魔法科高校の劣等生 ~世界をひっくり返す錬金術師~ 作:カイナベル
最近錬の性格が柔らかいとのご指摘を受けるので言い訳を。
錬の性格を柔らかくしてやらないと、話をうまく進められないんです。このまま誰とも接触を拒み続けて、全く誰とも絡まない話を見ても、面白くないと思うのでそこらへんはご容赦ください。
来訪者編 第一話
(山王信仰と台密のところはよくわからないので間違っていたらご指摘ください)
定期試験も無事に終わり、今日は十二月二十四日、二学期最後の日であり、クリスマスイブの日でもある。この日錬や達也たち一行はアイネブリーゼに集まり、クリスマスパーティーもとい、雫の留学送別会を行っていた。錬は誘われ、特に断る理由もなかったため、やってきていた。
錬たちの前には大きなクリスマスケーキが鎮座しており、その前に立つ錬たちの手には飲み物の入ったグラスが握られていた。全員がグラスを握ったところで達也がいつものような落ち着いた声で音頭を取り始める。
「飲み物は行き渡った?いささか送別会の趣旨とは異なるけどせっかくケーキも用意してもらったことだし、乾杯はこのフレーズにしようか……メリー・クリスマス」
「メリー・クリスマス!」
錬は声こそ上げなかったが、その歓声にこたえるようにして手に持ったグラスを天に掲げるのだった
「ねっ、留学先はアメリカのどこ?」
「バークレー」
エリカからの質問に雫は短く場所のみを答える。すると、その答えに疑問を持った深雪が続けて尋ねる。
「ボストンじゃないのね」
日本魔法師の中の常識として、アメリカの現代魔法研究の最先端はボストンという認識が強くあり、深雪の質問もその認識から来たものだった。
「東海岸は雰囲気が良くないらしくて」
雫の穏やかならざる回答に幾人かが同調する。
「ああ、『人間主義者』が騒いでいるんだっけ」
幹比古の言葉をきっかけにして話の中心は人間主義者に切り替わる。レオは人間主義者に向かって悪態をつき、達也はそれを宥めるようにしてフォローする。達也の解説が徐々に暗さ、というか犯罪さを増してきたところで、エリカが暗さを振り払うようにして話題を切り替える。
「そういえば雫。代わりに来る子のことはわかっているの?」
「代わり?」
いまいちピンと来ていないような表情をしている雫に、深雪が補足するように問いかける。
「交換留学なのよね?」
その言葉でようやっとピンと来たのか、理解したという表情に変わる。
「同い年の女の子らしいよ。それ以外のことは何も」
「それだけ?」
「うん」
一同のあまりに少ない情報量に驚いたがゆえに零れた声に雫は短く答える。
「……そうですよね。自分の代わりにどんな子が来るのか、いくら気になっても教えてくれる相手がいませんものね」
美月がそう呟いたことによってこの話題はそれきりになった。
その後はクリスマスプレゼント交換会が行われた。皆が渡しあっていたものは学生らしい質素過ぎず、かといって高価過ぎないものであった。しかし、やはりというかどれも三万円以上する錬のプレゼントは異彩を放っていた(ような気がする)。
「錬、これ高かったんじゃねえか?」
アウトドア系のカタログを受け取ったレオが、その値段を気にするようにして錬に尋ねる。本来、贈り物の値段を気にするのは、マナー違反であるが、一人暮らしである一学生から高価なものがポンと送られたら、疑問が上がるのも不思議ではなかった。現にレオ以外の面々もレオの疑問に首を縦に振っている。
「そうでもなかったから心配するな。こっちにもいろいろとあって金は大量にあるんだ。あまり気後れされると、こっちも送りがいがなくなる」
「錬がいいんならいいんだけどよ…」
「あれ?でも錬君、雫に渡してないけどいいの?」
レオが落ち着いたと思ったら、次はエリカが錬に尋ねる。すると、錬の代わりに雫がその問いに答える。
「私はもうもらってるから」
そういった雫は見せつけるようにして腕を上げ、袖をまくり、左腕につけたCADを皆の前に曝す。すると、そのCADに興味を持った者たちが雫に群がっていく。
「わ、これってアズガルズ・シリーズの汎用型じゃないですか」
「あのユニラ・ケテルの?錬君良く手に入れたわね」
「ちょっとした伝手でな。アズガルズ・シリーズは結構持ってるぞ」
「しかもこれシリアルナンバー一桁代じゃないですか。これネットで売ったら、六桁は軽くいきますよ」
雫のCADに興味津々になっている面々の目をかいくぐるようにして、達也が錬の隣に近づいてくる。
「なるほど、つい最近、学校の調整器具を借りたのは、このためか。ということはあのCADを調整したのはお前か?」
「ああ、雫がアズガルズ・シリーズが欲しいって言ったからあげたんだ。ハードウェア的にもちょうどよかったからな」
「世界に名だたるアズガルズ・シリーズを簡単にやれるのはお前くらいだろうな」
「道具は使ってなんぼだろう。家で腐らせておくよりもはるかにましだ」
「…あれ、雫、このネックレス何?この間まで着けてなかったよね」
達也と錬が話していたところで、ほのかが雫の首にかかっているネックレスを目ざとく発見する。そして雫はそこで
「…秘密」
意味深な返答してしまう。これによってどういう経緯で手に入れたのかを察したエリカが、おもちゃを手に入れた子供のように錬に近づいていく。レオはいまだにその意味に気付いておらず、幹比古と美月はその意味に気付き、顔を赤くしている。達也は錬を呆れるような視線で見ており、深雪は雫を見ながら、口元に手を当て微笑んでいる。いまだに気付いていなかった錬は、近づいてくるエリカを見てようやくいやな予感がすることを感じ取ったのだった。
送別会という名を被ったクリスマスパーティーは和やかに終了し、錬は帰宅の途に就いた。しかし、その最中は、いやその前から頭の中は今回の一件の不審さ、というより意外さで埋め尽くされていた。
優秀な魔法師は国家の財産として海外渡航を厳しく制限されている。雫やほのかといった優秀な人材は通常であれば、渡航が許されるはずもなく。錬や深雪などもってのほかだ。これほどまでに魔法師が海外に渡るというのは厳しいことなのだ。
しかし今回、交換留学とはいえ魔法師の海外渡航が許された。この結論が出た時、やはりこの交換留学には裏があるとしか思えなかった。また横浜事変とは違った意味での面倒事が起きそうだと、錬の第六感がつぶやいた。 しかし、その元凶をつぶしたくても今回のことはもう政府によって決まってしまっていることであり、錬一人ではどうしようもなかった。
(今回はどうしようもないかな…)
面倒なことにならなければいいな、と錬は願い、このことを頭から消そうと努力するのだった。
スターズ専用機であるクラスターファンで帰投したアンジー・シリウス事アンジェリーナ・シリウス少佐は制服のまま自室のベットにゴロリと寝転がった。同胞を処刑することにベットの上で心を痛めていると、部屋の呼び鈴が鳴り響く。いつものような部下の訪問にシリウス少佐は苦笑いを浮かべ、リモコン操作で鍵を開け、入室の許可を出す。
「失礼しますよ、総隊長」
入ってきたのはシリウス少佐の予想通りの人物だった。ベンジャミン・カノープス少佐。スターズのナンバーツーであり、スターズ総隊長代行も務める第一部隊の隊長で会った
カノープス少佐の差し入れであるハニーミルクを啜りながら、二人は和やかに会話をする。カノープス少佐が部屋の片隅に積みあがった個人用コンテナを発見し、話はシリウス少佐に与えられた任務についての話になる。
「しばらくは因果な任務のことを忘れます。ゆっくりと羽を伸ばしてください」
「休暇じゃなくて特別任務なんですけど…」
カノープスの唆しにリーナは唇を尖らせる。その表情はスターズ隊長としてのモノではなく、十六歳の少女のものだった。
「むしろ憂鬱ですよ。ただでさえ潜入任務には不慣れなのに、向こうでやることが多すぎます。任務の一つをこなすだけでも大変だというのに、三つも任務を与えられるなんて。任務を私に集中させるくらいなら、もっと多くの隊員を派遣してくれてもいいのに…」
「魔法師の渡航には制限がありますから仕方のないことでしょう。そもそも成功が前提の任務ではありませんし」
今回シリウス少佐に与えられた任務は三つ。一つ目は十月末に極東で観測された戦力級魔法によるものと思しき
二つ目は数年前、同じく極東で観測された孤島焼失の一件の調査。研究班はあの時、その周辺、中心部からプラズマが観測されていたことから、あの爆発は戦略級魔法「ヘヴィ・メタル・バースト」ではないかと推測している。
三つめの任務は極秘ではあるが、先の一件で焼失した島で研究対象となっていた、コードネーム、ウロボロスの発見、スカウトである。UNSAもあの実験のスポンサーであったため、あの事件が無ければ、恩恵を受けることができていた。しかし、事件により、研究所は焼失。当の本人もどこかへ姿をくらましてしまったため、アメリカとしては無駄な支出となってしまっていた。
しかし、それを上層部が許すはずもなかった。情報部の調査によって生存していることが分かり、本名を情報として知っていたため、そういう名前の生徒が一校に入学してしていることも知っている。そのころのデータから逆算して、十六歳になっていると推測した軍上層部はシリウス少佐を送り込み、本人であるかの確認、及びスカウトをさせることに決定していた。
しかし、シリウス少佐は諜報に向くタイプではなく、本人もそのことは自覚していた。カノープスの慰めも効果を発揮せず、シリウス少佐は溜息を吐いた。その姿を見たカノープス少佐は別の言葉で慰めにかかる。
「こう考えてはどうでしょう。総隊長の役目は、容疑者に接触して揺さぶりをかけることだと」
カノープスの慰めにシリウス少佐は少し納得したような表情に変わる。一度切り替えるようにして大きくため息をつくと、シリウス少佐はカノープス少佐の前に立ち上がる。
「ベン、留守中のことはよろしくお願いします。脱走者の初段も終わっていないこの状況で、本来私が負うべき責務をあなたに負わせるのは心苦しいのですが……、私の代わりをお願いできるのは貴方しかいませんので」
「おまかせください、総隊長。まだ少し早いですが、行ってらっしゃい」
カノープス少佐はリーナの敬礼に笑顔を浮かべた敬礼を答えた。
場所は変わって再び日本。錬は自宅で自室にこもり、大晦日が間近に控えているにも関わらず、作業に勤しんでいた。デスクのモニターには腕型のアーマーのようなものが映し出されており、最近完成した空間投影型タッチパネルには、それが映し出されていた。付属品もなく、丸いフォルムのアーマーに錬は物足りなさを感じており、さらなる追加デザインをディスプレイ上に描いていた。
「アストラ、これなら機能性とデザイン性を両立できるか?」
「これであれば、機能を低下させずにさらなる機能の追加も望めるでしょう。こちらをサーバーに保存しますか?」
「頼んだ」
短く答えた錬はデスクから立ち上がり、傍らにおいておるオレンジジュースを啜り始める。デスク前のペンダントを見つめながら、オレンジジュースを啜っていると、携帯端末が鳴り響いた。相手は久しぶりの達也であった。
「何だ」
「錬、大晦日と元旦は暇か?」
「大みそかは京都に行って鴨そば食べてくるつもりだが…、日帰りだから、夜からは暇だな」
「だったら初詣でも行かないか?ついでに話しておきたいこともあるんだ」
錬は達也の問いに少し悩んだ表情を見せる。しかし、別に初詣に行くこと自体は悩んではいなかった。こういう機会に外に出ておかないと、三学期になるまで一歩も外に出ないであろうとわかっていた。そのため、行くこと自体はほぼ即決であった。
悩んでいた、というより考えていたのは達也の話についてだった。錬のいやな予感も相まって、達也が持ちかけてくる話には、いやなオーラがまとわりついているのが錬にはすぐに分かった。が、錬には予知能力も心を読む能力もない。よって本人に聞いてみないことにはわからないのだった。
「分かった。どこに行けばいいんだ?」
「日枝神社に八時ごろで頼む」
「分かった」
錬が短く言葉を返すと、通話が切れる。端末を手放し、再びオレンジジュースを啜り始め、ふとペンダントを手に持って眺め始める。それは錬の葵の唯一の形見、葵と最後に会話をしたあの時にもらったものだった。
知らず知らずのうちに年を越した錬は約束通り日枝神社に来ていた。約束の十五分前だというのにも関わらず、大体のメンバーがそろっており、残すは司波兄弟のみとなっていた。
司波兄弟を待っている間、錬たちは他愛もない雑談に身を興じていた。
「それが雫とのデートで買った服ですか?とてもよく似合ってますよ」
「デートかどうかはともかくとして、質問の答えはイエスだな」
「やっぱり錬は素材は良いんだな。やっぱり目の下のクマが問題だがよ…」
ほのかの問いに錬が答える。その傍らではレオが錬を上から下へ食い入るように見ていた。錬が来ているのはあの時とは違うものだが、それでも似合っているのは変わらなかった。周囲の目をかなり引いていたが、深雪で同じような経験をしている面々はうろたえることはなかった。
錬の服談義をしていると、約束の五分前に達也たちが到着する。達也は羽織袴、深雪は振袖であった(ちなみに錬はロングコート、レオはジャケット、ほのかは振袖、美月はファーコートだった)。
レオたちが会話を繰り広げていると、そこで錬が見たことはない人物が現れた(厳密には見たことの無い人物は一名であったが)。
「ヤクザ者というより、与力か同心のイメージだね」
一人は坊主であり、飄々としているが、錬の眼には隙を見つけることができず、油断のならない人物であった。もう一方は一校のカウンセラー、小野遥だった。以前、錬も無理やりお世話になった(正確にはお世話されただが)人物だ。
錬が八雲のことを注意深く観察していると、何者かを知らない美月たちが達也に尋ねる。達也はその問いに答えた。
「九重寺住職、八雲和尚。俺たちにはもしかしたら忍術使い・九重八雲氏の方が通りがいいかな?俺の体術の先生だ」
達也の紹介を聞いてほのかと美月は目を丸くし、レオはなるほど、というように首を縦に振る。
「なるほどだから日枝神社にしようって話になったんだな」
「だからって?」
レオの言葉に遥は疑問の声を漏らす。実際このことは一般的な知識ではないのだから、遥が分からないのも当然だった。
「んっ?和尚ってことは天台宗の坊さんなんだろ?山王信仰と台密は切っても切れない関係じゃんか」
レオの発した言葉にますます疑問符を頭に浮かばせたほのかと美月は助けを求めるように尋ね始める。
「錬さん、どういうことですか?」
「山王信仰は比叡山から生じた神道。比叡山を開いたのは最澄。台密の創始者も最澄だからじゃないか?この日枝神社は山王信仰で有名なところだからな」
「あっ、なるほど」
ほのかと美月、ついでに聞き耳を立てていた遥が納得できたように頷く。すると、レオと会話をしていた八雲の視線と興味が錬に向く。
「へえ、君も知っているのかい?さすがは入試成績一位だ」
「なぜ俺のことを?」
「達也君から何度か聞いていたし、九校戦の試合も見ていたからね。世紀の凡戦、君の行ったスピード・シューティング決勝戦の異名だよ」
「流石は忍び、九重八雲氏ですね。
錬に言葉に反応して、八雲の眼が細目が開いていき、錬を観察するように注意深く見始める。どうやら錬の込めたニュアンスが伝ったようだ。周囲に少々よくない空気が流れ始めるが、達也の一言によって霧散していく。
「自己紹介も終えたところで、そろそろ行きましょう」
「そうだね。あまりここにいるのも迷惑だ」
八人は本殿に向かって歩き始める。その直後八雲が錬に近づき、話しかけ始める。その目は好奇心にあふれていた。達也も近くによって聞き耳を立てる。
「いつから知っていたんだい?」
「入学してすぐのあたりからですかね。カメラに何度か映っていたもので」
「電子機器に移ってしまうとは、僕も年を取ったかなあ」
「気になさる必要はないと思います。うちのカメラは特別製ですから」
「達也君が言っていた、魔法が効かない物質、ってやつかい?」
八雲の言葉に錬が驚くことはなかった。八雲は優秀な忍びだ。家の位置もばれている時点で素材のこともそのうちばれると思っていた。それに達也が話していることも想定していたため、特に驚くことはなかった。
「そのことは内密にお願いします。世間に出ると面倒なので」
「当然だ。それに僕は俗世に興味はない。ただ、君が手を出し始めているものには興味あるけどね」
錬の身体がピクリと跳ねる。が、それに気づいたのは八雲と達也だけであった。すると達也は話を変えるように錬に話しかけ始める。
「USNAの魔法師集団、スターズがマテリアル・バーストのことを探っている。お前のことも例外ではない。お前も調査対象に入っているらしい。周囲には気を付けておけよ。それと四葉家当主である、四葉真夜がお前に興味を持ち始めた。そのことも注意しておいてくれ」
「分かった。ご忠告ありがとう」
業務連絡じみた会話を終えた二人のことを八雲は面白そうに見ていた。
二人が会話を終え、本殿に入ると、錬は不躾な視線を感じ取る。それは達也や八雲も同様のようで、達也は錬にチラリと視線を送った。
「司波君、心当たりは?」
「ありません」
「俺もです」
「異人さんには達也君が珍しかったのかねえ」
それだと錬が視線を向けられた理由にはならないが、さりげなさを装うためのものだとわかっていたため、錬はスルーした。八雲が異人といったようにその相手は金髪碧眼。日本人が想像する欧米人の様相そのものだった。
「錬、わかるか?」
「まさか。金髪碧眼なんてこの世界にごろごろといる。ましてや流行遅れなんてそもそも調べられない」
達也の問いに錬は首をすくめるようにして答える。錬が称したように少女の服装は明らかな流行遅れであり、さすがの錬でもしない服装だった(ジャージ野郎が何を言っているのか)。これを他の誰かが見たら、見た目がいいのに服装がだめな『錬状態』と称するだろう。
すると、達也の視線に気づいた深雪が達也の残影をたどり、達也の観測物を発見する。そして、達也に向けて平坦な声を零す。
「…綺麗な子ですね」
深雪の声を聴いた達也はうろたえたように深雪を見る。達也とてそのようなことを考えて少女を観察していたのではない。しかし、深雪にはそんなことは関係ない。同じように見ていた二人だが、八雲はにやにやとした表情で笑みを浮かべており、錬は達也たちから視線を外していた。つまり達也は自らでこれを解決しなければならないのだった。
「お前ほどではないけどな」
「…いつもいつも、その手で誤魔化せると思わないでください」
「誤魔化してなどいないさ。俺は本心からそう思っているし、そういうつもりで彼女を見ていたわけでもない」
二人がいつもの感じで甘い空気を出し始めたため、錬は完全に二人の存在を無視して、お参りに向かうこととしたその過程で少女の隣を通ることになってしまっていたが、錬は気にせず少女の横を通り過ぎる。
そして通り過ぎようとしたところで。少女が一瞬ではあるが、錬を注意深く観察するようにして、視線を送った。その視線に気づいた錬は同じように視線を送り返そうとするが、錬が送り返す前に少女はその場を後にしてしまう。周囲を見回すと、強い意志のこもった視線を送る深雪が少女の方を見ていた。
何かの火種にならなければいいが、と錬は不安そうに思いながら、本殿にお参りをするのだった。
山王信仰と台密のところはよくわからないので間違っていたらご指摘ください。