魔法科高校の劣等生 ~世界をひっくり返す錬金術師~ 作:カイナベル
錬が作り出した素材。元の素材のエイドス情報を固定し、魔法による干渉を受けないといったもの。メタルではない理由は金属だけではなく、プラスチックや鉱石、液体も作り出せるため。これの有用性は魔法の効かない駆動機械を作れること。元の素材の長所をそのままにしてアンチ・マジック・マテリアルにすることができる。世の中に存在していない素材であるため、かなり貴重。市場に出回っていない。
お久しぶりです。やっと書き終わったので投稿です。
それではお楽しみください。
あと、評価ご感想お待ちしています。
渡辺先輩から勝利を収めてから少し経ち、今日は学校のない休日。俺は自宅でココアを飲みながら、くつろいでいた。今日は頼んでいたスクラップが届くので、どう加工しようか考えながら、ココアを一啜りすると、俺の端末が鳴り響いた。誰かと思い、確認すると、相手は雫だった。雫が連絡をしてくることなどなかったので何の用かと思いながら、電話に出る。
「もしもし。」
「もしもし、錬君。」
雫の抑揚のない声が端末越しに聞こえてくる。
「どうしたんだ。雫。」
「あの、明日って空いてる?」
「一応開いてはいるが…。何かあるのか?」
「明日私たち試験勉強をするんだけど、錬君も一緒に来ない?」
「構わない。一応質問だが、他に誰か来るのか?どこでやるんだ?」
「ほのかとエイミィが来る。あと勉強は私の家でやる。」
「分かった。明日家に行けばいいんだな。」
「うん。よろしくね」
端末の通話を切る。端末をテーブルの上に投げ、ココアを啜る。そうやってココアを啜っていると、一分ほどしてインターホンが鳴った。恐らくスクラップが届いたのだろう。受け取るために玄関へと向かう。その足取りは少し普段より軽いものだった。
一方の雫はというと、
(やった。錬君を誘えた。)
ひそかに喜んでいた。同じ一科生として、入試成績一位の錬君が来てくれるのは試験勉強としては大きい。勉強でわからないところがあったら、教えてもらえるから。正直な話をすると、電話をするのは結構緊張したのだ。いつも不愛想な感じな錬さんに断られてしまうと思い、端末の前でたっぷり十分間覚悟を決めるために思案していたのだ。しかし、結果はすんなりとOK。今までの覚悟は何だったのかと思ったが、それ以上に喜びが強かった。明日に向けて部屋の片づけをするために寝転がっていたベットから起き上がった。また片づけをしているときの雫の足取りは普段よりも軽かった。
「錬君、ここはどうやるの?」
「ああ、それはな…」
一日開けて今日は日曜日。雫との約束通り、俺は雫の家に来ていた。外見は家というよりかは邸の方が近いだろうが。そんなわけでほのか、エイミィ、雫、そして俺で勉強会をしている。健全な高校生であるならば、一対三の男女比で気まずい感じになってしまうだろうが、俺はそんなことを思わない。
「でも、やっぱり錬君すごいね。さすがに入試成績一位は伊達じゃないってやつ?」
勉強に飽きたのかエイミィが言葉を発する。そこまでやっているわけではないのだがもうあきたのか?
「そんなことはないと思うぞ。このくらいは死ぬほど勉強すればだれでもできる」
「それが難しいんですよ。それができる錬さんはやっぱりすごいと思いますよ」
「そうそう」
エイミィに続いてほのか、雫の順に口を開く。こう褒められると、照れとは違う気まずさが混みあがってくる。
「……続けるぞ」
続けるように促してまた手元の課題に目を落とす。課題に目を向けながらエイミィが言葉を発する。
「でもやっぱり入試成績一位、なおかつ筆記、実技どっちもなんて」
自分では正直、これはあんまり褒められたものではないと思っている。この結果は俺の異能によるものなので、自分の素の力がはかれているわけではないからだ。もちろん筆記試験でこの力を使ったわけではないが。こんなことを独白していると、再びエイミィが口を開く。
「そういえば実技といえば、今回の試験の結果が九校戦のメンバー選抜に考慮されるんだよね。」
その言葉に真っ先に反応したのは雫。目の色を変えて、まるで後ろに炎のオーラがあるような迫力で話し始める。
「そう!だから特に今回の試験は重要なんだよ!」
雫が熱く九校戦について話し始め、エイミィが驚いている。ほのかはけろりとしているが。どうやら全員の意識が九校戦に向いてしまったようなので、一度休憩にして俺はお手洗いに向かう。雫に聞くと、部屋を出て廊下を進んで右に曲がるといわれ、部屋から出て向かう。トイレに着いてからはなんてこともなく事を済ませる。しかしこの豪邸は一体どれだけの広さをしているんだ。廊下だけで五十メートルはあろうかという長さだった。用を済ませ、また部屋に戻ろうとすると、廊下でなかなか珍しい人物に会った。
「おや…、君は確か…園達錬君だったかな」
北山潮。雫の父親であり、著名な大実業家でもある。恐らくは少し時間が空いたから、家に戻ってきたのだろう。会釈をして横を通り過ぎようとする。しかしそのつもりはないらしく、通り過ぎようと足を踏み出してすぐに声をかけられる。
「ちょっと待ってくれないか。君のことは娘からよく聞いていてね。一度話をしてみたいと思っていたんだ。改めて私は北山潮だ」
「園達錬です」
こう言われてしまっては俺に断るすべはない。おとなしく足を止めて、話に付き合う。
「何やら話に聞くところによると、君は第一高校の中でも屈指の実力者でもあるとか。上級生を、その中で一校の三巨頭と言われる人物を倒したそうじゃないか。雫が熱く褒めていたよ。実際私も
すごいと思うよ。さすがに入試成績一位は違うといったところか」
「大実業家、北山潮に褒めていただけるなんて光栄です」
光栄であるという意を口に出しながら、頭を下げる。
「頭を上げてくれ。私はそこまで偉くないし、魔法師でもないしね。娘に構ってもらえないしがない父親だ」
世界に名をとどろかす大実業家が偉くないとなると、いよいよ偉いといえるのが十師族程度しかいなくなるのだが。
「話は変わるが、君は四月に起こったテロを覚えているかい」
「ええ、もちろん」
「私はあの子のもとにいて守ってあげることができなかった。今まで家族を守るために、と備えてきたものが全く生かせなかった。自分のふがいなさを呪ったよ」
俺は何も言わない。あの一件はあまりに唐突で魔法師の家系ではない北山家が普通にしていても何も気づくことができないものだ。だから力が無駄だったとは俺は思わないし、北山潮が非力だとも思わない。そう考えていると、また北山氏が口を開く。
「あのテロの時、あの子はほのかちゃんを守るために魔法を使ったようなんだ、今度はそれが我が子に降り注ぐんじゃないかと、気が気がじゃないんだ。そこでなんだが…、もし私の娘が危険にさらされたら、君が守ってあげてくれないかい?」
「…なぜ私なのでしょうか。テロの一件の時、私は学校にいませんでしたし、そんな私では力不足なのでは?」
「君は以前にも雫を守ってくれている。それだけで私にとっては信頼に足る人物だ。それに私はいつ何時たりとも目を離すなといっているわけではない。出来る限り気にかけてやってほしいというだけなんだ」
少し考えたようなふりをする。その間、北山氏は何も言わない。沈黙が十秒もしない間だが流れる。
「分かりました。出来る限りのことをしたいと思います」
「そうか。ありがとう。これで娘のことは気にしなくていいな!」
俺の了承の返事を聞き、顔色が一気に明るくなる。その後はまた予定とのことで俺のもとから去っていった。俺も廊下に長居をする理由はないので速やかに部屋へ戻る。
「…今年は『クリムゾン・プリンス』こと一条将輝を擁する三校がいるから油断はできない。」
扉越しに雫たちの話している声が聞こえる。どうやらまだ九校戦の話をしているらしい。扉を開け、中に入ると、三人が一斉にこちらを振り向く。
「錬君、ずいぶん遅かったね。何かあったの?」
「なに少し雫の御父上と話していてな。」
そういうと、雫の顔色が少し変わる。俺はその様子を観察しながら、座る。
「…何か変なこと聞かれなかった?」
「いや、何も聞かれなかった。ただ雫のことを気にかけてやってくれって言われただけだ。」
「余計なことしなくてもいいのに…」
雫が小さな声でつぶやく。余計なことと思うのは勝手だが、俺は良い家族だと思う。自分の身の安全を心配してくれる人物がいるというのは、少しうらやましい気がする。少し重くなってしまった空気を戻すために話を切りだす。
「そういえば何の話をしていたんだ?」
「今年の三校に十師族の一条将輝がいるっていう話ですよ」
俺の質問にほのかが答える。
「そういえば錬君と一条将輝ってどっちが強いんだろう?」
「…なんでその話になったのかは知らないが、どう考えても一条の方だと思うぞ。天下に名高い十師族だからな」
今度はエイミィの問いに俺が答える。いったいなぜ勝てるという考えに至ったのか。
「えー、でも錬君の魔法力はすごい高いじゃない。それに私たちと助けてくれたとき、すごい動きで敵を倒していたじゃない」
「あれはただの体の動かし方だからな。魔法の打ち合いじゃない。それに実戦経験のある一条には逆立ちしても勝てないだろうな」
「えー、そうかな」
その後は雫たちは九校戦の話を続けていた。勉強しなくてもいいのかとも思ったが、楽しそうだったし、付き合うことにした。
夕暮れになり、勉強会もお開き。俺たちは北山邸を後にした。帰り道をラーメンでも食べてかろうかと思いながら一人で歩いていると、後ろから何やら気配を感じた。それも結構不穏な雰囲気だ。あえて路地裏に入ったが、手出しをしてこなかった。いったい何者だったのかという疑問が残ったが、手出しをされるよりかはましなので、いったん考えるのを保留にしてそのままの足でいつものラーメン屋に向かった。