魔法科高校の劣等生 ~世界をひっくり返す錬金術師~ 作:カイナベル
〈錬の家〉
錬が住む一軒家。上は普通の一軒家で小さな庭がある。この家には地下があり、計地下四階まであり、それぞれ駐車場と地上への通用口、運動兼実験室、研究室、倉庫という様に分かれている。
地下への入り口は地上の部屋の前の絵画の裏の操作パネルを操作することで道が開く。こうしたのは九島烈。何やら建設時、家が変形するというトンデモ案もあったらしいが光宣の冷たい視線であえなく撃沈。その後、九島烈と錬の洗の…、教育により、光宣もサブカル好きに。
この家の愉快な住人は錬、アストラ、自動車である。この一人と二台でこの家に暮らしている。ちなみに客室は二部屋。
連続投稿です。
「選手以上に問題なのがエンジニアよ……。」
「まだ数が揃わないのか?」
生徒会室で七草先輩の愚痴をBGMに食事をとる五人と二人(前者が女性、後者が男性の数。圧倒的にアンバランスである)。
準備によって疲れが溜まっているのであろう七草先輩の愚痴によって生徒会室は精神衛生的になんだか好ましくない雰囲気になってきた。それを察してか、達也は生徒会室から逃げようと機会をうかがっていた。俺もそうしたいところだったのだが、俺の場合、それができない状態にあった。なぜなら七草先輩の愚痴の三割は俺がモノリス・コードを断ったことも含まれていたからだ。おかげで新人戦の男子競技を全部変えなければならなくなっただの、おかげで疲れがさらに加速しただの言われていたせいで席を立とうにもできない状況になっていたのだ。
「ねえ、リンちゃん。やっぱり、エンジニアやってくれない?」
「無理です。私の技能では、中条さんたちの足を引っ張るだけかと。」
七草先輩の提案はすげなくあしらわれ、ここがチャンスだと見たのか、達也が腰を浮かせて、逃亡を図ろうとする。俺もチャンスだと思い、どさくさ紛れに逃亡しようとする。だが達也の目論見はどうやら失敗したみたいだ。
「あの、だったら司波君がいいんじゃないでしょうか。」
あずさ先輩の一言で生徒会室の空気が変わる。達也はなんだかんだ言って逃げようとしているが、さっきまで隣に座っていた深雪というジョーカーがいる限り逃れることはできないだろう。俺はうろたえる達也をしり目に、達也に助け船を出すことなく、生徒会室からさっさと撤収しようとする。だが達也に視線を送りながらもしっかりと俺のことを見ていた七草先輩に引き留められる。どうやらいまだに引きずっているらしい。
「どこに行くのかしら?まだ食事は終わってないわよ?さあ、座って?」
逆らえない。目が完全に獲物を見つけた時の野獣の目をしており、逃げたら殺すといわんばかりの覇気を出していた。さすがに俺でもこの状況で逃げようとは思えない。逃げようと思えば逃げられるが、後々面倒なことになると体が本能的に察していた。その最中も達也がなんとか逃げようとしていたが、ジョーカー深雪が自ら動くことで完全に逃げられない状況に陥っていた。チェックメイトだ。
食事も終わり、生徒会室から出ようとするが、達也にことごとく防がれ、仕方なくとどまる生徒会室。俺は端末でニュースを閲覧し、達也はCADを整備していた。だがCADをいじる。この行為にじっとしていられない人が一人いた。
「今日はシルバーホーンを持ってきているんですね」
「ええ、ホルスターを新調したので、馴染ませようと思いまして」
「えっ、見せてもらってもいいですか?」
達也にCADを見せてもらうことを願う中条先輩。普通のCAD好きならそれを要求するのは当然といったところか。達也の所有しているのはシルバー・モデル。天下の天才技術者、トーラス・シルバーの手によって手掛けられたものだ。ちなみにトーラス・シルバーはループ・キャスト・システムを開発し、特化型CADのソフトウェアを十年は進歩させた天才だ。デバイスに興味があるものだけでなく、魔法師であればだれもが一度は聞いたことのある名だ。
中条先輩がCADして熱弁しているのを、会長に止められ、落ち着いたところで俺に声をかけてくる。
「そういえば園達君は何のCADを使っているんですか。」
単に興味がわいたのか、それとも話すことがなくなったのか、(恐らく前者であろうが)俺に質問をしてくる。俺は今日持っているCADを差し出す。
「これですけど…」
すると、前回見てはいる七草先輩たちがCADオタクである中条先輩の解説があった方がいいのか、中条先輩の持つ俺のCADに目線を送っている。鈴原先輩は作業中のため、顔を向けることはできないようだが聞き耳を立てているようだ。
「なにこれ?どこにも社名が書いていないけれど?」
「見た目から見てもマクシミリアンやローゼン、シルバーモデルではないようだが?」
七草先輩と渡辺先輩が首をかしげる。だが中条先輩だけはこのCADの正体に気付いたのか、顔を驚愕一色に染める。
「これって…、もしかしてアスガルズモデルですか?」
「えっ!?」
中条先輩の言葉に七草先輩と鈴原先輩が驚き、渡辺先輩は何が何だかわからないといった表情をしている。まあ普通に見てもわかるものじゃないのも確かだが。
「それって、ユニラ・ケテルのよね?」
「そ、そうです!まさかこんな代物が見られるなんて…」
「お、おい。いったい誰なんだ。そのユニラ・ケテルっていうのは?」
「知らないの?摩利。」
「名前自体はどこかで聞いたことがあるような気がするが…、そんなに有名な技術者なのか?」
七草先輩が少し呆れたようにつぶやく。中条先輩も普段見せないような表情をしている。
「あーちゃん、説明してあげて。」
七草先輩が説明するように促す。
「はい!ユニラ・ケテルというのは起動式を二十個まで格納できる特化型CADや他系統の魔法の同時発動を一つのCADで出来るようにした汎用型CADなどを開発した天才技術者なんです!彼は汎用型、特化型CAD両方の開発にも取り組んでおり、その最高傑作がユグドラ・シリーズなんです。ユグドラ・シリーズはハード、ソフト、どちらも世界最高峰の技術で魔法師であればだれもが一度は使ってみたいと思う傑作品となっているんです。ですが、性能があまりに高すぎ、調整ができる魔工師が本人以外にいなかったんです。それを改善するためにデチューンしたのが、このアスガルズ・シリーズなんです。ですが、ユグドラ・シリーズは調整さえできれば、シルバー・モデルすら比較にならないと言われており、その下位互換であるアスガルズ・シリーズも高い性能を保っているCADとして、市場に出回れば、時折シルバー・シリーズをも上回る高値で取引されることがあるんです!ですが市場に出回る数が非常に少なく…、ユグドラ・シリーズは汎用型、特化型含めて世界に二十台もないと言われているんです。アスガルズ・シリーズも言わずもがなで…。でも知名度はトーラス・シルバーには劣りますが、才能は並ぶほどの人物なんです!ああ、憧れの、ユニラ様…」
「そ、それはすごいな。中条が興奮する理由もわかる気がする。」
渡辺先輩が驚く。それを他所によほど見れたことがうれしいのか、中条先輩が俺のCADに達也のCADにすらしなかった頬ずりをし始める。
「でも何でこれを錬君が?アスガルズ・シリーズは出回る量がユグドラ・シリーズより多いとは入手困難なものですよ?」
「まあ、ユニラ・ケテルとは顔見知りなので。」
「えっ、本当ですか!?」
中条先輩の顔が喜色満面になる。一体俺に何を見出したのだろうか。
「ユニラ・ケテルの本業は使用者に合わせたオートクチュール物のCADを作ること、と言っていましたから。これがどこにも所属していない強みとも言っていましたよ。」
「でも連絡先ってほとんど誰も知らないわよね…。公開すれば引く手あまたでしょうに…」
「それが嫌だと言っていましたよ。そもそもCADを作っているのは単なる趣味でそこまで忙しくなるのはごめんだと言っていました。」
その場の全員が驚く。世界が渇望する最高性能のCAD製作者がCADを作るのは単なる趣味であると言い放っているのだ。これが公になれば世界中のCADメーカーを敵に回すことになるだろう。
「まあ、彼自身が暇人なので、少し頼めばCADはいくらでも作ってもらえますけどね。」
「それは…ある意味すごいわね」
七草先輩が感嘆と呆れが混じった声を上げる。渡辺先輩はいまだに絶句している。
「じゃあ、お願いしてもらったりはできるんですか?」
「一応できますよ。彼の気分次第なのでいつ出来上がるかはわかりませんが…」
「えっ、じゃあお願いしてもいいですか?」
「構いません。ただでというわけにはいかないでしょうけど。仮にも彼は商売人ですので。」
「もちろんです。天下のユニラ様のCADのためだったら十万でも百万でも出します!」
「そこまではさすがに取らないと思いますよ。」
その発言にはさすがの俺も苦笑してしまう。ユニラ・ケテルはそこまで守銭奴ではないと思う。
「ところであーちゃん。CADについて話すのは良いけど課題は良いの?」
中条先輩に無慈悲に絶望が突き付けられた。絶叫を上げ、七草先輩に助けを求める。加重系魔法の技術的三大難問、飛行魔法についての様々な見解、達也の意見が話された。そして、レポートが完成しないまま、昼休み終了の鐘が鳴り響いた。
その日の放課後、九校戦準備会合のために俺は部活連本部に足を運んでいた。その場には生徒会の会長である七草先輩や渡辺先輩、十文字会頭、その他にはほのか、雫、エイミィといった顔見知りやその他諸々、そして今回の問題である達也がいた。(本当にちなみにだが、エイミィとはあの後も何度か一緒に食事をとるなど交流がある。エイミィ曰く見た目に似合わず親切だから話しやすいとのこと)
「それでは、九校戦メンバー選定会議を開始します。」
何故達也がいるのかという声はすぐに上がったが、達也がメンバー入りすることに肯定的な声も多くあり、議論は平行線をたどっていた。
「要するに、司波の技能がどの程度かわからない点が問題となっていると理解したが、もしそうであるならば、実際に確かめてみるのが一番だろう。」
十文字会頭の、重々しい、かつ文句の言いようのない解決策に皆が一様に口を噤む。そして具体的にはどうするのか問われたところ、実際に調整をさせてみるという、また単純明快な答えが返ってくる。達也が調整をする相手を誰にするかという議論になり、十文字会頭、七草会長が立候補したが、最終的に剣術部、桐原先輩がその実験台になることに決まった。
その後実際に達也が桐原先輩に対してCADの調整を行った。達也は完全マニュアル調整、なおかつ多少調整ができる程度の人間には絶対にできないレベルの手さばきで、調整を終わらせた。その腕の良さが全く理解できないためか、はたまた単にどうしても達也がメンバー入りすることが認めたくないのか、それでも否定的な意見が出た。しかし以前否定的な考えを持っていた服部先輩が達也のチーム入りを支持し、十文字会頭もそれに同意したため、誰も否定的な意見を言えなくなり、達也のチーム入りが決まった。
達也のチーム入りが決まり、訪れた週末。俺はある人物に対して電話をしていた。名前は九島光宣。閣下の孫であり、俺の友人、俺のことを知る数少ない人物となっている。
「お久しぶりです、錬さん。」
「久しぶりだな。どうだ、体調は?」
「最近はかなり良くて。学校にも行けるほどです。」
「それはよかった。楽しいか?」
「授業は退屈ですが、それ以外はとても楽しいです。そういえば錬さんは九校戦に出るんですよね。」
「ああ、スピード・シューティングだ。」
このような他愛のない会話が光宣の楽しみなんだろう。誰もが見惚れるような笑顔で俺と会話を楽しんでいる。こうして少しの間光宣と会話を楽しんでいた。
「ではそろそろ僕は戻りますね。時間になったので。」
「ああ、じゃあな」
光宣が画面外に姿を消し、代わりに画面の外から現れた閣下が映り込む。
「で…、何の話ですか。」
俺は光宣と話していた時と声色を変えて問いかける。閣下の顔色もその時の顔をしているので何かしらあるのだろう。
「どうやら九校戦がらみで、国際犯罪シンジケートが怪しい動きをしているようだ。」
「それで?俺に何かしてほしいってことですか?」
「いいや。君の耳に入れておこうと思っただけさ。君の身体は誰にとっても貴重なものだ。奴らにとってもそれは同様。私は君のことを案じているんだ。」
「それはどうも。頭の片隅にでも入れておくことにしますよ。」
「話は移るが、九校戦の準備はできているかね?」
「ああ、新しいCADの開発もだいぶ終わりました。恐らく使い勝手自体は良いものになったと思います。」
「そうか。CADの性能も併せて九校戦を楽しみにしていよう。」
通話が切られ、部屋に静寂が訪れる。その時間が訪れるのを待っていたが如く、アストラが飲み物を持って近づいてくる。
「お疲れですか?」
「あの程度で疲れるような鍛え方をしていないのは知っているはずだが?」
「これは失敬。そろそろCADの組み立てに戻るべきでは?今回のは私が見る限りかなりいいものに仕上がると思いますが?」
「俺が良くても、周りが使えなかったら意味がないんだがな。それでも今回のは拡張性は高くなるだろうな。」
二人、もとい一人と一台で会話をしながら、隠し部屋に戻って行く。その時のアストラの口調は主の開発をともに喜ぶように、少しだけ高いものとなっていた。
土日をはさみ、月曜日。ひと悶着起こりそうになった発足式も終わり、選手たちはそれぞれの技術スタッフと顔合わせをしていた。
「皆さんの技術スタッフを担当する司波です。CADの調整の他、訓練メニュー作成や作戦立案をサポートします。」
「エンジニアは女の子が良かったなー」
「僕は仕事さえしてくれれば、誰でもいい。」
「ちょっとエイミィ!スバルも達也さんに失礼じゃない」
達也に向けられている感情はあまりいいものとは言えず、ほのかに言い宥められる。だが、他人事のように言っているが、俺も同様だった。まあ、達也とは視線に内包された意味が違っていた。
「そういえば、何で錬君がいるんですか。」
エイミィが全員が俺含めて気になっていたことを質問する。なぜ女子の中に男子が一人だけ混ざっているのか。気まずいという感情はないが、(六人中四人が知り合いのため)俺以外が女性のため、違和感はある。
「それは十文字会頭の指示です。」
なるほど。その一言でなんとなく事情を悟った。恐らくは会頭自身の指示ではなく、渡辺先輩の入れ知恵だ。自分で言うのは何だが、自分でも身勝手、というか自由奔放なところがあるとは思っている(決して直す気などこれっぽっちもないが)。それをされると、技術スタッフに余計な負担がかかるので、俺の手綱を握れる達也のもとに置いた、といったところだろう。それに九校戦に意欲的でないということがどこかで漏れたのだろう。それで森崎を筆頭に反感を買い、向こうに入れられない。付け加えるとすればこんなところだろうか。
「なんでなの?錬君」
「さあ?」
前に座っていたエイミィが声をかけてくる。察しがついているが別に真面目に答える必要もないので適当にあしらわせてもらう。
「おや?エイミィと園達君はずいぶん親しいようだが知り合いなのかい?」
「ちょっといろいろあってな。あと俺のことは錬でいい。」
「そうか、僕は里見スバルだ。よろしく頼むよ。」
いちいちオーバーな彼女と軽く挨拶をしたところで達也からこれからの説明が軽くなされる。主に女性陣に対して。俺にないのかと形式的に聞くと、お前は自己管理できるだろうから勝手にやれ、というニュアンスの内容が返ってきた。違いないと思いながら俺は達也の解散の一言で教室を後にした。ちなみにだが里見スバルはBS魔法『認識阻害』を持っているため人の記憶に残るようにこの口調にしているのだとか。やはりBS魔法というものは便利ではあるがじゃじゃ馬が多いのだと改めて思った。
いかがでしたでしょうか。
これから先、この作品はさらに投稿頻度が少なくなると思います。でも一か月に一本は投稿できるように努力していくので、気長にお待ちください。
次回までお楽しみに。あと評価ご感想お待ちしています。