魔法科高校の劣等生 ~世界をひっくり返す錬金術師~ 作:カイナベル
〈アークリアクター〉
皆様おなじみのあれ。すでにヴィブラニウム型。錬の家の全電力を賄っており、一家に一台あればこの世界のエネルギー問題は解決する。しかし、悪用されると、オ〇ディアのような人物が増えると考えた錬は、この技術を秘匿とし、自分だけで使うことを決意。後々たぶん活躍する。外側も出るかもしれない。
ちなみに作るに至った経緯は「面白そうだったから」。
今日は土曜日。魔法科高校は週休二日制ではないため、本日も平常通り作業中である。そのため、錬も学校に来ていた。しかし、錬は作業中の平河のそばにはおらず、別の場所にいた。錬がいるのは野外演習場。警護を行う生徒がここでトラブルに備えた訓練をしており、錬もその一人であった。錬は息を殺して、木の陰から吹き飛ばされていく上級生を伺い見ていた。上級生を吹き飛ばしている張本人は開けた空き地にその姿をさらしている。その雰囲気はとても高校生を思えないほど強いものである。十文字克人は得意魔法であるファランクスを駆使し、三十分で七名をリタイアさせていた。克人は奇襲に対応できるように警戒しながら、悠然と歩いている。
(どうすればいいのやら……)
錬の脳裏には勝てるビジョンというものがほとんど浮かんでいなかった。もちろん実践ですべてを使えば勝つことは容易いだろう。しかし、今は実践ではなく訓練、殺傷性の高い魔法を使うわけにはいかない。それを踏まえたうえで錬には単独で攻略する方法が思いついていなかった。克人の斜め後ろに身を潜め、追走しながら、様子を窺う。一片の隙もないその姿から放出されるプレッシャーは錬に冷や汗をかかせるものだった。
すると、状況が一気に動いた。克人の足元が突然陥没するとともに砂煙が克人を覆った。これがリタイアしていない幹比古の起こしたものだと理解した錬は克人が完全に覆われるとともに行動を開始した。CADを操作し、エア・ブリットを発動し、三方向に時間差で三発発動するように設置する。そして自身も砂煙の中に突入していく。しかし、克人もそれに気づかないほど馬鹿ではなく、錬の方にファランクスを設置する。しかし、それを察知した錬は足を止め、反転しながら、特化型を引き抜き、振動系統である閃光魔法を発動し、周囲をまばゆい閃光で包み込む。しかし、それすらもエア・ブリットとともに防いでしまう。
三連発のエア・ブリットと閃光魔法を防ぎ切った克人は今度は攻撃に転ずるため、ファランクスを攻撃型に変更して発動する。すると、錬の姿が一瞬にして消える。これが自己加速術式による高速移動だと判断した克人は、首を振り、周囲を見回す。すると、見まわしていた克人の背筋に冷たいものが走り、反射的に、展開していたファランクスを防御型に即座に変更し直し、頭上に展開する。
その判断は当たりだったようで、克人の頭上に雷光が鳴り響き、雷撃魔法、『雷童子』が襲い掛かる。魔法の発動されたであろう方向に克人が振り向くと幹比古が呪符を持ち、立っていた。克人は即座に反撃の判断をし、攻撃用ファランクスを展開する。そしてその一撃が幹比古を捕らえようとしたところで、克人の視界の端に人影が映る。視界をその方向に向けると錬が拳を形作り、克人の顔に狙いをつけていた。錬の拳は克人がファランクスを展開する前に克人の顔面に届こうとしていた。
「大丈夫かしら?」
手首にテーピングを巻く錬を心配そうに見つめる真由美。その近くには克人や摩利も立っている。
「しかし、吉田君との連携は即興とは思えないほどしっかりとしていたな。十文字も守りも崩されそうになっていたしな」
摩利が十文字の肩に手を置きながら、悪そうな笑みを浮かべながら話しかける。克人はその笑みから視線をそらしながら、息を吐きだす。錬の突き出した拳はとっさに発動した克人の硬化魔法に阻まれ、効果的なダメージを与えることができず、その後も克人の防御を崩そうとしたが克人の防御を貫くことができず、幹比古が戦闘不能になった時点で錬は逃げの一手に走り、戦闘から離脱した。
「それじゃあそろそろ平河先輩の警護に戻ります」
「お疲れ様」
錬は自らの手当てを終え、救護室から出ていく。救護室に残された三人のうち、真由美は残りの二人に視線を送る。
「それにしても錬君。魔法力だけじゃなくて戦闘能力まであそこまで高いとは思わなかったわ…」
「確かに驚いたな。つい本気で魔法を発動しそうになってしまった」
十師族の二人の会話に摩利は首を縦に振り、うんうんと唸る。すると、真由美はごくりとつばを飲み込み、本題に入る。
「彼、数字付きなんじゃないかしら…」
真由美は真剣な表情で二人に問いかける。すると、二人は少し迷ったような表情になる。
「その可能性は捨てきれないが…、そうともいえないぞ」
「でもそうじゃないと実力の説明ができないのよ。戦闘技術はどこかで訓練しているんじゃないかってくらい高いし」
「数字付きでなくても優秀な奴はいる。渡辺や服部、司波兄弟がそうだ」
摩利や克人の言葉に自分の考え過ぎであるだろうかと考える。確かに今年の一年は二科生にしろ一科生にしろ、優秀な人材がそろっていた。その中でも秀でていた錬を真由美がそう思ってしまうのも無理はなかったと言えた。
幾日かの時間が経ち、錬は平河の警護として国立魔法大学付属立川病院に来ていた。その目的の平河千秋のお見舞い、を小春がすることだ。
「妹さんはどの病室に入院しているんですか?」
「四階よ。ごめんね付き合ってもらっちゃって」
「護衛ですから。気が済むまでお付き合いさせてもらいます」
「ありがとう。午後からは論文コンペの準備があるから、それまでいるわ」
錬は首を縦に振り、応答する。病室の前に着いた小春はスライド式の扉を開け、病室の中に入る。
「お見舞いに来たわ。千秋」
「お姉ちゃんと…、成績一位の…」
「平河先輩の護衛です。悪しからず」
錬は短く言葉を伝えると、すぐに部屋の隅に行き、二人の会話の邪魔にならないようにする。小春は千秋の方に向き直り、会話を始める。
「具合はどう?」
「別に…、元からどこも悪くないし…」
「そう…、それでね千秋。まずは…ごめんなさい」
「お姉ちゃん?」
「私、姉なのにあなたのことが見えていなかったわ。あなたが努力しているのが見えていなかった。魔法工学の成績は錬君、司波君に続いて三位、しかも九十二点なんて高得点。こんな点数私にだって取れないわ」
「お姉ちゃん…」
千秋の目にうっすらと涙が浮かび始める。小春の言葉に心打たれたのかは本人にしかわからないが、小春の願いはかなり高い確率で叶えられようとしていた。
「だから…ごめんなさい」
「私も…ごめんなさい」
二人の謝罪が完了し、仲直りが完了する。中の良い姉妹に戻った二人の様子を見ていた錬は思うところがあり、その姿を見られなくなり、病室から出ることにした。病室の扉の前に立ち、ポケットからチョコレートを取り出し、口の中に放り込む。口の中のチョコを溶かしながら、周囲を見張っていると、横からとてつもないほどの殺気を感じ取り、そちらにゆっくりと振り向く。振り向いた方向には大柄でガタイのいい男が立っていた。しかし、その様相は明らかにお見舞いといった雰囲気ではなく、錬の警戒心が高まる。そして錬は本棚に入り、すぐさまこの男が人食い虎、呂だとわかり、CADの電源を入れ、すぐにも魔法を発動できるようサイオンを入れる。
「何のようでしょうか?」
呂は答えない。しかし、呂から発せられる殺気が高まる。その殺気はそれだけで人を圧殺できそうなほどだった。
「悪いがこっちも仕事だから、手を出させるわけにはいかない」
錬は特化型CADを腰から引き抜く。すると呂は錬の命を刈り取るために自己加速術式を使って接近する。錬は片手に握ったチョコレートを顔に投げつける。すると、呂は顔に物が飛んできたため、反射的に払ってしまう。錬はその隙を突き、自身も自己加速術式を使用し、呂の攻撃を躱す。
この一連の動きを見て、呂はこの少年が自分と同じタイプの人間であると察知し、気を引き締めなおすように自身の後ろに渡った錬の喉をえぐり取ろうと、手を鉤爪状にして襲い掛かる。錬はそれらを含めた連撃を紙一重でかわし続ける。
錬も特化型CADで空気弾を発動し、呂に攻撃を仕掛けるが、呂の魔法、鋼気功ガンシゴンによってことごとく防がれてしまっており、決め手がない状況であった。汎用型に強力な魔法はあるが、操作している時間はなく手詰まりの状態であった。
しかし、追い詰めている理由は他にもあった。錬は接近戦の腕も高い。客観的に見れば、一流といえるほどの実力はある。しかし、目の前で対峙している呂は世界で対人接近戦闘であれば十本の指に入るほどの実力者。行ってしまえば超一流である。一般の魔法師より実力が近いとはいえ、その実力は埋めがたいものがあり、徐々に錬の身体には傷ができ始めていた。
その連撃に錬の集中力が落ち始めてきたとき、病院内にけたたましいサイレンが鳴り響いた。その音に二人は一瞬行動止める。呂が音源を確かめようと視線を錬から外す。その瞬間、錬は汎用型CADを操作し、魔法を発動しようとする。すると、呂の目が錬の方に向き直り、口角が上がる。
その瞬間、呂の腕が錬の腹部に伸びる。その瞬間、錬は悟った。つられたのだと。だが錬のCADの操作は完了していたが、このままでは呂の方が速い。錬は魔法式を破棄し、汎用型で新たな魔法を発動する。そして硬化魔法を発動し、攻撃に備える。呂の攻撃があたり、錬は廊下の端まで吹き飛ばされる。正確には当たる瞬間、錬は後ろに跳びながら受けたのだが、距離ができたことには変わらない。
錬は体に伝わった痛みをこらえながら、汎用型CADを操作し、魔法を発動しようとする。その挙動をみた呂は即座に距離を詰めようと、走り出す。しかし、後方に不審な気配を感じた呂は反射的に回避行動をとる。その攻撃は病院の廊下にへこませるものだった。攻撃の正体は錬が時間差で放った空気弾。攻撃を回避しつつ設置していたものだ。
この技能を知らない呂は不意に後ろに襲ってきた攻撃に驚き、錬に向かって進めていた足を一瞬止めてしまう。錬はその間に操作を完了させる。発動させた魔法は加重系魔法、だが今回はなったものは摩利たちに放ったものとはわけが違った。食らった時にかかる重さは十G。普通の人間はとてもではないが動けなくなってしまう重さであった。現にさすがの呂も動きが止まってしまう。しかし、その重力の中でも呂は再び歩き始め、錬の命を刈り取ろうと突き進む。その執念に錬は敵ながら称賛を送りたくなってしまう。
しかし、呂が十倍重力のエリアから抜けてしまい、それどころではなくなってしまう。錬は錬成の魔法を待機させ、CADを操作し、錬に向かって猛然と突き進む呂を待ち構える。CADで発動させた加重系魔法は発動の兆候があったため、避けられ、呂は壁を伝ってさらに錬に迫る。しかし錬は壁に手をつき、錬成を発動させる。すると、壁がとたんに流動性を帯び、走っていた呂の足が壁に埋まってしまう。このあり得ない現象で呂は廊下に水平に近い形で止まってしまう。何とか足を引き抜くために力を込め、片足を引き抜くが、引き抜いた瞬間、壁が再び元の硬さを取り戻す。その間に錬は呂に迫っていた。呂も迎撃しようと手を振り下ろすが、よけられてしまう。
そして錬は錬成を帯びた手刀を呂の下を通り過ぎながら、左わき腹に振り下ろす。錬の手刀は錬成の分解効果によって、まるで豆腐を切るかのようにするりと入り、そして抜けた。呂のわき腹からは大量の血が流れており、大きく顔をゆがめていることから、痛みも相当のモノだろう。しかし背後に回った錬も油断することなく、手刀で切り裂こうと、呂は無理な体制ながら迎撃しようとお互いの方向を向く。すると、そこで二人の横から大きく声が上がる。
「人食い虎、呂剛虎!それに園達」
その声を聴いてこのままでは二対一になってしまうと判断した呂は無理やり足を壁から抜き放つ。そして両足がフリーになると同時に廊下から飛び出し、エントランスの方へ飛び降りていった。錬を巻き込みながら。巻き込まれた錬は四階の高さから地面に激突することを避けようと、CADを操作した。加重系統の魔法を発動しようとした。しかし魔法を発動させる必要はすぐになくなった。階段付近にいた千葉修次が錬の腕をつかんでいたからだ。錬は腕をつかまれながら、エントランスを見下ろす。そこにはもう呂はおらず、ただただあわただしいロビーがあるのみだった。
錬はぶら下げられた状態から千葉修次に引き上げてもらう。その時に肩に大きな痛みを感じるが今はそれを気にしている状態ではなかった。錬を引き上げた修次は驚きの表情をしながら、錬の安否を心配する。
「大丈夫かい?」
「大丈夫ではないですね。戦闘の最中で左手の人差し指を折りました。それに引っ張ってもらった時、肩が外れました。それに攻撃を受けた腹が…」
修次の後ろから摩利が、そして病室から出てきた小春が心配そうな表情で駆け寄る。
「大丈夫?」「大丈夫かい?」
「大丈夫ではありません」
簡潔に返答した錬は腕を引っ張り、肩をはめなおした。その行動を見た三人は唖然としている。
「それよりなんで渡辺先輩はいるんですか?」
「私は平河千秋の事情聴取だが…って今はそんな場合じゃない!あの暴対警報はお前が鳴らしたものか?」
「俺じゃありませんよ。誰かは知りませんが、俺はそれどころじゃありませんでしたから」
錬は懐からチョコレートを取り出し、口に放り込む。そんなのんきな錬を他所に摩利は隣に立っていた修次に尋ねる。
「しかし、あの男は何者だ?ただものではなさそうだが」
「奴の名は呂剛虎、大亜連合本国特殊工作部隊の魔法師だ」
「呂剛虎…、あれが…」
「それはそうとやはり大丈夫かい?腹部を強打して、指を折ってしまったんだろう?」
「腹部の方は骨もおれているわけではありませんし、指も固定しておけば問題ありません。人間には二百十五本の骨がありますから、一本くらい折れてもなんとも…」
「そういうわけにはいかないよ。万が一があっては困るのは君だけじゃない。幸いここは病院だ」
「渡辺さん。わたし午後は錬君に治療を受けてもらってもらいたいんですけど」
「本人もこう言っていることだし、甘えたらどうだ?仕事に関しては君が戻ってくるまでは私がつこう」
「…でしたら、このまま治療を受けさせてもらいます」
錬は腹部を抑え、ゆっくりと立ち上がると下の階におり始める。それを平河は肩を貸すようにして支える。その姿を見ていた摩利と修次は言葉を零す。
「摩利、彼は呂剛虎と戦闘を行って敵対した。くれぐれも一人にしてはしてはいけないよ。ましてや、単独戦闘など厳禁だ」
「任せてほしい。私としても優秀な人材を失いたくはないから」
「しかし、彼どんな実力しているんだい?学生魔法師があの程度で済むような相手じゃないんだけど」
「実際魔法のみの戦闘で私は負けているが、まさか体術もできるとは私も知らなかった。いったいどこでどんな訓練をしているのやら…」
真由美の発した錬が数字付きという言葉が摩利の中で信ぴょう性を増し始めていた。
錬が病院で治療を受けているその一方、錬に敗北を喫した呂剛虎は周の運転する黒塗り車の助手席にいた。
「それにしても驚きました。呂大人が手傷を、ましてや学生につけられるとは」
普通に聞けば侮蔑に聞こえるであろうこのセリフに呂は眉一つ動かさない。ましてや仕方ないと自分を納得させようとしていた。体術のレベル、動きの読み、魔法力、どれをとってもとても学生のものではなかった。そして最後に使った壁の性質を変化させた魔法。こればかりは見逃せないと呂は上司に報告する内容を頭にまとめ始めた。その隣で運転している周は錬のことを考えていた。
「あれは…人間ならざる力を感じましたね…私個人の野望としても是非お近づきになりたいものです」
口角を小さく釣り上げている青年は年相応の表情になっていた。
巣穴に帰還した呂はすぐに自身の上司に今回の顛末を報告した。手傷を負った呂に陳は愕然としたが、その責任を問うことはなかった。それ以上に優先度の高い問題に集中させるためであった。
「第一高校における我々の協力者である関本勲が任務に失敗し当局の手に落ちた。収容先は八王子特殊鑑別所だ。関本勲を処分せよ」
「是」
より困難度の上がった任務にも平然と了解し、陳のもとを立ち去る呂。その表情には錬から受けた傷などもはやないかのようだった。呂が立ち去り、デスクの前に座る陳は口角を上げながら、呂の報告を思い出していた。
「まさかこんなところに上から聞いていた
関本勲だけでなく錬までもが実質的な死刑宣告を受けることとなってしまった。本棚で調べ物をしていた錬は悪寒を感じ、かなり深く眠ってしまい、学校に遅刻してしまい、花音にこっぴどく叱られてしまうのだった。
横浜騒乱編もだいぶ進んできました。さて今日だけでこのあばれよう、いったい気を遣わずに魔法を放てる論文コンペ当日は一体どうなることやら…。
錬のあばれぶりをお楽しみに!