魔法科高校の劣等生 ~世界をひっくり返す錬金術師~   作:カイナベル

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二日続けての投稿です。

それではお楽しみください。

また評価ご感想お待ちしています。


入学編 第四話

  いろいろと特殊な部分がある魔法科高校とて普通の高等学校と同じ部分が無いというわけではない。その一つがクラブ活動だ。ただ普通の高等学校と違うのは陸上などといった一般的なものだけでなく、魔法が密接に関わってくるクラブ活動があることだろうか。話に聞くところによると、かなり活発に行われているらしくそのレベルはスポーツ名門校に並ぶほどだとのこと。その中でも優秀な成績を収めたクラブはクラブの予算、個人個人の評価など様々な便宜が図られるらしい。要するに何が言いたいかというと

 

「優秀な新入部員の獲得が部の直接的な拡大につながるということだ。」

 

らしい。ここにきて渡辺先輩の話を聞いている理由は登校している最中に会長にまた生徒会室に誘われたので昼食時にまたここに来たというわけだ。逃げようともしたが、同じように誘われていた達也に捕まり連れてこられた。そんなこんなで今は俺たち風紀委員にかかわる、クラブ勧誘期間について昼食を食べながら聞いていたところだ。

 

「だからこの期間は新入部員をめぐってちょっとどころではない程のお祭り騒ぎになる。その分トラブルも多発する。具体的には殴り合いや魔法の打ち合いも残念ながら珍しくない。」

 

「なぜ魔法によるトラブルが?CADの携行は禁止されているはずでは?」

 

静かに聞いていた達也が口を開く。

 

「この時期は新入生向けのデモンストレーションに許可が出るんだ。そのせいでより一層校内が無法地帯と化してしまう。」

 

 学校で無法地帯なんて言葉を聞くことがあるとは思わなかった。一体どれほどすごいことになるのだろうか。だがそんなことになるのならば審査を厳しくするなどの対応がなされるはずだ。達也も同じことを考えていたらしく、一瞬視線が合い、達也が俺の考えを汲み取ったのか、質問をしようと口を開こうとした瞬間、その考えが読まれたたかのように回答が会長からもたらされた。

 

「学校側としても、九校戦の成績を上げてもらいたいから、新入生の入部率を高めるために、多少のルール破りは黙認状態なの。」

 

 学校側の利益を優先して、生徒の安全を無視するのはどうかと思うが、学校側の言い分もわかるため、認めたくはないがこれに関しては仕方ないのだろうか。

 

「というわけでこれから達也くん含めの風紀委員は、今日から一週間、フル回転だ。よろしく頼むぞ。」

 

「…一つ質問が。」

 

「ん?なんだね?」

 

「錬はその中に入らないのですか?錬も風紀委員ですよ?」

 

「錬君はデスクワーク専門という条件で入ってもらっているからな。今年は欠員の補充も間にあっているし、そこまで人員不足というわけではないんだ。だから錬君は本部にこもりきりだ。」

 

 あそこまで言われた魔境に飛び込まされるようなことが無くて本当に良かった。

 

「だがこの一週間にも必要書類が大量に出るからな。事務処理もまあまあ大変なんだ。私はこの通りだし、私の部下たちも私のようなものだから、必然的に事務仕事は錬君一人ということになるな。」

 

 その程度なら問題ない。処理速度は他人よりも速い自信があるし、最悪の場合、達也に手伝ってもらえばいい。

 

「では午後の授業が終了次第、本部に集合ですか?」

 

「そうだな。二人ともよろしく頼むぞ。」

 

その後は軽く話した後、お開きとなった。これから忙しくなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故お前がここにいる!」

 

「いやさすがにそれは非常識だろう。」

 

 森崎からの怒りが多く含まれた問いが達也にぶつけられる。達也はそれを呆れ声が混じったため息で答える。だがそれは森崎のさらなる興奮を招くだけだった。

 

「なにい!」

 

「やかましいぞ、新入り。」

 

 掴みかからん勢いで聞き返すが、渡辺先輩に一喝され、森崎は慌てて口をつぐみ直立不動の姿勢になる。 

 

「この集まりは風紀委員会の業務会議だ。ならば風紀委員以外の者はいないのが道理。その程度はわきまえたまえ。」

 

「申し訳ありません!」

 

 森崎の顔はすでに恐怖で軽くひきつっている。まあ、連行されかけたのはつい先日。あの恐怖は新入生にはとても荷が重いだろう。

 

「まあいい。座れ。」

 

 森崎が青い顔のままで森崎が席に着く。俺はすでに席に着いていたので関係ないが。すると、席に着いた森崎が俺のことを睨みつけてくる。昨日のことがあっては仕方ないが。

 

「今年もまた、あのバカ騒ぎの一週間がやってきた。風紀委員の最初の山場だ。くれぐれも風紀委員が率先して騒ぎを起こすようね真似はするなよ?」

 

 自分たちの立場を再確認するように渡辺先輩が戒める。

 

「今年は卒業生分の補充が間に合った。紹介しよう。立て。」

 

 森崎と達也が立ち上がる。その二人の表情は相反しており、森崎は緊張が一面に表れており、対する達也は少しも緊張していないといわんばかりの表情だ。

 

「1-Aの森崎駿と1-Eの司波達也だ。今日からパトロールに加わってもらう。」

 

「使えるんですか?」

 

「安心しろ。二人とも使える奴だ。司波の実力はこの目で見ているし、森崎のデバイス操作もなかなかのものだった。不安なのであれば、お前が二人についてやればいい。」

 

 やめておきます、嫌味な口調で返してくる。達也の実力自体はかなり高い。森崎も百家支流の家系で“クイック・ドロウ’’という技術で有名らしい。実力自体は高いのだろう。一昨日は相手が悪かっただけで。

 

「コホン、話を戻そう。そしてもう一人。こいつは事情により少し役回りが違うんだが…。デスクワーク専門で業務をやってもらう…」

 

「「「いよっしゃあ!!!」」」

 

 先輩方が喜びをあらわにしながら立ち上がる。いきなり起こった先輩の奇行に森崎はとても驚いていた。達也は特に反応を見せなかったが。

 

「静粛にしろ!」

 

 渡辺先輩の一喝によりすぐさま静かになる。だが渡辺先輩も少し口角が上がっている。さっきの先輩の反応と言い、いったいどれだけ事務作業が苦手なんだ。

 

「立て。紹介する。1-Aの園達錬だ。よほど有事以外はデスクワークを担当する。」

 

 聞いている最中も先輩たちはガッツポーズをするなど、小さく喜びを見せていた。渡辺先輩も紹介している最中、ずっとどや顔だった。

 

「それではこれより最終打ち合わせを行う。巡回要領についてはこれまで通り。今更反対意見はないと思うが?」

 

 室内が静まり返る。異議なしという感じではないが、特に異を唱えるようなこともないようだ。

 

「よろしい。では早速行動に移ってくれ。司波と森崎の両名については私から説明する。他のものは出動!」

 

 先輩たちがぞろぞろと出ていく。なぜか出ていくときに俺のことを神でも見るかのような目で見てくるがなんかもう、気にしない。その後達也と森崎がレコーダーや風紀委員のCAD学内傾向の注意点などの説明を受け、ともに巡回に出ていった。達也が二機の汎用型をつけていったときには少し驚いたが。

 

「さてと、続いては君だが。」

 

「どれだけ風紀委員の方々は事務仕事が苦手なんですか?」

 

「昼にも言っただろう。それに新入り相手に喧嘩腰になるような血気盛んな奴らが書類作業が得意だと思うか?」

 

「必要最低限ほどは出来ますよね?」

 

「恥ずかしながら一昨日までこの部屋はかなり汚かったんだ。」

 

…できないんだな。今まで組織としてどうやって成り立たせてきたのだろうが。

 

「おっと、無駄話に花を咲かせている場合ではなかった。私も巡回に行かなければ。留守番を頼むぞ。」

 

 そういうと渡辺先輩が本部から足早に出ていく。とうとう俺一人だ。手持ち無沙汰になり、達也のいじっていたCADが置いてあるところを見てみる。確かにこれをぞんざいに扱っているとなると達也が呆れるのも無理ないだろう。かなり性能がいいものもあり、決してぞんざいに扱っていいものではない。その後もゆっくりとCADを眺めていたがそれだけではすぐに飽きが来る。また暇になったので席に着いて目をつぶる。決して寝ようとしているわけではない。それから書類が来るまで一歩も動かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「達也が剣術部といざこざ、ですか…。」

 

「そうだ。しかも剣術部のメンバー全員相手にして汗一つ書かなかったんだと。昨日のあれといい、あんな奴がいるなんてなあ。なあ?沢木。」

 

「そうですね。あれほどの逸材であれば、ぜひマーシャル・アーツ部に欲しかったですね。」

 

 風紀委員会本部で先輩方と雑談に花を咲かせる。この先輩方は三年の辰巳鋼太郎先輩と二年の沢木碧先輩である。俺が留守番していて一番最初に戻ってきて挨拶をされた。その時の目は神を見るかのような目だったので、お二人はともに事務作業が得意ではないのだろう。なぜデスクワーク専門なのかなどを雑談の中で聞かれたが、荒事が好きではないということを伝えると、納得してくださった。まるで中条だな、と言われたのは少し不服だったが。俺はあんなに憶病じゃない。それからこうして話している。

 

「なあ園達君、もし司波がマーシャル・アーツ部に入ったら、どこまで行けると思う。」

 

「まあ、いい線は行くでしょうね。」

 

「?なんで少し疑問形なんだ?」

 

「マーシャル・アーツ部に入るという前提がそもそも成り立たないからですよ。きっとあいつは妹を守るためくらいにしか使わないですから。」

 

「そうか…、なあ沢木、司波とやって勝てるか。」

 

「それはやってみなくてはわからないことです。少なくとも現段階では分かりません。」

 

 荷物をまとめながら、二人の会話に耳を傾ける。

 

「それじゃ、俺はこれで。お疲れさまでした。」

 

「おう、お疲れさん。」

 

 挨拶を背中に受け、本部を後にする。今日は特にやることもないので本部を出た時の足取りのまま昇降口へ向かう。すると昇降口に見知った顔が立っていた。

 

「よう、錬。今帰りか?」

 

「ああ、そうだが?」

 

 最初に口火を切ったのはレオだった。続いてエリカがその口を開く。

 

「今から私たち、達也くんのおごりでカフェに行くんだけど…、よかったら一緒に行かない?」

 

 別にいくことは構わないんだが、何故その確認を俺に取ったのだろうか。そこはふつう達也の方に確認をとらないか?そう思いながら、達也の方にチラリと視線を向けると達也は仕方がない、という顔をした。決まりだな。

 

「今日はやることもないし…お言葉に甘えさせてもらうことにしよう。」

 

そこに俺が一緒に行くことに異を唱える者はおらず、全員でカフェへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その桐原って二年生、殺傷性Bランクの魔法を使ってたんだろ?よく怪我しなかったよなあ。」

 

 カフェに着いてから入部したクラブのことや退屈な留守番などの今日一日の出来事のことの雑談をしばらく交わしていたが、レオが今日の達也の、剣術部とのいざこざについて話し始めた。

 

「致死性がある、といっても、高周波ブレードは有効エリアの狭い魔法だからな。刃に触れられない、という点を除けば、よく切れる刀と変わらない。それほど対処が難しい魔法じゃないからな。」

 

 それを聞いてレオが感心する。俺も少し感心している。確かに対処は簡単かもしれない。だが使う相手が普通じゃない。桐原武明、一昨年の関東剣術大会中等部、堂々のチャンピオンだ、もちろんその腕前は並であるはずなく、相当の腕前であるはず。それをいともたやすく取り押さえてしまうのだから、達也の体術がどれほど優れているかがわかる。

 

「でもそれって真剣を素手で対処するってことでしょう?達也さんの技量を疑うわけじゃないんだけど、高周波ブレードは超音波を放っているんでしょう?」

 

「そういや、俺も聞いたことがあるぜ。超音波酔いを防ぐために耳栓を使う術者もいるそうじゃねえか。」

 

「そうじゃないのよ。単にお兄様の体術が優れているわけじゃないの。魔法式の無効化はお兄様の十八番なの。」

 

「魔法式の無効化?情報強化でも領域干渉でも無くて?」

 

 エリカが食いつき、達也から魔法式の無効化、キャスト・ジャミングの理論を応用した「特定魔法のジャミング」について聞かされていた。オフレコではあるが。なるほど、確かに偶然であってもいろいろな意味でとんでもない技術を発見したみたいだな。これが公表されたら技術的革新、どころか社会基盤が揺るぎかねない。まあ、それでもこんなことができるのはこの非常識な男にしかできないだろう。どうやら深雪も同じことを考えているみたいだが。その話の後、少し茶番が挟まれた後、なぜかこっちに話が飛んできた。口火を切ったのはエリカ。

 

「でも、錬君はさっきの達也君の話聞いてもほとんど微動だにしなかったよね。まさか同じこと前から知ってたとか?」

 

「いや、そんなことはない。これでも十分驚いている。単にそれがもたらす効果を部外者なりに考えていただけだ。」

 

「ねえ、錬君は同じことできる?」

 

「無理。展開中の起動式を読み取ってCADの干渉波を投射するなんて化け物じみたことはできないよ。」

 

「錬から見て俺はバケモノなんだな。俺から見て錬も十分化け物じみてるがな…。」

 

「なんでだよ。」

 

「深雪以上の魔法能力の持ち主なんて今まで見たこと無かったんだが…。」

 

「私も少しながら魔法力には自信があったんですけどね…。」

 

 全員の意見が一致するがごとく、あとの三人が首を縦に振る。

 

「俺としては魔法力はここまで多い必要はないんだがな。魔工師志望だからな。」

 

「あ、いますべての二科性を敵に回したね。私たちは魔法力が欲しいのに。」

 

「気を悪くしたんなら謝ろう。すまなかった。」

 

 エリカが不機嫌そうな演技をしてくる。それに対して俺は気を悪くしたような演技を顔にしながら、謝罪の意を見せる。

 

「別に気にしてないけどさ。生まれ持った才能だし。」

 

 生まれ持ったという言葉に体が少し揺れる。だがそれに気付いたものは誰一人としていなかったいなかった。

 

「けどよ。入試成績一位の成績を持ちながら、魔工師志望なんて少しうらやましいぜ。こういっちゃあれだが、つぶしが聞くだろ。」

 

「そうでもないぞ。俺は荒事が好きではないし。それに魔法師は経験がものをいう部分もあるからな。俺には達也やエリカほどの体術もないしな。」

 

「俺としては魔法力の方が欲しかったんだがな…。」

 

 達也が顔を伏せる。別に悲しがっているわけではないのだろう。隣を見ると、それを見て深雪が苦笑している。

 

「そういや、達也も魔工師志望なのか?風紀委員の本部においてあったCADの銘柄見抜いていたが。」

 

「そうだな。体術ができても魔法師のライセンスはせいぜいCランクまでしか取れないしな。」

 

 その後はなぜか俺の話題が中心になりながら、雑談をし、その日はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさいませ。今日は少しお帰りが遅かったようですが?」

 

「少し友人と寄り道をしていてな。特に何があったわけじゃない。」

 

「この後はどうなさるおつもりで。」

 

「今日はもう飯もいらん。アーカイブを見て寝る。家のことをやっておいてくれ。」

 

「かしこまりました。それではおやすみなさいませ。」

 

 

 

 

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