<Infinite Dendrogram>-枝葉末節:超級異譚-   作:チャシェ

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今回も前後篇。これぐらいがちょうどいいかなと最近思い始めてきた


“鼠算”ウェーザーの場合 前篇 人類最多の広域制圧型

 □【聖騎士】レイ・スターリング

 

 ある日、兄に呼び出された俺はルークと共にギデオンの闘技場まで来ていた。

 戦争も近づいてくる最近となっては、兄も積極的に模擬戦や指導などを増やし、ビシバシと俺達を鍛えてくれていた。

 今日もおそらくはその一環だろうが、事前にやる内容が伝えられないのは珍しく、俺とルークは疑問に思っていた。

 

「今日はなんだろうな。まあなんにせよ、つきあってくれてありがとうルーク」

「いえ、ボクもお兄さんの呼び出しともなれば気になりますから」

 

 相変わらず物腰が穏やかだなあ。見習いたいものだ。

 しっかし呼び出しといて遅いな。どっかで道草でも食ってるんだろうか。いやクマだし蜂蜜かもしれない。

 現実的に考えれば、兄の事だし子どもに囲まれてる可能性が一番高いんだが。

 

『スマンスマン、遅れたクマ―』

 

 と、声がしたので入口の方を振り返ると、いつものようにクマの着ぐるみの兄の姿と……見覚えのあるライオンの着ぐるみと、見たことのない()の着ぐるみがいた。

 なぜ三人も着ぐるみで。流行ってるのだろうか。いやこの前の着ぐるみ=変人の法則からすると新たなる変人の可能性が。

 

「思考がずれておるぞ」

 

 おっとあぶない。考えが明後日の方に行くところだった。

 とりあえず無難に挨拶からいくか。

 

「兄貴と、フィガロさん、ですよね。えっともう一人の方は……?」

「フィガロで合ってるよ。こんにちは」

「ウェーザーです。ども」

 

 兄以外は中に入ったら着ぐるみを脱いでいた。やっぱりフィガロさんと、ウェーザー、か。

 黒に近いグレーの服装に、唯一真紅のジャケットが目立つ青年だ。年は俺と同じぐらいだろうか。ダルそうな雰囲気を纏っている。

 

 しかし<超級>にして決闘一位、いつもは神造ダンジョンに潜りまくってるフィガロさんまで来るとは驚いた。

 さて、今回はどういうイベントだろうか。欲を言えば兄がこの二人と戦うのを観戦するとかがいいのだが。

 

『お前の苦手な相手としては、基本的には遠距離型と複数の敵を操る広域制圧型だってのは解ってるだろ?

 遠距離型はこの国にもそこそこいるが、複数形の広域制圧型はほとんどいない。だが敵の<超級>の内二人がそのタイプだから、経験は積んでおいた方が良い。

 と、言う訳で、俺の知る限り()()()()()()()()を用意してみた。

 ちなみにフィガロはなんかついてきただけクマ』

 

 ついてきただけなのかい。いいのか決闘一位。

 まあ未知の強敵ともなれば気になって当然かもしれない。折角兄がセッティングしてくれたんだし、俺も頑張らないと。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「まあルールとしては、君の攻撃が俺に届いたら俺の負け、俺に届く前に設定条件が満たされたら俺の勝ちってとこかな」

 

 俺とウェーザーが結界内に入り、条件の確認が始まった。

 

「設定条件、それって一体どんな……?」

『それはある程度伏せるクマ―。まあ時間がかかればかかるほど条件が満たされる可能性が高いとだけ言っておくクマよ。条件が満たされたらウェーザーがスキルを使って終わりクマ』

 

 なるほど、時間経過やらなにやらで条件が満たされ、なんらかのスキルが発動するタイプを想定した模擬戦ってことかな。

 まあ【魔将軍】にしろフランクリンにしろ時間をかければそれだけモンスターを増やせるし、広域制圧型相手には速めに倒すのが肝心。条件に異論はない。

 

「心の準備もできたみたいだし、シュウ合図よろしく」

『おし、それじゃあ始めクマ―』

 

 合図軽ッ!

 

 いやそんなことよりも速効だ。即座に距離を詰めて―――

 

「よろしく頼むよ、《鼠呼びの笛(フェンガー)》」

 

 ウェーザーさんが右手に持っていた黒い笛を軽く振り、風切り音が鳴ると同時に闘技場の地面が黒い鼠に変わりだした。

 一気に数十、数百と増え、なお増える。

 増殖が終わる頃には、ウェーザーさん側の闘技場の大地は一面覆われていた。

 

(こやつの鼠、総数は千体といったところか。一瞬でこの数とは言うだけのことはあるのう)

 

 ああ、でも動きを見るにステータスは低い。それこそ初期の職業に就いていないときの俺以下だろう。

 とすると、おそらくは数とスキルが強力なタイプ。スキルが解らない状態で正面からは下策か。少し離れて《煉獄火焔》で焼き払うか《地獄瘴気》で動きを封じるかでいくべきかな。

 

 いや、待てよ。兄は確か()()と言っていたはずだ。こんなんじゃフランクリンが軽く出した量にも及ばない―――

 

「ん、待ってくれるのか。ありがとう、これで数を増やせる」

 

 その言葉を皮切りに、一度は止まった鼠の増殖が更に加速する。

 千を越え、万をも軽く突破する。闘技場の一角を埋め尽くし、ウェーザーの姿を隠していく。

 

「一応説明しておくと、俺の<エンブリオ>【黒鼠笛 ラッテンフェンガー】のスキルの一つ、《鼠呼びの笛吹き》は土等を千匹のレギオンたる鼠にするスキルだ。この第一陣は《鼠呼びの鼠》というスキルを持っていて、笛と同じことができる。まあ第二陣は流石に持ってないんだけど」

 

 つまり千匹の鼠が更にそれぞれ千匹生み出す、結果合計で()()()にもなるってことかよ。

 いくらステータスが低くても、尋常な数じゃない。これもおそらくは<()()()()()()()>。<エンブリオ>のハイエンドの一つ。

 

「勿論スキルはそれだけじゃないけど、まあそんな感じ。この雲霞の如き鼠をかき分けて俺に攻撃を当てられたら終了だ。存在隠蔽系のアイテムは使わないから頑張れ」

 

 これでそんなもの使われたら勝ち目がない。いや闘技場内だからまだいいけど、どの程度離れられるのかは不明とはいえ遠くで永遠に作られたら勝負にならない。

 おそらくは普段はそういう戦闘スタイルなんだろうな。

 

 さて、これを攻略するなら―――やっぱ当初の予定通り速効といくか!

 鼠に覆われつつも、まだ少し赤が見える場所を目指し、一直線に突っ込んでいく。

 その際無数の鼠に噛まれるが、それは無視して突き抜ける。毒があったが、()()()()()

 

(レイ、こやつの毒、返しきれない強いものから弱いものまで多種多様だ! だが、そのお陰で収支はプラス。いけるぞ!)

 

 よし、結果的に能力が上がった。赤の影も動いてはいるが、今の強化された俺よりは遅い。

 これで即座に決着を着ける!

 

 そして俺の振るった黒旗斧槍が、赤の影を両断し―――そこから鼠があふれ出した。

 鼠への変化かと思ったが違う。最初から鼠の塊にジャケットを着せていただけか!

 

 黒い服装は鼠に紛れるため、真紅のジャケットはその色を印象付け、そこにいると見せるため。

 なにからなにまで計算ずくか。これで完全に見失った。これじゃ速攻は無理だ。

 しかも周囲は鼠だらけ。これだと下手に火も使えない。瘴気も使えばさらに視界を狭める。

 

 本格的に面倒なことになってきた……。

 

 

 ◇◇

 

 

「なるほど、これはかなり面倒なタイプだ」

『お前だったらどうするかは聞かなくても分かるから言わなくていいが……流石にまだレイには早かったかな』

 

 シュウ・スターリングは少々後悔したような素振りを見せていた。

 成長が早く、戦争が近いこともあり予定を前倒しにしたが、これではあまり学べるものがないのではないか、と。

 

「いや、こういうのもいい経験になると思うよ。視界を埋め尽くすほどの敵となると広範囲攻撃が必要だけど、レイ君はシルバーがないと難しいしね」

『まああいつが積極的に攻撃してないのが救いだろうな。状態異常に対抗できるスキルがあるのも大きい。勝機は消えちゃいないか』

 

 フィガロのフォローをありがたく思いつつ、気を取り直すことにするシュウ。

 まあ初見じゃなければあの弟は何かを考えるだろうし、経験を活かすことができるだろう。それになにより、まだ終わったわけじゃない。

 そして普段あまりしないフォローという行為をなんとかこなしたフィガロは、純粋に疑問を投げかける。

 

「そういえばあの状態異常も中々面白いね。あそこまで複数の効果があるのは見たことがない」

『あいつの<エンブリオ>の更なるスキル、《病を運ぶ鼠(ラッテン)》の効果だな。たしか喰らった状態異常を笛に記録・培養し、鼠に保菌させるとかなんとか。ただし病毒系と一部の呪怨系に限られるらしい』

 

 ウェーザーの<エンブリオ>のモチーフであるラッテンフェンガー、ひいては“ハーメルンの笛吹き”の正体は鼠から感染したペストであるという説もある。

 或は鼠という獣に対しての「病を運ぶ獣」というイメージによって生まれた、と取ることもできるスキル。

 一体一体は職業に就いていない成人男性以下のステータスとはいえ、百万の数と状態異常はそれなりに難敵だ。

 

「なるほど、それであんなに多種多様なのか。【疫病王(キング・オブ・プレェグ)】や【猛毒王(キング・オブ・ヴェノム)】のもあるのかな。まあ今回はそのせいでレイ君が強化されてるみたいだけど」

「本人としては結果的には問題ないとか思ってそうクマ。事実どれだけ強化されても意味は薄い。ま、今は見守っておくクマ」

 

 弟を信じ、見守ることも兄の仕事であると。そう割り切り、試合に集中するシュウ。それを見て自らも試合の行方を考えるフィガロ。

 どちらも試合を予測し、それでいて同時に考える。自分であれば、どう対処するかと。

 

「そういえば君の弟子君はどうしてそこで泡を吹いてるんだい?」

『……誰にでも苦手なものはあり、トラウマは克服が難しい。おそらくそういうことクマ』

 

 

 ◇◇

 

 

 レイ・スターリングもまた、どうするかを考えていた。

 現在なんとか少し距離を取り、近づいてくる鼠を《煉獄火炎》で焼き払い、考える時間を生み出している。

 しかし多勢に無勢であることには変わりなく、相手の位置を特定する方法を考えなければきりがない。

 こうしている今も、いくらかの鼠が数でゴリ押して炎の壁を突き抜け、噛みに来ている。ダメージはそれほどでもないが邪魔だ。

 

(元が土だからか怨念の集まりが悪い。これじゃ条件を満たす以前にMPとSPが尽きる。相手の位置を探すにはどうすれば……いや、()()()()()()()()()()()()か。よし、それでいこう)

 

 何がしかの考えに辿り着いたのか、覚悟の決まった顔で、槍を()()()()()()

 

「ネメシス、頼むぞ!」

 

 そして、そのまま上に槍を投げる。投げた槍は空高くに飛び、そのまますぐに帰ってくる。

 

「どうだった?」

(奴は上にはいなかったぞ。つまりあの鼠どもの中にいるはずだ!)

 

 そのネメシスの言葉を聞き、左手から出る炎の火力を引き上げていく。

 そしてそのまま周囲を一通り焼き払い、更にシルバーを出して乗り、走り回りながら燃やしにかかる。

 

「攻撃を当てればいいんだ。シルバーの風蹄爆弾でも一発だけなら躱される可能性はあるけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『おっとろしい手を取るクマ~、まあ俺でもそうするだろうけど』

 

 レイのいっそ暴力的とすら言える発言に対し、観客席からシュウもまた引いたようなことを言いながらも同意を示す。

 それがこの場での最善である、少なくとも同条件ならば同じことをする、と。

 

 そしてそのまま闘技場を一周し、更に鼠を燃やしていく。

 死ねばまた土に戻るため火のつきは悪いが、それをものともしない火力だ。

 時折鼠が突っ込んでくるが、一度噛む以上のことはできずに形を崩していく。

 

 毒を与えた鼠が死ぬことで《逆転は翻る旗の如く(リバース・アズ・フラッグ)》の効果が切れることがないように、あらかじめ一度噛ませておいた鼠を一匹捉えている。

 二つのスキルを稼働させているため、《風蹄》でバリアを張る余裕はなく、自らも火に捲かれているがダメージは《ファーストヒール》で時折回復させるだけが限界。

 

 だがレイの努力の甲斐はあり―――ついに闘技場全域が炎に包まれた。

 いくら火に耐性があろうと、この劫火の中では傷つかずにはいられない。

 

 或は水属性や海属性の卓越した術者ならば問題ないかもしれないが、ウェーザーは物理職。

 これでは攻撃が届いていないとはいえないだろう。

 

 しかし、火の中に彼はいなかった。

 

「空中にはいなかった、地上にもいない。……なら、地下か!」

 

 レイは即座に居場所を悟り、地面を探ることに専念する。

 自身が起こした火のせいで少々見辛いが、それでも大地に開いている鼠穴を確認する。

 

(それなりの高さまで鼠を積み上げたのも、地下から意識を逸らすためと見るべきかのう)

 

 ネメシスの発言に内心で同意しつつ、レイは地下に入る方法を探る。

 ウェーザーが地下に潜んでいるというのであれば、人が一人入れるサイズの穴が確実にある。

 既に埋まっているとしても居場所のヒントになるはずだと、そう考えシルバーを降りて穴から這い出てくる鼠を燃やしつつ地面を調べ始めた。

 

 それっぽい穴の跡を確認しては槍を突き刺し続け、その合間に出てきた鼠に噛まれようとかまうことなくウェーザーを捜す。

 そして遂に、槍を突き立てた時に硬い感触が返ってきた。

 

「あっぶねえ、なあ!」

 

 槍の刃を受け止めていたのはウェーザーの持つ黒笛。

 武器として使うのが主目的ではないとはいえ<超級エンブリオ>のTYPE:アームズ。そう簡単に砕けるものではない。

 そして槍ごとレイを弾き返しつつ地上に脱し、そのまま笛を構え対峙する。

 

「やられるかと思った。勘がいいというよりは頭がいいってタイプかな。順序立ってよく攻められてるもんだ」

「そちらこそ。意外と頭使うタイプか。もう少し怠惰だと思ってたんだけどな」

「あらかじめ対応を何セットか用意してるだけだって。雑魚を殺すには事前に策を考えておく方が楽だから」

 

 「何をしても勝てる」と考えて結果予想外の事をされ負けるよりは、「高確率で勝てる行動」を組み立てて置く方が良い。

 仮にひっくり返されてもその方法もまた予想内なら対応が早く済む。焦ってイラついて迂闊な行動をして負けるよりは何倍もマシである、というのがウェーザーの戦闘思考。

 

 つまりこの展開も、彼の予想の範囲内ではあるということだ。

 

 

 しかし状況はレイに傾きつつある。

 

 隠れて鼠を増やしていたウェーザーが出てきたことでレイも直接的な攻撃が可能になった。

 攻撃をレギオン任せにされると《復讐するは我にあり(ヴェンジェンス・イズ・マイン)》は使えないが、傷をつければ終了であるという仕様上、大ダメージを狙う必要はない。

 

 そしてなによりこの近距離であれば、《煉獄火炎》の範囲内。左手を差し向けるだけで戦いは終わる。

 

「やれやれ、このままじゃ攻撃喰らっちゃうか。

 まあでも良かった。ギリギリ()()()()()()()な」

 

 その言葉にレイは即座に反応する。

 左手を向け、《煉獄火炎》を放つ。炎が到達し、ウェーザーにダメージを与えるその直前。

 ウェーザーのスキルが発動する。

 

「時間切れだ。───《死を呼ぶ鼠遣い(ラッテンフェンガー)》」

 

 そのスキルの効果として、レイの鼠に噛まれた跡が淡く輝き、レイのHPが根こそぎ消えた。

 

 そして【死兵】のスキル《ラスト・コマンド》の効果により、何事もなかったかのようにレイの身体はスムーズに動き、炎がウェーザーに直撃した。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □【聖騎士】レイ・スターリング

 

 模擬戦は終わったが……これ勝敗どうなるんだ。

 条件が先に満たされてスキルが発動したんだから俺の負けと見るべきかな。あと一歩だったんだけど。悔しいな。

 しかしあのスキルはなんだったんだろう。状況的に即死系スキル、それも噛み跡が光ったところを見る限り噛まれた数が条件に関わってくるのだろうか。

 

「うわ<上級エンブリオ>と上級職に負けたー。テンション下がる。おいシュウ、お前の弟【死兵】就いてんのかよ。正気か?」

 

 正気度を疑われてしまった。まああんまり常識人が就くジョブじゃないのには自覚がある。

 それはさておきウェーザーとしては敗北カウントなのか。意外だ。

 

「攻撃喰らったら負けだしなー。いやほんと《ラスト・コマンド》とか予想しねえよ普通」

『まあお前もだいぶ縛りプレイだったんだから落ち込むなって。付き合ってくれたことには感謝してるしな。あと誰の弟が正気じゃないって?』

「縛りプレイの上で勝てなきゃダメだろ。あ、お前の職業そういや【壊屋(クラッシャー)】だったか。すべてを察した。遺伝だなこれ」

『命がいらんようだな……』

「この戦車も出せるか厳しい闘技場で俺に勝てるとでも?」

 

 仲良さそうだな。こんな模擬戦に付き合ってくれるあたり、それなりに親しい友人なのだろう。

 

 しかしやっぱ対多数は危ないな。状態異常への対策があったから良かったものの、それでも姿を物理的に隠されていたら狙うのは難しい。

 一方的にやられるばかりじゃこっちのMPとSPが先に尽きてしまうし、戦争では相手を選ぶことも重要だな。

 さて、とはいえ戦争では俺はどうするべきなのだろうか。基本的には<超級>が生き残っていた方の勝ちみたいなところもあるし、<超級>殺しを狙うべきか。

 或いは全員が相打ちする前提で同格の相手を減らすことに専念すべき、とも考えられる。

 まあ始まってみないとわからないし、とりあえずどちらも選べるように考えておかないとな。

 

「まあ気を取り直してもう少しマジでやろうぜ。強化をかけまくった鼠どもの力を見せてやろう」

『なお元のステータスがそれほどでもないので雑魚』

「やっぱ先お前とやろうか」

 

 仲良いなあ。

 まあ<超級>同士の戦闘が見れるとなれば願ったりだ。後学のために見てみたいな。

 いまんとこまっとうな対戦はフィガロさんと迅羽だけだし、見ておいて損はないだろう。

 だがそこで、二人の話を遮る者がいた。

 

「それもいいけど、せっかくだから僕とやらないか」

 

 フィガロさんがいい笑顔でウェーザーさんに迫る。

 どちらとしても<超級激突>になるのは間違いないが、闘技場じゃ全力を出せない兄と違ってフィガロさんは闘技場において最強の男。

 何にせよ、是非とも見たい一戦だ。

 

「いいっすね。こちらこそ」

 

 その申し出をウェーザーが心なしか愉しそうに受け、二人が結界内に入った。

 そしてお互いに構え、名乗りを上げる。

 

「アルター王国決闘ランキング一位、【超闘士(オーヴァー・グラディエーター)】フィガロ」

「無所属無名、【獣将軍(ビースト・ジェネラル)】ウェーザー」

 

 単独で百万の広域制圧型と、孤高なる無限強化の個人戦闘型。 

 人類最多と王国最強。 

 “()()”と“()()()()”。 

 

 未だ<超級>の身にして、“()()”と同義の異名を持つ二人の戦いの火蓋が今、切って落とされた。

 

 

 To be continued

 

 

 




軽い設定解説。無視しても特に問題はないです

・【黒鼠笛 ラッテンフェンガー】
 能力特性は増殖に近い生産。そして代替。造った時のMPなどの消費はほぼない。
 本人の面倒、すなわち敵を代わりに処理する群団。一体でも人型でもないのは求めていた性能に必要でないから。
 ウェーザーはレベル上げが面倒なタイプで、効率を競える単純作業や普通に行動してできることの代替は特に求めていなかったことでこうなった。
 まあ第一陣は多少の知能があるのでちょっとしたお手伝いぐらいはできる。第二陣は無理。
 第一陣の能力は二千体の鼠を造り出すことと二千体の鼠を操作すること。
 そのため第二陣が減っても過去呼んだ分も合わせて二千体以上は呼べないが、第二陣の数が減るとそれをこなしたものは共食いにより消えることで後釜を生み出し、減った分を補完、残った分とあわせ操作する。
 状態異常能力を鼠に与える能力は他者の状態異常を一度受けないといけないためリソース消費はかなり少ない。与える毒や病などを選択することも可能。しかし意味はほぼないので基本的には全部乗せである。
 肉片との接触でも感染するため回避することは難しい。ただし状態異常無効化系にはお察し。

・《死を呼ぶ鼠遣い(ラッテンフェンガー)
 最初に対象が鼠に状態異常を与えられてから444秒経過し、その間一度も状態異常が途切れることなく、状態異常を与えた鼠が666体を越えた時に発動できる。
 条件を満たした相手をまとめて即死させる。ただし鼠は一度全滅し、耐性は抜けるが身代わりアイテムの類には弱い。

・“鼠算”
 正確には源義の鼠算ではないが、一見鼠が鼠を無限に出してるように見えることから。
 まあ三次元的な展開をしなければ数キロ単位で地表覆えるから誤解が生じても無理はない。
 ()()()()()()、数が多いだけで他の広域制圧・広域殲滅型からすればそれほどの敵でもない。

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