ソードアート・オンライン 覇王と絶剣   作:高島 秋

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これからは定期更新になります。こちらは第1、第3日曜日になります。

では!どうぞ!





黍亞との戦闘はそれは過酷なものだった。まず那霊をも飲み込んだあの触手が厄介だ。本数がとにかく多く全てを対処しきれない。リーファはシノンを庇いながらなので疲労が普段の倍以上になっているのはその様子を見ればわかる。かくいうこちら側も決して対処しきれている訳ではなく、クラインの助けを借りながらでないと防ぐのすらできない。両手斧の弱点はこのような時に対処出来る小技がないことにある。一つ一つの技の威力は高いので適した相手だと真価を発揮できるのだが、黍亞は発揮出来ないタイプだ。はっきり言って俺は向いていない。つまり、現時点で戦力になるのはリーファとクラインの二人だけになる。それでもこの化け物を凌がなければ勝利どころか生きてるのかすらわからない。そんな状況下であった。

 

「ふぅあ」

 

対して黍亞は欠伸をしていた。それでも的確に攻撃してくるのだからあの触手とは意思が別にあるのではと思わざるを得ない。だが、なかなか俺たちを仕留められないでいると苛立ちがじわじわと出てきた。顔を歪ませ、腕組みをし、指先で常に腕をとんとんと叩いている。そしてその場を行ったり来たり歩き回り始めた。

 

「もういいや」

 

そして遂にうんざりしたのか目を充血させながら触手に変化を与えてきた。伸ばしている触手に銀色に輝く何かを纏わせ始めていた。そしてそれが先端にまでいく頃には、俺たちは誰も、その触手を切れずにいた。切ろうとしても弾かれるのだ。鋼鉄の類の何かを纏ったそれは今までと比べ、より強度と鋭さを増した。切れないのだから捌くか避けるしか無く、防戦一方に追い込まれた。休む暇もなく、次から次へと攻撃がくる。思えば今日はずっと戦っている。果たして、これはいつ終わるのか。敵がキヒロを討ち取ったらか。それとも、こちらを殲滅したらか。或いは、敵を殲滅したらか。

物思いに耽けながら無意識に触手の相手をしていた時だった。急にパタリと攻撃が止んだのだ。そして黍亞が何か叫んで、いや誰かに訴えているのが聞こえた。そしてものの数秒で黍亞の姿が消え去った。

 

「お許し下さい!」

 

私はある方に一つ、咎められていた。共喰いについてだ。私は彼らを倒す為仕方なく、喰べざるを得なかったと弁明したが、それが聞きいられることは無かった。全て見抜かれていた。私がこのままこいつらを殺したあと、他の大罪達を襲い喰うつもりだということがその方にバレていた。そもそも共喰いは禁止されていたのだ。個々の力でも十分強いからだ。それが寄り集まって形を成したら回収出来なくなる、ということなんだろう。

お声が脳内に響き、私を体内から侵食していく。元の持ち主が返せと言っている。嫌だ。私はどんな存在であろうと、この世に生を受けたからには最後まで全うしていきたかった。だからそれを邪魔する者は全て排除する心づもりだった。だけど、あの方には逆らえない。そう組み込まれているからだ。でも、私は生きたい。そう相反する気持ちが身体中を駆け巡りそして、私は壊れた。

 

「よくわかんねぇけど、俺たち勝ったって事でいいのか?」

 

クラインが問いかける。甕穹に那霊、そして黍亞が消滅した今、敵は残ってはいない。ただ、勝ったとは言い難い気もした。こちらで生き残ったのはたったの4人。それ程の犠牲を出して漸く左陣を突破したことになる。さてこれからどう行動するか。兎に角情報収集をする為、本陣へ帰還することに4人とも合意した。未だ来ないキリト達の無事を祈って、歩み始めた。

 

 

 

双子と思われる2人に4人は苦戦していた。先読みに長け様々な術式を展開できる晴明に加え、攻撃が早く重い蓮香の2人が合わさってしまっては手の出しようがない。明確な劣勢へと追い込まれていた。2人の魔力量は無尽蔵なのか、絶えず攻撃が繰り返されるため反撃の機会を伺うことすら叶わない。ひたすら耐えるしかないこの状況下では先にしびれを切らした方が負ける。それをここにいる全員が理解しているからか誰一人として集中を途切らせる者はいなかった。ベルクーリらが晴明らを出し抜くには2人の更に先を読んで動くしかない。後手に回っている以上、この2人からの勝機は皆無である。それを打開するために今必死に脳をフル回転させているがそれでも後一歩届かない。そんな状況下で一角でも欠けると一気に崩れる。

 

「全奪雷削」

 

あらゆる方向から雷撃がベルクーリへと飛んでいく。未来を斬る斬撃による結界を張るも全て覆いきれない。僅かな隙間から晴明の術式が入り込み、雷撃がベルクーリを蝕む。その数秒後。ベルクーリの目は何かを見つけようと必死にしているがそれが何かを捉えることはもうない。音も聞こえず、剣を握っている感覚すらもう無くなっている。今この瞬間、ベルクーリの五感は奪われた。ただ失われた訳では無い。ベルクーリの五感は今は晴明のものとして使われている。晴明は今までの五感に加え、ベルクーリの五感をも利用することによって、更なる先読みを得ようとしたのだ。そしてそれは可能になった。

 

「あははははは!凄いぞこれは!これが貴様の見てきた世界なのか!ベルクーリ!」

 

晴明の言葉によって、今も右往左往しているベルクーリの様子が何たるかを察した三人は怒りを滲ませ剣を握る手に力を今まで以上に込めた。どんな形であれ、三人ともベルクーリを慕っていた者たちだ。そんな三人が剣に乗せる思いは一際重い。よって、今までの武装完全支配術及び記憶解放術の力も一際大きくなる。幸いなのは晴明がそれを知らないことか。ユージオが展開した武装完全支配術は空中にいる二人を絡め取り、地面に叩きつけた。アリスの記憶解放術によって身体中を切り刻み、そして最後にファナティオによって胴体に大きな穴を空けられた。

 

「くそ、まだだぁ。このまま、死んでたまるかぁ!」

 

事前に展開されていたのであろう方陣が四方八方に展開される。炎、氷、雷、風、水など様々な属性の術式が四人を襲った。アリスはトレードマークでもある金色の鎧がそこかしこ破壊され、ファナティオは左腕を消された。

ユージオは胴を切断され、ベルクーリは四肢をもがれ転がっていた。

その様子を見て、晴明と蓮香は崩れ落ちながら、死んでいった。気味悪い笑い声を最後まで残しながら。

 

「なぁ、ここはどこだ。俺今、どうなってるんだ?」

「私はここにいます!ベルクーリ!」

 

ファナティオは必死にベルクーリに話しかけるが相変わらず目は虚ろだ。あと少しの命と悟ると、ファナティオはベルクーリを優しく抱き大粒の涙を幾重にも零しながら、今までもこれからもお慕いしております、と小さく呟いた。そのあとベルクーリが残した言葉にファナティオはより一層、涙が溢れ出した。

 

「俺は、幸せだった」

 

ユージオにアリスが治癒を施すがそれを遮られる。もう間に合わないから、いいと。涙を零しながらそんなはずはないと言い治癒を続けるアリス。そんなアリスを見て、ユージオは幼い頃からの想いを語る。

 

「僕、アリ、スのこと、好きだったん、だぁ」

 

連れていかれてしまった時、再開した時、最高司祭に負けた時、アリスに抱いていた想いを最後だからと、伝えるユージオ。もっと早く伝えたかったと、そして、僕はもう思い残すことは無いと言い、静かに、息を引き取った。

 

「ユージオ…?」

 

何にも代え難いものを失ってから気づくことは多々ある。アリスは今まで失ってきたものたちに対しても後悔のないように行動出来ていたかと自問する。ない、と小さく言う。私は後悔ばかりの人生だ。ありがとう、を筆頭に、伝えるべきことをあまりにも多く伝えていない。それを知っていながら、また、伝えられなかったという後悔の念と、伝えたかったという思いが、アリスの心を深く抉った。あぁ、叶うのならば、もう少し素直になりたいと、赤く染まっている空をみて願った。

赤子のように泣いたあと、二人は本部を目指し歩き始めた。これ以上後悔しないためにと、強く思いながら。

 

 

「エンハンス・アーマメント!」

 

僅か十センチ程の距離で放たれたそれは、螺啤の体から魔力を吸い上げた。螺啤はバックステップして避けたが、たった一秒程でもかなりの量を吸われたことに危機感を覚えた。このまま吸われ続けては、その強固な体を維持するのも難しくなるからだ。エクスキャリバーをも完全には通さない硬さは魔力による防壁を何層にも渡って掛けているからだ。計五層ある膜を突破されてしまってははっきり言って勝機はない。ここは一時撤退をと思った矢先、何者かに阻まれた。いや囚われていたと言うべきか。一辺三メートルほどの箱に囚われてしまった。だがこんな魔法を使うやつはいなかったはずだと考えた。

 

「いやー遅くなってゴメンなぁキー坊達」

「アルゴ!?」

「アルゴさん!」

 

螺啤はアルゴの存在に全く気が付かなかった。意識がキリトに集中していたとはいえ、こんな魔法を展開されるぐらいの者なら気づかないはずがない。とは言えまずはこの箱を破壊しなくては何も行動できないと考えたが、幾ら攻撃しても開く気配がないことに少々戸惑いを覚えた。そして螺啤はこのアルゴという女が、どのような女なのか興味が湧いた。

 

「アルゴと言ったか。貴様、何者だ」

「君にわかりやすく言うならば、ソロモンと同じと言えばわかるかな?」

 

その瞬間、螺啤はアルゴという女との相性の悪さを悟った。ソロモンと同じとされる人と対戦したことがあるが、一度たりとも勝ったことは無い。つまりもう、負け確である。

キリトはアルゴの言っている意味が理解出来なかった。ソロモンと同じってどういう意味なのかで今は頭が一杯である。対してユウキはさほど驚いている様子は無かった。後日談では驚いてはいたが、その可能性は高いとは思っていたので心の準備は出来ていたということらしい。

 

「じゃあ時間ないし、さっさと終わらせるね。」

 

アルゴはそう言って、箱の中で幾つもの極大魔法を放ち、あっという間に螺啤の防御を突破していった。そしてそれを探知したユウキがマザーズ・ロザリオを放ち、決着がついた。そしてアルゴはもう一つ、驚きの結果を見せてみた。

 

「ラ、ン?」

 

ランの治癒である。いや蘇生と言った方が正しいかもしれない。あと一歩というギリギリのところで間に合ったアルゴはまず、これ以上の損傷を抑える魔法をかけ、それから治癒の魔法をかけたのだ。通常ならば助かりようのない場面であるが、アルゴは治癒魔法に特化していることもあり、何とか一命を取り留めた。アルゴの功績も大きいが、キリト達が螺啤を抑えてくれていたこともランの回復に繋がっている。大魔法は基本的に発動に時間がかかる。瀕死からの回復となれば当然である。だからこの回復は、皆で勝ち取ったものだとアルゴが言うと、皆泣きながら、アルゴに抱きついた。自分より大きい子どもたちを抱き、背中をぽんぽんと叩くのを、悪くない寧ろ心地よいと感じていた。まるで三人の子どもをあやす一人の母親みたいに。

 

 

 

 




遅くなりましたがよろしくお願いします!

(*´∇`)ノシ ではでは~
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