魔法科高校の劣等生 ~世界をひっくり返す錬金術師~   作:カイナベル

17 / 38


〈錬成と星々の本棚(アストロ・ライブラリ)の併用について〉

 錬成と星々の本棚は相性がよく、現代でも生成が難しい物質の生成を容易にする。また、本棚を使うことで、素材の性質をそのままに、新しい能力を付与することも可能。(魔法による干渉を受けない、自動的に大気中のサイオンを吸収するなど)。これは人体に対しても有効であるが、付与できる能力の限界がどこであるかなどは一切不明。

 本棚にはありとあらゆる知識が詰まっているため、実質的に作れないものなどほとんどない。錬はスクラップに無限の可能性を与えることができる。

なんか最近こっちが多い気がする。まあ、書きやすいしょうがないね。

それではお楽しみください。あと評価ご感想お待ちしています。

p.s 星々の本棚(アストロ・ライブラリ)の内容を少し変更しました(詳しくは九校戦編第一話へ)自分の中でのイメージがやっと固まりました。以前感想で仮面ライダーWのフィリップの能力がイメージといいましたが、能力自体はフィリップの能力が三校になっているので、見た目の変化はお許しください。星々と言っているのでこっちのイメージがしっくりきました。




九校戦編 第七話 

 

 九校戦六日目。新人戦三日目。行われる競技はアイス・ピラーズ・ブレイクとバトル・ボード。まさかの雫の競技とほのかの競技がかぶったのだ。雫の競技を申し訳ないが一試合だけに絞るにしても雫の実力であれば、決勝進出は確定的。ほのかの競技とそれでもかぶってしまう。この時ほど錬が日程を確認しなかったことで後悔した時はなかった。それでも約束はたがえるわけにはいかないので、どうにかして間に合わせようと心に決めたのだった。今日の日程を簡単に決めたところで、まずはほのかの競技、バトル・ボードの観戦だ。達也たちの二科生メンバー(周知のとおりだろうが侮蔑の意味ではない)と一緒にバトル・ボード会場に来ていた。いつものメンバー六人で固まり、席に座ってスタートの合図を待っていた。

 

「でもさー、それにしてもなかなか見ない光景よね。選手が全員サングラスかけてるなんて」

 

「ほのかさん対策のつもりなんだろうね。達也相手に同じ対策をするのは愚策のような気がするけど」

 

 エリカ、幹比古の順で言葉を発し、紡がれ終わったところで全員の視線が達也に集まる。しかし、その達也は悪いことはしていないぞ、と言わんばかりのあっけらかんとした表所を浮かべ、身をすくめている。そのあくどさにその場の全員が呆れかえる。すると、こんなことをしている間にそろそろスタートという時間になっていた。

 

(さて、どんな戦いをするのか…)

 

 ほのかの戦いに少しだけ錬は心をおどろせていた。ほのかの試合を見るのはこれが初めてのため、どんな戦いをするのか、興味があったのだ。

 

 スタートが切られたレース。今のほのかは二番手で最初のコーナーへと突入した。

 

「えっ?」

 

 誰かが驚きの声を上げる。戦闘にいた選手が大きく減速して中央を進むという中途半端なコース取りをしたことに対するものだろう。

 

「何だ、今のは?」

 

「…コースに影が落ちたような気がしたけど」

 

レオが、エリカが各々の思ったことを口に出す。

 

 この場で現在この現象のタネが分かっているものは発案者の達也を除いて錬と幹比古。その幹比古はほのかの使った魔法に感嘆し、達也とともに自分の世界に入り込んでいる。まだわかっていない連中を置き去りにするわけにはいかないので、仕方なさそうに錬が口を開いて説明を始める。

 

「達也の作戦は至ってシンプルだ。光波振動系で、水路に明暗を作る。色の濃いゴーグルの影響で水路の境目が分かりづらくなって、暗い面に入らなくなる。境目が分からない状態では内側は精神的に攻めづらいからな」

 

錬の説明にレオたち三人は声を上げてうなづく。

 

「でもよ、それじゃ光井も同じ状態なんじゃないのか?」

 

 新たな疑問が浮かんだらしいレオが声を上げる。ほのかの練習に関しては知らない錬はこの答えを達也に丸投げしようと、達也の方を向こうとすると、美月が話し始める。

 

「ほのかさんは放課後に達也さんと一緒に練習していたようですから、身体が覚えているんじゃないでしょうか」

 

 美月が話し終わるとともにほのかがゴールしたことに対する歓声が上がる。その順位はぶっちぎりの一位だった。

 

 

 

 午前の競技がすべて終わり、現在の一校のテントはお祭り騒ぎだった。ほのかが決勝進出したというのもあるだろうが、おおもとの理由は別にある。アイス・ピラーズ・ブレイクの決勝を深雪、雫、エイミィの三人が独占したのだ。これにより、アイス・ピラーズ・ブレイクの点数は総取り確定になり、七草先輩から大会委員から決勝リーグを行わず、同率優勝にしてはどうか、という提案が成されたことが告げられた。しかしそこに待ったをかけたものがいた。雫だ。深雪と戦いたいという明確な意思を纏った視線を七草先輩に向ける。すると、その雫と戦う提案を深雪が飲み、深雪と雫による決勝戦が行われることが決定した。

 

 

 

 

 深雪と雫の決勝戦が行われることが決定したところで、まずはバトルボード女子決勝、ほのか対四十九院沓子の戦いだ。錬は観客席につき、スタートを今か今かと待ちわびていた。四十九院沓子は古式魔法、水の精霊魔法の使い手であり、この競技に関しての最適性ともいえる魔法を使ってくる。その魔法をフル活用し、コース上に波を発生させ、他の選手を進ませないようにしていたのは圧巻の一言だった。その魔法をほのかがどのようにして攻略していくのか、そのことを考え、錬は少し心躍っていた。そんなことを考えていると、スタート直前になっていた。スタートを知らせるランプが青く点灯し、競技の開始を告げる。それと同時に二人は飛び出していく。

 

 ほのかが水面に対して鏡面化魔法を発動して事象改変を受け付けないようにし、序盤の攻防を制した。がしかし、おとなしく黙っているわけもなく四十九院沓子はほのかの鏡面化魔法の切れるあたりに、渦巻いた水面を設置している。このまま進めば、巻き込まれて、スピードダウンは間違いないだろうと錬が思った瞬間、ほのかが行動に移った。水面ぎりぎりを水平に跳躍し、波の影響を受けないように進んでいる。ここまでの高度な対決に観客たちは大きく歓声を上げている。だが、四十九院沓子も黙っていない。精霊魔法を設置するような動作をする。がほのかも設置されているところが分かっているのか、そこに対して的確に消波を叩きこんでいる。このままほのかがリードして一週目は終了かと思われたが、滝の頂上に着いたあたりからほのかの様子が少しおかしくなった。少し動揺したような動きを見せながら、消波を撃っている。

 

 しかし落ち着きを取り戻したほのかはそのまま進み、一周終了寸前のループに突入したところで出口で大きく陥没した渦が出現した。ほのかは何とか対処したが、その間に追いついてきていた四十九院沓子に追い抜かれてしまった。そして追い抜いた四十九院沓子は現代魔法のCADを使い、移動系魔法でほのかを突き放した。その間にも精霊魔法はさく裂し続け、ほのかと四十九院沓子の差はどんどん開いていっている。このまま四十九院沓子の優勝で決着かと誰もが思ったが、ここで誰もが予想しなかったことが起きた。ほのかが息を吹き返すように波に乗ってぐんぐんスピードを上げはじめたのだ。ボードを使ったアクロバットを披露しながら、スピードを上げ、どんどん四十九院沓子との距離を詰めている。しかし、四十九院沓子も黙ってみてはいない。大技投下といわんばかりの大波が巻き起こる。しかしほのかはその波にもめげず、確実に距離を詰める。ここで二人の差がほぼなくなり、壮絶なデッドヒートになる。しかし、前にいるのは四十九院沓子。このまま勝利かと思われたが、ほのかが四十九院沓子を抜き去った。コースを見てみると、イン側に影が落ちている。どうやらほのかはこの土壇場で影を濃くして境目を分かりにくくする魔法を発動し、インを大きくとったらしい。そしてそのままゴールイン。

 

 こうしてバトル・ボード女子新人戦はほのかの優勝で幕を下ろした。 

 

 

 さてこのままほのかに対して拍手を送り続けたくもあるが、錬の場合はそうもいかない。この後すぐに行われるアイス・ピラーズ・ブレイク決勝に向かわなければならない。錬は会場に向かって走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「…間に合ったか」

 

 達也が視線を向けた方向には息を切らした錬が立っていた。達也の隣に座っていた真由美が念のために取っていた席を指さしながら、手招きする。とっていた席は摩利の隣。そこに錬が座り、息を整えるように呼吸をする。  

 

「しかし、良く間に合ったな。どうやったんだ?」

 

「頑張って走って来た」

 

「でもそれでも間に合わないわよね。ここからバトル・ボードの会場って遠からずとも近からず、って距離だし」

 

「今はそんなことは良いだろう。試合が始まるぞ」

 

 無駄話が摩利の一喝により止められる。競技用のステージに立つ二人、深雪は髪を下ろし、相対する雫は今まで使っていたタスキを外し、袖を下ろしている。そして両者の目からは全力でぶつかり合うという意思が見て取れた。カウントが張り詰めた会場に鳴り響く。その明かりの最後のライトが輝いたとき、張り詰めた弦が切れ弾けるように、二人はCADを操作し始め、戦いが始まった。

 

 二人から発動される魔法。深雪からは氷炎地獄(インフェルノ)、雫からは共振破壊が互いの氷を壊そうと、両陣営の氷に牙をむいた。だが、それをさせまいと両者ともに対策の魔法を放つ。雫は情報強化で氷の温度改変を防ごうとしているが、物理的な熱伝導は防げず、少しずつではあるが、氷に水滴が付着し始めていた。雫もなんとか攻勢に出ようとするが、深雪の振動と運動を抑えるエリア魔法がそれを阻む。それを見た観客はこのまま雫の氷がじわじわとなぶられて終わりかと思った。がしかしここで雫が切り札ともいえる戦法に出た。雫が袖口に手を入れ、拳銃型のデバイスを取り出す。そしてそのCADで新たな起動式を展開し、魔法を発動する。

 

「フォノンメーザーっ!?」 

 

 真由美が驚いた声を上げる。それとほぼ同時に観客からも歓声が上がる。それが同時に二つのCADを操作したことに対するものか、はたまたA級魔法を発動させたものに対するものかは分からないものかはわからないが、それが雫の行動を褒め称える歓声であるのは間違いない。現に雫の放った熱線は今まで誰も手が届かなかった深雪の氷柱に傷をつけ、白い蒸気を上げさせた。雫の切った切り札は戦況を再び拮抗させたように見えた。

 

 しかし、深雪もその行為を黙ってみているほどお人よしではなく、深雪も今まで隠していた手札を切った。

 

「…ニブルヘイム…だと?」

 

 今度は摩利が驚きの声を上げる。深雪の展開した魔法は『ニブルヘイム』。領域内の物質を比熱、(フェーズ)に関わらず均質に冷却する高難易度冷却魔法。それによって発生した白霧が雫陣地に届き、氷柱を包み込み始めている。雫も情報強化を強くし、対処しようとするが、冷気である霧に対し、誘拐を妨げる情報強化は効果がない。そうこうしているうちに白霧が雫の陣地を通り過ぎ、消え去った。そして雫の氷柱の根元に水たまりを作った。この液体の正体は液体窒素。それに気づいたものが声を上げる前に深雪が氷炎地獄(インフェルノ)へと魔法を切り替える。その熱によって一気に気化した液体窒素によって爆発が起き、雫の氷柱は轟音を立て崩れ落ちた。観客の興奮冷め止まぬうちに試合終了が告げられ、深雪の勝利で幕が下りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 錬は達也たちと別れ、ホテルの廊下を歩いていた。向かっている先は雫の部屋。実際には雫とほのかの部屋であったが、雫のもとに向かっていることは確かであるため、今はそこは詮のないことだろう。向かっている理由としては正直に言うとわからないの一言に尽きるだろう。理由もなしに今から来てくれとだけ言われたのだ。なぜ呼ばれたのかについて頭をひねりながら歩き続けると、雫の部屋の前に着く。ノックをし部屋に入るとベットに座っている雫が目に映った。

 

「あ…、来てくれたんだ」

 

「呼ばれたからな。それにしても…残念だったな」

 

 月並みの言葉ではあるが、雫に慰めの言葉をかける。

 

「うん、ありがとう…。…ほのかはどうだった?」

 

「素晴らしい試合をしていたぞ。さすがといえる内容だった」

 

「そう…、私の試合は?」

 

「誰から見ても素晴らしい試合内容だった。中でも雫のCAD二台もちには驚かされたな」

 

「そう…」

 

 そういうと雫が立ち上がり、こちらに近づいてくる。錬はその様子を微動だにせずにじっと見ている。

 

「…ねえ、錬君。あっち向いてくれない?」

 

 雫に扉の方を向くように促される。その意図を読むことができずに困惑するが、言われたとおりにの向きを反転させる。すると、背中に何かが背中に密着してくる感覚があった。錬の目の前にはこの部屋唯一の扉。この部屋には現在二人しかいない。ということは背中に張り付いているのは誰かは容易に予想できる。

 

「……悔しかったか?」

 

「うん…」

 

 錬の背中に張り付いたまま雫が答える。その声は震えており、涙ながらに答えているのが想像できた。

 

「最初から勝てるとは思わなかった。でも、手も足も出なかった…。……悔しいよ」

 

「…俺には月並みなことしか言えないが…、今回、負けてよかったと思うぞ」

 

「……」

 

雫は何も言わない。俺は言葉を続ける。

 

「今回負けたからって、何を失ったわけじゃない。得たものの方が多いはずだ。それにこの先でも負け続けるって決まったわけじゃないんだ。いつか勝てるって思いながら自分を磨ければ、自分のためになるんじゃないか?魔法師は想像を現実に塗り固めるものだからな」

 

 錬は自分の考えを臆することなく伝えきる。月並みではあるし、下手かもしれないが、俺が錬にできる精いっぱいのかけてやれる言葉だった。

 

「……うん。そうだよね。まだこれからだもんね…」

 

すると雫に慰めが伝わったのか、ゆっくりと言葉を紡ぎ出す。少し制服を引っ張る力が強くなる。

 

「ありがとう、少し楽になった」

 

「そうか。だったらそろそろ離れてくれないか?」

 

「ごめん、もう少しだけ」

 

 そういうと、雫は錬の制服に顔をうずめる。錬はその行動を何も言わず受け入れた。そして部屋に沈黙が訪れた

 

 

 

 それから数分経ち、そろそろいいんじゃないか、と錬が思い始めたところに部屋に来客がきた。いや正確にはもとの部屋の主が返ってきたの方が正しいが。

 

「あの~、わたしお邪魔ですか?」

 

 開いた扉からほのかが苦い顔を見せながら顔をのぞかせている。すると、雫が跳ね飛ぶように錬の背中から離れる。雫の方を向くと、ほんのりと顔が赤くなっている。

 

「あー、ほのか、優勝おめでとう」

 

ほのかの優勝を祝う言葉は少しだけ上ずっている。

 

「ありがとう、雫は残念だったね」

 

そういいながらほのかは雫に近づき、手を取る。そして雫に提案をする。

 

「ねえ雫。お茶に行かない?少しお腹が空いちゃったの。錬さんも誘って。いかがですか?」

 

 ほのかは錬の方を向きながら、誘いをかける。雫も錬の方を向きその答えを心待ちにするような顔で錬の方を見る。

 

「誘ってもらってうれしいが、遠慮させてもらうよ」

 

「そう…」

 

「そう、ですか。わかりました。それじゃあ雫、いこう?」

 

 ほのかは雫の手を引きながら、部屋を出ようとする。その前に錬は部屋を出て、扉からほのかたちが出やすいように扉を抑える。雫たちは部屋から出てカフェへ向かって歩いていく。別れた錬は自室へ向かって歩いていく。自室に戻ってこのまま部屋で遊んでいようかとも思ったが、夜の分の飲み物等を買っておこうと思い、売店へと向かう。すると、その道中、またまたある人物と遭遇した。

 

「あら…?」

 

「あっ」

 

 またまた一色愛梨。一体どれだけこの人物と会うのだろうか?こんなにあっても話すことはないので今あっても割と困るのだが、話をしないわけにはいかず、どうにか絞り出しそうとする。すると、先にあちらが口を開いた。

 

「そういえば、言い忘れていました。スピード・シューティング優勝おめでとうございます」

 

 二日も前の事ではあるが、祝いの言葉をもらったので錬も返すために言葉を紡ぐ。一色も同じくクラウド・ボールの優勝者であるため、都合がいい。

 

「そっちこそクラウド・ボール優勝おめでとう」

 

 互いに優勝を祝う言葉をかけあったところで簡単に会話をする。

 

「そういえばこちらのブレーンが言っていましたよ。なぜ魔法を一度止めたのちにまた発動させたのか、その意図が分からない、と」

 

 あれは止めたのではなく、妨害のせいで勝手に止まったの方が正しい。が妨害を受けたことは隠すべきだと判断したのでそのことを包み隠してこれから話すことにする。

 

「あれはCADのせいだな」

 

「…?どういうことですか?」

 

 一色が首を傾げ、理解ができないといった顔をする。本来この反応が正しいのだろう。この反応をしなかった達也がおかしいんだろう。不思議そうな顔をしている一色に錬は使っていたCADの説明をする。あのCAD自体は別に秘密にするものでもないだろうし、話してしまっても構わないだろうと錬が判断したからだ。

 

「まあ、随分とすごいデバイスですね」

 

 一色が少し驚いた顔をする。しかし、表面上は普通を保っているが、言葉の端からも驚きが読み取れることから、結構驚いているのだろう。驚きが復活した一色が気になってことがあったのか、質問をしてくる。

 

「ということはCADを途中で変えたということは何か変えざるを得ない状況があったということですか」

 

錬は一色の鋭さに驚いていた。さすが師補二十八家の一員なだけある。が、妨害の事は伏せておいた方がいい。そこを隠しながら、答えを考える。

 

「実はCADの調整に失敗したところがあってな。不具合があって故障してしまったんだ」

 

「あら?CADの調整はご自分で?」

 

「まあな。志望は魔工師だからな」

 

「その魔法力でですか?」

 

「魔法力が高くて魔工師になっちゃいけないわけじゃないからな。それを言ったら、そっちのカーディナル・ジョージだって似たようなものだろう?」

 

「まあそうですね。しかしうらやましいですね。それほどの魔法力、全魔法師がのどから手が出るほど欲しいでしょうね」

 

「………まあそうだろうな」

 

「あらもうこんな時間。それでは私はこのあたりで失礼します」

 

「そうか。それじゃあな」

 

 錬は一色の隣を通り抜けながら、その場を後にする。そしてある程度進んだあたりで錬の口から言葉が漏れ出す。

 

「…好きで手に入れたんじゃないんだよ」

 

 誰にも聞こえないであろう小さなつぶやきは、ホテルの廊下に響くこともなく消え去った。その意味を知るものはこの場には一人しかいなかった。

 

 

 





  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。