ソードアート・オンライン 覇王と絶剣   作:高島 秋

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あと少し…あと少し…

では!どうぞ!




父は常日頃、俺のことを夢の存在だと言っていた。幼いながらにもそれを俺は理解していた。様々な障害があり、不可能だとされていた、遺伝子操作を施した人間を創ることは。遺伝子操作を施した人間の事を研究者たちはコーディネーターと言う。言葉通り、遺伝子レベルで優れているところを抽出しそれを組みあわせた人間ということだ。本来なら有り得ない身体的能力や頭脳を持つことも可能になり、新たな人類と言っても過言ではない。ただ、それだけの力を手にするには代償が伴うもの。研究した結果として生み出された結果は計5人。たった5人を生み出すのに一体どれ程の尊い命が犠牲になったことか。度重なる非人道的な実験は実に10年続けられ、その間に犠牲になった子どもは約1000人ほど。さらに子どもとして数えられない人間にすらなれなかったのも含めるとゆうに万は超えるだろう。それだけの犠牲を出してまでの意味は果たしてあったのだろうか。研究者たちは口を揃えてあったと言うだろう。彼らにとって成功とは犠牲の上に成り立つものだから。その考えに今までなんの疑問もなかった。まだ幼かった頃は単に、ありがとうぐらいにしか思ってなかった。

ただ、木綿季やアルバらを知ったことによって、疑念を抱くようになった。木綿季の他者を思いやる心。アルバらの俺に対する憎しみ。そのどれも俺にはなく、また必要とされていなかったものだ。だが、感情のない人間を果たして人と呼べるだろうか。ただでさえ、体の造りは人ならざるものと言っても何一つ反論できないほどのものだ。

こうして戦っていて思う。あぁ、俺は夢の存在なのではない。ただの殺戮兵器でしかないのだと。他者を殺すためだけに生まれ、障害を排除する。きっとこの戦いも、皆を守る為だとかという大層なものではなく、所謂本能的なものなのだろう。そんな俺を排除しようとするアルバらの方が正しいとすら思える。ただ、俺にはその選択ができない。その選択肢がないからだ。俺の本能的にありえないのだ。きっと、そこまで遺伝子操作を施しているのだろう。自分の想いでは死ぬことすら叶わない。そして体はもう、思考とは完全に分離する。目の前の敵を屠る為に動いている。頭ではもう、それを望みたくないのに。

こうして生きてしまうことが、俺の生に対する、罰なのだろうか。

 

 

「ラムズ・アルサーロス!!」

 

イスナーンが雷撃を放つがこれを雷鳴一閃で相殺。その様子を見て、イスナーンは舌打ちする。状況が一向に変わらない今、もどかしい気持ちなのはお互い様だ。出来ればもう戦いたくはないのだが一体どうすれば。もう、覚悟を決め、進むしかないのか。己が正しいであろうと思える道を。例え間違っていてもいい。もし俺が間違えていたのなら、木綿季や和人、明日奈らが修正してくれるはずだ。怒りながらでもぶつかりながらでも。そうやっていつも俺の過ちを正してきてくれてたではないか。何を今更悩んでいる。俺はもう、1人ではないのだから。

 

村正を納刀し、村雨を構える。チャンスは1度きり。3人の攻撃を全て見切った今、次の技を放たれるまでの僅かな時間。ここで3人同時に仕留める。

 

「は?」

 

今、何が起きた。奴が構えたと思ったら、斬られていた。俺だけじゃない。ワヒードもファーランもだ。一体何があったと言うんだ。いや、一つだけ確かなことがある。俺たちは、負けたんだ。

そして奴が小さく呟いた。

 

「演舞、水羅斬刹、3連撃」

 

演舞、水羅斬刹とはありとあらゆる物質を極小の単位で切り裂く技。それは物質を分子レベルまで入り込んで切り刻む。防ぐことが基本的に不可能な最強の技であり、切り札の一つである。

イスナーンは胸で、ファーランは腰で、ワヒードは手足の付け根から切り裂かれた。そして、その切れてしまった所を繋げる魔力は、もう3人には残されていなかった。

 

 

俺はどうしても、奴に聞きたいことがあったんだ。それは奴の存在を知ってから尚更深まった疑問だ。どうせもう終わりだ。後悔のないように。

 

「なぁ、ソロモンよ。聞きたいことがあるんだが」

「……なんだ?」

「俺たちの生きる意味ってなんだ?」

 

 

それを聞いたソロモンは絶句していた。そして数秒の沈黙の後、こう答えた。

 

「わからない…」

「じゃあお前の生きる意味はなんだ」

 

返答は大体分かってはいた。俺とこいつは似てるようで全く違う。そもそも造りが全く違うのだがら当たり前なのだが。俺の、俺らの疑問を解消できるとしたらこいつしかいないと思った。ただそれだけだ。

 

「………なんだろうな」

「………は?」

 

俺の勝手な想像だが、こいつは自らの欲するものの為に戦い続け、そして勝ち続け得てきたのだと思っていた。実際、こいつは手に入れられたものが多すぎる。例え遠回りだったとしても、欲しいものは手に入れていたように見えた。だから、この返事には正直驚いた。まだ足りないのか、それとも、実際に欲しかったものは違うのかと数秒思考したが、それを妨げる言動が飛び出した。

 

「俺も、お前達と同じように、わからないんだ」

「わからないはないだろ!?お前はその力を利用し、欲しいものは手に入れてきたじゃないか!?」

 

俺の見えてる世界が狭いのかこいつが広いのか。それとも他に何か、別の考えがあるのか。

 

「俺もお前達と同じように、造られた人間だ。そして造られた意味を知れば知るほど、自分が存在している意味や理由が消えていく。自分のことや、お前達のような存在を知れば知るほど、何故生きているのか。その答えを探している」

「…………同じ、だと?全然違うだろ!?」

 

実際、全然違う。身体の造りは勿論のこと、生まれ方、寿命など、挙げたらキリがない。俺らとこいつのどこが同じなんだ。同じでいられるはずがないのに。

 

「確かに生まれは違う。それはもう、どうしようもないほどにな」

「なら、何故そう言う」

「周りとは違いすぎるための"孤独"という面では同じはずだ。そしてそれをわかってくれる人などいないということも」

 

孤独か。その程度なのか。俺とお前の共通点は。そしてわかってくれる人はいない。そんなのは当たり前だろ。例え俺らじゃなくても、あかの他人を分かり合うなど不可能だ。そんなことが出来るなら戦争など起きやしない。こいつはまだ、夢の中にでもいるつもりなのだろうか。

 

「ただ、それを悲観しても仕方の無いことだ。それには抗いようがないしな」

「何が言いたい」

「俺らにできることは、自らの価値を見いだすことだ」

 

自らの価値を見いだす。それは、どういう意味でだ。俺らはただの…

 

「兵器としてか?」

「違う。1人の人間としてだ」

「あ?人とはかけ離れている存在でか?」

「そうだ。だがこれは俺達にはかなり難しいことだろう。外見上は人でありながらも人為らざる者としては。だけど、」

 

「それを見つけるまで探し続けるのが、俺たちの、"戦い"だろ?」

 

これが最高の人間の言葉か。最初に出た感想はそれだった。思えば俺らはそんなことを考えたこと、1度たりともなかった。組織の命令通りに動き、生きていた俺らにはその言葉は眩しすぎた。生まれはどうであれ、生きる意味を探していいのだと、見つけたら、その為に命を捧げてもいいのだと。最初は手探り状態から始まるだろう。だけど、始めなくては存在意義を見つけ出すことすら出来ない。そのきっかけを与えてくれた。もう遅いかもしれないが、初めて、自らの意思で、動きたいと思った。

 

「はっ、お前とは、もっと違うところで会いたかったぜ」

「あぁ。俺もだ」

「一つ約束してくれ」

「なんだ」

 

この約束を果たせる日はこないだろう。だけど、どうしても伝えなくてはと思った。俺らの存在を知って欲しかっただけなのかもしれないが。

 

「その生きる意味を見いだせたら報告しに行ってもいいか」

 

驚いた表情をしていたが、目元を滲ませながら快く返事してくれた。

 

「あぁ!必ずこい!」

「あたしもいくわ。てか呼びなさい」

「それは無理だろうよファーラン。あんたも見つけとけよ」

「わかったよ。ファーラン、ワヒード」

 

そして3人の目から、光が消えた。

 

俺達はどこで道を違えたのだろう。こればかりは後悔しても仕方がない。それは分かっている。だが考えるのをやめようと思ってもどうしても考えてしまう。夢だったら、と。目が覚めたら普通の子どもとして生活してる。なんてことになってたら。などという妄想をどれほどしたか。おそらく誰も悪くは無いだろう。俺らを生み出した研究者も己の欲望を満たしたいがために知識体力人生を捧げているのだ。それを妨げるのは間違いだろう。人の夢を阻害するほどの悪はない。きっと本当に悪いのは、俺らみたいなのから、夢を奪う人達だ。だから俺はその為に戦おう。まだ囚われている奴らを解放するためにも。これもまた傲慢なのかもしれないがそれでいい。夢を追うくらいなら傲慢くらいでないと。

 

「さてと、そろそろ行くか」

 

俺はアルバがいると思われる中央後方へ向け、全力で移動を開始した。1つはこれ以上の犠牲を出さないため。そしてもう一つは、俺の夢のために。

 

 

 

残る戦局は一つ。

ノーチラス対アルバも終わり、アスナ対アルバへと移行してる中、キヒロは最終戦局地へ向かう。果たして間に合うのか、それとも間に合わないのか。勝者は!?

 

 

 

次回 さよなら

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もっとド派手にいくべきかと思ったりもしました。
でも最終的にこうしたのは自分の中ではこれかなと言うだけ。

これ以上言うとあれなのでやめときます()

(*´∇`)ノ ではでは~
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