ガールズ&パンツァー ~もし西住まほが大洗に転校していたら~   作:アイアンクラッド

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第6話:特訓開始です!

 翌日、まほから全員に練習メニューが渡された。装填手、砲手、通信手、操縦手とそれぞれの担当ごとに訓練計画を割り当てていく、“特殊な”練習メニューだ。

 

 

「本来ならば段階的に全ての作業を覚えていくのがセオリーだが、今の我々にそんな時間は無い」

 

 

 通常、戦車兵はまず装填手からはじめ、経験を積むにしたがって通信手、操縦手、砲手、車長とより高度な技量の要求される職務を担う事になっている。

 

「よって、こちらで各人の希望と適正を総合的に判断し、担当を割り振らせてもらった」

 

 沙織は首を傾げた。

 

(「総合的に判断」ってどうやって決めたんだろ?)

 

 力に自信がある人が装填手をやる、みたいな感じなのだろうか。

 

「今週、残りの4日間は全て各自の自主練習とする。マニュアルを読んで操作を覚えるのに1日、実践で知識とのズレや要点を確認するのに1日、操作を身体に覚え込ませるのに2日」

 

 まほが全員に目を配る。

 

「来週から実際に車両を動かして合同訓練を行うから、それまでにそれぞれの担当をマスターしてもらう」

 

 ほとんどの生徒は不安そうだった。4日間で、本当にマスター出来るのだろうか。力仕事の多い装填手などはともかく、操縦手や砲手は覚える事がかなり多いはずだ。

 

 不安を抱えながら、練習が始まった――。

 

 

 **

 

 

 4号の砲塔内部。射撃訓練にいそしむ華の隣で、まほが細かく指導する。

 

「一撃必中は狙わなくていい。まずは操作を確実に行うことだ」

 

「りょ、了解!やってみます!」

 

 華が照準器に額を付けながら答える。

 

「目標、12時、距離500の標的――撃ちます!」

 

 発射スイッチを押すと同時に、4号に激震が走る。短砲身の24口径75mm戦車砲から、主砲弾が放たれる。砲弾はオレンジ色の光の尾を引きながら標的に突進――その手前に着弾し、土砂を舞い上がらせる。

 

「少し、近すぎたな」

 

「す、すみませんっ!」

 

 華が思わず声を上げる。

 

「気にしなくていい。それより、どこに着弾した?」

 

「100mぐらい手前、だと思います……」

 

「なら、それが照準のズレだ。距離を100m上げて、600mに。もう一度やってみろ」

 

「りょ、了解!」

 

 華が答えると同時に、右後ろで秋山が次弾を装填する。こちらは経験者かと思うほど慣れた手つきで、まほも珍しく驚いた表情をしていた。

 

 

 

「……撃ちます!」

 

 再び爆発音。今度は標的の後方に着弾。しかし、標的との距離は先ほどより近い。

 

「っ……」

 

「大丈夫だ。外してもその都度に修正していけば、必ず標的に近づいていく」

 

 今度は距離を550に。まほの指示に従い、華は三度目の射撃を行う。

 結果は――またもや外れ。

 

 しかしながら、今回のそれは「惜しい」と充分に評せるものであった。距離も方向もほぼ問題なかったのだが、ほんの小さなズレのせいで僅かに的を逸れてしまった。

 

(……あと少しだったのに!)

 

 正直な話、ここまで来ると誤差の範囲内だ。照準器の僅かなズレだったり、車体の角度のや地面の傾きでほんの少しだけ砲身が下を向いていた――などの、いわゆる「車両ごとの癖」のようなものである。

 

 だが、ハズレはハズレだ。実戦で本試合で言い訳は聞かない

 

 

 華は悔しいやら情けないやらで、泣きそうになってくる。そんな彼女をジッと見ていた西住まほは、優しく声をかけた。

 

 

「最後にもう一つ、伝えることがある。それが今の『車両の癖』だ」

 

 五十鈴華の目をまっすぐに見て、話し始めるまほ。

 

「少し話を変えよう。たしか……華の実家は、華道をやっていると聞いた。間違いないか?」

 

 初対面にもかかわらず、まほが自分の家庭事情を知っていた事に驚く華。先ほど「適性を考慮して総合的に判断した」と言っていたが、まさか本当にそこまでしているとは……華は頷きつつも衝撃を隠せない。

 

 そんな彼女の驚きはつゆ知らず、まほは質問を続ける。

 

 

「ならば聞くが――花を生けるとき、同じ種類の花だったら全く同じように生けるのか?」

 

 

 たとえば生けていた菊が一本枯れた時、同じ種類の菊にすげ替えれば元通りに戻るのか――。

 

 

「い、いえ……花は同じように見えても、それぞれに個性があります。種類が同じだからといって、部品のように扱っては―――あっ」

 

 華の目が見開かれる。彼女が気づいた事を肯定するように、まほが頷く。

 

「戦車も同じだ。花と同じように、一両一両に個性がある。今のズレは、コイツの個性だ」

 

「個性……」

 

「そうだ。主砲を部品と思わず、唯一無二のパートナーと思え」

 

 

 主砲は例えるなら、砲手の「手」だ。車両ごとに癖もあれば違いもある。砲手にはその特徴を掴んで、徐々に慣らしていく事もまた必要な技術なのだった。

 

 

「今のでだいたいの癖は掴めたはずだ。次こそは、当てるぞ」

 

「……はい、まほ先輩、やってみます」

 

 華は自分を落ち着かせるように深呼吸した後、改めて額を照準器にあてる。今までとは変わって戦車と心を通わせようとするような彼女の姿に、まほはニッコリと微笑んだ。

 

 

 

 発砲、火炎、衝撃――――そして粉砕。

 

 

「やりましたね!華さん、目標撃破です!」

 

 

 秋山の喜ぶ声が車内に響き渡る。やっとのことで、目標に命中したのだ。

 

 

(やった……!)

 

 まだ実感がわかないのか放心状態の華に、まほは優しく告げた。

 

「距離が遠い場合は、今のように狭叉射撃を心掛けるように。慣れれば2発目でどんな標的にも命中させられるようになる。大事なのは、外しても平常心を失わない事だ」

 

「はい!頑張ります!」

 

 華の返事に、まほは優しく微笑んだ。




>各人の希望と適正を総合的に判断

転勤とか転属とかであるある謎割り振り

きっと偉い人には考えがあるに違いない(棒)
だったら教えろよ、とか突っ込んではいけない
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