僕とFクラスと下剋上
僕とFクラスと下剋上
僕らが文月学園に入学してから二度目の春を迎えた。校舎へと続く坂道の脇には、新入生を迎えるため桜が咲き誇っている。でも、僕は、その光景をのんきに見ている暇はない。
「吉井、遅刻だぞ」
玄関の前では、いつもお世話になっている先生の声が聞こえた。
「おはようございます。西村先生」
頭を下げて挨拶をする。いつもお世話になっているからなあ~。
「珍しいな遅刻なんて、ほら、受け取れ」
先生は箱から封筒を取り出し、僕に差し出してくる。
「ありがとうございます。でも、結果はわかっているので」
「まあ、頑張れよ。下剋上」
「はい。失礼します」
こうして僕の最低クラス生活が幕を開けた。
数分後、2年F組と言うプレートのある教室の前で少しだけ躊躇していたが、ドアを勢いよく開けて入った。
「おはようございます」
「おお明久か。遅いから心配したぞ」
雄二は、心配してくれてくれたようだ。やっぱり親友だね。
「......珍しいな遅刻なんて」
「おはよう康太、それに秀吉も」
「おはようなのじゃ」
僕は、あたりを見わたしてみた。さすがFクラス、椅子までないなんて。
「えーと、ちょっと通してもらえますかね?」
背後から覇気のない声が聞こえてきた。この声は、福原先生だ。
「はーい」
「うっす」
返事をしてそこらへんの席に着く。
「えー、おはようございます。2年F組担当の福原慎です。よろしくお願いします」
チョークもないようだ。
「みなさん全員にちゃぶ台と座布団は支給されていますか?不備があれば申し出てください」
この設備で不備がないほうがおかしいと、思う。
「せんせー、俺の座布団に綿がほとんど入ってないですー」
「あー、はい。我慢してください」
それでいいのか、先生。
「先生、俺のちゃぶ台の脚が折れています」
「木工ボンドが支給されていますので、あとで自分で直してください」
「センセ、窓が割れていて風が寒いんですけど」
「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」
ここって改めてひどい設備だね。
「必要なものがあれば極力自分で調達するようにしてください」
なんだろうここって
「では、自己紹介を始めましょうか。そうですね。廊下側の人からお願いします」
福原先生からの指名で生徒の一人が立ち上がる。
「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」
皆様に伝えておきますが、秀吉は男です。
「........土屋康太」
寡黙だねえ~
「~です。海外育ちで、日本語の会話は、できます。趣味は・・」
ぞくっ、寒気がする。
「吉井明久を殴ることです☆」
やばい、体が震えるってことは、
「はろはろー」
やっぱり島田さんか。僕彼女のこと苦手なんだよな。
「白音優鬼です。よろ」
ユキかやっぱり優しい人だよね。僕の番か。
「吉井明久です」
僕の自己紹介が終わった。はあー、眠いな。
「遅れてすみません」
『えっ』
ガラっといきなり教室のドアが開き、息を切らせた女子生徒が現れた。
「ちょうどよかった。今自己紹介をしてているところなので姫路さんもお願いします」
「は、はい!あの、姫路瑞希と言います。よろしくお願いします・・・」
みんなは容姿を見て驚きの声を上げたんじゃない。
「はい、質問です」
「はい、何ですか?」
「何でここにいるんですか?」
「そ、その振り分け試験のとき、高熱を出してしまいまして・・・・」
『そういえば俺も熱(の問題)が出たせいでFクラスに』
『ああ。化学だろ?アレは難しかったな』
『弟が事故に遭ったと聞いて実力を出し切れなくて』
『黙れ一人っ子』
『前の晩、彼女が寝かせてくれなくて』
『異端者には死を』
『すんませんでした』
バカばかりだ。
「緊張しましたぁ~」
姫路さんが僕たちの席の近くに来てそういった。
「姫路」
雄二が話しかけていた。でも、僕には関係のないことだ。
「はい、何ですか?えーっと」
「坂本だ。坂本雄二。よろしく頼む」
「あ、姫路です。よろしくお願いします」
「ところで体調はいまだに悪いのか・」
「言え大丈夫です。ところで、吉井君は?」
「明久、こっちこい」
なぜ僕が呼ばれるのだろう。
「吉井君、ありがとうございました」
「お礼を言われるほどのことは、していませんよ」
「はいはい。そこの人たち、静かにしてくださいね」
「あ、すみませ・・・」
バキィッ バラバラバラ・・・・
「え~・・・替えを持ってきますので少し待っていてください」
「あはははは」
「雄二ちょっといい?康太たちも」
「「「ああ」」」
僕らは、廊下に出る。
「いよいよだね」
「ああ、そうだな」
「......雄二が告るのも楽しみ」
「そうじゃの」
「まあ」
「頑張ろうか」
「「「「おう」」」」
僕たちは教室に戻った。
「さて、自己紹介の続きをお願いします」
「えー、須川亮です」
「坂本君、キミが自己紹介最後の一人ですよ」
「了解」
「坂本君はFクラスのクラス代表でしたよね?」
「さてみんなに一つ聞きたい」
かび臭い教室。
古く汚れた座布団。
薄汚れたちゃぶ台。
「不満はないか?」
『大ありじゃあーーー』
「だろう俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として問題意識を抱いている」
『そうだそうだ』
『いくら学費が安いからと言って、この設備はあんまりだ!改善を要求する』
「みんなの意見はもっともだ。そこでこれは代表としての提案だが、」
仲間たちに野性味満点の八重歯を見せ、
「FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う」
こうしてFクラス代表、坂本雄二は戦争の引き金を引いた。
どうでしたか?