魔法科高校の劣等生 ~世界をひっくり返す錬金術師~   作:カイナベル

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気が向いたので連続投稿です。

それではお楽しみください。


入学編 第五話

 

 一週間続く新入部員勧誘週間も今日で四日目。達也や委員長は今日も学校中を駆けずり回っていた。一方の俺は相変わらず、本部で留守番。書類仕事といってもそこまで手間がかかる訳でなく、量が多いことを除けば、すぐに暇になってしまう。なぜこの程度ができないのかちょっとよくわからなかった。端末をいじったりして暇をつぶしてはいるがそれではすぐに飽きる。しかし暇つぶしのネタが今日はあった。今日は深雪も暇だったのか、本部に遊びに来た。別に拒む理由もないためお茶をしながら雑談にいそしんでいた。主に深雪のお兄様愛についての。

 

「うん、君のお兄様に対する愛がよくわかったよ。そこまで思われるお兄様はきっと幸せだろう。」

 

自分でもはっきりとわかるぐらい棒読みだ。正直もう聞き飽きた。

 

「そ、そんな!想っているなんて!私とお兄様は兄妹で!」

 

 だが深雪はそんなことお構いなしに体をくねらせながら照れ始めた。なんかどこかで見たことがあるような気がしないでもないがきっと気のせいだろう。

 

「その動きは淑女としてはどうかと思うがな。」

 

 少し呆れたようなふりをして言う。別に気にしてはいないがこれ以上続けられるといつ戻ってくるかわからないからだ。すると深雪は自分の行動に気付いたのか、照れたように行動をやめ、座りなおす。そして話題を変えるように話し始める。

 

「コホン…、そういえば外に出る機会が何度かあったのですが…、その時にこんな噂を耳にしましたよ。この期間誰一人としてみていない入試成績一位の生徒、と…。大人気ですね。一度外に出てきてはいかがでしょうか?」

 

「一体君は何の恨みがあるんだい?」

 

 にこやかに笑いながらそう言ってくる。私が一体何をしたのだろう。俺はそんな嫌われることをした覚えはないのだがな。しかし、こんな顔を見せてくれるとは仲が良くなった証拠なのだろうか。

 

「しかしそこまでとは思っていなかった。」

 

「それほどあなたの優秀さを欲しがっている人が多いということでしょう。入試成績一位の名は伊達ではないということですよ。」

 

「深雪には負けるだろう。総代を務めた深雪の方が遥かにいろいろ見栄えがいいからな。」

 

 深雪の全身を見回すような視線を送る。決してやましい気持ちは持っていない。

 

「そんなことはありません。実技、筆記ともに一位をとっている錬さんには私では敵いません。それにあなたは見た目もさほど悪くありませんよ。」

 

「そうかね。」「そうですよ。」

 

 目の前にある紅茶に同時に手を伸ばし、口をつける。こうしていてもやはり暇なものは暇だ。だが、今は深雪がいる。達也には悪いが、今は深雪との雑談で暇をつぶすことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バカ騒ぎの新入生勧誘週間も終わり、今日から風紀委員も通常業務。俺は今日は非番なのでとっとと帰るために学校から家を目指す。道を歩き、家の近くに来た途端、肩に手が置かれる。とっさに手を払いのけ、後ろに跳ぶ。後ろを向くと何人かの男が。注意深く観察すると、腕に赤と青の線で縁取られた白いリストバンドがつけられていた。

 

「何の用だ。」

 

「私たちのリーダーがあなたに会いたがっています。一緒に来ていただけると助かるのですが…。」

 

「断る、といったら?」

 

「力づくでも来てもらう!」

 

 向こうが警棒を取り出し、臨戦体制をとる。仕方ない。向こうがその気のようだし相手をすることにした。俺は胸元に手を入れ、臨戦態勢をとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさいませ。また戦闘でございますか?」

 

「今回はブランシュ、その下部組織のエガリテだ。大方事情も知らされずに駒として使われた程度だろう。それよりもあいつに伝えておけ。近いうちにお仕事が来る、その時まで待てと。」

 

「了解しました。本日はどうなさるおつもりで。」

 

「少し体を動かしたい。付き合え。」

 

「了解しました。それでは十五分後に。」

 

 運動のできる格好になるために部屋へ向かう。着替えて部屋から出る。部屋の前に飾られている絵画を下ろすと、数字キーがついたロック解除用のパネルが出てくる。それにいくつかの数字を打ち込むと、そのすぐ横の壁が少し後ろに下がり、横にずれてその向こうに道が出来上がる。この先の部屋が俺の秘密の部屋だ。スライドするドア、隠し部屋は俺の趣味ではない。これは俺の保護者、俺を拾ってくれた人の趣味だ。この奥にはいくつかの層になって部屋がある。実験用、いろいろなものを格納用、運動用などだ。なぜか地上に直接つながる道もある。ギミックは少年趣味だがここまでの部屋を作ってくれた、拾ってくれた人には感謝している。部屋に続く道を進み、部屋にたどり着くと、部屋にアストラがいた。3Hではなく、俺が造った運動用ロボットに入った状態で。

 

「それでは始めましょうか。」

 

アストラが構える。それに合わせて俺も構える。アストラを倒すために足に力を入れ走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れさまでした。だいぶ動きがよくなっていますね。」

 

 十分ほどで決着がついた。アストラの勝ちだ。というか俺は一度も勝ったことがない。身体は金属でガッチガチ、おまけに急所もなければ、スタミナ切れもない。おまけにデータとして残っている武道、武術の動きをそっくりそのまま繰り出してくるのだ。刃物や鈍器ががあるならともかくこんなチートじみた奴には勝てない。おかげでこいつを作ってから二年、一度の勝ち星も上げられていない。

 

「汗だくになられたようなので、シャワーでも浴びられては?」

 

「明日にする。今日はもう寝る。おやすみ。」

 

目をつぶり、眠りの体制に着く。意識が遠のく。最後の記憶は肌に触れる毛布の感覚だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はあの後二時間ほどで目を覚ましてしまった。体質だとしてもこれしか寝られないのはさすがにくるものがある。眠れただけでましなのだが。そして学校に来て通常通り授業を受け、昼に昼食をとろうになったときに達也に生徒会室に誘われた。どうやら俺がいなくなると男が達也一人になってしまい、少しつらい部分があるのだとか。しかし今回は先約が入っていたので断らせてもらった。こうして少し哀愁を漂わせている達也と別れた後、食堂へ向かう。食堂でその人物たちを探していると、すぐに見つけることができた。雫とほのか、それにレオ、エリカ、美月だった。約束をしていたのは雫たちだけだったのだが、どうやら食堂で会い、そのままの流れで一緒に食べることになったらしい。こうして総勢六人で雑談を交えながら昼食をとっていた。

 

「そういえば達也君たちは生徒会室で食べてるんだよね。錬君はいかなくていいの?」

 

エリカが突然俺に話を振ってくる。

 

「俺は一介の風紀委員でしかないからな。今まで行っていたのも達也に誘われていたからだしね。」

 

「でも確か錬さんは普通の風紀委員とは少し違うんですよね。」

 

 ほのかがどこで聞きつけたのか、俺の業務内容をあげてくる。恐らく深雪から聞いたのだろう。

 

「違うのはデスクワークだけってところだけだよ。」

 

「デスクワークだけ?わざわざ風紀委員でか?」

 

レオが気になったのか質問をしてくる。確かに気になるところではあるのだろう。

 

「俺は荒事が好きじゃなくてね。実力行使の仕事が極力無いようにお願いしたんだ。でもこれはこれでこき使われるんだよ。」

 

 若干一名を除いて全員が納得したように首を縦に振る。一人であるエリカは少し不満そうに「自分の怠慢を人に押し付けるなんて…」と言いながらそっぽを向いていた。すると美月が気になることがあるのか、口を開いた。

 

「でも、錬さん。実技の成績は低くないんですよね?」

 

「そりゃ嘘でも入試実技成績一位だからね。そこそこ自信はあるよ。」

 

「あーあ。いいなー。私も優秀な魔法力欲しかったなー。」

 

「でもエリカには剣の才能があるだろ。俺には何にもないからそれでもうらやましいぜ。」

 

「そうよね。身体が頑丈なだけの筋肉だるまじゃなくてよかったわー。」

 

「おい!それ、俺の事だろ!」

 

「えー、誰もあんたの事なんて言ってないけどー。もしかして筋肉だるまの自覚があるのー?」

 

「てめえ…。」

 

 二人の口げんかがヒートアップしていく。向かいの席を見ると、雫たちが苦笑いを浮かべていた。

 

「エリカちゃん、西城君。その辺にして、ね。」

 

 ヒートアップする二人を美月がなだめる。少し不満そうなレオとエリカがおとなしくなった。しかしいつもこれを宥めているのか、少し美月を尊敬した。その後は何が起こるわけでもなく昼休みが終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 六人で昼食をとってから少し経ち、今日の午前の授業が終わって昼休み。今日は達也や会長に誘われていないので、昼食をどこで食べようかと思案していると、後ろから肩をたたかれる。振り返ると、深雪、雫と一緒にいるほのかの姿が。何やら達也たちが実習室で居残りをしているらしくこれから行くのだと。それで俺を誘おうと雫が提案し、深雪が了承して今に至るらしい。一緒にどうかと聞かれ、別に断る理由もないので了承した。

 

「終わったー!」

 

 エリカの声が聞こえてくる。どうやら課題が終了したようだ。それとともに深雪たちが達也たちに近づいていく姿を俺は遠巻きに眺めている。すると達也が初めに気付き、それに続いて、エリカ、レオ、美月がこちらに気付き挨拶をしてくる。俺も挨拶を返しながら近づいていく。どうやら一科と二科の授業の内容の話をしていたらしく深雪が内容に対して辛辣な言葉を発していた。だが授業の最たる違いに気付いたのか、深雪が頭を下げて謝罪をしていた。

 

「気にしなくても良いわよ。実力のあるものが優遇されるのは当たり前だもの。」

 

 エリカがあっさりとした返答をする。確かに彼女は数字付き、千葉家の娘。実力主義の世界にもまれてきた彼女らしい考え方だ。だが少し気まずい空気になってしまう。そんな空気を変えようとエリカが口を開く。

 

「ねえ深雪、参考までにあなたのタイム見せてくれない?」

 

 唐突に話を振られた深雪が少し戸惑うが、達也に背中を押され、端末に手を置き、計測を開始する。

 

「…235ms…」

 

 計測係の美月から記録が告げられた瞬間、俺と達也以外の表情が驚愕に染まる。

 

「す、すごいわね。」

 

「深雪の処理速度は、人間の反応速度の限界に迫っている。」

 

 少し結果に不満そうだが、兄になだめられ、不満そうな表情を残しながらも落ち着いた。だが次の瞬間、その表情が幻だったかのように微笑みながら、こちらを向いた。

 

「さあ、次は錬君の番ですよ。」

 

「……は?」

 

 言葉を飲み込むのにだいぶかかった。またなのか。だから一体君は何の恨みが俺にあるんだい。ぜひとも教えてくれ。なんでこっちに飛んできたのか?

 

「あ、あたしも気になる!入試成績一位ってことは深雪よりも早いってことでしょ。」

 

ブルータス(千葉エリカ)、お前もか。

 

「そうか、それなら俺も気になるな。頼む、見せてくれ!」

 

「俺からも頼む。学年一位の成績を見てみたい。」

 

 エリカ、レオ、達也の順で賛同者が募っていく。ほのか、雫、美月は言葉こそ発さないものの見てみたいという表情がありありと見て取れる。目の前にはニコニコと微笑んでいる深雪が。どうやら逃げ場はないようだ。仕方なく端末の前に移動し、その上に手を置き計測をいつものように開始する。

 

「………」

 

「どうしたの?美月?」

 

「…200ms」

 

 その場の全員の表情が驚愕に染まる。深雪や達也も含めてだ。誰も一言も発さない。さすがに気まずくなってきたので空気を変えるために発言する。

 

「そんなにすごいか?深雪とそんなに変わらないだろう?」

 

「そこから縮めるのが難しいのですけど…」

 

「深雪以上に人間の限界に迫っている奴がいるとは…」

 

「もはや俺らとは別次元だな…。」

 

「前に錬君が化け物だって話したけど、それが現実になったね…。」

 

「さすがに、これには驚き。」

 

「これで魔工師志望なんですか…」

 

 ほのか以外が復活して言葉を紡ぐ。ほのかはいまだに絶句している。

 

「これで筆記も一位とか笑えねえな…」

 

 全員の意見が何かで一致したのか、一斉に首を縦に振る。また化け物呼ばわりだ。別に望んで得たものではないんだが…。俺から発せられた声は誰にも届くことなく俺の中でのみ鳴り響いた。

 

 

 

 

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