魔法科高校の劣等生 ~世界をひっくり返す錬金術師~   作:カイナベル

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 今年最後の投稿になります。ストックも尽きたので来年の投稿は少し遅れるでしょうが、来年もこの小説をどうぞよろしくお願いします。

それではどうぞお楽しみください。あと評価ご感想お待ちしています。


九校戦編 第四話 

 

 九校戦初日。各校の校歌を歌うだけの開会式を終え、初日の競技が始まる。今頃、会場は選手の活躍に歓声を上げているころだろう。だが俺は競技を観戦することなく、とある所に向かっていた。察しのいい人は気づいているだろうが、俺は今、閣下が待っているVIPルームへと向かっている。昨日、呼び出しを食らい、それを実現するために向かっているのだ。こんなに朝早くじゃなくてもよくないかとも思うだろうが、今日は睡眠の日の周期がぴたりと合ったため、速いところ用を終わらせて眠りたいのだ。貴重な日を無駄にできるほど俺の身体は丈夫にできてはいないのだ。

閣下のいるVIPルームに向かうためにホテルのフロントに名前を告げて、VIPルームに入るために防犯上のICカードを発行、指紋登録をする。これに関しては例外なく全員が行うことなので、気にも留めない。ここまでの行動がやけに迅速なのはすでに閣下が手をまわしていたからだろう。早く帰りたいと思いながら、エレベーターに乗り込み、VIPルームのある最上階に向かう。最上階へ着き、広い廊下を歩いて、閣下の指定された部屋へと向かう。部屋の前に着き、ノックをしようとすると、室内から閣下と誰かが話している声が聞こえた。少しだけ聞き耳を立てると、親しい間柄であるのがわかる。どうやら身内のようだ。このまま入ればお邪魔になるかもしれないとも思ったが、その考えはすぐになかったことにした。ほぼ眠気がピークに達している俺はそんな配慮ができるほど人ができていないのだ。改めて姿勢を正して扉をノックすると、閣下の入ることを了承した声が聞こえる。形式的に挨拶をしながら、部屋の中に入る。すると、そこにいたのはスーツ姿の美人だった。

 

「お久しぶりです。閣下。早速で申し訳ないのですか、そちらの方は?」

 

閣下の前に座っている女性を刺しながら、問いかける。

 

「久しぶりだね。彼女は私の孫娘だ」

 

すると閣下が質問に答える。すると、女性の方から自己紹介が成される。

 

「この子がおじいさまの言っていた…。初めまして。藤林響子といいます」

 

「初めまして、園達 錬です」

 

 軽く頭を下げながら挨拶をする。それと同時に少しの間、といっても数秒間程度であるが、目をつぶる。

 

「それで閣下、今回の用は何ですか?第三者がいる時点で大した用ではないんでしょうが」

 

「よくわかっているね。別に深い意味はない。君の顔を久しぶりに見たかっただけだ」

 

「たかが三か月なのでそこまで時間が経っているという訳ではないと思いますが?」

 

「気持ちの問題だ。君は基本的に光宣以外には顔を見せないからね」

 

 藤林さんを置き去りにしながら、二人の間で会話を繰り広げる。藤林さんは会話にはいれないせいか、少し動揺し、おどおどしていた。

 

「それで、もう特にないのでしたら、もう帰りたいのですが?今日は睡眠日なので飯を食って早く寝たいんですが」

 

「朝食はこれからかい。こちらで用意させようかね」

 

「遠慮させていただきます。ホテルの小綺麗な食事はどうも苦手なので下のキッチンカーで買って、済ませます」

 

「私にはケバブをお願いするよ。響子は何かいるかい」

 

「えっ、い、いえ、私はもう朝食を済ませましたから…」

 

「そうか、それでは錬君。頼んだよ」

 

 そのまま送り出す言葉を背に受けながら、無言で部屋を出ていく。やれやれまたここに戻ってくるのか。警備の目が厳しいから(主に精神的に)あまりここには来たくないんだが。

 

 

 

 

 

 

 

「おじいさま。随分と彼と仲がいいんですね」

 

「まあ、ぼちぼちといったところか。私より光宣の方が仲がいいがね」

 

少し誇ったような顔をしながら答える。

 

「何故、彼にあそこまでの肩入れを?入試成績一位とはいえ、わざわざおじいさまがあそこまで庇護するほど人物ではないのでは?」

 

私から見た彼は一介の魔法科高校の学生にしか見えなかった。魔法力が深雪さん以上とはいえ、わざわざ世界最強ともいわれたあそこまでおじいさまが肩入れをするほどの人物には見えなかった

 

「ふむ、それは響子たちが彼のすごさに気付いていないからだろう。彼の力は、世界を揺るがしかねないもの、そのすべてを戦闘に回した場合、戦略級魔法師、大黒竜也君に匹敵するほどのものになる。まだ未熟ではあるがポテンシャルをすべて引き出すことができれば、全盛期の私など軽々と越えていくだろう」

 

 その言葉に藤林響子は目を見開く。戦略級魔法師、大黒竜也特尉は四年前の沖縄防衛戦で大活躍を果たした魔法師だ。彼がそれと同等レベルなどとはとてもじゃないが思えなかった。魔法の性質をとっても、とても戦闘向けとは思えない。それにトリック・スターと言われたおじいさまを軽々と越えていけるほどのポテンシャルがあの体に眠っているとは思えなかった。

 

「それに彼は私の夢を叶える、その礎になってくれるかもしれないのだ、…強制はしないが。それに彼は付き合い方次第で君たちにも大きな力となるだろう」

 

「それは…」

 

「閣下、買ってきましたよ。入ってよろしいですか」

 

「ああ、入り給え。続きは食べながらにしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、錬君。あなたの魔法について少し聞かせてほしいのだけど…」

 

 俺はハンバーガーを、閣下はケバブを、藤林さんは俺が買ってきたデザート用のババロアに舌鼓を打ちながら、会話に花を咲かせていた。

 

「あまり深くは話せませんが…、いいですよ。俺の魔法は『錬成』。錬成は物体を一度電子、陽子、中性子レベルまで分解して、違う物質等に組み替えて再構築する魔法です。他にも柔らかさや形だけを変えるということもできるんですが…長くなるのでやめましょう。話を戻すと、一度完全に原子までバラバラにしているので有機物から無機物を作り出すこともできます。逆はできませんが」

 

 テーブルの上に会ったティッシュ箱を手に取り、すべて入っていたプラスチックケースから取り出す。それらを握りこんだ状態のまま、魔法を発動する。すると、手の中に納まりきっていなかったティッシュがだんだんと小さくなりながら手の中に納まっていく。完全に納まり切り三十秒ほど経ち、重ねていた手を開くと手の中に純金が入っていた。藤林さんに見せるために純金を渡すと、その完成度に驚いていた。

 

「…おじいさまがこの子をかわいがる理由が分かった気がするわ…」

 

 可愛がる、という言葉は少し語弊がある。俺と閣下は対等でなくてはならない。どちらかが上、どちらかが下という関係になってはならないのだ。現実には、俺は閣下に感謝しているし、閣下は俺に何かを強制するつもりはなく、今の関係をしいて言うなら、両者ともに友人のような関係を望み、それを実行している。

 

「…もう一ついいかしら?なんで初対面の私にそこまでしゃべろうと思うの?怪しいとは思わないのかしら?」

 

「国防軍、なおかつ独立魔装大隊の方ですから、俺の不利益になるようなことにはならないと思ったので。あと閣下のお孫さんというのが一番強いですね。」

 

この言葉言った瞬間、藤林さんの顔が驚愕に染まる。

 

「何故それを知っているの!」

 

「これが俺の異能ですから。達也のと同じですよ。俺にわからないことなんてありません。それにこういっては何ですが、そちらの情報をすべて握っている以上、こちらもある程度は情報を渡さないと、不公平な気がするので」

 

 藤林さんが立ち上がりながら聞いてくるが、俺の異能について閣下から軽く説明がもたらされ、落ち着いたのか、もち上げていた腰を再び、ソファに下ろす。

 

「そんなものまで持っているのね…。…他に知っている人はいるの?」

 

「あなたの職場の同僚と、その妹が知っていますよ。他には光宣くらいです」

 

 ちょうど食事が終わり、話しながら入れていたお茶を三人ですする。特に長居する理由もないので、ささっとお茶を飲み、部屋から出ようとすると、藤林さんに声をかけられた。

 

「ちょっと待ってもらっていいかしら?プライベートナンバーを交換してもらいたいのだけど…。」

 

「はあ、別に構いませんが、いったい何に使うのでしょうか?」

 

 少しだけ冷ややかにした目で藤林さんのことを見る。すると、俺の意を察したのか、慌てて弁明を始めた。

 

「怪しいことに使うつもりはないわ!ただ個人的に頼りたいときに頼らせてもらいたいと思ったから…。」

 

「それは構いませんが…、高いですよ?」

 

「構わないわ。足りない時には体で払わせてもらうから」

 

 いつの間にか藤林さんの目が人をおちょくっているときの七草先輩と同じような小悪魔の目になっていた。色気のレベルが全く違うが。しかし俺はその程度で揺るがない。

 

「そうですね。その時は散々こき使わせてもらいますよ」

 

「え、ええ。そうしてもらっても構わないわ…。何か間違ったかしらね…。もしかしてもう枯れてるとか…?」

 

 思っていた答えと違ったことに動揺したのか、たどたどしい答えが返ってくる。最後に何か小言でつぶやいていたが聞こえなかったのでなかったことにする。そのことを気にせずに端末を取り出してプライベートナンバーを交換する。交換を終え、そう考えると、この端末もだいぶにぎやかになってきた。以前は閣下くらいしか入っていなかったんだがな。そう感傷に浸りながら、部屋を退出する。最後に閣下は「今度は閉会式後のパーティで話そう」といっていた。今度は一体何の話をするのだろうか。そう考えながら、あくびをし、部屋へ向かって歩き始める。さっきまでは見せないようにしていたが、そろそろ眠気も限界だ。早く部屋に戻って寝たい。俺の出番は四日目なので三日目の朝までは寝れるかな、と思いながら部屋に戻っていると、途中で珍しいやつと遭遇した。

 

「ん?」

 

「あら?」

 

「確か……、一色愛梨だったか?」

 

 三校の一色愛梨が曲がり角から顔を出す。これから観戦にでも行くのだろうか。

 

「これはこれは。一校の一般の園達さんでしたか」

 

一般を強調する必要はないだろう。相変わらず嫌みったらしい奴だな。

 

「それでこれからどうするおつもりですか?」

 

顔に不敵な笑みを浮かべて話しかけてくる。

 

「これから部屋に戻って寝るつもりだが?」

 

「あら、やはり一般の方ですわね。それでは私はこのあたりで失礼させてもらいますわ。」

 

ロングヘアーを翻しながら、俺の前から消えていく。それにしても奴は一般を馬鹿にしなければ気が済まないのだろうか。数字付きに文句を言うつもりはないが。それに俺も会話に時間を使うくらいなら早く部屋に戻って休みたい。

 

一色と別れた後、足早に部屋に戻る。さすがに観戦に行く人が多い影響か、廊下を歩いている人が少ない。これなら気兼ねなく、と思い、小走りになり、部屋へと戻る。部屋の近くまで来た時、部屋の前に人影を確認した。いったい誰だと思いながら速度を落として、再び歩き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、錬君」

 

「どうしたんだ。雫」

 

部屋の前に立っていたのは雫。俺を見つけて駆け寄ってくる。

 

「開会式の後から姿が見えなくなったから」

 

「朝食をとっていたんだ。朝はちょっと時間が無くてな」

 

「そう。…これから会長のスピード・シューティングを見に行くんだけど…、一緒に行かない?」

 

 約十秒ほどためを作ってから、言葉を発する。

 

「誘ってもらったのはうれしいんだが、これから一日寝ようと思っていてな。悪いが、付き合えそうにない」

 

「そう…、残念」

 

 雫の顔が少し悲しそうな顔になる。なぜそんな顔をするのかはわからないが、一応何かしらのフォローを入れておこう。

 

「まあ、四日目には俺の出番だから、雫の競技は見に行くよ。もちろん、アイス・ピラーズ・ブレイクも」

 

「うん、わかった」

 

 悲しそうな顔が少し嬉しそうに変化する。前に思った印象としては無表情、という感じだったのだが、少し印象が変わった。こんなにころころと表情が変わるとは。

 

 雫と別れた後は部屋に入り、ベットに倒れこむ。その後は極めて迅速で十秒かからずに意識は深い底に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……ふむ、やはりこの二人の相性が一番いいか。)

 

(……今までこの二人の組み合わせ以外で何度か実験を行ってきましたが、すべて失敗ですからね。どちらも貴重ですが、この際そんなことは考えていられません)

 

(ふむ、そうか。ではどちらを残す?)

 

(それはもちろん……)

 

 

 

 

 

 

「……なんて夢で起きるんだ、俺は…」

 

 最低の目覚めだ。すっかり冴えきってしまった頭と寝ぼけ眼で枕元に置いてある時計を見ると、まだ二日目の夜だった。さして眠ることができていない。これはもう一度どこかで睡眠をとる必要があるな。まずは汗をかいているみたいだし、シャワーでも浴びよう。そう思い、浴室へと向かい、手早く済ませる。脱衣所から出て発散系統の魔法を発動。身体を乾かし、制服に着替える。俺の通信端末を確認すると、七草先輩やら渡辺先輩からメールが届いていた。内容に関してはあたりさわりのないことだったので省略する。その後、何をしようか迷ったので端末をいじって朝まで遊んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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