魔法科高校の劣等生 ~世界をひっくり返す錬金術師~   作:カイナベル

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 さてここから閑話二連です。多分今週中には書き終え、来訪者編に突入したいと思います。


来訪者編前 閑話
閑話 その一


 横浜事変から一か月ほど経ち、生徒たちもそのショックからほぼほぼ立ち直りつつあった。そんな中何時ものように授業を終えた錬は生徒会の本部に向かう。本部に入りいつものようにデスクに座り仕事を始めようとすると、勢いよく扉が開け放たれる。

 

 何事かと思った錬は、後ろを振り返るとそこには花音が立っていた。しかし、花音は真っ先に錬のことを見つけると近寄ってくる。

 

「錬君」

 

 錬の肩に手を置いた花音は錬に口を開く。

 

「今日の巡回お願いできない?」

 

「お断りします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「受ける、受けないはともかくとしても理由を聞かせてください」

 

「確かに言葉足らずだったわね。実は今日部活やら何やらで、出れる風紀委員が司波君しかいないのよ。たった一人じゃ流石の司波君も厳しいでしょうから、出てもらいたいのよ。一応この状況は非常事態に入ると思うから、出てもらえる条件もそろってるんだけど」

 

「ちなみに千代田先輩はどうなんですか」

 

「私は今日家の用事で帰らなくちゃいけないのよ」

 

「……それならまあ、いいですよ」

 

 家の用事で帰宅する花音を引き留めることはできない。さすがの錬もそこは心得ている。

 

「ありがとう。それじゃあお願いね」

 

 そう告げた花音は足早に本部から出て行ってしまう。あのせっかちさ、五十里先輩が絡んでいるな、と考えた錬は軽くため息をつく。するとその直後、花音と入れ替わりになるように達也が本部に入ってくる。

 

「今日はやけに少ないな」

 

 達也が本部の中をぐるりと見まわして、錬に問いかけるようにしてつぶやく。

 

「今日は出られるのが俺とお前だけらしい。だから今日は俺も巡回に出ることになった」

 

「珍しいこともあるもんだな」

 

「仕方ないだろう。二人しかいないんだからな」

 

 そう言った錬は席から立ち上がり本部の外へ出る。達也もそれを見て錬の後ろに追従するようにして歩き始めた。

 

 歩き始めた錬はふと思い出したことを達也に質問することにし、達也の方に振り向いた。

 

「そういえば、巡回ルートはどうすればいいんだ?俺は一度も出たことがないからルートなんて知らないぞ?」

 

 すると達也のその問いに顎に手を当て少しの間考えたのち返答する。

 

「そうだな…、特にルートを決めずにふらついているだけでいいと思うぞ。風紀委員はいるだけでもそれなりの効力があるからな。ある程度校舎を見回っていれば問題ないと思う」

 

「武力行使については?」

 

「お前が危険だと判断したらやってくれ。お前には術式解体もあるし、通常の魔法であっても加減をして制圧することはお前にとって容易いだろう?」

 

「大体把握した。ある程度手さぐりになるだろうからフォローを頼む」

 

「分かった。それじゃあな」

 

 昇降口にたどり着いた二人は二手に分かれて巡回を始めた。達也は特別棟の方へ向かい、錬は部活動が行われている演習林方面へと向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふらふらと巡回という名の散歩を続ける錬。たびたびトラブルに巻き込まれたものの、即座に制圧、解決をし、特に大きなトラブルとなることはなかった。巡回を始めて一時間ほど経ち、錬は部活動の音を横目に演習林付近の巡回を続けていた。

 

「あれ、錬さんどうしたんですか?」

 

 演習林の方からほのかが顔を出す。その格好はユニフォーム姿であり、部活動中であるということがうかがえる。

 

「実はいろいろあって風紀委員の巡回中なんだ。初めてのな」

 

 錬は左腕につけた腕章を見せながら、ほのかの問いに対して返答する。

 

「そうなんですか。大変そうですね」

 

「そうでもない。ふらふら歩きまわっているだけだからな」

 

 錬がほのかと雑談を繰り広げていると、後ろから雫とSSボード・バイアスロン部の部長である五十嵐亜美が顔をのぞかせた。二人が雑談しているのを見て、雫は錬のもとへとずんずんと近づいていく。

 

「錬君、どうしたの?」

 

 錬は雫にもほのかに話した通りのことをそっくりそのまま説明する。

 

「そうなんだ。大変そうだね」

 

 またまたほのかと同じことを言った雫の言葉に錬は内心感嘆の声を漏らす。その一方で雫はジト目でほのかのことを見つめていた。少々の非難を込めて。その視線に充てられたほのかは少したじろいでしまうが、雫が目線をそらしたことにより、内心ほっと息をつく。

 

「そうか…、君が成績一位の園達君?初めて見たわね…」

 

 雫たちのやり取りを見ていた五十嵐がぽつりとつぶやく。その声を聴いた雫がふと思ったことがあるのか、錬に向かって問いかける。 

 

「錬君は部活動の勧誘を受けていなかったんだったよね?勧誘週間の時はどこにいたの?」

 

「俺はあの時風紀委員会の本部にこもりっきりだったんだ。書類もあの時期は多めで忙しかったっていうのもあるが」

 

「じゃあ、私たちの部活見てみない?」

 

「いきなりだな。俺は部活に入る気はないぞ」

 

「いいの。ただ見に来るだけでもいいから。それに少しでも見れば気も変わるかもしれないし」 

 

「そうよ!あの時いなかったんだからこの際一度勧誘だけでもどうかしら」

 

 雫の誘いに乗っかるようにして五十嵐も勧誘を始める。その目は獲物を狙う猛獣のようになっている。錬は部活動勧誘週間に捜索がかかるほどの注目株とされていた。それは今現在でも同様であり、いまだに錬を勧誘しようと部もある。しかし、錬と接触すること自体が難しいうえに錬の性格上、自分の利益にならないことはやらないため、いくつかの部活はすでに撃沈している。

 

 しかし、今回は違う。五十嵐は雫たちが錬の友人であることを知っていた。そして友人である雫が積極的に勧誘を行っている。この状況に乗っからないほど五十嵐は愚かではなかった。

 

「一度見学してみて!ね?」

 

 五十嵐は詰め寄らんばかりの勢いで錬に話しかける。このままでは埒が明かなくなるかもしれない。そう考えた錬は一つの結論を出した。

 

「……巡回にあまり穴をあけるわけにはいかないのであまり時間は取れませんが」

 

 間接的に肯定の意を示すと五十嵐と雫の表情がパッと明るくなる。

 

「ありがとう!ぞれじゃあこっちよ」

 

 五十嵐が先導するようにして歩き始め、錬たちはその後ろをついていくようにして歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 錬の目の前で雫がスケートボードに乗りながら標的を狙い打っていく。正確性はまだまだ未熟だが、スケートボードの速度は結構な速度が出ている。雫の動向を目で追っていると、雫はボードを手に持ちながら錬のもとへ帰っていく。

 

「どうだった?」

 

「命中精度こそまだまだだが、ボードの扱いはよかったと思うぞ」

 

「私の事じゃなくて部活の事」

 

 錬のずれた回答に雫は目を細める(雫自身この時顔が熱くなっていることには気づいていない)。そのことを指摘された錬は部活について話し始める。

 

「そうだな。部活の雰囲気自体もいいと思うし、魔法のマルチ・キャストの練習にもなりそうだな。それに協議競技自体も面白そうだ」

 

「じゃあ!」

 

「だが、家でやることや、風紀委員の仕事を考えるとやはり入りたいとは思えないな」

 

「そう……」

 

 雫は錬の回答に見るからに落ち込む。目を伏せ、先ほどの元気さが見る影もなくなってしまう。その姿を見た錬は、雫がなぜ落ち込んでいるのかわからなかった。

 

「ところで、さっき命中精度がまだまだって言ってたけど、錬君は当てられるの?」

 

 八つ当たりじみた雫の問いかけに答えるために、錬は腰元につけた特化型CADを抜き取る。そのCADを見た雫は問いかけるようにして錬に話しかける。

 

「それ、アズガルズ・シリーズ?」

 

 あずさ以来、誰にも言われなかったこのCADの名称がが他人の口から出たことにより、錬は少しだけ驚きを見せる。

 

「よく知っているな」

 

「前に九校戦のCAD展示で一回だけ見たことがあるから。その時はユグドラ・シリーズだったけど」

 

 九校戦ではそんなこともやっているのかと思っていると、雫がCADをまじまじと見つめている。雫にCADを見せるようにして動かした後、錬は最も遠くにある的に向けてCADを構える。

 

 錬はCADを構え、的を見据える。その距離はおおよそ七十メートル。肉眼で視認するのは容易いが、的に標準を定めて狙い打とうとすると難易度は非常に高くなる。的に標準を定めて息を一息吸い込んだ錬はCADの引き金を引いた。起動式が一秒もなく錬に吸い込まれ、振動系統の魔法が発動する。そして発動した魔法は正確に標準されていた的に干渉し、小さな音とともに振動を引き起こさせた。

 

「雫たちのように高速で動いていないから、あまり比較にはならないがな」

 

 雫に向かって話しながら、CADを腰のホルスターに戻す。雫は驚きの表情を錬に向けており、完全に固まっている。その姿を見た錬は再起動するのを待たずに巡回へと戻った。

 

 演習林を出て、再び巡回をしようと歩き始めると、また引き留められてしまい歩み始めていた足が止まる。

 

「錬君、今日は君が巡回かい?」

 

「沢木先輩、お疲れさまです。どうしたんですか。こんなところで」

 

「走り込みだ。体力は肝心だからな」」

 

 演習林沿いの街道を走る沢木に向かって、錬は小さく頭を下げる。 

 

「すまないな。慣れない巡回をさせてしまって」

 

「いえ、マジック・マーシャル・アーツ部で忙しいことは存じていますので」

 

「そういえば、なぜ演習林の方から出てきたんだ?そっちは巡回ルートではないだろう?」

 

「少々、SSボード・バイアスロン部の見学をさせていただいていたので」

 

「そうか。それならばうちの部にも見学に来てみないか。君は部活動には入っていないんだろう?」

 

「ありがたいお誘いですが、これ以上巡回を空けるともう一人に迷惑をかけてしまうので…」

 

「少しくらい抜けてしまっても今更だろう。それでどうだいこれから……」

 

 

 

「そうはさせないわ!」

 

 

 

 

 話していた二人の会話を切るようにして轟いた叫び声。その声の主は五十嵐であり、沢木とともに錬を挟み込むようなポジションを取る。

 

「彼はマジック・マーシャル・アーツ部には入れさせない!彼はSSボード・バイアスロン部に入るべき逸材よ!」」

 

 威圧するようにして沢木に話す五十嵐。しかし三年生である五十嵐にひるむことなく沢木も反論する。

 

「そんなことはありません。彼の体術は今の一年生を上回っています。だからその技術を伸ばすためにも彼はマジック・マーシャル・アーツ部に入るべきです」

 

 錬を置き去りにして部活動勧誘をする二人を見る錬はその場から逃げ出したくなってしまう。しかし、仮にも風紀委員として、口論をする二人を止めなければと思った錬は、落ち着かせるための努力を始める。

 

「とりあえず落ち着いてこの場を収めてください。これは警告です。聞けないのであれば風紀委員として実力行使に移りたいと思います」

 

 その言葉に二人が反応し、いったん口論を終息させる。

 

「今回は私が間接的な原因のため、不問とさせていただきますが、今後このようなことがありましたら、部活連に報告させていただきますので、ご理解ください」

 

 錬がそう告げると、沢木と五十嵐は申し訳なさそうな表情をする。

 

「そうだな。すまなかった錬君」

 

「ごめんなさい。あなたの気持ちも考えずに…」

 

 二人が反省した面持ちになったのを見た錬は、事を荒げないようにしてその場から立ち去ろうとする。しかしその願いははかなく潰え、錬の気分はさらに重くなった。

 

「お?園達じゃねえか。何やってるんだ」

 

 剣術部の桐原が会話に混ざってくる。その時点で嫌な予感がしたのとまた同じ説明をしなければならないのとで気持ちが沈んだ。すると代弁するように沢木が桐原の問いに答える。

 

「錬君が巡回しているところを俺たちが部活動勧誘で引き留められてしまって、それを注意されていたところだ」

 

 沢木の説明に同意するようにして、五十嵐も首を縦に振る。その説明を聞いた桐原は納得した顔を見せると、その表情が何かを思い出したような表情に変わり、錬に向かって口を開く。

 

「じゃあ剣術部の見学に来ないか?多少は剣が使えるんだろ?」

 

「「おい!」」

 

 桐原の言葉が横浜事変のことを指しているのが錬にはすぐに分かったが、今はそんな状況ではない。桐原の言葉に反応して、五十嵐と沢木が怒声を上げる。

 

「なんで私たちが怒られたところでまた勧誘をするのよ!」

 

「そうだ!抜け駆けをするんじゃない!」

 

 再び口論を始めた三人と沢木の少しずれた言葉にため息をつきたくなるがそんなことをしている場合ではない。何とか止めようと、再び注意勧告をしようとするが、三人が止まることはない。武力行使に移ろうかと考えたが、水面を伝わる波紋のように騒ぎが大きくなってしまい、続々と他の部の連中が集まってくる。そして演習場脇の街道は錬一人では抑えられないほどの勧誘合戦場と化した。

 

「最っ悪だ…」

 

 これが嫌だったから巡回が嫌だったんだと悪態をつきながら、錬は部活動勧誘の引っ張り合いに身を任せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日をまたぎ、騒動の翌日となったこの日。錬と沢木の二人は怒りに震え、青筋を浮かばせた花音の前で正座をさせられていた。その他には達也が無表情のまま事務作業をしており、服部が椅子に座っていた。

 

「さて、風紀委員であるあなたが大量の部活を巻き込んで騒動を起こしたことの言い訳を聞きましょうか?」

 

「いや、俺関係ないと思うんですが…」

 

「なに?」

 

 花音の威圧に耐えかね、錬は口を噤んでしまう。前日の騒動は駆けつけた達也とその騒動を見かねたほかの風紀委員によって制圧された。騒動の中心であった錬は渦の中心で疲れ切った顔で佇んでいるのを発見された。

 

「今回のことは、部活連と協力して錬君を勧誘したすべての部活に、錬君が見学に行くってことで話がついたから」

 

「いや、俺に話が通っていないんですけど…」

 

「行きなさい」

 

「はい」

 

 無機質な花音の命令によって錬は肯定の返事をせざるを得なくなってしまった。

 

「沢木君も!風紀委員が率先して問題を起こさないで!」

 

「すまなかった…」

 

 沢木は正座した体制のまま、深々と頭を下げる。沢木は頭を上げると次は服部に体を向ける。

 

「服部も迷惑をかけてしまってすまなかった」

 

「反省しているんだったらいい。これからはこんなこと起こさないでくれ」

 

 そういった服部は席から立ち、本部から出ていく。その姿を見送った花音は再び錬に視線を送る。

 

「ともかく明日から風紀委員の巡回がてら部活動の見学に行ってもらうから」

 

「巡回もするんですか…。効率がいいのは認めざるを得ませんが…」

 

「それじゃ、見学の日程表は達也君に作っておいてもらって、君の端末に送ってもらうから。ちなみに明日はSSボード・バイアスロン部だから」

 

 その言葉を聞き、次は達也がとんでもないとばっちりを食らったことに驚き、無表情のまま目を見開く。しかしそれを見なかったことにして花音の言葉に返答する。

 

「分かりました」

 

「それじゃあ、今日の巡回もよろしくね」

 

 錬は立ち上がり、しびれた脚に鞭を打ちながら本部を後にする。やらない前提で入った風紀委員の巡回をやり、早くもそれに順応している自分が嫌になりそうになりながら錬は巡回に向かった。

 

 

 

 

 




 部活動の代替わりの時期が分からん…。

 それはともかく、ちょっと聞きたいことがあるんですが、タブに「SCP」とか「仮面ライダー(ネタのみ)」のタブってつけた方がいいですかね?
 活動報告にページを作っておくので、ご意見をお願いします。
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