ガールズ&パンツァー ~もし西住まほが大洗に転校していたら~ 作:アイアンクラッド
「文部科学省から廃校の通達が来た。大洗女子高校は、今年いっぱいで廃校になる」
「え……?」
一瞬、武部沙織はその言葉の意味を理解する事が出来なかった。
「嘘……」
「そんな――!」
続いて耳に飛び込んできたのは、生徒たちが一斉に息を飲む音と低いざわめき。隣にいる五十鈴華も、口を手で押さえて絶句している。
だが、それも生徒会長たちには想定内の反応であったようだ。むしろ狙い通りと言わんばかりに角谷会長はニヤリと悪い笑顔を浮かべた。
「ただし、それを覆す方法が無い訳じゃないよ。それがこの戦車道―――さすがに優勝校を廃校にする事はないでしょ」
話によると近年、文部科学省は国を挙げて戦車道の振興に力を入れているらしい。つまり、戦車道大会で優勝するほどの高校になれば、おいそれと廃校にすることも出来ないはず。
「一年間わずかな可能性に賭けて、来年再来年もこの学校で戦車に乗れる道に進むか。それとも確実に保証されている一年間を楽しく過ごして最後の思い出にするか―――それを選ぶのは皆だよ」
こんなのズルだよ、と沙織は小声で呟いた。一見、選択肢があるように見えて既に答えは決められているのだ。
「もちろん棄権も無しだから。これだけの秘密を知った以上、自分で考えて答えを出すまで返せないしね~」
角谷会長は「廃校」を人質にとって、ここにいる全員を脅し、煽り、望み通りに動くよう誘導している。
西住まほは相変わらずの無表情のまま、皆がどんな選択をするのか観察しているように見えた。
「ではまず、我が校の存続をかけて優勝を目指したい、と思う方は手を挙げてください」
生徒会書記の柚子の言葉に、一斉に生徒たちの手が上がる。
まるで歴史の教科書に出てくる写真のように、まっすぐに伸ばされた手、手、手。その写真が撮られた頃のドイツでは、世界に先駆けて戦車の急激な発達が始まる。
「では次に、一年間楽しく最後の思い出を作りたい、と思う人は挙手」
気まずい静けさが、場の空気を支配する。手を挙げた者は一人もおらず、角谷会長の仕掛けたゲームの結果は明らかだった。
「それでは多数決の結果、戦車道大会を目標に練習に励むことになりました」
柚子の言葉に、生徒たちからパラパラと拍手が起こる。結果に満足したのか、まほも穏やかな表情で拍手していた。彼女は静かに前へ進むと、生徒たちを見渡した。
「では今の投票の結果をもって、今年の大洗女子高校戦車道チームの目標は全国大会優勝とする」
この瞬間、「全国大会優勝」は生徒会だけの目標ではなく、全員の目標そして共通のゴールとなった。経緯はともあれ、最後に決断を下したのは間違いなくこの場にいる一人一人の意思だったのだから。
「私も責任をもって指導するが、私に出来ることはあくまで優勝への道筋を示す事だけだ。一人ひとりが自分で努力しなければ、夢はかなわない」
自分の選択に最後まで責任を持て、まほはそう言って言葉を切った。
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