ガールズ&パンツァー ~もし西住まほが大洗に転校していたら~ 作:アイアンクラッド
「なぜなら、我々は今年の戦車道大会で『優勝』を目指すからだ」
優勝―――本音はともかく建て前としてはどの競技でも目指すべき目標。しかしそれを口に出すとなると、どこか遠慮してしまう言葉だ。
だが、西住まほは「優勝を目指す」というありふれているが非現実的な言葉を、さも当然と言わんばかりに宣言した。
「あのぉ……西住、先輩?」
一人の女子生徒がおずおずと前に出る。一年生の中では背が高めのその生徒は、チラチラと周りを気にしながら口を開いた。
「戦車道って、今年復活したばかりなんですよね? それでいきなり優勝なんて……」
「たしかに、困難な闘いになるだろうな。大会には幾つもの強豪校が揃っている」
優勝が難しいという事実を、まほは否定しなかった。
「無名で弱小の我が校など、彼らは眼中にも無いだろう。事実として我々の戦力では最悪、一両も撃破できないまま初戦敗退も有り得る」
無名、弱小、初戦敗退―――どれも現実味のある単語だ。多くの生徒はそれを理由に「優勝など不可能だ」と感じていたはず。
だが、言葉に出してハッキリ言われると無性に息苦しさを覚るのはなぜだろうか。まるで自分たちが戦う前から負けているような錯覚すら覚える。
されたような気がして。
「私が隊長に就任するのは、大洗女子を優勝させるためだ。ルーキー同然の我が校を優勝させるためには、当然練習も厳しくなる。逆に優勝する気が無いのなら、私はここで隊長を降りようと思う」
気楽に遊んで1年分の楽しい思い出を作るのも良いだろう、とまほは続けた。
「ただし―――――その場合、今年がこの高校最後の思い出になる」
まほの言葉に、生徒たちは一斉に顔を見合わせた。
「それは……どういう意味でしょうか?」
五十鈴華は困惑しているようだった。首を傾げて隣を見るも、武部沙織もまた肩をすくめて首を横に振る。こっちが逆に聞きたい、と言わんばかりの表情だ。
西住まほに目を向けると、彼女は生徒会長とアイコンタクトを取っていた。どうやら、生徒会は事情を知っているらしい。
やがてざわつきが収まると、今度は生徒会長が口を開いた。
「ここから先は、機密情報になるからね~。絶対に他の生徒には漏らさないこと。ちなみに破ったら全校生徒の前でアンコウ踊りだから」
茶化して注意するも、その眼はいつになく真剣だ。もちろん好奇心旺盛な生徒たちの中に「機密情報」と聞いて立ち去る者はいなかった。
「文部科学省から廃校の通達が来た。―――大洗女子高校は、今年いっぱいで廃校になる」
「優勝できなかったら廃校」とかいう圧迫面接