ガールズ&パンツァー ~もし西住まほが大洗に転校していたら~   作:アイアンクラッド

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プロローグ:西住流戦車道、始めます!

                  

 

 轟音と共に水柱が高く太く立ちのぼった。

 

 

 

 重量にして20トンを超す鋼鉄の塊が、氾濫する河に沈んでゆく。崖路を進軍中、敵戦車の砲撃を受けて地面が崩れたのが原因であった。

 

 

『――隊長! 別働隊から救援要請!』

 

 

 部下の悲鳴が無線から耳に突き刺さり、西住まほは自らの失策を悟った。

 

 現在、彼女の率いる主力部隊は別の場所でプラウダ高校の主力部隊と交戦している。序盤に大規模な攻勢をかけて敵の注意を引き付け、その間に別働隊が背後から挟撃する。それが当初の作戦だった。

 

 

 が、しかし――。

 

 

『――接敵し、一方的に砲撃を受けています!』

 

(待ち伏せされたか……)

 

 地図で見つけた、河に面する狭い崖路。普通なら超重量物たる戦車の通る道ではない。しかも今日はあいにくの雨。道はぬかるんでおり、一歩道を踏み外せば転落の危険があった。

 

 

 だが、まほは敢えて別働隊にそこを通過させることにした。

 

 

 たしかに崖路は危険だが、崖のおかげで敵に発見されにくくもある。別働隊の存在を隠すにはもってこいの進軍ルートだ。

 

 

『――Ⅲ号戦車、が、崖から落ちていきます!』 

 

 

 無線からヒステリックに響く悲鳴。

 

 

 たしか、Ⅲ号戦車は別働隊の先頭を走っていたはず。先頭車両に攻撃を集中させて進軍を止めるのは当然の戦法だ。この雨の中で集中砲火を受けては、戦車はもとより地面も持たないだろう。

 

 事実、この時くだんのⅢ号戦車は車体で這いつくばるように苦悶しつつ落下し、激しい水しぶきをあげて着水した。それは落下というより沈没という表現に相応しく、20トンの巨体は重力に引きずられて無力に沈んでいった。

 

 

 だが、事態はそれだけに留まらなかった。沈みゆく戦車を追って河に飛び込んだ人物を見て、黒森峰チームは全員が息を飲んだ。

 

 

 

『――副隊長が!みほ副隊長がフラッグ車から出て、Ⅲ号の救助に向かっています!』

 

 

 黒森峰の通信網を悲鳴が走り抜けた時、全員が己の耳を疑った。試合より救助を優先―――裏を返せば、それは勝利の放棄に他ならない。

 

 

 そしてこの日、10連覇となるはずだった決勝試合において、黒森峰は10年ぶりに敗北を喫したのであった……。

  

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 それから1年後――。

 

 

 

 大洗女子学園で部活動が本格的に動き出したのは、4月の終盤になってのことだった。

 だが、今年は例年と大きく異なる点が1つだけあった。

 

 

 

 ――戦車道の復活。

 

 

 

 この日、戦車道への入部希望者は運動場倉庫前に集まるよう指示された。不安げな表情の者、期待に胸を躍らせる者。お揃いの制服とスカートを着た少女たちは、落ち着かない様子でそわそわしながら待っていた。

 

 

「会長、もうこれ以上は来ないようです」

 

 眼鏡をかけた生徒が、ささやくように隣にいる生徒にそう言った。会長と呼ばれた生徒は呑気に干し芋を食べながら、もごもごと口を動かす。

 

「そうかー、まぁ、こんなもんかな?」

 

 口内に残った干し芋を舐めとると、会長・角谷 杏はずいと前へ進み出た。

 

 

「そんじゃ、訓示とか色々の前に――1人、紹介したい人がいるんだ」

 

 

 角谷会長がそう言って場所を譲ると、一人の女子生徒が現れた。

 

 きっちりと着こなされた制服に、均整の取れた体格。凛々しい印象を与えるその表情は、瞬く間に数人の女子生徒の心をつかんでいた。短くじりそろえられた黒髪が、明りに反射して瞬く。

 

 

 その時、戦車マニアの一人の生徒が「あっ」と小さな声をあげた。

 




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