」

 

俺は結界が壊れたことにより復活した魔道具を使ってアルバへ通信を繋げた。案の定、めちゃくちゃキレていたのでそのまま通信を切ろうかと思ったがそうはいかなかった。

 

「アレを放ちなさい。イスナーン。」

 

いやいやいや。まぁ確かに、こちらの剣士部隊は全員どっかから奪ってきた連中だけだがそれを巻き添えにするのは惜しいような気もするんだが。まぁぶっちゃっけ、あれが洗脳解かれて寝返る方が最悪だからなぁ。まぁもう用済みだしいっか。

 

「りょーかい。」

 

 

 

「はっはっはっ。これかユウキ!?」

 

「そうだよ。これを壊せば、結界を解ける。」

 

一見しただけではどういうものなのかは理解できない。直径は約1メートルほど。高さは50センチほどの簡易的な作りをしている円柱のものだった。これが結界の支点の一部だと言われなければ通り過ぎるようなものだ。まぁ多少は気になるかもしれないがほぼ確実にスルーするだろう。そんな代物だ。さて、壊し方だがひたすら切りつけるしかないという。なんかギガスシダーを斧で切り倒そうって言うぐらいの面倒くささを感じる。あの時はソードスキルを使ったから今回も同じように、出来るだけ同じ箇所を斬った。一撃目、腕に鈍痛が走った。いやいやいや。硬すぎるだろ。あの化け杉ですらもうちょっと削れたように思える。ユウキが言うには傷が入ればいいって事なんだが、それすら危ういぞこれ。結局、50回を目処に交換で回すことにした。3人がそれぞれ2回こなした所でやっと壊せた。

 

「よしっ!戻るよキヒロの所へ!」

 

「え、まだ1個しか壊してないけど!?」

 

「1箇所だけでも壊せば結界は解ける!後はアルバ達を倒せばこの戦争は終わる!」

 

「なるほど。」

 

ようやく勝機が見えてきたという所か。今こうして会話していた間にも体が戻ってきているような感覚がある。まだ魔法を撃てる程ではないが、徐々に、だが確実にだ。ただ、ユウキの周りに魔力が異様に集まっているような気がするのは気のせいであろうか。いや俺やランとは明らかに違う。なるほど。これが"シバ"としての力というわけか。

 

 

「さて、力が戻ってきたのはいいが、こいつらどうするか。」

 

俺の前には残り半分ほどになった剣士部隊がいる。引き返すような空気は全くなく、ただひたすらに俺を殺そうと向かってくる。だが結界が解けた以上さっさと敵陣へと突っ込みたいのだが…っ!

 

轟音とともに放たれた光線は真っ直ぐ俺に向かってきた。いや回避不可能だろこれ。技撃って相殺するしかないか。

 

「雷鳴一閃。」

 

結果的に言うと、俺の放った技が地面にめり込んだ。いや終わったなと思ったのだが、運良く抉れた地面が光線を受け止める盾としての役割を果たした。まぁ2秒ほどだが、そのわずかな時間のおかげでなんとか避けられた。だが、そのあとの光景を、俺は一生忘れることは出来ないだろう。

 

ついさっきまでそこには1000人ほどいたのだ。それが一瞬にして全員黒焦げにされてしまった。どうやって再現しているかは知らないが、血は水をばら蒔いたかのように辺り一面に散らばっていた。眼球、腕、足、上半身、脳髄らがそこかしこに散らばっていた。これが人としての最後等とは、誰が望むだろう。即死なだけいいと思うべきなのだろうか。兎に角、俺がやるべき事が決まった。もう、あいつらを生かしてはおけない。この俺の手で直接殺すしかないか。いやどうなんだろう。俺だって自らの正義のために多くの人間を殺した。果たして俺と彼らに何か、違いはあるのだろうか。

 

 

I don't know why they kill me.Is it personal or duty?Either way, it doesn't matter to me.I don't want to know.All I have to do is... do more than I was born with this kind of existence.

 

 

You should know, Solomon.Why do we hate you, the world?

 

 

いよいよ、最終局面に入る。

 




遅くなりすぎてしまいました()

いやなんて言えば…

うん、次は早く出します!(フラグにしないっ!)

(*´∇`)ノシ ではでは~

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。