魔法科高校の劣等生 ~世界をひっくり返す錬金術師~ 作:カイナベル
とはいってもそこまで変わっているわけではないのですが、大きく変わっている部分もあるので、そこを見つけるのも楽しみと思って読んでいただきたいと思います。
それではお楽しみください。
※前作UA一万越えありがとうございます。更新を停止した後もここまで行くとは思いませんでした…。
入学編 第一話
「……私のこと、好きなの?」 「うん。僕はお姉ちゃんのことが好き」 「ずっと忘れないでくれる?」 「うん」
「じゃ、私からの最初で最後のお願い、聞いてくれる?」
何故最後なのか、その時は全く分からなかった。だが無知で無力なその時にはただ頷くことしかできなかった。
「うん」「絶対に守ってね」「分かった。絶対に守るよ」「じゃあ、私からのお願い。それはね……」
「……朝か」
随分と懐かしい夢だった。できる限り見たくはないものだが。見た夢の内容を何とか忘れようとしながら、ベットから滑り落ちるようにして起きる。寝ている間に汗を結構かいてしまったようなので俺がこのあと一番先にやるべきことが決まった。シャワーを浴びるために風呂場に向かう。熱いシャワーを浴びてまだ寝ぼけ眼な目をはっきりとさせる。今日はとてもよく眠れた。目つきが悪いうえに不眠症の気がある俺にとっては吉日だ。まあ今日は全学生の吉日であることには違いないのだろうが。シャワーで汗を流した後は朝食をとる、もとい一人暮らしなので朝食を作るためにキッチンに向かう。すると誰もいないはずのキッチンからお湯を沸かしている音がする。恐らく俺が起きたのを察してお湯を沸かしてくれているのだろう。
「おはようございます。マスター」
「ああ、おはよう」
「コーヒーのためのお湯と今日のご朝食でお使いになると思われる材料をお出ししておきました」
「ああ、ありがとう。それともう一つ頼みたいだが、今日の朝食は作ってくれないか。いまだに血糖値が上がらなくて頭が働かん」
「了解しました。十五分ほどお待ちください」
優秀な使用人が淹れてくれた紅茶をすすりながら、ソファーに腰掛ける。ちなみに紅茶は紅茶でもミルクたっぷりのミルクティーだ。家で愛用している小型端末を手に取り、今日のニュースを確認する。内容は特に面白みもない平凡な内容だった。しいて言うならば今日は魔法科高校の入学式が今日だということぐらいだ。それ以外には特になんてこともない平凡な日。それが俺の印象だった。ミルクティーを飲みながら、ソファーに座ってぼーっとしていると、やっと頭が回ってきた。
「マスター。朝食が完成しました」
「分かった。今行く」
ソファーから立ち上がり、食事用のテーブルに着く。手を合わせて食事の際のあいさつをする。
「いただきます」
「…ごちそうさまでした」
相変わらず優秀な使用人だ。朝でもサクサク食べられてしまう旨い飯だ。
「マスター、今日は私はいかがいたしましょうか?」
「今日は特にやることがないから、家の警備をしながら自分のメンテをしておけ。あと今日は歩いていくとあいつに伝えておけ」
「了解しました」
今日についての予定を伝えた後、部屋に戻り出かける準備をする。寝間着を脱いで洗濯籠に入れ、そして今日俺が入学する国立魔法大学付属第一高校の制服に手早く着替える。着替えた後は特に家にとどまる意味もないのでさっさと出発するためにリュックを持って玄関に向かう。靴を履いて誰がいるわけでもないが挨拶をしながら家から出る。
「行ってきます」
「行ってらっしゃいませ。マスター」
車のクラクションがガレージから聞こえてくる。がそのことは右から左に受け流し、優秀な使用人に一言文句をつける。
「おい、さっきから聞いていたが俺のことをマスターと呼ぶな。俺のことは名前で、
「了解しました。改めまして、行ってらっしゃいませ」
返された挨拶を背中に受けて俺は家から出て学校から出た。
「納得できません!」「まだ言っているのか…」
校門から校内に入った途端、興奮した声が聞こえてきた。声の方向に目を向けると一組の男女が言い争い…もとい、興奮した女子生徒の方を男子生徒の方が諫めていた。なかなか入学式の前にこんなことを目にする機会はないのでついつい気になってしまい、聞き耳を立ててしまった。
「なぜ!お兄様が補欠なのですか?入試の成績はお兄様は同率トップではありませんでしたか!本来なら私ではなくお兄様が新入生総代を務めるべきですのに!」
「魔法科高校なんだからペーパーテストより魔法実技が優先されるのは当然じゃないか。俺の実技能力は深雪も知っているだろう?自分でも二科生徒とはいえよくここに受かったものだと、驚いているんだけどね」
「そんな覇気のないことでどうしますか!勉学も体術もお兄様に勝てる者などいないというのに!魔法だって本当なら」
「深雪!」
今まで優位に言い合いを制していた女子生徒の方が男子の一喝で口を閉ざしてしまった。
「分かっているだろ?それは口に出しても仕方がないことなんだ」
「…申し訳ありません」
今度は男子生徒の方が優位に話し始めた。
「深雪…。お前の気持ちはとても嬉しいよ。俺の代わりに怒ってくれるから、俺はいつも救われている」
「嘘です」
なんだか甘い空気が漂い始めた。何だ、ただののろけかと思い、すでに興味もない状況だったので、もはやここまでかなと思い、その二人から視線を外す。辺りを見渡し、手ごろな本が読めそうな場所を探す。すると手ごろなベンチを見つけたのでそこに向かう。ベンチに向かう途中で最後に目に映った二人は甘い空気を周囲に振りまきながら、女子の方はくねくねと動き、男子はそれを見て困惑の表情を浮かべていた。
「隣は開いているか」
読書をしていた手元のハードカバーの本から声の主に目線をあげると先ほど言い争いをしていた男子が立っていた。
「ああ、空いているぞ」
「すまない。失礼する」
隣に誰が座っていようとあまり関係ないため、俺の隣を快く譲る。男は隣に座ると携帯端末を取り出した。俺はまた本を読もうと本に目を落とした。するとハードカバーという今では絶滅危惧種となってしまった貴重品が気になったのか男が話しかけてきた。
「今時珍しいな。ハードカバーの本とは」
「ん?」
また男の方に目を向けると男の目、男の関心は俺の手の本に向いていた。
「ああ、すまない。情報端末が発展した今、ハードカバーの書物は珍しいと思ってな」
「ああ、こちらの方が本を読んでいる感じがしてな」
「そうか。紹介が遅れたな。俺の名前は司波 達也だ」
「…俺は園達 錬だ」
本を持ったまま、名前を言う。言い終わるとまた本に目線を向け、そのままの状態で今度はこちらから質問を投げかける。
「さっきの女性はどうしたんだ?」
「ああ、あれは俺の妹でな。今は入学式のリハーサルに行っている」
「そうか」
会話が途切れる。が、俺にとってはさっきの質問も形式的なものだったので会話が途切れようとあまり関係ない。それは向こうにとっても同じなようで向こうもそれを気にせず自分の端末に目を向けた。互いに干渉しあわず黙々と小説を読む。途中ウィードだなんだと聞こえたがそれすら俺には不必要な情報だったので脳内に残すことを完全に拒絶し、小説の文字のみに集中した。
「新入生ですね。開場の時間ですよ」
入学式まであと三十分といったところで頭上から声を浴びせられた。本から目を離し見上げるとそこには小柄な女性が立っていた。が直後に目に映ったのは胸の八枚花弁のエンブレムと左腕に巻かれたCADだった。CADを携行しているということは彼女は生徒会役員、もしくはそれに近しい人物なのだろう。まあ、興味がないが。彼女の言う通り会場には入れるということでもう会場に入ってしまおうと思い、会釈をして会場に向かおうとしたがすぐさま止められてしまった。
「感心ですね、スクリーン型ですか。それにそちらの彼はハードカバーの書籍ですか」
達也の方を向きながらその言葉を口にした後、ゆっくりとこちらを向き、達也と俺が同時に見えるようにする。
「仮想型は読書に不向きですので」
「こちらの方が読書をしているという感じがするので」
達也、俺の順で答える。俺としては早く会場に入ってしまいたいのだがどうやらそうもいかないらしい。
「動画ではなく読書ですか。ますます珍しいです。あっ、申し遅れました。私は第一高校の生徒会長を務めています、七草真由美です。ななくさ、と書いて、さえぐさ、と読みます」
生徒会長兼十師族というエリート中のエリート、超大物だった。数字付き、その中でも十師族は日本の魔法師の中でも最上位に位置する人物たち。さすがにこの人物は頭に留めておかなければならない。
「俺、いえ、自分は、司波達也です」
「…園達 錬です」
「司波達也くん…あなたが、あの司波君、それに園達君ね…」
意味ありげに俺たちの名前を復唱する。その後に続けて言葉を紡ぐ。
「先生方の間では、あなた方の噂で持ちきりよ。両者ともに入学試験、七教科平均、百点満点中九十六点。魔法理論と魔法工学は両教科とも小論文含めて文句なしの満点。さらに園達君に至っては魔法実技もトップで堂々の総合一位だって」
達也が目を見開きながら、こちらを見てくる。
「ということはお前は総代を断ったということか?」
「まあそうなるな」
「どうしてか教えてもらってもいいかしら?」
「単に面倒だったのと、俺には新入生総代なんて御大層なものは似合わないからですよ。結果論であっても今総代をやっている人物の方があっているでしょう」
「総代を面倒って…。そんなこと普通は言えないわよ…。少なくとも私にはまねできないわ…」
「そろそろ時間になりますので……、これで失礼します」
そろそろ会場に入らなければならないので俺はその場を去る。ついでに達也も便乗してその場から立ち去る。会長は少し納得いかないような表情をしながら、その場を立ち去ることを了承した。すると、横を歩いていた達也が俺に向かって質問を投げかけてくる。
「園達。つかぬことを聞くが筆記、実技両方一位というのは本当か?」
「さあ?でも会長が言うなら本当なんだろうな。あと俺のことは錬でいい」
「まさか総代を断ったというのも本当か?随分と肝が据わっているんだな」
「肝が据わっているかどうかは知らんが面倒だったというのは本心だ」
「お前は…。まあいい、それじゃあな」
「じゃあな」
講堂の前に着き。達也と別れる。行動の中は生徒であふれていたがその座り方の法則には一貫性があった。二つに分かれた席の前列が一科生、後ろが二科生というように分かれているのだ。俺にとってはどうでもよかったのだが、入学一日目から新入生の中で目立って面倒事を増やすようなことをしたくないので前列の端、空いているところに腰掛ける。
席に着き制服の内ポケットから本を取り出すと、音をたてないように、気づかれないように読み始める。そうこうしていると、入学式が始まった。本に集中していたのもあったので、入学式の内容はほとんど覚えていない。でも新入生総代、司波深雪の魔法科高校らしからぬ総代だけは印象少し強くてかろうじて覚えていたが。
入学式の後はIDカードを受け取りに行く。これを終わらせて速いところ家に帰る。それが今の計画だった。早く受け取って帰るために歩くスピードが速める。が、その行動が悪手だった。
「きゃっ!?」
曲がり角で女の子とぶつかってしまったのだ。女の子はぶつかった衝撃で転んでしりもちをついてしまう。
「すまない。大丈夫か?」
「あ、はい…」
俺は手を差し出す。するとその少女は俺の手の意図を理解したのか俺の手をつかんでくる。俺が引き上げ立ち上がらせるとどうやら女の子の連れがやってきたようだ。
「もう、ほのかのドジ。先にIDカードを取りに行けばいいって、だから言ったのに」
「ご、ごめん雫。そ、そっちの人も大丈夫ですか」
俺の方に向き直り、謝ってくる。そこまで強くぶつかったわけではないので特に何があるわけではないので彼女の方が気が済まなかったのだろう。俺もそれなりの対応をする。
「いや、こちらも急いでいて周りが見えていなかった。申し訳ない」
「いえ、そんな。あ、一科生の方ですか。私、光井ほのかって言います。この子が…」
「北山雫です」
「…園達 錬だ」
「園達さんですか。よろしくお願いします」
光井さんが深々と頭を下げてくる。北山さんも光井さんほどではないが頭を下げてくる。俺もそれに応えるように頭を下げる。
「…よろしく。俺急いでるから先に行かせてもらうが構わないか?」
「あ、はい!どうぞ!」
彼女たちには悪いが、今日はもう早く帰りたいので小走りでIDカードを受け取る窓口に向かう。これ以上学校には留まりたくないのでささっと彼女たちのもとから立ち去る。その後はIDカードを受け取り、誰とも話すことなく迅速に帰宅した。
一方、置き去りにされた彼女らは少しの間、と言っても五秒ほどだが硬直したがすぐに復活した。
「ちょっと目つきが怖かった…、けど優しい人だったね。ってどうしたの雫」
見ると雫がムスッとしている。
「ほのかばっかり話して私ほとんど話せなかった…」
「え、あ!ごめん雫。ごめんってば~!」
入学早々彼女たちの信頼関係にひびが入りそうになっていた。まあその程度でひびが入ることはないのだが、それは読者と作者のみぞ知る、といったところだった。
いかがだったでしょうか。この作品もこんな感じでゆるゆる更新していきたいと思います。これからもご愛読していただけると幸いです。
あと評価ご感想お待ちしています。(悪い評価をつけていただくのはウェルカムですが、その場合、できる限り理由をつけていただくと幸いです。評価だけではどう直せばいいのか分からないので)