魔法科高校の劣等生 ~世界をひっくり返す錬金術師~   作:カイナベル

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 お久しぶりです。あまり執筆の時間が取れず、投稿が遅くなりました。オリジナルの方が書きたかったのですが、リハビリ程度にこちらを書くことにしました。リハビリで書いたため、少し文体が安定していません。

それではお楽しみください。





九校戦編 第六話 

 

 新人戦男子スピードシューティング決勝戦。その会場は超満員であり、立ち見の観客もいるほどだ。さてこれほどまでに観客が集まっているのはおそらく一人の選手が注目されているからだろう。その答えは園達錬。十師族七草真由美と同じ勝ち方を二回続けてしているのだ。このことを、錬が高い魔法力を持っているからという前向きな考えを持っているものと、七草先輩のCADとバイザーを使っているからと、後ろ向きにとらえる者に二分されていた。そのため今回錬はいい意味でも悪い意味でも注目を浴びていた。さてその超満員の中、一校の制服を着た集団が錬が出てくるのを心待ちにしてい人物たちがいた。言うまでもなく達也たちの集団である。そこには女子の方で優勝を決めた雫や新人戦バトル・ボード本選出場を決めたほのかたちが座っていた。

 

「しかし随分と観客が多いな。完全に会場のキャパを越えているぞ」

 

「それほど錬君が注目を浴びているということでしょう。それがいい意味でか悪い意味でかは分かりませんが」

 

 摩利が口を開き、鈴音が答える。その後ろで錬の登場を心待ちにしている雫やレオは少しそわそわしている。

 

「そういえば、錬君はどのような魔法を使うのでしょうか?」

 

 美月が近くにいた達也の方を向きながら、問いかける。がしかしまったく知らない達也は問いに対して首を横に振ることで答える。すると、美月の問いに反応した真由美が代弁するように、参謀である鈴音に質問をする。すると、真由美たちからすれば意外な答えが返ってきた。

 

「それが、全く教えてくれなかったのです。CADに関しても魔法に関しても」

 

その言葉にその場のほとんどが反応する。あらかたが苦笑し、一人だけは頭を抱えている。

 

「あいつ、また勝手なことを…」

 

「錬君のことですから、何か作戦があるのでしょうが、その意見にはおおむね同意です。こちらの作戦が立てられませんから」

 

「あっ、錬君が出てきましたよ」

 

 二人の会話を切るようにほのかが声を上げる。それと同時に一旦会話が打ち切られ、視線が錬に集中する。すると、準決勝との違いに気づいたエリカが声を上げる。

 

「あれっ、準決勝までのCADとは形が違うわよ」

 

 エリカがCADを指さしながら、口を開く。確かに錬が持っているのは準決勝までで使っていた小銃形態のCADではなく、少し大きめの銃型のCAD。雫の使っていたCADとは違い、CAD部分だけなく全体が大きくなっている。その違いに気付いた幹比古が続いて声を上げる。

 

「ほんとだ。北山さんが使っていたセントールシリーズと同じ汎用型なのかな?でも錬の担当エンジニアは達也じゃないよね」

 

 何か知っているのか?という視線が達也に向けられ、達也に注目が集まるが、何も知らないといった顔で達也が首を横に振る。

 

「まあそれに関しては後で本人に聞けばいいじゃない。それよりも今は競技を見ましょう」

 

 真由美の一声で全員の視線が再び連に集中する。視線が集まるシューティングレンジでは二人が並び立ち、開始を今か今かと待っている。会場が静寂に包まれ、ランプが点灯していく。ランプがすべて点灯し、無機質なブザーが決勝戦開始を告げ、二人の指が跳ねるように引き金を引く。吉祥寺は自身の得意魔法、不可視の弾丸(インビジブル・ブリット)を、錬は仮想領域を展開する。吉祥寺真紅郎が三、四個程クレーを壊したところで得点有効エリアに異変が起こった。クレーが周囲と同化するように透明になっていくのだ。

 

「光学迷彩!?」

 

 錬が発動した魔法が分かった誰かが大きく声を上げる。錬が使っているのは光学迷彩を施す魔法。仮想領域内に入ったクレーを認識し、その物体に対して光学迷彩を施す魔法をかけるといったものだ。これにより、普通の人間はクレーが見えなくなる。見えていなければ発動できない不可視の弾丸(インビジブル・ブリット)封じとして錬が用意した魔法だ。この対策がよほど効いたらしく、錬の隣に立っている吉祥寺真紅郎はただうろたえている。錬はバイザーに対策をし、見えるようにしているため、その間錬はマルチ・キャストで発動したドライ・ブリザードと収束系魔法でクレーを打ち抜き続けていた。観客が錬の魔法に沸く中、一校軍団は錬のやっていることに感嘆の声を上げていた。

 

「随分と器用なことをするな、あいつは」

 

「あんなことまでできちゃうのね。ちょっとうらやましくなってきたわ」

 

「光学迷彩の仮想領域と収束系魔法の併用。北山さんと同じ汎用型であることは間違いないようですね。」

 

三年生三人組が声を上げて各々の思ったことを口に出す。

 

「でもこのままいったら、錬君普通に勝っちゃうよね。少し拍子抜けかも」

 

「このままいったらそうかもしれないが、何事にも油断は厳禁だ。何があるかわからないからな」

 

 エリカの言葉に達也が反応する。確かに油断をすると、足元をすくわれることがあるかもしれない。それに前例から言って、どんな()()があるかもわからない。そういう観点で見た時に達也の考え方は正しいだろう。しかし、それでも錬の勝利はほぼ確実なものだろうと、会場のほぼ全員が思った時、事件が起こった。

 

「あれ…、園達選手の魔法が消えてくぞ…」

 

 異変に気付いた観客が声を上げ、会場がどよめく。一校の幹部連中は錬に起きた異常にすぐに気付いた。錬はCADを見ながら、軽くたたいている(精密機械をたたいてはいけません)。どう見ても意図して消えたものではないのだろう。ただその中で行動を起こした者がいた。吉祥寺真紅郎は魔法が消えたのを見逃さず、すかさず自身の魔法を発動し、今まで壊せなかった分を取り返すかのようにクレーを打ち抜いていく。全員の視線が吉祥寺真紅郎に向く。八、九、十。どんどんクレーが破壊され、今まで圧倒的だった点数が縮まっていく。そしてもう少しで逆転だというところで試合がまた動いた。さっきまで破壊されるだけだったクレーが再び姿を消したのだ。一校の面々が錬に視線を向けると、CADを構えなおしている錬の姿が映った。再び視認できなくなったクレーに吉祥寺真紅郎はどうすることもできず、錬にリードされたまま、試合が終了し、七十六対三十八の、例年に比べてかなり点数の少ない試合内容で、錬が優勝し、異例といえる結果で新人戦男子スピード・シューティングの幕が下りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優勝おめでとうございます錬君!ところで…そのCADについておしえてもらってもいいですか!」

 

 競技が終了し、一校のテントに戻ると、真っ先に俺を出迎えてくれたのは中条先輩だった。どうやら俺のCADに興味津々のようだ。中条先輩に詰め寄られていると、遅れてやってきた七草先輩たちが入ってきた。

 

「錬君、何で一回魔法を切ったんですか?」

 

 市原先輩が俺に質問をしてくる。周囲を見渡してみると、ほぼ全員が気になるような顔をしている。

 

「消してはいませんよ。勝手に消えたんですよ」

 

あまり大したことではないかのような雰囲気を出しながら、答える。

 

「ということは妨害、ということですか」

 

「恐らくそうでしょうね。確定事項ではありませんが」

 

 すました顔で答えると、その場の全員が驚いた表情になる。恐らく妨害をなんてことなく言ったことに驚いているのだろう。

 

「だが、錬。一度妨害を受けたCADでどうやって魔法を発動したんだ?」

 

 後ろの方で話を聞いていた達也が質問してくる。その話題が出てきたことで少しの間鳴りを潜めていた中条先輩が再び息を吹き返す。

 

「ああ、そのことか。今中条先輩にも説明しようと思っていたんだが…」

 

 そういうと、七草先輩と渡辺先輩がまたかという視線を送る。しかし、中条先輩はその視線に全く気付いておらず、俺からの説明を餌を心待ちにする小鳥のように待っている。待たせすぎるのもよくないと思うので、説明を始める。

 

「標準補助と汎用型を一体化したデバイスのことに関しては知っていますよね?」

 

「そりゃ北山君が使っていたからな。あのあと少しは調べたよ」

 

 俺の質問に渡辺先輩が答える。他の皆も同様のようで首を軽く縦に振る。

 

「これはその技術を使ったものです。達也が用意したものとは少し違いますが」

 

「じゃあどこがちがうんですか?」

 

 俺の言葉に反応した中条先輩が質問をしてくる。それに答えるためにポケットから汎用型CADを取り出ながら話し始める。

 

「このCADは試合で使っていたCADです」

 

 そう告げると、見ていた達也たちが驚く。まあ、最初に使っていたCADと全く違うのだから当然だろうが。

 

「これがか?試合で使っていたのは 小銃形態のそっちのCADだろう?」

 

 俺が小脇に抱えて持っている銃型のデバイスを指さしながら、疑問の声を上げる。

 

「試合中に取り換えたんですよ」

 

「…すまない。言っていることの意味が分からないんだが」

 

それはその場の全員が同じのようでよくわからないといった顔をしている。

 

「これは照準機能を搭載したデバイスを、対応したCADのストラップとして利用し、CADと同期することでCADに後付けで照準機能を搭載するといったものです。だからこのCADは二つに分かれるんですよ」

 

 ほらといいながら、後ろについているスイッチを押すと、後ろが跳ね上がり、汎用型CADが現れる。その一連の動作に中条先輩はきらきらとしたオーラを放ち、他の面々は驚いていた。すると、疑問が浮かんだのか、七草先輩が質問をしてくる。

 

「ということはCADはユニラ製かしら?」

 

「一応そうですが、しっかりレギュレーションには合わせていますから」

 

「じゃあもう一つ。何でCADを二つ用意していたの?」

 

「一応念のためですよ。妨害があった以上どんな可能性でも一応準備しておくべきだと思ったからですよ」

 

七草先輩たちが唖然とした表情をする。

 

「でもよかったじゃない、優勝出来て。これで男子女子ともに新人戦スピード・シューティングは優勝よ」

 

 隣にいつの間にか立っていた雫と顔を見合わせてから、お辞儀をする。こうして新人戦一日目の競技が終了した。この結果に一校を率いている幹部たちは畏敬と安堵を覚えた。この生徒たちがいるのであれば、私たちがいなくなった後でも安泰だと。女子優勝者はやはりこの人はすごい、と。男子優勝者はああ、また目立ってしまった、と思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 九校戦五日目。新人戦二日目。今日の日程はアイス・ピラーズ・ブレイクの予選とクラウド・ボールだ。今日はどうしようかと考えながら、朝食をとっていると、前に座っていた雫が声をかけてくる。

 

「錬君。約束忘れていないよね?」

 

「もちろんだ」

 

 初日に約束した観戦しに行くという約束はもちろん忘れていない。だが、雫の試合を見に行くとしても席取りのために一時間早く入るにしてもそれ以外は競技もないので割と暇なのだ。その時間をどうしようかと朝食を口に運びながら、考える。とはいってもいちいちあっちに行ったり、こっちに行ったりするのは面倒なので、ずっとアイス・ピラーズブレイクの会場にいることにしよう。そう決めて朝食を終え、会場を後にする。

 

 

 

 女子アイス・ピラーズ・ブレイクの試合会場。錬は一人で試合観戦をしていた。その周りは前後左右二席ずつ開いており、この仕打ちにはさすがの錬も少し落ち込んでいた。少し落ち込みながらも雫の雄姿をこの目に収め、帰ろうと席を立ち上ろうとすると、横から聞き覚えの声がした。

 

「錬さん、隣よろしいですか」

 

ほのかが一校の生徒ではない女性を引き連れて立っていた。

 

「構わないぞ」

 

「それじゃあ、遠慮なく座らせてもらうぞ!」

 

 すると、答えた途端赤色の制服、三校の生徒が俺の隣に座ってくる。その女子が見覚えのある人物だったので確認をとる。

 

「確か…、四十九院沓子、だったか?」

 

「その通りじゃ。そういうおぬしは園達錬じゃな。」

 

「その通りだ。しかしどういう経緯で二人で観戦することになったんだ?」

 

 ほのかの方を向きながら、問いかけると、ほのかが苦笑いを浮かべながら、小声で話しかけてくる。

 

「実は押し切られてしまって…」

 

気の弱めのほのからしい答えだ。

 

「何じゃ?何の話をしてるんじゃ?」

 

「何でもない。ほら三校の選手の試合が始まるぞ」

 

 既にステージに立っている選手の方を向いて試合を見ることに集中する。出ている選手は三校、スピード・シューティングで雫と戦った十七夜 栞だ。彼女は共振破壊で相手選手の氷を次々と砕き、相手に何も抵抗させること無く勝利を収めていた。

 

「そういえば愛梨が何やらぼやいておったが、どうやら園達は初日に朝から寝ていたらしいのう」

 

否定をする気もないのでだんまりを決めていると、気を使ってくれたほのかが説明をしてくれた。

 

「そうじゃったのか。難儀な体質じゃのう」

 

「もう慣れっこだから気にしてはいないんだがな」

 

 その後の試合は深雪が圧倒的な実力を見せつけること以外は特になんてこともなく、深雪、雫、エイミィの三人は予選を軽々と通過し、五日目の日程がすべて終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホテルに戻り、夕食の時間。俺は達也とともに夕食をとりながら、談話に勤しんでいた。

 

「錬が使っていたあのCADはかなり使い勝手がよさそうだな」

 

「まあそうだな。CADに接続する外側のデバイスを変えたら、いろいろな状況に対応できるからな。そういう点で言えば達也の作った武装一体型デバイスと同じだな」

 

「使いやすさで言えばそうかもしれないが、汎用性ではこちらのほうが圧倒的に劣っているだろう。さすがはユニラ・ケテルといったところだな」

 

「それを俺に言われても困るんだが…まあその言葉は本人に伝えておく」

 

 話を別の話題に切り替えて、続けようとしたところで横やりが入ってくる。

 

「おーい、司波君。みんながお礼を言いたいって」

 

 スバルが女子の面々を引き連れて、達也のもとに向かってくる。俺がいては達也に近づきづらいだろうと判断したため、いったん達也と離れる。すると、雫が俺の隣に近づいてくる。

 

「錬君。応援来てくれた?」

 

「ああ、いったよ。証人はほのかだ。一緒に観戦していたからな」

 

そう伝えると、雫が少し不機嫌そうな顔になる。

 

「どうしたんだ?」

 

「…何でもない」

 

 雫が顔をそらして、ほのかや深雪たちの方へ行ってしまう。一人になってしまったのでもう部屋に戻ることにし、ホールから出て自室へと歩き出す。部屋まであと少しといったところで変わった人物と会った。

 

「あら、あなたは…」

 

 一色愛梨だ。この大会で二度目の再会だ。次は何を言われるのかと思い、身構えていると、意外な言葉が発せられた。

 

「あなたにお詫び申し上げます。先日の侮蔑をするような発言に関して。一般であるからと実力を見誤り、蔑むようなことを言ってしまい申し訳ありませんでした」

 

俺の前に立ち、頭を下げてくる。

 

「少し意外だな。謝罪をしてくるとは思わなかった」

 

「私の認識が間違っていたことは事実。このことは司波深雪さんにも謝罪したいと考えています」

 

「そうか。好きにすればいい」

 

「それと睡眠に関しても謝罪します」

 

どこから聞いたかは察しが付くが、一応聞いておくことにしよう。

 

「どこで知った?」

 

「沓子に聞きました。あなたの体質であるにもかかわらず、不躾なことを言ってしまい申し訳ありません」

 

「謝罪は結構だ。別に気にしていない」

 

「いいえ、謝罪させていただきます。そうさせてもらわないと私の気がすみません」

 

「それなら受け取っておくことにしよう」

 

軽く会話をしていると、一色を呼ぶように端末が鳴り響いた。

 

「こんな時間ですか。それでは失礼いたします」

 

 踵を返して歩いて行ってしまう。俺も部屋に戻り、窓の外を見る。雲一つない夜空を視界に入れ、端末の前に座る。これからは普通であれば寝るだけであるが、深まっていく夜も自分の時間。夜とともに集中力も深まっていった。

 

 

 

 




 いかがでしたでしょうか。FLTの完全思考型CADのようにデバイスからデバイスへの干渉もできるようなので今回のCADも無理がないとは思っています。

 ちなみに見た目はデカレンジャーのスワットモードのディーリボルバーがスリムになったものが私のイメージです。ですが、イメージは皆様方にお任せします。

それでは次回の投稿までお楽しみに。あと評価ご感想お待ちしております。



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