ガールズ&パンツァー ~もし西住まほが大洗に転校していたら~   作:アイアンクラッド

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第10話:これが西住流です!③

 

                      

 場所は変わって操縦席。初めてにしてはそれなりに上手くレバーを操るの冷泉麻子に、まほは「ほう」と感心する。

 

「初めてにしては上出来だ。筋がいいな」

 

「……どうも」

 

 先輩に対しても、麻子はぶっきらぼうな口調を崩さない。まほの方も特に気にした様子はなく、すぐに実践的なレクチャーに入った。

 

「左斜め前にクレーターがあるのが見えるな? ここでひとつ問題だ。あんな風にクレーター状の弾痕のある地形を通るにはどうすればいい?」

 

「よける」

 

 まほの問いに麻子が答える。クレーターは戦車にとって天敵だ。下手な角度で入り込むと、動けなくなってしまう。

 

「では、仮によけられない場合は? そうだな、敵に追い込まれた時を想定して欲しい」

 

「ぐ……諦めて帰って寝る」

 

 

「それは駄目だ。西住流に後退の二文字は無い」

 

「………」

 

 

「大事な事なのでもう一度言う。西住流に後退の二文字は無い」

 

 そう語るまほの表情は至って真面目だった。単に脳筋だけではなく、実際に麻子の乗るⅣ号をはじめとしたドイツ戦車は足回りが弱く、バックや旋回には大きな負担がかかるという実際的な理由もあった。

 

「じゃあ突っ込む」

 

「もっと具体的に」

 

「勢いよく突っ込む」

 

「50点だ」

 

 そんなに貰えちゃうのかよ、と麻子は心の中で突っ込む。ヤケクソでテキトーに言った割には高評価をもらえたことに何とも言えない気分になる。

 

「正解は“座礁しないようクレーターの中心めがけて”突っ込む、だ」

 

 戦車は構造上、敵の弾を避けるために車高が低く作られている。つまり車体の底と地面との間隔が近いのだ。

 

「もし変に避けようとして避けきれず、キャタピラの片側だけがクレーターの中に突っ込んだりしたら間違いなく座礁する。それならいっそ、最初から中心めがけて突っ込めば乗り上げるリスクは減らせる」

 

「なるほど」

 

 西住流はともかくとして、割と丁寧に教えてくれるまほに、麻子は素直に頷いた。

 

 

「じゃあ、クレーターじゃなくて建物や瓦礫だったらどうするんだ?」

 

 麻子は左にある資材置き場を指さした。

 

「あれは避けるしかないんじゃないか?」

 

「いや、迂回せず一気に押し潰す」

 

「……出来るのか?」

 

「下手に迂回すると敵に脆い側面を向けてしまう。だから突っ込む。安心しろ、戦車は簡単には止まらん」

 

 相変わらず乱暴なやり方ではあるが、理には適っている。戦場を舞うような軽やかさはないが、堅実な方法で一歩づつ確実に勝利へに向かって突き進む―――それこそが西住流の継承者に代々受け継がれてきた精神だ。

 

「よし、では試しに突っ込んでみろ。もちろん全速力でだ」

 

「……了解」

 

 相変わらず無茶苦茶に聞こえる台詞を平然と吐くまほ。麻子の方も諦めたのか、「もうどうにでもなれ」と言わんばかりにアクセルを踏み込んだ。

 

 Ⅳ号のエンジンが唸りをあげ、徐々に加速していく。操縦手用の覗き穴から見える建物が徐々に大きくなっていき、窓ガラスの内側まで見えるほどに近づいた。

 

 

(っ……ぶつかる!)

 

 思わずブレーキを踏みそうになった瞬間、まほの叱咤が飛んだ。

 

「避けるな!もっと踏み込め!」

 

 その声で我に返った麻子は、腹をくくってアクセルを一気に踏み込んだ。そして――。

 

 

 

 激突、粉砕、突破―――建物に車一台が余裕で通れる大穴をぶち抜き、麻子のとまほの乗るⅣ号は再び大空の下へと躍り出る。

 

 

「……抜けた」

 

 

 麻子は放心した状態で、ポツリと呟いた。後ろには、自分が戦車で粉砕した建物の残骸がある。

 

 

「見てみろ、これが戦車の力だ。西住流は何があっても、前へ進む流派。強き事、勝つ事を尊ぶのが伝統」

 

 

 まほが誇らしげに言う。麻子も改めて建物の残骸を見る。

 

(意外と大丈夫なんだな……さすが戦車)

 

 なんだか少し自信が付いた気がする。気付けば、恐怖心もなくなっていた。次の機会があれば誰に言われるまでもなく、思い切り突っ込めそうな気がする。

 

 そんな麻子の思いを読み取ったように、まほは僅かに黒の目を細めた。

 

「それでいい。操縦長には度胸が必要だ。大胆不敵であれ」

 

「はい、先輩」

 

 麻子にしては、素直な返事だった。短期間の指導ではあったが、戦車を操縦するコツは掴めたような気がする。

 

「この調子なら、来週には模擬戦形式で練習ができるな」

 

 まだ興奮の抜けきらない麻子に、まほはそう言ってぽんぽんと肩を叩いた。

           




 麻子とまほってなんか気が合いそう
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