魔法科高校の劣等生 ~世界をひっくり返す錬金術師~   作:カイナベル

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 今回は錬が大暴れです。なんか無双ゲーみたいになった。あとゴールデンウィーク中にもう二本くらい投稿したいな…



〈補遺〉

 錬が今回装着しているCADは手の甲側にタッチパネル型の汎用型を装備。
 特化型は安定のために握りこんでいるグリップ部分に仕込まれたスイッチを握りこむことによって、魔法を発動、人差し指、中指、薬指、小指の組み合わせで最大九種類まで発動できます。
 改小通連は、親指部分についているスイッチを押し込んでいる間離れ、離すと戻る。またCADの側面に着いたスイッチにより、発射時に移動魔法を使うかの選択ができる。模擬刀の重さは五キロ。
 また、手のひら側は装甲を厚くしているため、攻撃の防御に使うことも可能。





横浜騒乱編 第六話

 

 光学迷彩の魔法を使い、真由美たちのもとを離れた錬は、端末を使い、アストラから情報を受け取っていた。受け取った警察のマップデータは、赤く染まり、付近にもたくさんの敵が潜伏していることが確認できた。

 

「アストラ、今どこにいる?」

 

「ただいま会場近くの裏路地にて待機しております」

 

「今横浜には陸軍が出張っている。ばれるとまずい。だからお前たちは帰投しながら、その道中の敵を殲滅しろ。車体を変更し続けることを忘れるなと言っておけ。それと逐次情報を渡してくれ」

 

「了解いたしました。ご武運を」

 

 アストラがそういうと端末の通信が切れる。錬は端末を制服の内ポケットにしまうと、近くに落ちていた傘を手に取り、転がっている自動車に柄の部分のみを当てる。そして錬成を自動車に向かって発動しながら、傘の柄の部分を一気に引き抜くように自動車から離す。すると傘の柄の部分に集まるようにして剣が形成される。その細身の剣は、鋭く鋼色に光っている。軽く一振りして感触を確かめた錬は、まずは近場からだ、と左腕のCADを操作すると、疾風の矢の如く的に向かって走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 敵を発見した錬は、即座に左手のCADにサイオンを注ぎながら、敵ゲリラに向かって剣を構える。その速度に敵ゲリラは一度動揺するが、すぐさま立て直し、錬に向かって銃を撃ち始める。錬はその速度のまま、ゲリラ兵の行動を振り切り、背後に回る。ゲリラ兵もすぐさま反転し、錬の姿を捉えようとするが、ゲリラ兵の眼は、錬の速さを捉えることは出来ず、まずは三人が錬の凶刃の餌食となった。

 

 仲間が切られたことに激しい怒りを覚えたゲリラ兵は錬をハチの巣にしようと銃を向けるが、銃を向けた瞬間、錬の姿がゲリラ兵の前から消え去った。ゲリラ兵が突然消えた錬を探している間、錬はゲリラ兵の頭上で剣を構え、自由落下を始めていた。。

 

 錬が使った魔法は疑似瞬間移動。物体の慣性を消し、その周りに空気の繭を作り、繭よりも一回り大きい真空のチューブを作り、その中を移動するという魔法だ。この魔法には移動先が察知されるという弱点があるものの、錬はこの魔法を発動する前に、乱流を発動させていたため、空気の流れは大荒れとなっている。そのためゲリラ兵は錬の移動先を察知することができなかった。

 

 自由落下を始めた錬はゲリラ兵の上に着地しながら、脳天を突き刺して絶命させる。消えたと思ったら、再び現れた錬に大きく動揺したゲリラ兵はもはや混乱して叫ぶことしかできない。錬はその間、近くにいたゲリラ兵を二人切り殺す。

 

 活動を再開し、銃口を向けようとしたゲリラ兵に対し、錬は左腕の小通連部分の移動魔法を発動し、模擬刀を二百キロ近い速さで打ち出す。ゲリラ兵はその威力に耐え切れずに脳漿を散らしながら絶命する。錬は左腕を横になぎ、打ち出した模擬刀で、近くにいたゲリラ兵二名の頭を殴打し、典型的な脳震盪の症状を作り出す。平衡感覚を失ったゲリラ兵は悠然と近づく錬に銃を向けることすらできない。錬はそのまま倒れたゲリラ兵を切り殺し、その場にいたゲリラ兵の殲滅を終えた。これにかかった時間は一分ほど。まあまあだと感じながら、錬は端末で再び敵の位置を確認し、そこに向かって走り始めた。

 

 ちなみにだが、錬がここまでやってくるのに使った魔法は自己加速術式ではない。使ったのは、気流を操作して、周囲に乱流を発生させ、その乱流で自身を押すことで高速移動を実現するものだ。インデックスにこの魔法はないため、仮にスピード・オブ・Fと名付けることにする。

 

 この魔法のメリットとしては高速移動とともに風が軽度の障壁になるという点だ。弾丸などの飛来物を風の力でいなすことができる。先ほどはこれによってゲリラ兵の弾丸を回避した。

 

 しかし、今はメリットよりもデメリットの方が多い。第一に体を鍛えていないものでなければまったく使うことができないのだ。まだ改良中であるため、明言は出来ないが、体にかかる負担は自己加速術式の比ではない。それだけでも安全マージンを多くとる現代では自己加速術式の利便性の上は取れない。そのため錬はこの魔法を公表するつもりはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 錬は再びゲリラ兵を見つけたが、一度足を止め、物陰に隠れることを決めた。ゲリラ兵に二機の自立戦車がついていたためだ。自立戦車は一機あたり八トンもの重量になり、今の錬の武装ではそれを倒すのはかなり心もとなかった。重火器の雨に身をさらしながら特攻するのは、スピード・オブ・Fの防御力があるにしても負担が大きかった。そのため、自身の安全を確保しながら、自立戦車を破壊するための策を考え始めた。

 

 策を考え付いた錬は左腕のCADを操作し、疑似瞬間移動の起動式を読み込む。そして、陰から自立戦車の様子を窺うと、疑似瞬間移動を()()()()に向かって発動した。自立戦車の一機に魔法式が広がり、その輝きに包まれる。疑似瞬間移動の効果によって、自立戦車の一機はもう一方の自立戦車の真上に向かって目にもとまらぬ速度で移動する。

 

 付近にいたゲリラ兵も、もう一方の自立戦車も、突然自立戦車が飛び上がったことに動揺を隠せずにいた。しかし、パイロットは優秀だったようで、現状にいち早く気付き、自立戦車をすぐさま回避行動に移させようとするが、時すでに遅し。

 

 ものすごい速度で自由落下を始めていた自立戦車は、もう一方が回避する前に、もう一方を挟み込みながら地面へと激突した。八トンの重みに耐えきれなかった自立戦車は潰れ、もう一方は上方からたたきつけられたことにより、脚部分が壊れ、行動不能になった。パイロットは衝撃で絶命していた。

 

 目の前で起こった現象にゲリラ兵が呆気に取られているうちに錬は特化型CADから魔法、エア・ブリットを放つ。放った総数は全部で十一発。ゲリラ兵の数と同じだった。ゲリラ兵はうろたえるだけでどうすることもできず、空気弾の直撃を受け、絶命した。

 

 錬は近くに敵がいないことを確認すると、自立戦車に向かって近づいていく。自立戦車のチェーンソー部分の根元に触れ、錬成を発動すると、触れている部分が水のように溶け落ち、消え、チェーンソーは重力に従って落ち始める。錬は落ちたチェーンソーを受け止めると左手のCADから模擬刀を取り外し、錬成を発動する。模擬刀とチェーンソーの根元を当てると、その二つを融合させた。そして、自身の使いやすい長さに調整し、そのまま手を離すと、CADに模擬刀が戻っていく。

 

 左右のウエイトバランスが変化したため、錬の動きは少しぎこちなさを覚えるが、錬にとってはそれも許容範囲内。感覚を慣らし、動きを確認すると、錬は再び横浜にはびこるゲリラ兵を掃討するためにスピード・オブ・Fを使って走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、敵側、大亜連合の侵攻部隊の総司令のもとに一本の連絡が届いていた。

 

「第三部隊より報告。ウロボロスを確認。現在単独でゲリラを殲滅しているようです。報告してきた第三部隊も既に連絡が途絶えております」

 

「そうか。全部隊に通達!シェルター、人質の確保を最優先に、ウロボロスを発見した際は、そいつの確保を最優先に行動せよ!多少は傷つけても構わん!」

 

 総司令より、侵攻部隊に対して告げられたのは錬が狙われるという指示。通信兵は何故ここまで一人の人物に上が執着するかが分かっていなかった。

 

「あの…なぜそこまで一人の人物に固執するのでしょうか?大量の人質を捉えた方が効率が良いように思えますが…」

 

「お前が知る必要はない!さっさと作業を続けろ!」

 

 突っぱねるようにして放たれた言葉に質問をした通信兵は自身の仕事に戻る。イスに深く座りなおした総司令の口元はほころんでおり、錬を捉えた後の、自身の今後を考えているのが一目瞭然であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 独立魔法大隊に合流して戦闘に参加していた達也は、新開発のムーバル・スーツを着込み、空を飛行していた。空に無人偵察機を発見した達也は、自由落下しながら雲散霧消を発動し、偵察機を消滅させ、再び飛行した。

 

 同僚である柳のもとに合流した達也は、目の前で横たわる兵士の治療にあたる。達也が魔法を放つと、負傷兵の身体から弾痕がなくなり、傷そのものがなかったかのようになる。治療を終えると達也は柳たちとともに掃討を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 逃げ遅れた市民のために、輸送ヘリを呼んだ真由美たち一校生徒組は、輸送用ヘリが安全を確保できるように二班に分かれ、周囲の警戒に当たっていた。警戒班は鈴音の予想した侵攻ルートの都合により、二班に分かれ、警戒に当たっていた。一つの班が深雪、レオ、エリカ、幹比古の一年生組、もう一方が、五十里、花音、桐原、壬生、千葉寿和、そして加勢にやってきた摩利で構成されていた。残りの真由美、鈴音、美月、ほのか、雫、小春は駅前広場にて、ヘリコプターの到着を待っていた。

 

 深雪たちのグループは幹比古の的確な援護、エリカとレオの突撃部隊、深雪の大火力範囲魔法により、大きく苦戦することなく、侵攻軍を撃退していた。摩利たちのグループは、花音の地雷原、桐原、寿和の剣劇、壬生の投剣術によるサポートによってこちらもさほど苦戦してはいなかった。

 

 がしかし、ここで幹比古が異変に気付く。自立戦車の動きが妙に人間臭いということに気付いたのだ。この戦車を動かしているのは、剪紙成兵術という古式の技術の一つである。紙を人の形に切り取り、雑霊を宿して、兵となす術。このことから敵が大亜連合であることが分かった幹比古は、あることを頼むために真由美へと連絡を入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 独立魔装大隊の面々と掃討を行っていた達也は、一団でこれからどうするかの相談をしていた。偽装艦を沈没させようという意見が上がるが、港湾への影響が大きいため却下。乗り込んで制圧という意見も上がったが、それを後回しにし、駅前広場に向かっている輸送用ヘリの脱出援護という方針に決まった。

 

 達也は勇気ある民間人がいたものだと感心しながら、上官の言葉の続きに耳を傾ける。

 

「なお、ヘリを呼んだ民間人の氏名は七草真由美、及び北山雫だ。両人から要請があった場合は、助力惜しまぬよう全員に徹底してくれ」

 

 聞き覚えがたっぷりある名前が耳から入ってきて、達也は思わずせき込みそうになった。

 

「ちなみにもう一つ補足だが、現在横浜市内で高校生と思われる少年が単独で侵攻軍を撃滅しているようだ。白い制服を着ていることから一校生徒と思われる。発見した場合、援護するように徹底してくれ」

 

 達也は誰が、いったい何をしているのかをはっきりと理解した瞬間、反射的にせき込んでしまう。

 

「どうした特尉。まさか風邪というわけでもあるまい」

 

「いえ、大丈夫です」

 

 全力で横浜の街を疾駆している友人の姿を思い出し、なぜそのようなことをしているのかが理解できた達也は、もし発見したら、全力で援護しようと心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、噂の渦中にいた錬は横浜の街を縦横無尽に疾駆していた。しかし、少しずつ、着実に錬の移動する速度は落ちてきていた。落ちてきたといってもその速度は微々たるものであり、単独で陸軍の兵士より多く討伐していることは称賛に値するだろう。しかし、移動が落ちた原因は他にある。ゲリラ兵が多く錬のもとにやってきては攻撃を仕掛けているのだ。錬はスピード・オブFや他物障壁を使いながら、必死に攻撃を仕掛けていたが、その数に流石に辟易し始めていた。

 

「鬱陶しい…」

 

 不満を零すようにぽつりとつぶやく。今まで不満一つ零さず、斬り続けていた錬が不満を零したことで、どれほどイライラしているかがわかるだろう(もっとも錬がやりたくてやっていることのためゲリラ兵を責めることはできないが) 

 

 範囲魔法で一掃しようかとCADに手を伸ばしたその時、錬に攻撃を仕掛けていた自立戦車が次々と消滅する。その現象にその場の全員が驚いていると、中空に黒い影が差す。上空を見上げると特殊なスーツを着込んだ黒服の一団が空中で銃口を、侵攻軍に向けていた。

 

 それに対抗しようと、ゲリラ兵も銃口を向けるが、錬から目を離したことにより、錬の攻勢が再開する。身体に乱流を纏って走り出し、上空からの銃弾を器用に躱しながら、敵兵を確実に切り刻んでいく。すべての銃声がやむころには、地に足をつけているものは錬以外にいなかった。

 

 一団の一人が地面にゆっくりと降り立ち、錬に向かって歩き始める。錬は剣を下ろしつつ、不測の事態に対応できるようにして、その人物と向かい合う。バイザーが開き、その向こう側に会った顔は達也のものだった。

 

「無事か?」

 

「一応は」

 

 錬の短い返答に達也は苦笑しながら、再び真剣な表情に戻る。

 

「まだやるのか?」

 

 達也は短いながらも意味をはっきりととらえられる言葉を錬に向かって投げかける。この言葉は純粋な気遣いから出た言葉である。自身を深雪たちのもとから離しておきたいというのが錬の心情であるというのは、達也も理解していた。しかしその前に錬が死んでしまっては悲しむ者もいる。その事態を避けるために真由美たちと合流するのが、一番だと達也は考えていた。

 

 そして錬も達也の思考を理解していた。そのうえで錬は返答する。

 

「ああ、まだ続けなくちゃならない」

 

 錬はきっぱりと告げる。錬の意思は変わることはない。まだ真由美たちと合流するわけにはいかなかった。その答えを聞き、達也は一瞬表情を曇らせるが、すぐに元に戻り、宙に浮かびながら、返答する。

 

「そうか。それならそれで気をつけろよ」

 

 達也は再び一団に戻り、どこかへ飛び去ってしまう。それを見届けた錬は、不意に空腹を感じ、近くのコンビニに窃盗に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

「いいのか。友人だったのだろう?」

 

 達也と一緒に空を飛んでいた柳は先ほどの行動について言及する。同じ一校生徒であれば、引き留め、避難させるのが常識だと自分の中で思っていた柳は先ほどの達也の行動に疑問を禁じえなかった。

 

「止めようと思って止められる人物ではありませんから。それに彼も引き際はわかっていると思っているので」

 

「信用しているんだな」

 

「ええ」

 

 柳の冷やかすような言葉に達也は短く簡潔に返答する。その答えを聞いた柳は滞空しているヘリを遠目で確認すると、飛行速度を速めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雫は着陸しようとしているヘリに群がるイナゴを焼き尽くすことに必死になっていた。しかし数が多いために、ループ・キャストのフォノン・メーザーでも焼却が間に合っていなかった。次第に処理が追い付かなくなり、いよいよヘリに群れの一部がヘリに迫ったその時、黒雲となっていたイナゴの群れはまるでもともと存在していなかったかのように消え去った。

 

「達也さん…?」

 

 上空を仰ぎながらつぶやいたのはほのかだった。その間、黒服の集団がヘリを守るように取り囲む。その間、達也はイナゴ、もとい化成体を操っていた術者を探し、その人物を分解していた。

 

 無事にヘリが着陸し、住民、雫、稲垣を乗せ、ヘリが再び飛び立つ。その少し後に真由美の要請したヘリがやってくる。そのローター音に残されていた市民はほっと安堵する。

 

 真由美はもう一機のヘリに乗ってきた自身のボディーガードである名倉とやり取りを終えると、ほのかたちが協力して進めていた市民の収容を手伝おうと、鈴音に声をかける。それに応え、鈴音が振り返った時、事件が起こった。

 

「動くな!」

 

 二人のゲリラ兵が後ろから鈴音と、その近くにいた小春の首に手を巻き、ナイフを突きつける。その直後、他の男が現れ、手りゅう弾を持った腕を見せつける。

 

「……なるほど、このための布石だったのですか」

 

「頭の回転が速いな」

 

 ぽつりとつぶやいた鈴音の言葉はまるで囚われていないかのような声色だった。冷静さを孕み、恐怖を全く感じさせなかった。(隣の小春は完全に恐怖しているというのにのんきなものである)

 

 侵攻軍の目的は、機動部隊で戦力を前方にひきつけ、そのうえでターゲットを捕獲するというものであり、前方の迎撃部隊に多く戦力が集中していた(もっとも錬が暴れまわっているせいで思った以上に敵が迎撃部隊に向っていなかった)のは、まさにこの作戦のためだった。

 

 さて、鈴音が今回ターゲットになった理由としては、論文コンペで重力制御型熱核融合炉の発表を行い、なおかつ真由美の友人であることである。千春が狙われたのは、アシスタントとして発表に協力したというのと、たまたま近くにいたというものである。

 

 真由美は後ろ手にCADを操作し、二人を救出しようとするが、すぐにゲリラ兵にばれてしまい、鈴音の首元に当てられているナイフのきらめきによって真由美の動作が止められてしまう。

 

「お前が人質になれば、七草家が放ってはおかない。娘の友人を人質に取られることの方が、娘を人質に取られるより効果があるだろうからな」

 

「確かに。真由美さんは甘い人ですからね」

 

 鈴音はしれっとこんな状況であるにもかかわらず、真由美を非難するような言葉を発する。その緊張感のない言葉を聞いてか、動揺していた小春は少しばかり落ち着きを取り戻す。

 

「その後は、私たちを本国に拉致する手はずですか」

 

「そうだ。こちらの予定ではもう一人拉致する予定ではあるがな」

 

「その人物がだれかはともかくとして、それでは人質交換にならないのでは?」

 

「それは……、おまえ、何をした?」

 

 ゲリラ兵はやっと自身の身体が動かなくなっていることを認識する。鈴音は小春に目配せをしながら、目の前に突き付けられていたナイフをどけ、拘束から逃れる。小春も同様だ。今回鈴音を狙ったのは、ターゲットが悪かった。鈴音は媒体を使わない魔法発動、人体に直接干渉する魔法のスペシャリストであった。

 

 

 

 

 

 鈴音の活躍によって、二人が逃れたことによって三人はほっと安堵し、ヘリに乗り込もうとする。このような心の隙間ができてしまったのは学生、戦闘のスペシャリストでないものにとってはごく自然なことであった。しかし、今回はそれが仇となった。鈴音の行動は敵の意表を突くものだった。しかし、今回は敵の方が一枚上手であった。

 

 付近に隠れていたもう一人のゲリラ兵が真由美たちに向けてハイパワーライフルを向ける。それに気づいた三人は回避行動をとろうとするが、CADの操作も間に合わず、突然の状況に驚き、緊張した身体を動かすことができなかった。まず銃口が向けられたのは、最も近くにいた小春。その銃口から弾丸が放たれ、小春の心臓を穿とうと迫る。真由美たちの必死の抵抗も間に合わず、大声で声をかけることすら間に合わなかった。

 

 小春はこれから起こる現実から目を背けるためにぎゅっと目をつぶった。思い出したのは最近仲直りをした妹の事。このまま残して死んでしまうのかと思うとやりきれない気持ちでいっぱいだった。そのようなことを考えていると、目の前で、ガキンと、障壁で防がれたような音がした。恐る恐る目を開けると、目の前に対物障壁が張られており、ゲリラ兵には剣が刺さっていた。

 

 何が起こったのかの理解に苦しんでいると、ゲリラ兵を中心に突風が吹き荒れた。三人はとっさに顔を覆い、飛んでくる砂などを防ぐ。風が収まったため、三人は目を開けるとそこには三人が見知った人物が立っていた。

 

 

 

 

 

 

「錬君!」

 

 声を上げたのは真由美。心配そうに錬に駆け寄り、ペタペタとさわり身体の安全を確認する。

 

「さっきの障壁は……錬君が?」

 

「ええ、間に合ってよかったです」

 

 小春の質問に簡潔に答える錬はゲリラ兵から剣を引き抜く。引き抜かれたゲリラ兵の身体から血が噴き出す。このようなことに慣れていない小春がその光景を見て、顔を青くする。

 

「それより早く避難するわよ。ここに留まっているのは危険だわ」

 

 真由美は逃げ出すように促しながら、錬の手を引き、ヘリの方に誘導する。錬はそのまま手を引かれ、ヘリに向かって歩き始めた。

 

 小春と鈴音が輸送用ヘリに乗り込む。錬、ほのか、真由美はその姿を見届ける。いよいよ飛び立とうというところで、小春が顔をのぞかせる。

 

「錬君、ありがとうね」

 

 微笑むような笑顔を向けて、錬に感謝を伝える小春。その直後、ヘリはローターを回転させ、空へ舞い上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ私たちもいきましょうか」

 

 真由美の指示に従い、ほのかは真由美とともにもう一方のヘリへと向かい始める。錬は黙って足を止めたままだ。その行動に何か嫌なものを感じた真由美は恐る恐る声をかける。

 

「えっと、どうしたの?」

 

 錬は無言のまま、CADの付いた左腕を持ち上げ、手のひら側に着いたタッチパネルを操作する。その行動の意図に気付いた真由美とほのかは同様にCADを操作し、錬の行動を止めようとするが、遅かった。

 

 CADの入力途中で錬の魔法が発動し、突風が吹き荒れ、二人は入力途中で手で顔を覆ってしまう。次にはっきりと付近を視認した時には錬はいなくなっていた。あまりの早業に呆気に取られていた二人の意識を引き戻したのは、ヘリのパイロットである名倉の声だった。

 

「お嬢様!お早く!」

 

 意識を取り戻した真由美はほのかを促し、ヘリに乗り込む。あとでたっぷり説教をしてやろう、と心に決めて。すると、乗り込もうとする真由美の視線に黒服の一団のうちの一人が目に入った。銀色のCADを持ったその人物を見た真由美は、目の前で逃げられたフラストレーションを晴らすためにこっそりとその人物に『あかんべえ』をした。された本人は理不尽だと溜息を吐いた。

 

 

 

 

 





 剣の形はハンターハンターのフェイタンのやつです。刀身はアダマンチウムです。硬いです。CADの装甲部分はヴィブラニウムです。やばいです。
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