魔法科高校の劣等生 ~世界をひっくり返す錬金術師~   作:カイナベル

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投稿は最後だといったな。あれは嘘だ。

はい、というわけで頑張って書きました。そのため少し文がふらふらしています。

それではお楽しみください。





九校戦編 第五話 

 九校戦、二日目をすっ飛ばして三日目。今日はアイス・ピラーズ・ブレイクとバトルボードの本選の各決勝が行われる。そのため、顔出しに行った本部では渡辺先輩と達也がせわしなく動いていた。軽く挨拶をしたのち、雫たち観戦メンバーと合流した。二日姿を見なかったことを不思議に思ったものもいたらしいが、達也から説明を軽く聞いていたらしく、詳しくは言及してこなかった。合流した後はまずはアイス・ピラーズ・ブレイク女子決勝を見に行くことになった。女子の本選選手、千代田花音先輩が「地雷原」という地面を振動させる魔法を使用し、自分の氷もろとも相手の氷をすべて破壊し、見事優勝していた。

 

 千代田先輩の優勝を見届けた後は、バトル・ボード女子準決勝、渡辺先輩の試合を見に来た。かなり見やすい場所の場所取りができたと少しホッとしていたところ、もう少しでスタートの時間になり、走ってきた達也と合流した。合流した直後に達也と会話をする時間もなく、ブザーが鳴り響き、スタートが告げられた。渡辺先輩が先頭、その後ろに七校、少し遅れて三番手の三校。前の二人は去年の決勝カードらしく、三番手を置き去りにしながら、二人でつばぜり合いをしていた。戦闘の二人がコーナーに差し掛かり、これからはモニターからの観戦になると、観客がモニターに視線を向けたところで、その場の全員が異常に気付き、観客の一人が悲鳴を上げた。

 

「オーバースピード!?」

 

 本来減速しなければならない地点で七校がさらに速度を上げたのだ。さらに驚いたことに反応を見るに七校の選手はそれに対応出来ていないのだ。このままではフェンスに激突してしまう。フェンスに激突してしまえば大怪我は免れないだろう。そして最悪の場合…、と考えたところで渡辺先輩が動いた。魔法を駆使して180ターンをし、七高の選手を受けとめようと試みたのだ。このまま行けば受け止められる。そう気づいた観客がほっと息をついたその時、更なる事件が重ねて起こった。渡辺先輩の下の水面が不自然に沈んだのだ。その影響で渡辺先輩は、態勢を崩し、安全に受け止められたはずの七高の選手諸共、フェンスにつっこんていった。周りからは悲鳴が起こり、達也が皆を制止して渡辺先輩の元へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

「ねえ、七高の選手どうしちゃったのかな?」

 

隣に立っている雫が心配そうな声を上げる。バトル・ボードの事故により、優勝候補の一角の七高は失格となった。しかしその一方、同じく優勝候補の一角であった渡辺先輩も怪我で敗退となってしまった。そのため一高は得点源の一つ、いやふたつを失った。渡辺先輩はミラージ・バッドの本線メンバーでもあったため、このままでは、一校の優勝すら絶望的な状況に陥っていた。

 

「単なるミス、ではないよね…」

 

 本部待機をしている俺の隣にいる雫が勘のいいことを話し始める。今回のこの事件。確実に単なる事故ではないだろう。オーバースピード、水面陥没、いずれにしろ、何かしらの勢力による妨害であることには変わりないだろう。そのことに関して自分の考えを少しぼかしながら伝える。

 

「少なくとも技術的な面による事故ではないだろうな。もっと人為的な何かだ」

 

「…九校戦、中止になったりしないよね」

 

「それを決めるのは俺たちじゃないが、恐らく中止にはならないと思うぞ」

 

 この九校戦、いろいろなスポンサーの支援によって成り立っている。大会委員は中止にしたくてもスポンサーがそれを許さないだろう。そう雫に告げるが、その言葉を聞いている雫の身体は少し震えている。妨害が自分に向くのではないか、ということにおびえているのだろう。

 

「バトル・ボードはともかく、スピード・シューティングはおそらく妨害される心配ないと思うぞ?」

 

「なんで?」

 

「新人戦は本選より点数が低い。新人戦の妨害をする労力を本選の妨害に向けた方が点数を奪い取りやすい。それにスピード・シューティングは妨害をする意味が薄いからな」

 

 バトル・ボードはルール上禁止されているが、魔法が最悪の場合、選手に届き怪我をさせられることのできる競技だ。そのため今回のこのような事故が起こったといえる。しかし、スピード・シューティングは競争形式の競技ではあるが、その魔法が相手の魔法師に対して届くことはない。だから事故も起こりにくいといえる。だからおそらく妨害がなされることはないだろう。俺はそう考えている。

 

「…錬君って少し犯罪者の才能あるよね…」

 

 なぜそこなのか。確かに犯罪者の気質はあるだろうが、今そこに触れる時ではないだろう。そう思っていると、雫がクスリと笑った。

 

「でもなんか楽になった。ありがとう、錬君」

 

 まあ、雫の気晴らし程度にはなったようなので良しとしよう。このままだと俺の犯罪者気質の話が進みそうなので何とか話を変えるために明日の話題を出す。

 

「そういえば明日か。俺たちの競技は」

 

「うん。一緒に頑張ろう」

 

「まあ、恥かかない程度には頑張るか」

 

 明日に向けて二人で気を引き締めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 九校戦四日目。今日から一部例外はあるが、主に二、三年のが出場する本選ではなく、一年の出場する新人戦が始まる。今日の競技はスピード・シューティングとバトル・ボードの予選が行われる。一度選手に集合がかけられ、注意事項の説明が市原先輩からなされた。このごに及んで自分の首を絞めようというものはいないとは思うが、一応念のためなのだろう。説明がなされ、解散となった後、スピード・シューティングのトップバッターである雫は達也とともにCADのチェックをしていた。

 

「なにか違和感はないか?」

 

「ううん、大丈夫。何なら自分のよりも快適。」

 

 表情こそ乏しい雫だが、内心その完成度には驚いていた。雫のCADを調節しているのは国内でも五指に入る魔工師。かなり巧みに調整しており、一般的な魔法師であれば、その完成度に感嘆の意を示すであろう。しかし、達也はそれに勝るとも劣らない仕上がりに調整して見せた。それは雫の特徴、癖、弱点、合わせて的確に調整されていた。しかし、それは雫にとっては達也にすべてを見透かされているような気がして少し怖く感じた。 

 

「…達也さん、調整の仕方教えてくれない」

 

「…雫のことだから、雇うくらいは言いそうだと思っていたが」

 

「今は目標があるから」

 

 その目標が一体だれかは何も言わなかった。そして達也も聞かなかった。今は二人とも競技に集中するべきだと思ったからだ。

 

「よし、頑張ってこい」

 

「いってくる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「錬さん、お隣は空いていますか?」

 

「アラ、深雪。空いてるわよ。どーぞドーゾ」

 

「聞かれたのは俺のはずなんだが…」

 

 エリカが軽い口調で俺への質問を深雪に答える。理不尽さを感じながらも隣に座った深雪に一瞬目を向け、すぐに競技場の方に視線を戻す。すると、隣の深雪が俺に向かって口を開いた。

 

「珍しいですね、錬さん。あなたの事であれば、自分のCADを調整していると思いましたが」

 

「…雫と約束していたからな」

 

「律儀だね~。錬君のことだから反故にしそうだと思ってた」

 

 すぐ近くで聞き耳を立てていたエリカが俺の言葉に反応する。俺はそこまで外道にはならないぞ。

 

「そこまで俺はひどくはないぞ。ほら雫が出てきたぞ」

 

俺の言葉にその場の全員が反応し、口を閉ざす。ステージでCADを構える。静寂に包みこまれた会場に鳴り響くカウント。カウントのランプが全て点った瞬間、クレーが射出された。クレーが得点有効エリアに飛び込んだ瞬間、激しい音とともに砕けた。次はエリアの両端で、二つ同時に破砕された。

 

「うわっ。豪快」

 

その光景を見たエリカが感嘆の声を上げる。それに続いて美月、ほのかが声を上げる。

 

「もしかして有効エリア全域を魔法の作用領域に設定しているんですか?」

 

「そうですよ。雫は領域内に存在する固形物に疎密波を与える魔法で標的を砕いているんです。急過熱と急冷却を繰り返すと硬い岩でも脆くなって崩れてしまうのとおなじですね」

 

「より正確に、得点有効エリア内にいくつか震源を設定して、固形物に振動波を与える仮想的な波動を発生させているのよ。魔法で直接標的そのものを振動させるのではなく、標的に振動波を与える事象改変の領域を作り出しているの。震源から球形に広がった波動に標的が触れると、仮想的な振動波が標的内部で現実の振動波になって標的を崩壊させるという仕組みよ」

 

「ふうん」

 

 深雪からの追っかけ説明が入ったところで美月がうんうんと唸り、俺は感嘆の声を上げる。何とも使いやすそうな魔法だな。雫はその魔法を使ってクレーを破壊し、射出が終わったところ時点で

雫の点数はフルスコア。予選通過は目に見えたものとなっていた。

 

「そういえば午後はどうするんだ?時間的に光井の試合と錬の試合がかぶっちまうだろ?」

 

「そういえばレオに言っていなかったね。光井さんの試合には達也と深雪さんが見に行くんだ。僕たちはスピード・シューティングの観戦だよ」

 

「わざわざ俺の試合を見る必要はないと思うぞ」

 

 レオの質問に幹比古が答え、俺が自分の率直な気持ちを答える。すると、その言葉にほのかが反応する。

 

「私が提案したんです。私の試合は予選ですから」

 

「それに入試成績一位の人の戦いぶりも見てみたいじゃない!」

 

 そんなに見たいかね、とも思ったが、ほのかの気遣いに泥を塗るわけにはいかないのでその気持ちをありがたくもらっておくことにする。

 

「その代わりに私の試合は見に来てくださいね!」

 

「ああ、約束するよ」

 

 雫の競技後、雫と同じくスピード・シューティングに出場していたエイミィと雫が合流した。その後、何人かの選手が観戦した。そして時間は進み、スピード・シューティング予選B組。徐々に観客が増えていく。恐らく原因は三校の十七夜栞。前評判の高い選手らしい。CADを構え、開始を待っている。ライトがすべて点灯され競技が開始される。クレーが射出されるとともに、クレーが破壊される。が注目されたのはそこではなかった。一つ目のクレーの破壊された破片が次のクレーにあたり、破壊された。その一連の流れが次々に起こり、クレーがどんどんと破壊されていく。そして射出が終了し、たたき出した点数はフルスコア。雫と同じ点数だった。これは前評判が高いだけの実力だ。彼女特有の魔法、数学的連鎖(アリスマティック・チェイン)は普通であればかなり強力になると思う。雫と当たった時にはかなりの名勝負になるだろう。俺はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新人戦女子スピード・シューティング準決勝。四名で決勝への切符を争う戦いになる。その四名のうち、三人は雫を含めた一校選手、最後の一人が三校の十七夜選手だった。最初の試合は十七夜選手と雫の試合。かなりの熱戦になることは間違いないだろう。俺の近くにいる美月も興奮し、昂っている。すでに二名の選手はステージ上に立っており、観客は今か今かと開始を待ち望んでいる。静寂に包まれている会場に設置されているランプがとうとう点灯し、すべて点灯した瞬間、クレーの射出が開始され、観客から歓声巻き起こった。

 

 雫は予選から使っている達也開発の魔法、能動空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)と収束魔法の()()()()、十七夜選手は数学的連鎖(アリスマティック・チェイン)を巧みに使い、点数を伸ばしている。しかし、現在点数をリードしているのは十七夜選手。このままいけば雫の敗北、準決勝で敗退かと思われたが、そんなことを許す達也ではなかった。準々決勝から雫が使っているのは特化型に見せた汎用型。特化型では対応しきれるものではない。そのため、十七夜選手は見るからに疲労してきており、外れることが出始めている。今は何とかつないでいる状態だが、現在の十七夜選手はテニスコートの端から端を全力で走らされているような状態。限界が訪れるのも時間の問題だ。雫が点数を重ねているうちに、とうとう限界が来たのか連鎖がつながらなくなってきている。こうして試合終了時に表示されていたスコアは九十六対九十二。雫が勝利し、決勝進出を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局新人戦女子スピード・シューティングは一校女子の上位独占により幕を閉じた。午前の競技が終わり、今は午後。さて次は俺の番だ。背中越しに見ている観客を迎えながら、CADの調整をしていた。

 

「しかし、すごい速さね」

 

「達也君以外に完全マニュアル調整ができる人がいるとはね…」

 

 俺の調整を見ている五十里啓先輩、千代田花音先輩。厳密にいえば技術者は五十里先輩のみだが、今更一人二人増えたくらいで集中は途切れない。

 

「なんでそんな腕があるのに、エンジニアの方に行かなかったの?選手の方はなんかごねてたって渡辺先輩に聞いてるけど」

 

 調整を終え、CADを持ち上げて感触を確かめる。そしてもう少しで出番だというところで質問に答える。

 

「聞かれなかったからですよ」

 

 時間になり、ステージに向かう。天幕を越えステージに向かう時、最後に見たのは千代田先輩の唖然とした顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、錬が出てきたぜ」

 

 午後になり、レオたちは少し場所を変えたところで競技を観戦していた。深雪がほのかの観戦に行き、代わりに雫とエイミィが合流していた。男子の競技を何人か終え、やってきた連の登場にレオが声を上げる。

 

「ユニフォーム、似合っているわね」

 

「私もそう思う」

 

 エリカの声に雫が賛同する。魔法力の高さに顔は比例するとは言うが、錬はかなりのイケメンである。そして少し昔にはイケメンはなに着ても似合う。とも言われていた。そして錬はその言葉を体現するようにとてつもなく似合っていた。(死ねばいいのに)。CADを構え、会場が静寂に包まれる。無機質なブザーとともにランプがすべて点灯し、試合開始を告げる。

 

「うわ、シンプルね」

 

「よく使われる収束系統の魔法を使った戦い方ですね」

 

 錬が今使っているのは、収束系統の魔法を使いクレーとクレーをぶつけて破砕する、かなりオーソドックスな戦い方だった。シンプルゆえにミスも少なく、フルスコアで予選を突破した。そして雫は少しがっかりしていた。派手な魔法が見られなかったことに対して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スピード・シューティング男子準準決勝。レオたちはその場から動くことなく、楽勝で予選を突破した錬が出てくるのを待っていた。そしてそれはしれっとレオたちの前に座った、七草、渡辺、市原の三年生トリオの同様だった。

 

「おっ、ついに来たな」

 

 錬が出てくると同時に摩利が声を上げる。そして全員が注目する。

 

「前回は収束魔法を使ったシンプルなものだったからな。安全ではあるが正直面白みはなかったな」

 

「面白みをとるよりかは、勝つことを考えてくれる方が私としては喜ばしいです」

 

「二人とも静かにして。始まるわよ」

 

 摩利の話に鈴音が皮肉じみた口調で答える。がすぐに真由美の注意に口を噤んだ。準々決勝からは一対一の対戦形式。二人が並び立ち、開始を待っている。ランプが点灯し、すべて点灯して競技が開始される。錬が狙うのは赤。クレーが進むスピードは本選と同じ、ましてや相手からの妨害が入る準準決勝。新人戦では半分ほど取り逃すことも珍しくはないようだ。しかし錬はそんなことを意にも介さず、有効エリアに入った途端、クレーを粉々にした。

 

「…え?」

 

「会長の戦い方と同じ?」

 

 方々から声が上がる。錬が使っている魔法はドライアイスを使ってクレーを打ち抜く七草真由美を同じ戦法。錬が飛来するすべてのクレーを打ち抜き、フルスコアで勝利し、歓声が上がるかと思われたが、何も起こらず、訪れたのは不気味な静かさだった。そして準決勝でも同じ勝ち方を披露し、錬を疑う声は強くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が七草会長のCADとバイザーを使っているねえ…」

 

「あまり気にしなくてもいいと思うわよ。根拠もあいまいだし、そんなこと言えるのは錬君の魔法力を知らないからでしょうし。」

 

千代田先輩の慰めを聞きながら、CADのチェックをする。

 

「まあ、今はそんなことどうでもいいです。問題なのは…」

 

「決勝戦の相手、だね」

 

 少し外に出ていた五十里先輩からその言葉が告げられる。その言葉を聞いた後、モニターに視線を移す。今モニター越しに行われているのは、準決勝第二試合。森崎と吉祥寺真紅郎の試合だ。森崎がかなり押され、吉祥寺の勝利はもはやゆるぎないものとなっている。

 

「これはかなりのスピード勝負になりそうだね…」

 

「何か策はあるの?」

 

「彼が使っているのは大体不可視の弾丸(インビジブル・ブリット)ですからね。これを封殺することができればほぼ封殺出来たも同然でしょう。封じる手も一応ありますから、多分大丈夫でしょう」

 

根拠のない自説を述べながら、さっきまで調節していたCADの感触を確かめる。

 

「でもそれをやるにはこっちのCADを使わなければならないので決勝の登録はこちらでお願いします」

 

「ん?こっちのライフル型はともかく、この汎用型もかい?」

 

「ええ、お願いします」

 

 五十里先輩は俺の返答を聞くとCADを受け取り、また外へと出ていった。すると手持無沙汰になったのか千代田先輩が口を開く

 

「心配はしていないけど…、あのCADで勝てるの?」

 

 そういう顔は少し不安そうにも見える。その不安を吹き飛ばすように少し自信があるようにして答える。

 

「勝てますよ。きっと」

 

 




 いかがでしたでしょうか。正真正銘最後の投稿です。来年も頑張っていきたいと思いますので、これからも応援よろしくお願いします。

それではよいお年を。次回の投稿もお楽しみに。

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