さて、セイレムのシナリオを忘れかけてきたのでどこか可笑しな所があったら御指摘頂けると幸いです。
まだアビーが・・・引けない・・・。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
・・・誰か、この空気を・・・壊してくれ。
現在俺は謎の新天地にダイナミックに降り立ち、目を丸くして口を開けているかなり可愛らしい金髪の女の子と海岸沿いで出会った。
「・・・・・・」
「・・・・・・!」
しばらくどう話しかけるか迷ったが、黒いコートを着た知らない男の人が突然空から目の前に降って来て、どう納得のいく説明が出来るだろうか?貴女を盗みに来ました。など通じないのが現実だ。くっ、某泥棒3世のように空中水泳が出来ていればもしかしたら出来たかもしれなかったのに!
「・・・えーっと、その、何だ?驚かせてごめんね」
「魔女・・・魔女なのっ!?」
取り敢えず場の空気を対話に持っていこうとしたらバッサリ切り落とされた。あー、まぁこの位の年の女の子なら魔法とかそういったファンタジーに興味深々な頃合いかな?ふむ、ならそういった感じで話しを進めていこう。・・・でも何でそんな怖がって・・・いや、知らない男の人が空から降って来たら怖過ぎるか。
「魔女じゃないよ、お兄さんは魔法は使えないし、精々出来るのは思考すること位だよ」
「・・・嘘よ、じゃあどうやって空から降って来たの?」
あ、あれれ~?信用zeroだぞ~?そして痛い所を・・・。空から降って来た理由か・・・。何か現実味のあるものとか面白くこの場を誤魔化せるの無かったかな・・・?
「うーん・・・。あ!自転車で空を飛ぼうとしたんだ。こう、プロペラと羽を付けてブーンと」
「じてん・・・しゃ?何かしらそれ?」
よし、食いついた。
「あれ?自転車って知らない?こうタイヤが2つあってペダルを足で漕ぐことで前に進むんだ。それで空も飛んでみようと思ってね」
「・・・まぁ、凄いわ。それで、その自転車はどこなの?」
「それが此処に来る途中に空で大破しちゃったんだ。それで自転車は海に・・・お兄さんは此処に落ちて来たってわけ」
上手くいった!上手くいったぞ!女の子の顔もさっきとは違って朗らかな表情だ。よし、取り敢えず俺が事故でここに来たと信じてもらえたら、次に名前を聞こう。そうすることで自然な流れで道案内も頼める可能性がある。
「そう、大変だったのね?足は大丈夫なの?凄い勢いで空から落ちて来たようにも見えたけれど?」
「ん?あぁ、大丈夫だよ、お兄さんの体は頑丈みたいだから。良ければ君の御名前を聞いても良いかな?」
「えぇ、アビゲイル・ウィリアムズ。どうぞアビーと呼んで下さいな。」
よし覚えた、アビーの笑顔は凄い力でした。う、こんな純粋な女の子を騙していることへの罪悪感が俺を襲う・・・・・・
「そうか、じゃあアビー、ここらに地図などは無いかい?お兄さんはこれから少しこの町を見て行こうと思うんだけど?」
「なら私がセイレムを案内するわ。是非セイレムを見て行って!」
計画通り!いや~罪悪感で心が痛いなぁ・・・硝子のハートが砕け散りそうだ。にしても、セイレム・・・か。ん?あれ、アビゲイルって確か・・・。
いやまさかな。
俺はセイレムの町をアビゲイルに案内して貰った。その途中で様々な人を見かけたが、全員が全員俺を怪しむような目で見て陰口を言っていた。
――こんな町に何のようだ・・・・・・
――あんな黒いコートを着ているだなんてまるで魔女だわ!
――あれはカーターさんの所の子かい?知らない男について行くなと言われてただろうに・・・・・・
えぇぇ・・・何か予想以上に暗いんですけど・・・・・・。まぁでも、これでようやく確信出来た。
きっとここは1692年付近のセイレムだろう。セイレム魔女裁判という大事件が起きた町だと記憶している。魔女を恐れていたピューリタンという宗教団体。まだ少し幼い女の子であるアビゲイル、集団心理の暴走の例として引用されることが多かったからその内容は良く覚えている。いるのだが・・・・・・。
本当にこんな素直そうで優しい子供が事件を起こすのか?
「あら?どうしたの旅人のお兄さん?何か気になることでもあったのかしら?」
んー、あるけれども・・・・・・。
「・・・・・・いや、何でもないよ。それよりどこか働ける場所はあるかな?少しここの環境にも触れてみたいんだ。」
「あら、そうなのね。なら私より叔父様に聞いた方が良いかも知れないわ。」
叔父様の所に向かう小6か中1ぐらいの女の子と男子高校生・・・・・・凄い怪しいな。正直これ以上セイレムでアビゲイルと深く接触することは危険かも知れない。何でも出来そうなシュブニ様の探しものを探す時点で危険な気もするのに、アビゲイルと深く関わって魔女裁判に出なくてはいけなくなるなど絶対に回避しなければ。もう死の理解は十分出来たからわざわざ何の目的も無く同じ首吊りで死ぬのだけは嫌だ。せめて獄死とか圧死で、興味の為に死にたい。・・・・・・いや、圧死は嫌だな、首吊りより痛そうだ。もしそうなったら獄死でお願いしよう。
アビゲイルに手を引かれ、あっちへこっちへ歩いていくと、今まで見てきた村の家より格段に立派な家が建っていた。どうやらここにアビゲイルの叔父様、確かカーターさん?が居るのだろう。
「叔父様、旅の御方を連れて来たわ。この町の仕事をしてみたいって言ってるのだけれど、良い仕事は無いかしら?」
アビゲイルが一人で扉の奥に入っていき、待っている俺は扉の外で少し聞き耳を立てていた。昔の家だから防音機能が全く無いようだ。頑張ってアビゲイルとカーターさんの話がどうなっているのか聞こうとした。
「アビゲイル、私は知らない人を連れて来てはいけないと言った筈だ。」
ん?聞き覚えのある声だ・・・。何度か聞いたような気もする。
「そう・・・だけれど、困っている様子だったから・・・・・・」
「・・・分かった。今回は見逃す。罰は無しだ。次からは気をつけなさい。それじゃあ旅の御方を連れて来なさい。少し叔父様はその人とお話するから、アビゲイルは席を外しなさい。」
俺がカーターさんの声に不思議な感覚を持っていると、アビゲイルが扉を開けて叔父様が話しがあると伝えに来た。姪に何かしてないな?など言われるのだろうか・・・・・・。あぁ、緊張してきた。
「・・・失礼します。」
「初めまして、私はランドルフ・カーターだ。宜しく。」
す、すす・・・・・・杉田ァァ!?
「えぇ・・・宜しくお願いします。」
拙い、謎過ぎる!何故杉田が此処に!?まさか自力で出演を!?
く、落ち着け、彼は杉田では無い・・・・・・。
「それで、君は仕事を探していると言ったが、どのような仕事を探しているんだい?」
「はい、実は今、無一文でして、どこかで稼ぎたいんです。食費分稼げる誰でも出来る仕事はどこかにありませんか?」
そう言うとカーターさんは考える素振りを見せ、すまないと言うと提案を出してきた。
「君はまだ此処に来たばかりなのだろう?この村は貧しく、常に緊迫した雰囲気だ。君のような旅人がわざわざこのような村に来たということで既に村に住む者達は君のことを疑念の眼差しで見ているだろう。この私も、ね。」
「・・・・・・」
「だが君は帰る賃金も無いのだろう?本当は帰る分の賃金を渡して帰らせるだろうが、私も貧しくてね。ただでは渡せない。もし良ければ――」
「旅人さん、仕事は見つかったかしら・・・・・・」
私は今森の奥に居る。誰にも言っていない秘密の場所だ。最近は此処で祈りを捧げたり、空を眺めていたりする。
「叔父様ならきっと仕事を見つけて下さるでしょうけれど、やっぱり少し心配だわ・・・」
私は今日会ったばかりの旅人さんが心配だった。仕事を探していたけれど、わざわざこんな村で働いてみたいだなんて変わった方だと思った。何か理由があるのだろうけれど・・・・・・。
「・・・・・・そう言えば、あの方はどこから来たのかしら?自転・・・車?という物に乗って来たと言っていたけれど、海を渡ったということは、このセイレムの外から来たのよね。」
私はこのセイレムの外にとても興味があった。外の世界がどうなっているのか知りたいし、行ってみたいと思っている。ティテュバにも外の世界のお話などを聞いたけれど、どれも楽しそうな話だった。
「フフッ、もしまた会えたら聞いてみようかしら。」
どんな話をしてくれるのか、考えただけで楽しみだ。私は暗くならない内に森を出て叔父様の家へと帰り、ティテュバの作ったお食事を3人で食べようとしていた。
「あら、お嬢様、お口にシチューが付いていますわ。今拭きますね。」
「すまない。それを取ってもらえるかい?」
「これですね?はい、どうぞ。」
「ん、ありがとうティテュバ!・・・あれ、4人?・・・て何で旅人さんがっ!?」
あ…ありのまま今起こった事を話します。私はいつも通り家に帰ってティテュバと叔父様の3人で会話しながら食事をしようと思ったら、いつのまにか4人になっていた。何を言っているのかわからないと思いますが、私も何があったのかわかりませんでした…頭がどうにかなってしまったのかと思いました…催眠術だとか幻覚だとか、そんなものでは断じてありません。もっと恐ろしいものの片鱗を味わいましたわ・・・・・・。
「アビゲイル、今日から彼もここの使用人だ。改めて挨拶をしておきなさい。」
「改めて、宜しくお願いします。アビゲイルお嬢様。」
「・・・えぇ・・・宜し・・・く・・・・・・その、何で使用人に・・・?仕事は・・・?」
「はい、これが仕事です。」
お、落ち着くのよ
「旅人さんは凄い方でしたよお嬢様。私がシチューの工程で失敗しても、彼はその失敗を物ともせずに作ろうとしていたシチューを見事に成功させまして・・・・・・」
「凄くないですよ。まぁ簡単なミスでしたし、私じゃなくてもあんなのは誰でも出来ましたよ。」
ん?ということはこのシチューは旅人さんとティテュバが作ったのかしら?てっきりティテュバだけで作ったのかと思っていたわ・・・・・・。
「旅人さんは人のお手伝いが得意なのね。」
「そんなまさか、私に出来るのは何かを無意味なものにすることぐらいで、今回は偶然ティテュバさんの失敗を無意味なものに出来ただけですよ。」
旅人さんは困ったような顔で少し笑いながら否定するが、私はそうは思わない。旅人さんは凄い人なのよ!
「それでも凄いわよ!ね、ティテュバ!叔父様!」
「フフ、えぇ、そうですね。」
「あぁ、そうだな。」
今日のカーター家の食事は普段より賑やかだった。こんな生活が、ずっと続けば良いな・・・・・・。
さて、何故アビーと深く接触しないようにと考えていた主人公が使用人になったのか・・・・・・。次回に持ってこれるかな?
因みにこのティテュバは1代目でシバの女王では無いです。つまりこのセイレムの舞台はカルデアの来る前で初期のティテュバが死ぬ前のセイレム。