ガールズ&パンツァー ~もし西住まほが大洗に転校していたら~ 作:アイアンクラッド
「んじゃ、西住ちゃん自己紹介よろしく~」
「西、住……?」
その名に最初に反応したのは、2年生の秋山優花里だった。筋金入りの戦車マニアで、その筋には詳しい女子生徒だ。
「西住、西住ってまさか……あの!」
「そう、“あの”西住だよ――西住流戦車道の後継者・西住まほ」
「めちゃくちゃVIPじゃないですか!?」
にわかにざわめき立つ生徒たち。無理もない、「西住まほ」といえばその道の雑誌やテレビにも出演するレベルの超大物だからだ。
「でも、どうして大洗なんかに……?」
「それは本人の口から聞かなきゃ」
杏が茶目っ気たっぷりに目を細める。ざわついていた生徒たちは徐々に静かになり、やがて小さな咳払いと共にまほの自己紹介が始まった。
「まずは自己紹介だが……今年からこの学園に転校してきた、西住まほだ。本来ならこちらの角谷会長が隊長を務めるべきなのだが、生徒会からの依頼で私が隊長を務めることになった。よろしく頼む」
そう言ってまほは、規律正しく腰を折った。時間・角度ともに完璧な礼だ。生徒たちの拍手の音が静まるまで待ってから、まほは再び口を開いた。
「まず転校の理由だが、隊長として先の大会の敗戦責任をとって黒森峰高校を辞した」
まほの決断に対して「責任を取るべきは妹のみほではないか?」という意見も多かったが、まほはあくまで自分の責任だと言い張った。人の上に立つ人間はそれ相応の責任を負わねばならない。もしチームがメンバーの独断専行で負けたのなら、それはメンバーを管理できなかったリーダーの責任だ。
「続いて大洗に来た理由だが、そう複雑な話ではない。そこの角谷会長に勧誘されたからだ」
以上、とあっさり締めくくるまほ。「え?それだけ?」と戸惑う声がちらほらと聞こえる。
「はいはーい、みんなそこまで。まぁ色々思う所はあると思うけど、とりあえずこれは決定事項だから――というわけで、よろしく。西住隊長」
「ああ」
「みんな、異論はないよね?」
機先を制する、とはまさにこの事だった。トップダウンの決定に不満そうな表情をしていた生徒が口を開く前に、角谷会長はテキパキと言葉を紡ぐ。
「昔はウチにも戦車道があったらしいんだけど、今は開店休業中だから西住ちゃんしか教えられる人がいないんだよね。チーム全体の戦力向上には、経験者が隊長&教官になって訓練と指揮をするのが最適でしょ?」
最適――その言葉に違和感を覚えた生徒は一人や二人では無かった。最良ではなく、最適。その言葉に隠された意味を説明したのは、再び全員の前に立った西住まほだった。
「なぜなら、我々は今年の戦車道大会で『優勝』を目指すからだ」
黒森峰って典型的なトップダウンだから敗北の責任はぜんぶ隊長に降りかかってきそう