キノの旅 ~ Traveler's memory~ 作:枯渇性資源
次の日、キノは出国すると言い出した。
もうこの世界に来て三日目だという事に驚くと共に、女神の話を思い出し禿げそうになった。
流石にこんなに善良な少女を追いかけ回すのはな~。嫌だな~。あ~。
どうすればいいのか悩み、結局答えの出ないまま城壁まで辿り着いてしまった。
「それじゃあ、またね。カラヤさん」
「……なあキノ嬢。お前の旅に着いて行くって言ったらどうする?」
「……断るけど?」
「そうか……」
残念だ。俺このままじゃあのクソ女神に不幸に落とされちまうんだが……、
「仕方ないな。此処でお別れだ。キノ嬢、エルメス、また会えると良いな」
「……キノ?」
「いいさ。それでは、さよなら」
キノ笑っているのか悲しんでいるのか微妙な表情で、城壁の向こうに消えていった。
「――キノ、本当は一緒に行きたかったんじゃなかったの?」
エルメスは神妙そうな声で訊いた。
……カラヤさんは不思議な人だ。
最初会った時は不信感でいっぱいだったけど、その不信感もこの三日間で完全に消えた。
楽しい時は笑い、悲しい時は眉を下げる。
当たり前の様で、嘘偽りなく感情を出せるのは中々できない。
喜怒哀楽がはっきりしていて、この三日間よく面白い話なんかであまり笑わないボクを笑わせてくれた。
さっき別れた時、ボクが誘いを断ったのを聞いて、寂しい表情だったのを憶えている。
悪い人じゃない、むしろ優しくて、芯の通っている強い人だ。
………はぁ。
「………ねぇ、エルメス。これから何があろうと、ボクはキノだよね?」
「何を今更、君はキノで、君が僕にエルメスという名前をくれたんじゃないか。それはこれから何があっても変わらないよ」
エルメスの答えを聞き、ボクはそうかぁ、と呟くと、急ブレーキを掛ける。
「――戻ろう」
「そうこなくっちゃ!」
「――おい、どういうつもりだ、カラヤ」
「どうもこうも無いだろ、俺は旅の同行を断られて、お前は首だけ妖怪になった」
空間の裂け目から首だけ出した状態の女神を横目に答える。
「私をあんな気色悪い輩と同じにするな。…祟るぞ?」
「ごめんなさい、謝りましたから祟らないで下さい」
そういって頭を下げるが、女神が腰辺りの裂け目から首を出してきているせいで、女神のつむじが丁度真下に来た。
「……もうよいから。早く頭を上げろ」
「いえ、そういう訳にはいきませぬ。絶世の美女神であるラマシュトゥ様に不敬なことを申してしまったこの大罪、決して少し頭を下げただけでは許されませぬ。あと十秒、いや三十秒――一分は頭を下げ続けなけれ「――いや貴様はただ私のつむじをみたいだけだろ!」あ、すみません。髪に紙くずがついていますよ。取って差し上げましょう」
おお、何だこの何とも言えない心地よさ。俺、
「――いい加減にしろっ!!」
「マジでごめんなさいっ!」
頭を地につけ、土下座する。
だめだ、女神があまりにも弄りがいがありすぎて俺のSの魂に火がついてしまった。
一瞬だけ見えた女神の表情は恥辱に濡れ、頬が赤く染まっていた。
女神は首だけ出すのを止め、上半身だけ裂け目から出てくる。
そこまで出てきたのなら全部出てこいよと思うが口には出さない。俺はまだ蒸発したくないからな。
「はぁ。幾多ある魂の中から貴様なんかの魂を拾ってきてしまった私が憎い」
「ごめんなさい」
そこまで言うか。
「でも実際、どうしようも無いだろ。それともキノ嬢にストーカーしろって言うのか?」
「それを上手くやるのが貴様の仕事だろう。何のためにその力を与えたと思っている」
「はっ!? これストーカーする為の能力だったのか!?」
何処の世界に
「そうだ。元々貴様に期待はしていなかったからな。ハッキリ言えば、失敗した時用に授けた能力だ」
「――ハッキリ言い過ぎだろ。じゃあラマはこれから俺にこの能力を使ってキノ嬢をストーカーして生きていけっていうのか? それ見てて何が楽しいんだよ」
「散々私を侮辱した貴様が犯罪者に堕ちるのは見ていて愉快だな。……それと、ラマって呼ぶな。私はあんな間抜け面をしていない」
「あの、すみません……」
「いや、キノ嬢少し待っててくれ、俺達は今重要な局面に立っているんだ」
「ああ、そうだ。小娘は大人しくそこで見ておくがいい、この男が地を這いずって私に懇願する姿をな」
「「――ん?」」
――こうして、キノの旅に新たに一人の青年が参加した。
此処だけの話、実はこっちを先に書きあげました。
ちょっと文字数多いから、町の男性との会話を無くしてしまおうと考えた結果出来上がったものです。……しかし流石にそれでは話の構成がおかしくなるのでIFとなりました。